諸富徹のレビュー一覧

  • 税という社会の仕組み

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    近く執筆する原稿で、日本は納税意識が低いということを書く予定であり、傍証となる材料を探していた。
    この本の「上からの税制の副作用」の記述は、私の目的にピッタリ合致した。

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    2025年09月14日
  • 私たちはなぜ税金を納めるのか―租税の経済思想史―

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    近代国家の成り立ちを租税システムから鮮やかに照らして見せる本。とにかく面白かった。今では当たり前の所得税が、どれだけ導入までにハードルが高かったか。それを可能にするのはやはり戦争であり、一度導入されると所得税は極めて強力なシステムとして機能した。

    具体例として挙げられるイギリスの市民革命やアメリカの南北戦争に、租税システムがこれほど深く関わっているとは想像したこともなく、とても興味深く読んだ。

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    2024年11月13日
  • グローバル・タックス 国境を超える課税権力

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    簡単ななまとめ

    情報技術の進歩とタックスヘイブンの登場によって、企業の利益や高所得者の所得への課税が困難になり、その穴埋めとして消費税等、移動制の低い税金に財源が傾斜しているのが昨今の情勢である。

    グローバル企業は商標権など、妥当な金額で評価することの困難な無形資産を、租税回避地に所在する現地法人に低額で譲渡する。別の現地法人にはその無形資産の使用料を高額に設定してそれを費用に計上して、租税回避地ではない現地法人の税引前利益を少なくする手法をとる。

    租税回避の解決策として 3 つの案が提案された。わかりやすく解説されていたのだが忘れてしまった。

    また EU といった超国家的な統治機構が

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    2023年10月03日
  • 資本主義の新しい形

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    昨今の(ときに安易な)脱成長、アンチ資本主義に一石を投じる。

    日本企業は、モノ生産中心の産業構造からの転換(著者の言葉で言う資本主義の非物質主義的転回)に乗り遅れ、余剰資金を投資どころか配当に回し、蓄積を失った。
    労働力への教育的投資も怠り、今や環境負荷を下げることもできずにいる。

    重要なポイントと思うのは、類書(例えば「人新世の資本論」)などと異なり、この本の著者は、環境破壊や格差拡大は経済成長至上主義が原因という立場をとっていないこと。むしろ、正しい成長路線を採ることでこうした問題の解決に向けて踏み出せるとの立場。

    その具体的な施策のキーワードが、「社会的投資」。もっと言えば人的投資

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    2022年02月20日
  • グローバル・タックス 国境を超える課税権力

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    グローバル化とデジタル化により今起こっていることふまえ、租税民主主義実現に向けたグローバルタックスへの道筋を示す、示唆に富む本。後書きも泣ける。筆者の志の高さに敬意を表したい。

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    2021年01月22日
  • 私たちはなぜ税金を納めるのか―租税の経済思想史―

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    あとがきで、「日本の明治期の税制では、直接国税を一定額以上納めた者に対して選挙権が与えられた歴史があり、納税が「義務」どころか一種の「特権」「恩恵」と理解されるという歪みが生じた」という事が書いてあり、これはなんか現代に繋がっているなと思った。

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    2020年11月28日
  • 人口減少時代の都市 成熟型のまちづくりへ

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    ネタバレ

    以前、探究活動で「地域活性化」をテーマにいた生徒がいたので、こちらも少し調べておこうと思って購入した本です。ずいぶんと積ん読していました。
    人口減少時代の都市は従前のように経済発展を前提としていてはもはや持続させることができません。税収減によるインフラの維持の困難や空き家問題など、さまざまな問題が生じます。しかし筆者はこの危機をチャンスととらえ、都市自身がエネルギー事業や鉄道事業など公益性の高い事業を自ら手がけることで財源を確保し、その収益を住民の福祉に役立てることや、緑地公園の整備など自然資本への投資を通して都市の魅力・価値を高めること、住民自治の涵養によりボトムアップ型の都市経営を目指すこ

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    2020年05月26日
  • 人口減少時代の都市 成熟型のまちづくりへ

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    前の税の本や、ヒューマニティー経済学もそうだったけど、この本も大変平易でわかりやすい。海外事例の紹介もよかった。人口減少下の都市が縮小均衡にならざるを得ないのは仕方ないが、エネルギー自給や中心市街の価値向上を中心に据えた循環は、やや無理があるかもと思ってしまいました。

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    2018年04月26日
  • 私たちはなぜ税金を納めるのか―租税の経済思想史―

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    いやー、なかなか面白かった!
    市民革命などの歴史を、税制度に着目して考えたことないし、納税を権利だと考えたこともなかったし。(とはいえ、私の場合は別に納税に対してネガティブでもなかったけど)

    あと、哲学的な話かと思いきや、意外にもグローバル税の話にも十分な紙幅を取って言及されていた感じだし、アトキンソンが言ってたような、最近の格差拡大と税金種別の割合の話などにも触れられていた。多国籍企業の税金対策などについても。金融取引税の話も興味深かったな。

    あ、あと、世界の話だけでなく、ちょいちょい日本の現状にも触れられているのが良かった。

    これだけいろいろ触れられていて、専門性もありながらも、一般

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    2017年02月03日
  • 私たちはなぜ税金を納めるのか―租税の経済思想史―

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    [「られる」一辺倒の卒業]給与明細を見るたびに、なんとなく「取られている」と感じてしまう税金。そんな税金がどのような思想を背景として成立し、国民国家内に取り入れられてきたかを解説するとともに、「上からの税金」とは一線を画した考え方について提唱する一冊。著者は、京都大学で教鞭をとられ、財政学を専門とされている諸富徹。


    税金というと複雑かつ難解という印象を受けますが、その成立を根本から整理してくれているので非常にわかりやすく、税を(良い意味で)身近なものとして感じられるようになるのではないでしょうか。特に、財政調達と政策達成という二つの手段が税に内包されていることを指摘しながら、ドイツやアメリ

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    2016年11月02日
  • 私たちはなぜ税金を納めるのか―租税の経済思想史―

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    とても勉強になります。二度目の読みなおし中です。
    タイトルから感じられた哲学的なところまでは掘り下げられていませんでしたが、税に関するわかりやすい思想史であり、現代の課題も丁寧に書かれていて、仕事にも直接的に役立ちます。素晴らしい一冊だと感じています。

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    2013年11月04日
  • 税と社会保障

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    本書は、「おわりに」で著者が書いているように、こども・子育て支援金を題材に、福祉国家として財源をどのように賄うべきかを問題提起している。
    社会保険料と消費税が財源として挙がりがちであるが、前者は現役世代に負担がかかることと、後者は逆進的であるという課題を抱えているため、より持続可能な仕組みとして、金融資産、金融所得あるいはキャピタルゲインへの課税を提言している。マイナンバーをフルにする必要があるなど課題も同時に書かれており、説得力がある提言に感じられた。今後、税と社会保障への知識を増やし、改めて本書の提言を思い返してみたい。

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    2025年10月05日
  • グローバル・タックス 国境を超える課税権力

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    ネタバレ

    本作ですが、かなり面白かったです。

    税金の本ではあります。いわゆるGAFAなどのデジタル多国籍企業への課税をどのようにして可能にするか、というのが端的なお題目。

    これを論ずるにあたって、本来の課税というのは国ごとに行われ、そしてPEという恒久的な施設があることを前提として収益に対して課税していたと。

    ところが多国籍企業は重税を逃れるように本社を低税率国に移し、当初の国と移動先との国とで指導料とか、ブランド代とかintangibleな形のない財をやり取りして当該国での収益を低くし課税逃れに走るようになった。移動先の国では低税率で大儲け、当初の国では低収益で課税額も少ないと。また当初の国で経

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    2025年07月14日
  • 税という社会の仕組み

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    税金とは何か?取られるのか?支払うのか?読んでしっくりきた。国によって税金の考え方も歴史も違う。時代と共に変化してきた税金。読めば選挙にも興味が出るかも。

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    2025年04月20日
  • 税という社会の仕組み

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    税の歴史と現在の税のあり方を概観するのにとてもよい本だと思います。

    アメリカやイギリス、フランスでは、市民が権利を獲得していった経緯があるがゆえに、税金を権利(政府の方針を選んだり、予算の使い方に同意したりするための権利)と捉えている点は、初めて知りました。

    それに対し、政府側が作った制度に則って政治が進められてきたドイツ、そして、そのドイツの制度を中心に取り入れた日本では、納税は義務と捉えられているわけですが、自分には、納税は義務(日本国憲法にもそうあるので)、という考えの方がしっくりきます。
    が、民主主義のあり方を考えると、「権利」と捉える方が健全な気がします。

    資産に課税するのか(

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    2024年12月28日
  • 税と社会保障

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    2024.10.26
    正論なのだろうとは思うが、気持ちとしては受け入れられない。なぜなら、社会保障の枠組みそのものの見直しをせずに、財源を確保しようという感じに受け取っているから。

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    2024年10月26日
  • 資本主義の新しい形

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    論旨は明快で納得感があるし、すでに多くが日本の政策に取り入れられつつある。一方で非物質主義は物質を消費しない経済なのかというとそうではないのだろうなと思った。

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    2024年10月03日
  • 税と社会保障

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    少子化問題を紐解く書籍の中で、どのように政府が支援を行うべきかという議論はいくらか触れたが、はたしてその財政を如何に贖うべきかという部分については具体的に考察に及んだことはなかった。

    人口動態の変化に伴い、社会保障の支出先と収入源とのバランスが
    変異するなかでの舵取りは困難を極めるが、現在の資本主義社会の歩みの中で、一つの文明の趨勢が過渡期を迎える中では避けられない課題と言えよう。
    成長との兼ね合いという意味では、税制の仕組みを考案する立場からはそれへの重荷になることを避けるという形の論及は少なかったようにも思う。

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    2024年09月02日
  • 税という社会の仕組み

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    「納税は義務ではなく権利である」が肝になっているけど、市民革命のなかった日本では、どこまでいっても収奪されるだけのものとしか思えない。「公共サービスの対価」ってのは分かるけど、異議申し立ての機会が少なすぎるし、実効力にいたっては皆無だもんなぁ。
    普通サービスに満足できなければ金は払わない。改善要求を突きつけ、改善がなされたなら払うけどね。とにかく払えだもんね。やっぱり収奪なんだよ。

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    2024年09月01日
  • 税という社会の仕組み

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    政治学における税制分野に関して踏み込むまでには食指が動かないが、入門書としての歴史的な前提と今後の向き合い方といった実感的な学習案内としては確かな出来で、機会をみて読み返したい。

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    2024年07月28日