鷲谷いづみのレビュー一覧
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絵が豊富ながらも生態学の本格的な入門書。高校生時代生物を専攻していなかった私にとっても非常に分かりやすい本となっていました。
著者が信頼と実績の鷲谷いずみさんであること、最終章に今日最も生態に影響を与えている「人新世」の話があるのもいいですね。鷲谷さんは「さとやま」に関する本も書いていますが、適度な撹乱があった方が生物多様性にとっても良いそう。
またコラムで数式の記載もありますがきちんと解説がされていて高校数学が分かる人であれば特に理解に苦労はしないです。
今日特に人間の活動によって引き起こされるカスケード絶滅連鎖をなんとしてでも食い止めないといけないですね。確かに人間の活動が活発化してきた約 -
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本書文中にある「世界一の速度で海岸の自然を損なった国」という言葉が印象的でした。これだけ資源を乱獲しても知らぬ存ぜぬを貫く人々、さらなる消費を増長するメディア、地球の生物はとっくに限界を超えているのにもかかわらずその無関心さや対応のなさとの因果関係について社会学的に調査しても面白いのではないかとさせ思ってしまいます。それだけの破壊を行なっても直接的に影響の分からない都市に多くの人々が住んでいるということでしょうか。つまり特に日本のような無関心なエネルギー消費大国の都市の人々がこうした問題に気づくようになった時は完全に手遅れということでしょうね・・・。
本書中にも言及があるオックスフォードの研究 -
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学問の自由は私たちの生活とも関係している。学問をすることが自由なのもあるが、学問はそれ自体国の権力から自由で独立したものでなくては、また再び、戦争に使われる可能性がある。過去の過ちを繰り返さないという学者の決意から生まれた学術会議の経緯を知っていれば、今回の件は学者集団にとって、赤信号であるとともに、私たちの身にも危険が近づいていることを示している。
さまざまな学会から声明が出され、報道を賑わせたが、最近また忘れられそうになっている気がしてならない。しかし、このことは決して忘れてはならない。
個人的には内田樹さんの部分が、自分が薄々感じていたことをはっきりと明文化して提示されたようで戦慄が走っ -
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鷲谷さんの本としては2冊目に読んだ。本書もやっぱり,「安曇野ちひろ美術館」の売店で購入。本書が出版されたのは2011年で,ちょうど,東日本大震災が起きたときだ。日本社会が現在の経済活動を優先してきたことのしっぺ返しがいっぺんに出てきたのが,この震災だった。本書は,そうなる前にやることがあるだろう…という提案だったのだが,間に合わなかったのだ。
あれから10数年経って,日本はまた,〈今さえ良ければいい経済〉に逆戻りしているようで,寂しい。
本書の内容だが,生物多様性や生態系サービス,SATAYAMAイニシアチブといった言葉について,中学生にもわかりやすく述べられている。これらの言葉は,現 -
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生物多様性を守ることが,人間の生活にも優しくなる方法ってないのだろうか。
害虫を殺さないと作物がとれない。そのために農薬を使う。すると殺したくない生き物まで死んでしまい,生物多様性はなくなる…さらには,農薬に強い虫が増えてくる。このような悪循環を断ち切る方法はあるのか…。
本書は,そのような一見矛盾するようなものを両立させている実践例を紹介してくれます。
本書に先立つものとして,同じ岩波ブックレットに『〈生物多様性〉入門』というのがあるそうなので,まずは「生物多様性について知りたい」という方は,そちらの方を先に読んだほうがいいでしょう。
わたしは,この本(ともう一冊)を「安曇野ち -
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この本をよみ、なぜ生物多様性が重要なのか、少しわかった。
単に動植物がたくさんいた方がいい、という軽いものではなく、生物それぞれの生き方が与え合う影響のなか、バランスがとれた環境が生まれる。
単一型の人間に完全に管理された環境では、いずれ破綻をきたしてしまう。
しかし、多様性がうまく機能して、循環型の環境を整えるためには、自然との共生、潤沢な自然環境が必要だということもわかった。
今の都市の在り方では、到底これらのことは実現できない。
現代社会は、与えられるものを与えられるもの以上に消費し続けた結果、地球の環境資源を大幅に超えるほどのエネルギーを消費している。
そして、世界の先進国のほとんど -
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ヒトは、生態系サービスに依存して暮らしている。SDGsを学ぶ上でよく耳にするこのフレーズの、基本をまずは押さえたいと思い手にした本。
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生態系サービスとは、多様な生き物が連携したはたらきにより生み出されて、人間社会に提供される便益のことだ。
私ももちろん例外なく、受益者のひとり。
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しかしながら、ストックホルム大学のヨハン・ロックストーム教授によれば、「現代におけるとりわけ大きな変化は、種の絶滅リスクで測れる生物多様性の喪失」であり、「多様性を喪失する速度は、地球環境の安全限界を大きく超えている」という。
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それも人間活動の影響によって生じている危機だ。特に、私たちの暮らしに深く関わる一 -
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この本は、日本学術会議が、中学生にも理解できる水準と優しい表現で、最先端の学術情報を提供しようという意図で出版している岩波ジュニア新書の中の、<知の航海>というシリーズの1冊。ジュニア向けとはいえ、使われている用語は専門的で、私にとってはどちらかと言えば学術的な内容と言える。
衰退の危機にさらされている「さとやま」を様々な角度から眺めることにより、人類の起源からその進化の過程において、生活や文化と密接に結びついた必需品の供給地として、大変重要な役割を果たしてきたことがわかる。とはいえ、「かつては普通にみられたのに、今は絶滅危惧種となっている生物が多く生息・生育する場所」というシニカルな表現は、 -
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ジュニア新書なので、さらっと流すつもりで読み始めたが、とても充実した内容だった。水田が両生類やトンボ類に理想的な生息環境を与えていることや、洪水時の遊水池として機能することなど、日本人にとっての原風景ともいえる里山が自然環境との共生システムとして機能していたことがよく見えてくる。また、冬季も水田に水を張る「ふゆみずたんぼ」の取り組みによって水鳥が利用できるようになり、除草効果や施肥効果も得られるようになったという事例も興味深い。
日本学術会議との共同企画である「知の航海シリーズ」としてジュニア新書となったらしいが、読後感は岩波新書としてより多くの人に読んで欲しかったと思う気持ちが強かった。
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ネタバレ[ 内容 ]
二十世紀後半、人類は多量の資源を消費し、廃棄物を自然界にまき散らすライフスタイルをエスカレートさせた。
そのため自然の多様性は失われ、固有種の絶滅、異常気象の発生など、多大な影響が地球規模で発生している。
環境を改変する力を持つ唯一の生物であるヒトは、今こそ、持続可能な生態系を再生させるために叡智を結集しなければならない。
里山再生や淡水生態系の復活など、自然再生の思想と方法をやさしく解説する。
[ 目次 ]
序章 熱波に襲われたロンドンで
第1章 生物多様性の危機
第2章 生物多様性を育んだ共生と人類
第3章 征服型戦略の末路と積極的共生型戦略
第4章 健全な農業、健全な食卓 -
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著者の視点から日本の”里山”とはどういったものなのかを纏めてくれている一冊。大人の私が「難しいけどなるほど~」といった感覚で読んでいたものの出版社の解説をみると本書はどうやら中学生向けらしかった...。
印象に残ったのは「野」、「牧」という土地の概念、あまり知らず考えたこともなかったのですが現代でいえば公園や市街地といったものと同類レベルの位置付けで存在していたと思うと面白いなあ。
ともあれ里山の良し悪しは実際に身を置いて生活しないとわかりっこなく、一度きりの人生、まずは住んでみて、色々知って感じたい気持ちでありましょうか...。(里山はすこし憧れでそういった環境下に一度住んでみたかったり -
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技術士専門科目のテーマになりそうな生物多様性。
なかなか「生物多様性」になじみがないので一般的な知識を
養うために読んでみた。
「自然再生事業」という新たな公共事業が行われるように
なったが、生物多様性国家戦略に基づいて、自然が失われて
しまった場所において、その際を目指して取り組まれている
のが「自然再生事業」であるという流れを理解することができた。
自然再生事業の組み立て方も分かりやすく解説されている。
自然再生事業では、霞ヶ浦での「アサザプロジェクト」のアサザ
のように何かしらシンボルとなる生物や植物が存在する。
危機に瀕している要因はひとつだけではなく複合的な要因が
絡み合っている