諸富徹のレビュー一覧
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イギリス、ドイツ、アメリカの近代以降の租税論通史の本。ホッブス、ロックにはじまり ニューディール政策、現代の国際租税回避まで、わかりやすく説明されている。それぞれに ドラマがある
個人の所得に応じた累進課税による所得税、消費(支払能力)を反映した内国消費税、富の再配分としての相続税、独占企業政策や個人所得税の補完としての法人税 、戦時の異常税率などの導入経緯、根拠、歴史的変遷を記述
次の論述と税金との関係性を整理することから 始まる
*ホッブスやロックの国家論
*アダムスミスの国富論
*ヘーゲルの市民社会の原理
ドイツ租税論(シュタイン、ワグナー)
*個人と国家は運命共同体
*納税=個人の義務
*日本は ドイツ租税論を導入
ニューディール租税政策
税金は 単なる財源調達手段としてでなく、所得や富の再配分、独占企業のコントロールなど 政策手段としても 用いている -
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人文社会科学としての経済学が、「社会に対して果たせる役割」・「経済学の変遷とその背景にある各経済学者の課題認識」・「現在の諸課題に対する経済学の意味合い」という3つの柱から、大学に入って経済学を初めて学ぼうとする初学者をメインターゲットとして、アカデミックな語り口ながら極めて明快にまとめられている。
経済学の入門書という位置づけであるが、本書で一貫している著者の課題認識は、数学や統計学などの定量的技法を唯一社会科学の学問の中で有している経済学が、貧困や公平性、正義の問題などに目を背けた「冷たい科学」になっているのではないか、というものである。この課題認識は、アダム・スミスやマルクス、ケインズに至る各経済学者の理論の解説においても貫かれており、彼らがその時々の社会が面していた前述の問題に対して、どのように経済学という学問を通じて改善の道を理論化しようとしたかという苦労がしっかり描かれている。その点で、リーマンショックのような市場主義経済の行き過ぎから発生した問題や、止まらぬ資本主義のグローバル化の中で、ますます「分配」の問題(これは各国家の内部で発生するものと、国家間の関係性の中で発生する2種類が存在するだろう)が重要になりつつある現在、これらの点を意識した経済学の発展が必要になると結論付けられている。
個々の経済学者の解説のうち、特に20世紀に最も多くの国の経済政策に大きな影響を与えたケインズに関しては、定量的なモデルも含めて、他の経済学者よりも多めのページが割り振られているため、わかりやすい。単に「市場を中心とした自由経済から、国家による部分的な管理をベースとした資本主義のモデル」を作り上げたというケインズの功績にとどまらず、その背景として、ケインズが従来の古典派経済学が実物経済と貨幣による金融経済を同一視していたことを批判し、その両者が利子率というファクターを媒介として相互依存性を持っているという理論は、「金利(利子率)と債券価格は逆向きに動く」という経営学におけるファイナンスの常識に対する理論的根拠だということが、ようやくわかった。
また、同じくケインズが、金融経済よりも実物経済の安定性に重きを置き、物価の安定と雇用の確保をその理論の成果として考えていた点に触れ、利害相反関係が発生しやすい投資家と企業家・労働者間では、後者にメリットをもたらすインフレーションの方がまだ優れているという観点から、通貨政策においても、自由な金本位制ではなく、固定相場をベースとした国家による管理通貨制度を採用すべきであると主張し、それが戦後のブレトン・ウッズ体制に繋がっていったという流れがまとめられている。この流れは、通貨政策に疎い自分にとって、体系的なつながりを意識させてくれた点で、非常に意義深かったし、「市場ではなく国家による管理」が通貨政策においても行われていたというケインズの理論の一貫性を強く感じた。
アカデミックな本ではあるが、経済学の概略を掴むには非常に最適だと思う。 -
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少し堅く言えば、租税を通して見た国家論です。扱っている範囲が近代の欧米、それも英米仏と独が中心なので、そういう意味での限界はあるでしょうが、現在の日本国民が考えなければいけない項目はキチンと提示されていると思います。バランス良く叙述しながら、これからの最大の課題である、国境を超えた金融取引と課税回避行為について、読者が前向きに考える材料を提供しています。
国家の役割と限界、グローバル化してゆく資本主義経済の制御、そのためのトービン税(金融取引税)など新たな税制の可能性、と書くとなんだかとっつきにくそうな印象を受けるでしょうが、大学教養課程程度、かつ、表現も平易で読みやすい本です。 -
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岩波のヒューマニティーズ・シリーズの経済学は、京都大学大学院経済学研究科准教授(環境経済学)の諸富徹(1968-)が担当。
【構成】
はじめに
1 社会認識の学としての経済学-経済学は社会の役に立つのか
2 経済学はどのようにして生まれたのか-そして、それはどのように発展を遂げたのか
3 経済学の未来はどうなるのか-または、経済学はこれから何を考えていくべきか
4 経済学を学ぶ意味とは何か-読者への期待を込めて
5 経済学を学ぶために何を読むべきか
おわりに
本書は、最新のマクロ経済学やミクロ経済学の概説ではなく、経済学史である。ケネー、スミス、リカード、マルクス、ピグー、ケインズ、シュンペーターの7名の学者を取り上げ、経済学が問うべき根源的な課題について論じようとしている。
資本主義という概念の創出から、マルクスに象徴される恐慌の出現による資本主義への疑義、そしてケインズをはじめとする「自然の体系」から「人為の体系」への志向を経て、実体経済のための金融経済を目指したシュンペーターまで話がつながっていく。
本書は評者のように経済学を大学で学んだことのない人間でも十分理解できる内容である。しかし、おそらく本書の内容を理解できたとしても、現在のメインストリームであるミクロ経済学・マクロ経済学の複雑な数式モデルや理論はとても理解できないだろう。それは本書の狙いではないからである。
近年の経済学は数学的な合理性・妥当性を追求してきた。そしてそのような経済学を学んできたあるいは学ぼうとしている人に対して、経済学は「人間の営み」という極めて複雑で一貫性を欠いた人文的な事象を本来対象にしてきた学問であるということを再認識してもらうこと、これが本書のねらいであろう。 -
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税という社会の仕組み
2027年5月10日 初版第一刷発行
著者:諸富徹
ちくまプリマー新書
税金が政治論争の焦点になる中で、あまり自分自身が税そのものについて知識ないことに気づいた。一度基本的な所を勉強してみたかったので通読。欧米と日本の税金の歴史にさらっと触れたあと、個々の議論。
印象に残るのは、日本の税金システムは明治政府が税金システムを欧州から学び輸入したもので、国民が勝ち取ったものではないということ。自分を含めて納税意識が低いのは、歴史的なもののだと妙に納得してしまった。サラリーマン給料の源泉徴収システムはそれを助長している。
移転価格税制は仕事で時折聞くものの、あまり詳しくなく、この本で基礎から学べた。
税制はその時代を反映して変化し続けるもの。また、一国内で完結する時代は終わり初めていて、グローバル企業への課税議論から国際協調がトレンドを生む時代になっている。
自分が投票した政治家・政党が行った政策には、自分が払った税金が使われる。それをよくよく監視する事は、納税者として当然だし、必要な態度となる。
ちくまプリマー新書は入門書、初学者用の新書を中心に発行しているレーベルの様子。
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ネタバレ税金は、納税者が改善を求める権利を獲得するプロセス。納税は本来、権利である。
市民革命以降、発言のための権利のために税金を払うもの。
日本では、上から課されるもの=政府を選ぶ、という実感が持てない。
株主主権を徹底すると、タックスヘイブンを利用しない企業は、努力していない、と見なされる。リーマンショックで批判されて、納税を企業の社会的責任とする動きが出てきた。
王権神授説から社会契約説=国家と市民は契約によって国政という仕事を任せ、その対価として税金を払う。
かつては王家の財産で国民の面倒を見ていた。今は無産国家。国家にはなにもない。
税は権利か義務か。公共的仕事をして貰う権利がある。その対価として払う権利がある。
ドイツでは納税は義務=国家が国民を保護するから。
日本では、憲法が天皇から与えられた欽定憲法として成立した。
租税義務説=日本、韓国、中国、ロシアなど。
アメリカ、フランス、スイスは義務ではなく、課税を政府の権利と表現している。
所得とは何か=所得とは収益だけでなく、資産の増加分も含む。
ピグーの厚生経済学では、累進課税が経済厚生を最大化することを証明した。
経済学では、効率的という基準はあっても、公平に対する基準はない。
自由落下の法則=ほっておくと格差は広がる。 -
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人口減少を迎える日本。それは都市の縮小を意味する。
この避けられない自体でどのように都市は適応すべきか?をといた本。
まず著者は人口減少の本格化を以下のように記述。
「日本社会はこれから少子高齢化する。
人口はますます減少する。2020年を境に加速する。2050年には1億人をきる。
大都市圏への人口は集中度があがる。東京都は総人口の10%。南関東全体でいくと30%になる。
あわせて高齢化も加速。2040年には全自治体の約半数が生産年齢人口(15−64)のほうが少数派になる
高齢化するのは人だけでなく深刻化する問題が社会資本の老齢化。
高度経済成長期に大規模な社会資本投資が実施されこれが耐用年数を超えてくる。2030年には半分の社会資本(道路、橋、河川、トンネル)が維持更新が必須になる。
現在、公共事業が6兆円。それとほぼ同額のコストが社会資本の維持に必要になる。つまり新規は不可能で維持でせいいっぱいになる。」
つまり、人口減少、高齢化、社会資本老齢化の3つが直撃し危機的になると予測。
それによって財政構造もおおきく影響を受ける。
まず過去20年の財政トレンドを以下のように紹介
「1995年と今を比べると、増えてるのが民生費(12-23%へ)。土木は15-7%へ減少。教育は21−17%へ。
過去20年の自治体財政で歳出を膨らませる最大の要因は高齢化に伴う社会関連経費。この傾向は継続するだろう。たほう、土木は一貫して削減されてきた。今後はこの状況を考えると社会資本の更新費用を確保するのはきわめて困難になる。」
で、さらに人口が減ることで都市の財政が
「
まず基幹税の一つである個人住民税(国税でいくと所得税)が減少する。さらに固定資産税や都市計画税も影響をうけるのに注意を。これらは土地や不動産の価格(評価額)に連動する。人口がどんとへると固定資産税と都市計画税は減少する。」
と。
一方で歳出に関しては扶助費が増加する。扶助費と高齢者や児童、低所得者、母子家庭などのほうで定められて支給される金銭的、現物によるサービスの給付を指す。
このような危機的な財政のなかでどうするか?
今後、人口減少、高齢化、社会資本の老朽化はさけられず、そうすると歳入は減り歳出は増えるがどう対処すべきか?
それは
「あれもこれも」から「あれかこれか」へ人口減少時代の都市経営はスタイルをかえる必要がある。
である。
投資とリターン(税収)の考え方をしないといけない。
都市財政をシステムループをかくといかになる。
都市財政ー(投資)ー>都市経済ー(税収)ー>都市財政
このシステム循環が重要で、何に投資して何の税収をあげるかを考えること
では都市は何に投資すべきか?物的要素への投資からひっ部室的要素への投資へ。
経済における利潤創出点は、工場や社会資本などの物的要素からソフト、デザイン、アイデアなどの非物質的要素へ。これらはすべて人からうまれる。
あたらしい投資対象はモノではなく人間。経済学用語でいう人的資本への投資。人間の創造性を伸ばすための教育や訓練に対して資金を手厚く配分するのが重要。
過去の歴史を振り返ってみても都市の財政、発展の歴史は参考になる。
資本主義の発展の歴史は都市の発展の歴史である。
もともとは自由放任な都市政策だったが諸問題が噴出。都市問題は自由放任では解決できないことがあきらかになりイギリスで都市社会主義が生まれる。都市のインフラ、交通を市有化、市営事業化し都市問題を解決する財源にしようと。
イギリスではフェビアン協会になり、日本では第7代大阪市長の関一が担う。
関一は、御堂筋を建設する。当時は6メートルの幅員が標準だった時代に一挙に44mに拡張。道路直下の地下空間には市営として初めての地下鉄を開業。並木をうえ、沿道の建築は100尺(30m)にそろえて景観も美しい街並みをつくった。国からの財源移譲ができなかったために、自らの財源確保に工夫をする。市営事業を育ててそこから生まれる料金収入で増収を確保。(しかし市営事業の稼ぎ頭であった電気供給業は戦争中の統制令のなかで国に没取されて大阪は電気供給という貴重な財源をうしなうことになった)
戦後では美濃部都政は課税自主権で国とたたかった。新財源構想研究会を理論的バックボーンとして実行に。この報告書は、税制が東京都の抱える都市問題と正面から取り組むように要求。それまでは税制は単に金をとるだけだったが、この研究会は社会問題の解決の役割を税でになおうとした。3つの都市問題で。
一つ目の都市問題は、集積の利益と集積の不利益。第二は都市への集積による外部不経済(たとえば環境問題)や混雑現象。問題の発生原因者に課税することで外部不経済を混雑を抑制すべしと。
これらの歴史的経緯を踏まえていまからわれわれはどうすべきか?
都市のコンパクト化。既存ストックの所有と利用の分離。自然資本への投資がポイントと。
来たるべき本格的な人口減少社会に対応可能な構造へ移行させること。この構造転換をしないと都市はやばい。
日本の現実の都市で進行する可能性が高いシナリオはスポンジ化。都市のおおきさそのものはさほどかわらずスカスカになる状態。
上手に縮退政策を行い縮退都市にしないといけない。
縮退政策の本質は、郊外の開発抑止と中心部への人口誘導で漢方薬のように時間をかけて徐々に都市を集約(コンパクト)していくこと。今後の日本の縮退都市政策は、1 この悪とかと矛盾する郊外開発促進政策 2、中心市街地における巨大再開発 3、採算性の見込めない安易な補助金スキーム の3つと手をきること。
うまくやってるのは富山市。ここでは、鉄道、ライトレール、バスなどの公共交通機関の充実が中核的要素。公共交通機関沿線への居住、引越しのインセンティブをつけてゆるやかに人口を移動させてコンパクト化。中心市街地に集中投資をして開発し地下をあげて税収をあげる。
人口減少が進むとは不動産と土地が過剰になる。資産価値の下落が常態化する時代。2033年には秋葉あ30%をこえる。そして大問題は所有者不明の土地が全国の私有地の2割に達していること。これは九州の面積をこえている。所有権を持っている人がわからないため適切な管理利用ができない状態がうまれる。ここに日本でも、米国中西部都市で利用していランドバンクの可能性がある。ランドバンクの最重要の仕事は空き家に関する情報をしっかり管理しDBを構築。所有者をつかむ。所有者不明や固定資産税滞納で差し押さえて空き家は所有権をランドバンクに移転。
これまで都市の自然資本ストックを維持するために開発規制をすることは経済成長にマイナスといわれてきた。結果として都市空間の経済的利用が優先。が、いまは違う。自然資本の維持と経済成長はトレードオフでhなあい。自然資本がおおいほど住宅価格は高くなることが証明されている。グリーンインフラストラクチャー。人口減少で開発圧力がよわまってるからこそ自然資本に投資をし都市間競争にかつ。
欧米でも急速な都市化のなかで、nyのセントラルパーク、ロンドンのリージェントパークをつくった。それによって固定資産税がふえた。ブルックリンではプロスペクトパークの隣接不動産は公園建設本格後に1.5倍になった。公園整備ー>良質な宅地開発ー>固定資産税アップのサイクル。
また水辺環境への近接が住宅価格決定の有力な要因であることも明らかに(山縣2007)
縮退都市化は、都市空間を物理的に縮小させることだけを意味しない。中心市街地と公共交通機関の沿線への居住を促すことで自動車依存から歩いて暮らせる街への転換。
持続可能な都市へ。
都市を持続可能にするとは、環境面だけではもはやない。人口減少での人口での持続可能性、地域経済などの経済の持続可能性、貧困格差などの社会的な持続可能性、社会資本の更新など社会資本の時速可能性もある。
人口は減るのはさけられない。大事なのは減るのを直視しないことと、適応しないこと。適応すれば生き残れる。それが拡大路線から縮退路線へ。
人口減少をむしろチャンスととらえてこの機会をまちづくりにプラスに働かせる。
目に見えないもの(拡張された社会資本)への財政資金の配分を費用とみなしてきたこれまでの発想からこれを投資とみなす発想へ。
中心市街地への投資で固定資産税をあげる政策。
欧米の都市では公園/緑地の整備が隣接する住宅の価値を引き上げてそれが固定資産税の増収を生み出すことがしられている。
国は巨額の財政赤字があるため国から金をもらうのはあきらめたほうがいい。関一のように自らで財源を生み出す工夫が必要だ。
ドイツでは地域経済循環を高めるために意識的に自治体産業政策がやられている。シュタットベルケはエネルギーの地産地消の仕組み。これで収益をあげてたまった富を公共交通や上下水道を通じて市民に還元。 -
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諸富徹『私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史』新潮社。市民革命以降の欧米の税制の思想史から税金と共同体の関わりを考える一冊。租税は国家が市民の生命財産を保護することの対価と考えたロック。参加し担うから「仕方なく払う」のではない。税制輸入した日本とは対極的だ。
財務危機が日常化する現在、単純な増税が決していいわけではない。税金を切り口に参加型民主主義を経済の側面から考察する上では、非常に刺激的な一冊。経済行為がやすやすと国境を越えていく現在、著者は租税に関しても国際的な規制(「世界国税庁」)をも視野に入れる。
ややもすれば感情論で扱いがちなやっかない「税」の問題を本書は、国家や市場経済とどのように結びつくのかわかりやすく解き明かす一冊。消費税増税前に読んでおきたい。