竹内真のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ〇 概要
銀座にある文壇バー「ミューズ」には,大御所ミステリ作家の辻堂珊瑚朗,藤沢敬五といった面々が現れる。彼らは,さまざまな謎や事件について,鮮やかに推理する名探偵でもあった。ボーイである了の目を通して描かれる日常の謎系の短編ミステリ集。「シチュエーションパズルの攻防」の続編
〇 総合評価 ★★★☆☆
全編を通した謎はないものの,全編を通じ「海無し県殺人事件」のバラエティー連動企画の映像化という軸が存在する。その軸をベースに,いわゆる,日常の謎といった謎と解決が示される。
前作以上に辻堂珊瑚朗のライバル,藤沢敬五が頻繁に登場する。二人で会話を進める中で謎解きが進むという展開が多い。
いずれも日常の謎系の短編ミステリらしく,意外性は少ない。そこそこ魅力的なキャラクターによる会話や謎解きの過程を楽しむ作品であり,読後感も悪くない。作品にのめりこめるような深さも,熱中して読めるような展開もないが,出勤途中や寝る前などにちょっと読むには最適のミステリだろう。★3で。
〇 チェスセットの暗号
辻堂珊瑚朗の「海無し県殺人事件」が,バラエティー番組との連動企画で映像化されることになった。ミューズのママ,ミーナや,辻堂珊瑚朗のライバル,藤沢敬五は,辻堂珊瑚朗が,自分の作品のトリックを単純化してクイズ形式で出題させることを許可したことに疑問をいだいていた。
ミューズで,その「海無し県殺人事件」の映像化の祝いをしているところに,藤沢敬五が現れる。そして,友人からもらったチェスセットを紹介し,辻堂珊瑚朗とチェスを始める。チェスの最中,チェスセットに仕込まれた暗号に気付き,珊瑚朗と藤沢は,謎解きを始める。
謎の答えは,ナポレオンの棋譜だった。しかし,ナポレオンの棋譜と伝わっているその棋譜は,実際にはナポレオンが残したものではないと言われている。そして,その棋譜をよりよい棋譜にできるのではないかという謎掛けだった。
また,藤沢は,「海無し県殺人事件」は珊瑚朗の初期の作品で,むしろトリックは単純にした方がよい仕上がりになると思い,珊瑚朗は,自分の作品を変えたいという欲求と変えるべきじゃないと分かっている二律背反の思いを満たすために,映像化を許可したのではないかと推理する。
〇 ファンサイトの挑戦状
「海無し県殺人事件」の映像化,第一弾は,好評だったが,一部のファンからは「トリックを簡略化し,原作の魅力を損なった」と批判を受けていた。
その批判の一番手と言えるサイトで,簡略化されると思われる第2話の脚本を予測。その脚本の予測は,実際の脚本に酷似していた。
プロデューサーの加茂は,このままでは本家がサイトを真似したと思われかねないと心配する。ミーコは,珊瑚朗に助けを依頼する。
珊瑚朗は,視聴者が書いた予想どおりに進め,最後の最後で裏切るという策を授ける。加茂は,この騒動を宣伝に利用し,最後は珊瑚朗のアドバイスどおりに別の女性を黒幕とする原作とは異なる結末を用意した。
〇 トラブルメーカーの出題
「海無し県殺人事件」の第3弾を撮影中に,監督の身内で,スタッフの嫌われ者だった「石沼麻沙樹」が,作品の登場人物と同じような姿で殺害される。スタッフに犯人がいると,撮影,放送ができなくなる可能性がある。ミーコは,珊瑚朗に,スタッフ以外に犯人がいない可能性がないか,助言を仰ぐ。真相は,石沼が別のトラブルに巻き込まれ,琵琶湖とは別の場所で殺害され,スタッフの仕業にするために工作されていたというものだった。決めては,比良おろしという琵琶湖の特徴をしらずに,工作が失敗したことと,琵琶湖にいるはずのないイワナが死体のポケットに入っていたから。
〇 ポー・トースターの誘拐
「海無し県殺人事件」の最終回,第4弾の台本が誘拐される。サイトの謎を解かなければ公開されるという。辻堂珊瑚朗と藤沢敬五は謎の一部を解き,江戸川乱歩が鍵になると推理する。了はその推理をもとに多摩の江戸川乱歩の墓を訪れるが,これは罠。その姿がネットに公開される。謎の全てを解くと,江戸川乱歩生誕の地である名張に,江戸川乱歩の出生の日に出向けばよいという結論になったが,その時間までは分からない。そこで,珊瑚朗は,スタッフや劇団員などを使って総勢20人で怪人20面相の姿で午前零時に出向き,誘拐犯を捕まえる。
〇 ディスリスペクトの迎撃
「海無し県殺人事件」の打ち上げ。その後,視聴者から問題を募集する形の「ドラマで対決!出題ミステリー」という番組が始まる。これは中傷や脅迫をするようなネット住人達を番組に取り込もうという企画だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ東天高校の文化祭を舞台とした青春ミステリ。青春ミステリといっても,ミステリとしての側面は弱めで,この作品の主たる謎は,「DJネガポジ」の正体は誰か?という部分である。
青春ミステリの「青春」の側面は,盛りだくさんである。野球部の元エースである山則之の斉藤優里への恋心,自分の投げたボールで壊れた大時計を改めて動かそうというチャレンジ,東天高校の文化祭の各種イベント,そしてこれらを盛り上げるDJネガポジによるラジオ放送…。すっかりおっさんになってしまった社会人にとっては,完全なるフィクションの世界として,気楽に楽しむことができた。こういう作品を,高校生時代に読んでいると,作品に登場する主人公,ヒロインと自分との境遇の差に凹んでしまうんだろうけど…。
しかし,完全に爽やかな作品という訳ではなく,やや重いテーマが裏には存在している。
DJネガポジの正体は,心の病と体の病により,学校を病欠している放送部の青石という少年。DJネガポジと放送部のメンバーは,文化祭一日目で大時計を動かすというイベントを成功させた。そして,二日目は,何らかのカタチでの復讐を計画していたという。その計画を見抜いたのは,この作品の探偵役を務めた古浦久美子という地味な少女
最後は,少女の脅迫により,復讐はしないと約束するところで終わる。文化祭の二日目は描かれないが,これは描かずに楽しい文化祭の様子を想像させるのが狙いだろう。
古き良き時代のアニメや漫画のような雰囲気の作品だが,最近ではこういう作品はライトノベルに多いのだろうか。ミステリ的な弱さはマイナスだが,作品の雰囲気は好み。登場するキャラクターも魅力的なので,★3としたい。 -
Posted by ブクログ
仕事が変わってちょっと本を読むスピードが落ちた。
この本はランキングを物色して、皆さんの評判が良さげだったので買ってみた。
夫が失踪し離婚が成立したのを機に、学校司書として働きはじめた詩織。元々本好きなこともあり、丁寧な引継ぎ書を残してくれた前任者を探し訪ねたり、生徒が持ってきた本のことを調べたりする内に、司書の仕事にやりがいを覚えるようになって…というお話。
お話の中で色々な本が紹介され、本を読みながら他の本を読みたくなったりする。
出てくる人は皆善意の人々で、お話もうまいこと進んで、全体に些か薄味な感じはするものの、それでも最後のブックトークは生徒たちの心情が伝わってきて、なかなか良かったと思う。 -
Posted by ブクログ
夫が失踪し独身になった詩織さん30歳が高校の図書室のなんちゃって司書になって。。。。というお話。
図書委員の高校生たちや校長先生、前任の学校司書など魅力的な人々が登場します。そして高校生たちの中で行われるブックトーク活動。その中で様々な本が紹介されて行きます。
ただ、多くの要素を込めすぎ、全体の印象が希薄です。竹内さんの「本の紹介」を物語化することを目的にしたような、ストーリーより本の紹介の方に力が入って居る感じがします。さらには主人公の詩織さんの持つ特殊能力などと言うものも混ざりこんで。これは無くても良かったんじゃないかな。
もっと紹介本を絞り込んで、その分ストーリーをしっかり描き込めば、もっと楽しめるし、その上でシリーズ化して紹介本を増やして行けばよかったのに、そんな気がします。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ竹内真という名前は聞いたことがなかったが,本屋さんでたまたま見つけて,裏表紙に載っている解説を見て購入した作品。5つの収録作品からなる短編集。登場人物などは共通だが,北森鴻の共犯マジックや,若竹七海のぼくのミステリな日常のように,全ての短編を通した謎が存在するわけではない。いわゆる,日常の謎系のミステリであり,探偵役は,辻堂珊瑚朗というミステリ作家である。銀座に辻堂珊瑚朗やライバル作家である藤沢敬五が訪れるバーが存在し,主人公は,そのバーのママである佐貴ミーコの甥である大学生。バーに務めるホステスが目撃する拉致事件の真相を辻堂珊瑚朗が推理する話(1話:クロロホルムの厩火事),銀座の伝説となっているホステスの話(3話:ダブルヘッダーの伝説),佐貴ミーコと辻堂珊瑚朗が出会ったときの絵画消失事件の話(4話:クリスマスカードの舞台裏)などがあるが,表題作となっているシチュエーションパズルの真相が白眉。叙述トリックなどを利用したトリッキーな話の方が好みだが,こういうシンプルで軽い謎解き作品も面白い。主人公も含めて,佐貴ミーコ,辻堂珊瑚朗,藤沢敬五と,どの登場人物もややキャラクターが弱い気がするのが残念。しっかりキャラクターが描けていれば,設定は面白いので,もっと面白い作品になったと思う。★3つで。
-
Posted by ブクログ
戦後をジャズトランペッターとして自由奔放に生きた祖父は、何処か「東京バンドワゴン」の我南人を思わせます。
600ページ近い長い物語は、祖父から3人の孫たちに生前に形見分けされた根付を通じて祖父の祖父の代まで遡り、5代にわたる家族の年代史であり、孫たちの10数年わたる成長記でもあります。
なかなか良い話なのですが、やや冗長感があります。
それは家族以外の人物造形がやや浅いこと、ミステリー仕立てで同じような推理が何度か語られることによるものと思います。
もう少し整理して、孫たちの周辺人物をきっちり造形できれば、もっと良い物語になったとちょっと残念。