鷲谷いづみのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
絵が豊富ながらも生態学の本格的な入門書。高校生時代生物を専攻していなかった私にとっても非常に分かりやすい本となっていました。
著者が信頼と実績の鷲谷いずみさんであること、最終章に今日最も生態に影響を与えている「人新世」の話があるのもいいですね。鷲谷さんは「さとやま」に関する本も書いていますが、適度な撹乱があった方が生物多様性にとっても良いそう。
またコラムで数式の記載もありますがきちんと解説がされていて高校数学が分かる人であれば特に理解に苦労はしないです。
今日特に人間の活動によって引き起こされるカスケード絶滅連鎖をなんとしてでも食い止めないといけないですね。確かに人間の活動が活発化してきた約1万年前から人間による環境への影響が大きくなってきましたが、生物多様性が本格的に脅かされるようになってきたのは産業革命以降、特に第2次世界大戦以降の話です。つまり今日の資本主義システムによる生活を放棄し、さとやま復興の活動などをすれば、また生物は豊かさを取り戻します。それができなければ人類だけでなく、ペルム紀に匹敵する生物の大絶滅が発生する。さて我々はどちらを選択するのでしょうか。 -
Posted by ブクログ
本書文中にある「世界一の速度で海岸の自然を損なった国」という言葉が印象的でした。これだけ資源を乱獲しても知らぬ存ぜぬを貫く人々、さらなる消費を増長するメディア、地球の生物はとっくに限界を超えているのにもかかわらずその無関心さや対応のなさとの因果関係について社会学的に調査しても面白いのではないかとさせ思ってしまいます。それだけの破壊を行なっても直接的に影響の分からない都市に多くの人々が住んでいるということでしょうか。つまり特に日本のような無関心なエネルギー消費大国の都市の人々がこうした問題に気づくようになった時は完全に手遅れということでしょうね・・・。
本書中にも言及があるオックスフォードの研究を踏まえて、ヴイーガン実施のためのインセンティブは直ちに行う必要があります。 -
Posted by ブクログ
学問の自由は私たちの生活とも関係している。学問をすることが自由なのもあるが、学問はそれ自体国の権力から自由で独立したものでなくては、また再び、戦争に使われる可能性がある。過去の過ちを繰り返さないという学者の決意から生まれた学術会議の経緯を知っていれば、今回の件は学者集団にとって、赤信号であるとともに、私たちの身にも危険が近づいていることを示している。
さまざまな学会から声明が出され、報道を賑わせたが、最近また忘れられそうになっている気がしてならない。しかし、このことは決して忘れてはならない。
個人的には内田樹さんの部分が、自分が薄々感じていたことをはっきりと明文化して提示されたようで戦慄が走った。 -
Posted by ブクログ
鷲谷さんの本としては2冊目に読んだ。本書もやっぱり,「安曇野ちひろ美術館」の売店で購入。本書が出版されたのは2011年で,ちょうど,東日本大震災が起きたときだ。日本社会が現在の経済活動を優先してきたことのしっぺ返しがいっぺんに出てきたのが,この震災だった。本書は,そうなる前にやることがあるだろう…という提案だったのだが,間に合わなかったのだ。
あれから10数年経って,日本はまた,〈今さえ良ければいい経済〉に逆戻りしているようで,寂しい。
本書の内容だが,生物多様性や生態系サービス,SATAYAMAイニシアチブといった言葉について,中学生にもわかりやすく述べられている。これらの言葉は,現役時代にも少しだけ耳にした言葉だったけれども,この本を読んでおけば,もっと自分の授業にも生かせたかもしれないなと,今更ながら反省。
ただ,ここに書かれていることは,今後の能登半島のあり方にも大いに関係するし,わたしの所属しているNPOが行っていることも,まさに,里山の再生に向けての活動に他ならない。
子どもや大人向けに「生物多様性の持続可能な利用」についての学習の機会を与えること…それは,座学だけではなく里山での体験活動も含んでいる…を目的に,これからの少しずつ「できること」をやり続けていきたいと思う。 -
Posted by ブクログ
生物多様性を守ることが,人間の生活にも優しくなる方法ってないのだろうか。
害虫を殺さないと作物がとれない。そのために農薬を使う。すると殺したくない生き物まで死んでしまい,生物多様性はなくなる…さらには,農薬に強い虫が増えてくる。このような悪循環を断ち切る方法はあるのか…。
本書は,そのような一見矛盾するようなものを両立させている実践例を紹介してくれます。
本書に先立つものとして,同じ岩波ブックレットに『〈生物多様性〉入門』というのがあるそうなので,まずは「生物多様性について知りたい」という方は,そちらの方を先に読んだほうがいいでしょう。
わたしは,この本(ともう一冊)を「安曇野ちひろ美術館」の売店で購入しました。実は,ちひろの絵についての解説などに,著者である鷲谷いづみさんが,よく書いていたんです。それで,どんな人なのかなあと思っていたら,ショップに著書があったというわけです。
単行本には『震災後の自然とどうつきあうか』というのもあるらしいです。
能登半島地震を体験した今,この地域をどのように建て直していくのか。〈生物多様性〉という視点,SDGsという視点をしっかりと位置づけた復興のあり方のヒントを得るために,こちらの本も読んでみます。 -
Posted by ブクログ
この本をよみ、なぜ生物多様性が重要なのか、少しわかった。
単に動植物がたくさんいた方がいい、という軽いものではなく、生物それぞれの生き方が与え合う影響のなか、バランスがとれた環境が生まれる。
単一型の人間に完全に管理された環境では、いずれ破綻をきたしてしまう。
しかし、多様性がうまく機能して、循環型の環境を整えるためには、自然との共生、潤沢な自然環境が必要だということもわかった。
今の都市の在り方では、到底これらのことは実現できない。
現代社会は、与えられるものを与えられるもの以上に消費し続けた結果、地球の環境資源を大幅に超えるほどのエネルギーを消費している。
そして、世界の先進国のほとんどが、本書でいう「征服型」の戦略によって国の形を維持している。
この本が出版されたのは20年前。そこから何かが変わったように思えない。
今の生活を大きく変えることも難しいように思うが、そうなれば私たちの後に続く世代で、人類の享受できるものは何もないどころか、凄惨な状況になることは目に見えている。
解決のための糸口としての、共生型戦略。
今後この在り方が採用されても、元の環境に戻すことは難しいかもしれない。
環境が、多様性がと、言葉だけが一人歩きしていくことは避けたいものだ。 -
Posted by ブクログ
ヒトは、生態系サービスに依存して暮らしている。SDGsを学ぶ上でよく耳にするこのフレーズの、基本をまずは押さえたいと思い手にした本。
.
生態系サービスとは、多様な生き物が連携したはたらきにより生み出されて、人間社会に提供される便益のことだ。
私ももちろん例外なく、受益者のひとり。
.
しかしながら、ストックホルム大学のヨハン・ロックストーム教授によれば、「現代におけるとりわけ大きな変化は、種の絶滅リスクで測れる生物多様性の喪失」であり、「多様性を喪失する速度は、地球環境の安全限界を大きく超えている」という。
.
それも人間活動の影響によって生じている危機だ。特に、私たちの暮らしに深く関わる一次産業がもたらし環境負荷が、その主要な要因となっている。.
.
本著では、この生物多様性の危機を解決するために、まずは現状とさまざまな要因の解説を行い、その上で、日本と世界各地で実践されている問題解決の試みを紹介している。
.
.
私の中で、特にショックだったのが、本著内で紹介されていた、農産物等の輸出入で脅かされる絶滅危惧種についての分析結果だ。
その分析によると、輸出による絶滅危惧種の数が多いのは、インドネシアが第一位。
そして、インドネシアからの輸入によって、インドネシアの絶滅リスクを高めているのは、第一位が米国:約1000種、第二位が日本:約700種だった。
私の消費の選択が、世界の国々の絶滅リスクに繋がっていること。ぼんやりと課題意識を感じていたけれど、定量的な研究が示されていたことにより、無知により絶滅リスクに加担していた自分自身に対して、大いにガッカリしたのだった。
.
ネクストアクションとして、本著で紹介されていた論文をまずは読んでみようと思う。その上で、私の持続可能な暮らしを再考していきたい。 -
Posted by ブクログ
この本は、日本学術会議が、中学生にも理解できる水準と優しい表現で、最先端の学術情報を提供しようという意図で出版している岩波ジュニア新書の中の、<知の航海>というシリーズの1冊。ジュニア向けとはいえ、使われている用語は専門的で、私にとってはどちらかと言えば学術的な内容と言える。
衰退の危機にさらされている「さとやま」を様々な角度から眺めることにより、人類の起源からその進化の過程において、生活や文化と密接に結びついた必需品の供給地として、大変重要な役割を果たしてきたことがわかる。とはいえ、「かつては普通にみられたのに、今は絶滅危惧種となっている生物が多く生息・生育する場所」というシニカルな表現は、さとやまが今日いかに危うい状況にあるかを、残念ながら見事に言い得ているといえよう。そうした状況下ではあるが、最終章において、持続可能な保全や再生へ向けての国内外の取り組みも紹介されている。どちらかといえば地道なこうした活動が、各地に広がっていくと同時に、今後も確実に続いていくことを願わずにはいられない。 -
Posted by ブクログ
ジュニア新書なので、さらっと流すつもりで読み始めたが、とても充実した内容だった。水田が両生類やトンボ類に理想的な生息環境を与えていることや、洪水時の遊水池として機能することなど、日本人にとっての原風景ともいえる里山が自然環境との共生システムとして機能していたことがよく見えてくる。また、冬季も水田に水を張る「ふゆみずたんぼ」の取り組みによって水鳥が利用できるようになり、除草効果や施肥効果も得られるようになったという事例も興味深い。
日本学術会議との共同企画である「知の航海シリーズ」としてジュニア新書となったらしいが、読後感は岩波新書としてより多くの人に読んで欲しかったと思う気持ちが強かった。
・動物に食べられるのを防ぐ作用を持つアルカロイドやプリミンを含む植物がある。シカが増え過ぎている奥日光では、シカが食べないイケマが繁茂し、幼虫が食べるアサギマダラが乱舞する森や、サクラソウ属のクリンソウが増えている森も見られる。
・地下水が停滞する樹木が育ちにくい場所では、ヨシ原やスゲ原などの草原、スゲ類やミズゴケが主体の湿原が発達する。それよりも乾いた場所にはオギ原、さらに乾いた場所にはススキやササが発達する。
・水田のまわりの灌漑用のため池や水路、樹林や草原といった水と樹林の組み合わせは、両生類やトンボ類の理想的な生息地。日本列島には、61種類の両生類、200種近いトンボ類が生息している。近代になって、水田の中干しの時期が早まったことや、収穫後の乾田化によって全滅することが起きている。
・スウェーデンのロックストロームの研究チームが2009年にネイチャー誌に発表した結果によると、人為的な気候変動、生物多様性の損失、窒素循環の改変の3つはすでに「安全圏」から逸脱しており、逸脱の程度は生物多様性の損失が最も大きい。
・宮城県大崎市の蕪栗沼を治水のために掘削する計画が持ち上がったことをきっかけに、近隣の白鳥地区で耕作放棄されていた水田を遊水池とするために湿地に戻した。また、冬季の耕作水田に水を張る「ふゆみずたんぼ」によって水鳥が利用できるようになり、除草効果や施肥効果もあることがわかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
二十世紀後半、人類は多量の資源を消費し、廃棄物を自然界にまき散らすライフスタイルをエスカレートさせた。
そのため自然の多様性は失われ、固有種の絶滅、異常気象の発生など、多大な影響が地球規模で発生している。
環境を改変する力を持つ唯一の生物であるヒトは、今こそ、持続可能な生態系を再生させるために叡智を結集しなければならない。
里山再生や淡水生態系の復活など、自然再生の思想と方法をやさしく解説する。
[ 目次 ]
序章 熱波に襲われたロンドンで
第1章 生物多様性の危機
第2章 生物多様性を育んだ共生と人類
第3章 征服型戦略の末路と積極的共生型戦略
第4章 健全な農業、健全な食卓をめざして
第5章 豊葦原の瑞穂の国の昔と今
第6章 英国の田園の自然再生
第7章 積極的共生型戦略の時代へ
終章 求められる悟りの科学
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
著者の視点から日本の”里山”とはどういったものなのかを纏めてくれている一冊。大人の私が「難しいけどなるほど~」といった感覚で読んでいたものの出版社の解説をみると本書はどうやら中学生向けらしかった...。
印象に残ったのは「野」、「牧」という土地の概念、あまり知らず考えたこともなかったのですが現代でいえば公園や市街地といったものと同類レベルの位置付けで存在していたと思うと面白いなあ。
ともあれ里山の良し悪しは実際に身を置いて生活しないとわかりっこなく、一度きりの人生、まずは住んでみて、色々知って感じたい気持ちでありましょうか...。(里山はすこし憧れでそういった環境下に一度住んでみたかったり。) -
Posted by ブクログ
技術士専門科目のテーマになりそうな生物多様性。
なかなか「生物多様性」になじみがないので一般的な知識を
養うために読んでみた。
「自然再生事業」という新たな公共事業が行われるように
なったが、生物多様性国家戦略に基づいて、自然が失われて
しまった場所において、その際を目指して取り組まれている
のが「自然再生事業」であるという流れを理解することができた。
自然再生事業の組み立て方も分かりやすく解説されている。
自然再生事業では、霞ヶ浦での「アサザプロジェクト」のアサザ
のように何かしらシンボルとなる生物や植物が存在する。
危機に瀕している要因はひとつだけではなく複合的な要因が
絡み合っているので、複合的に作用する仮設を検証しながら
より有効な回復の手段・方法を模索していく。
即ち、
仮説を立てる→仮説を検証するための計画を立てる
→モニタリング→検証→新たな仮説を立てる
という、PDCAサイクルをまわしていくことが
自然再生事業の最も大切な視点であることが理解できた。
実際業務で「自然再生事業」に携っていないが、
一般的な知識を理解するにはとても分かりやすい一冊だった。