高坂正堯のレビュー一覧
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高坂正堯先生が1994年10月〜12月にかけて放送された、NHK講座テクストをもとに1995年11月に公刊された作品です。個人的にはテレビなどを通じてリアルタイムで知っていた出来事をもとにした考察が多く、取り上げられている内容や考察をより身近に感じることができました。そしてその内容は30年近くが経過した現在でも通じることが多く、参考になるとともに考えさせられる内容だったと思います。また、最後の12章のタイトルが「固定観念を避けて」で、この中で語られている、「固定観念を持つことのデメリット」に考えが及ぶとき、自らのあり方もよく考えて、固定観念にとらわれないようにしないといけないと思い直すのでした
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講演内容を書籍化したからか、複雑に絡む内容が理解しやすかった.「戦争の世紀」で軍事教練が”戦場で逃げない人間を作り出す訓練‘’ だと説明されていたが、大事な指摘だと感じた.「共産主義とは何だったのか」が最高に楽しめた.団塊世代の小生らは、共産主義に何かしら興味を持って過ごしてきた過去がある.80年代以降、下火になってきた理由が詳細に述べられており、納得できる明快な解説だと感じた.「繁栄の25年」で農民が狡猾さと善良さを合わせて持っているという記述、朝鮮半島からの引揚者であった母が、家を借りる時に農民にかけられた言葉をしきりに言っていたことを思い出した.「引揚者のくせに!」.1947~1972年
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1990年の講演内容ですが、これからの我々の社会を考える上で重要なヒントが多く述べられていると思います。
いくつか今の気分で疑問に思う点がありましたのでメモしておきました。
1. 政治とお金と人格は分ける事を認めないと自由は成立しない。とありますが、やっぱりお金に汚いだけの無能な政治家は嫌だなと思います。今の社会ではより倫理観を求められるので、優秀なら何しても良いのか?とも思えないですし、理想を追い求めた共産主義の失敗を考えれば難しい点ですね。
2. 大学まで進む人口が三分の一も必要あるか疑問。とありますが、本書で共産主義が否定された当時でも資本主義が本当に良いのか悪いのか考えなければな -
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人は利己的で、国家はその集まり。その国家が複数あつまって構成される世界において平和を実現しよう、或いは平和を妨害する要因を排除しようと考えること自体が無謀であり、非現実的。それでは人は、または国は、世界は、どうすれば争いを"小さく"していけるか。本書の主眼はここに尽きると思う。
どっかの野党みたく真の世界平和が実現される日を夢みるような理想主義者には全く以て無益な本だが、少しでも冷静に現実的に物事を考察できる人には共感できるところが多いはず。国際政治を学ぶ人にとっての入門書と言われている(らしい)のも頷ける。
過去の戦争を多数例に引いて、裏でどういう動きがあったのかを詳しく -
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高坂正堯は新潮選書に4冊の著書を残しているが、そのうち最も有名なのは『 文明が衰亡するとき 』だろう。没後20年を機に復刊された本書は高坂34歳の作品で、最も早い時期に書かれたものだが、師猪木正道をして「文字通り一気に読み通した。そしてこの書物の面白さと、密度の高さに驚くとともに、私は今さらながら高坂正堯氏の国際政治学者としての実力に舌を巻いた」と言わしめたように、既に大家の風格を備えている。
隔離された環境下で生きてきたタスマニアの原住民が滅亡した原因は、ヨーロッパ人が持ち込んだ病原菌であるという事実から、 高坂は生体の免疫システムの微妙なバランスに着目する。「人間にとって有害なバクテリア -
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本書は1981年に書かれた本だが、2023年の今読んでも真新しさを感じる。正に古典。
大きな版図を誇ったローマ文明、日本に似た海洋通商国家ヴェネツィア、現在文化を代表するアメリカを題材に文明が隆盛する事情、衰亡に至る過程と要因を丁寧に、粘り強く書かれている。
特にヴェネツィアは日本に環境が似た資源がない貿易立国であることから、その盛衰の過程は興味深く感じた。
印象残った点は、資源や人口などの確固たる基盤がない国が隆盛するのは、その時々の環境に適応したときであること、しかし環境は必ず変化すること。
ヴェネツィアの場合は、東方諸国の加工品を西洋諸国に転売(反対に西洋からは原料を仕入れて転 -
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1966年に書かれた国際政治についての入門的書籍
平易なことばで冷戦下における軍備のありようと
平和の実現へのとるべき方策が解説されている
2度の大戦を経て勢力均衡から自由貿易という形に
理想の平和は移行したが
自由貿易という概念が隅々まで行き渡ることで
自動的に平和が達成されるわけではないことは
本書が書かれ半世紀を経て
いよいよ庶民にも明らかになっている
どこの誰もが同等の情報を得られるようになっても
経済と民族の制約から諸国民が自由であることは
かぎりなく難しい
現在の全ての軍事的な戦いの原因は
あるいは企業単位の枠組みを超えた争いのすべては
無能な責任者や宗教や経済的利益のせいなのだろ -
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際限なく軍事技術レベルが上がり、保有火力も増していく。更に、相手が嫌がることを国家レベルで追求していくのだから戦争行為は極めてえげつないものだ。だが、それが時々美しく見えるのは、自集団の防衛に生命を捧げるヒロイズムへの本能的な憧憬か、はたまた心理的バグか、あるいは教育による刷り込みの賜物か。
そんな下劣な戦争行為を通してでも成立させたい、国家規模の暴走が歴史を作る。それこそが記述されるカイロスになり得るのだ。
本書でその振り返りを学びながら読む中で、示唆を得たのは以下。
ー 兵隊がどう戦えば軍隊は強くなるのかを考えた場合、「お国のために戦う」、「天皇さんのために戦う」といった馬鹿な理由は -
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★ 経済関係は、時に依存関係、支配関係が生じることはいうまでもない
★ 世界大戦後、国際政治における世論の力が増大した。そうして、徐々に支配関係が難しくなった。
アメリカは、キューバ革命が起きたことをきっかけに、中南米諸国に同様の革命が起こることを恐れ、「進歩のための同盟」などと銘打って、互いの利益を図るようになった。
★ 多くの国は旧植民地の引いた線で、部族の寄せ集め、伝統的に敵対していた部族との共存を求められたりすることも多い。そして多くの部族は統一された言語すら持っていない。
★ 第二次世界大戦後、今日までに起こった全ての武力衝突はすべて休戦という形で収拾された
しかし、それらはす