【感想・ネタバレ】世界史の中から考えるのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年12月30日

高坂正堯は新潮選書に4冊の著書を残しているが、そのうち最も有名なのは『 文明が衰亡するとき 』だろう。没後20年を機に復刊された本書は高坂34歳の作品で、最も早い時期に書かれたものだが、師猪木正道をして「文字通り一気に読み通した。そしてこの書物の面白さと、密度の高さに驚くとともに、私は今さらながら高...続きを読む坂正堯氏の国際政治学者としての実力に舌を巻いた」と言わしめたように、既に大家の風格を備えている。

隔離された環境下で生きてきたタスマニアの原住民が滅亡した原因は、ヨーロッパ人が持ち込んだ病原菌であるという事実から、 高坂は生体の免疫システムの微妙なバランスに着目する。「人間にとって有害なバクテリアも、より有害なバクテリアを抑制するという機能を果たしている。 だから、それらが絶滅すればさらに有力なバクテリアが人間を苦しめる・・・」これは「悪」を他の「悪」との相対的な関係性において捉えるものであり、様々な「悪」を含んだ多様性こそが「悪」への免疫力を高めるという理解へと通じる。こうした発想は高坂の文明論と国際政治論の根底にも流れている。

高坂の国際政治学は伝統的なリアリストの系譜に連なるもので、勢力均衡を重視するが、それは単なるパワー・ポリティクスではない。単一の勢力による一元的支配の忌避、つまりは多様性の尊重なのである。高坂の父正顕は高名なカント研究者だが、高坂は世界平和を唱えたカントが決して世界国家を志向しなかったのも、国家間の競争、即ち多様性が文明の原動力であると考えていたからだと言う。外部の世界に対して自国の論理の一元的な貫徹を主張しがちなアメリカの強さが、実は内部の多様性であることも見逃さない。

だがこうした多様性への愛は「個性の尊重」や「民族自決」といった抽象的な原理や価値観、あるいはヒューマニスティックな理想主義からくるのでは必ずしもない。多様性が「悪」への免疫力を育み、何より変化や危機への文明の対応力と耐性を高めることに高坂は注目する。その意味で高坂はやはり徹底したリアリストである。一見すると統一感を欠く雑多なオムニバス形式の書物だが、高坂の文明観、国際政治観を貫く思考スタイルが凝縮された名著である。

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Posted by ブクログ 2018年06月24日

久しぶりにまともな歴史分析の本を読んだ。世界や日本の歴史が、結局は今までの人類のどこかで起こったことのアナロジーでしかないということがよくわかった。ただし、どのイベントのアナロジーであるかということは、結局はある程度の時間が経った後でないとわからないので、すぐに歴史が役立つかとなると少々疑問な気がす...続きを読むる。いずれにしても著者の歴史に対する知識の深さに感銘した。

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Posted by ブクログ 2009年12月03日

この本に出会ったことで現在の自分がある。
進路選択で迷っていた時に自分の学びたいものはここにあると思った1冊。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

著者の「温故知新」的歴史論。これが面白い。やはり歴史の醍醐味は「温故知新」。バブルについての記述は今もって参考になる。

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Posted by ブクログ 2021年02月27日

多分初めて読んだと思う、この著者の本を。
その昔、テレビでよく出ていた論客の印象がありますが、果たしてその記憶が正しいのか?定かではありませぬ。
でも愛国心に係る自意識の重要性、どの時代、どの場所でも通じる指摘かと。肝に銘じまする。

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購入済み

項目毎に胆摘に解説されています

2020年03月01日

元々、朝日新聞の「リーダーたちの本棚」で推薦されていた「文明が衰亡するとき」を買おうと思って、その類書を買ってしまった次第です。が、これも、著者の選んだテーマごとに、内容が盛りだくさん、そして各々、コンパクトにまとまっていて、すごく読みやすいです。

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Posted by ブクログ 2018年05月23日

P54.
陸奥宗光は日清戦争の外交を総括した「蹇蹇録」において「勝者が敗者よりもかえって危険の位置に陥いる危険があるものだ」と書いた。
陸奥宗光は遼東半島を割譲させることに、始めから反対であったようだが、開国以来最初の戦勝に酔った日本人が過大な要求をしており、内政上の考慮で、そうなった。
→日本はそ...続きを読むの進みうる地に進み、その止まらざるをえない所で止まった

歴史上のバブル
1636年 オランダチューリップバブル
1720年 イギリス南海会社泡沫騒動
→ウォルポール蔵相
1873年 ドイツバブル
→背景に1870年普仏戦争勝利、1871年ドイツ統一

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年09月23日

元京都大学教授・高坂正堯氏によるエッセイ的世界観。著者曰く「私なりの旅行記」です。
約50年前の著作であり、その内容は現在の世界の状況とは多分に異なる部分はありますが、それでもなお、考察の鋭さになるほどと思わされる箇所も多々ありました。


「旅行記」と言うとおり、著者が実際に世界各地で実際に見聞き...続きを読むした、手触りのある物事から、独自の考察を展開していくことを私は期待していました。
しかし、惜しむらくは、その期待に沿う形式であるのは第1章「タスマニアにて」のみでした。
それ以降の章は、筆者の知識や過去の事実を元に論が展開されることが多かったように思います。

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