諸富徹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大和時代からの日本の税の変遷を解説していく内容なのだが、小学校の日本史と最低限の経済学の知識がきちんと頭に入っている人間にとっては全く信じられないくらい面白い。大化の改新、大宝律令、墾田永年私財法、出挙、太閤検地などただ無味乾燥な文字列を覚えて100点を取っていた小中学校の日本史の解像度が極端に上がり政治哲学や経済学とがっちりとリンクする。ストーリーとしての整合性が非常に高く日本史の教科書としての完成度がそもそも異常に高い。そしてこれを読むと小中学校の教科書って要点をきちんと包括していたんだなと改めて思う。同時に教師の無能が悔やまれる。
明治維新と比べて影が薄いがそれに匹敵する大改革である大化の改新。奈良時代から既にあった元祖MMTともいえる出挙(政府が農民に強制的に稲を貸し付けて利子とともに返させる)と貨幣鋳造(しかも偽金作ったやつは死刑)。「上に政策あれば下に対策あり」という中国の諺を思い出す税金逃れの手段の数々(人頭税中心の時代のため戸籍に老人と女ばかり登録する。調として質の悪い布などを物納するなど)。資本(コメ)を蓄財し勝手に自分で出挙(コメの貸付)を始める奴らなど、古代から既に超面白い。そして歴史の勉強ばかりかと思っていると突然、時代の進展に伴う産業構造の変化と税制の変遷に関する核心的な記述が来たりして非常に勉強になる。
農業などの一次産業が中心の時代には人ないしは土地に課税し主に物納させる直接税が主流であり、それでも民間の蓄財への要求は常にあり結局資本は集積しそれが商業や貿易への投資にまわり発展する。為政者はその変化をうまく捉え経済成長を税収として取り込む必要があるが、ここが上手い(もしくは財源不足からそうせざるを得なかった)改革派の為政者(室町幕府、荻原重秀、田沼意次)と、従来の税収に固執する(もしくは自身のポジションのために固執せざるを得ない)保守派の為政者(鎌倉幕府、新井白石、松平定信)が居る。教師というのがそもそも保守的な生き物だからか学校の授業では後者の方が何となく印象が良かったが、経済学を学んだ後では経済音痴にも程がある政策ばかりで全く呆れる。また室町幕府の分一銭の出現のように権力が移る前の哀れな泥舟補修の様子は涙を誘う。
コメなどを半ばみかじめ料として納めさせられていた前近代に対し、明治維新後は徐々に社会契約の概念と民主主義が浸透し、さらに産業構造の急速な変化も相まって税金の性格が大きく変わっていく。先行する欧米を手本にそれなりに形になる税制を作ったものの、度重なる戦争と不景気による財政悪化に対し、保守派の金持ち地主が牛耳る未熟な民主主義により時代の変化を捉えた的確な税制の変革を行うことができず、物言えぬ(選挙権を持たずロビイングもできないような)民衆など取れるところから取ることを繰り返した結果、現代アメリカ以上の格差の拡大と、累進性の低くかつ収入源によっても不公平さの大きい税制を産んでしまった。この不公平がようやく是正されたのが第二次世界大戦前の実質的な軍事政権による全体主義的政策というのは非常に悲しい。
戦後のアメリカ統治には賛否両論あるが、少なくとも税制の設計は素晴らしいとしか言いようがない。その後民間による蓄財への要求により富裕税(いわゆる資産課税)廃止や配当所得課税の再分離化(現代でも1億円から累進性が弱まるアレの主因)などある程度揺り戻されるものの、一旦は垂直にも水平にも(つまり十分な累進性と所得の種類によらない公平性を兼ね備えた)公平な税制が完成したことは世界に誇るべきである。
戦前の日本や現代アメリカのような超格差社会の荒み様を見ているとやはり大きすぎる格差は社会を不安定化させるという点で悪に他ならないと感じるものの、ある程度の資本集積によって産業が急速に発展した事もまた事実であり、どの程度の集積と再分配を良しとするかというのは今後も我々が悩み続けなければならないテーマであり、成熟した民主主義社会を生きる我々は政治(議会制民主主義)を通して成員全員で社会的合意を形成していかなければならない。 -
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簡単ななまとめ
情報技術の進歩とタックスヘイブンの登場によって、企業の利益や高所得者の所得への課税が困難になり、その穴埋めとして消費税等、移動制の低い税金に財源が傾斜しているのが昨今の情勢である。
グローバル企業は商標権など、妥当な金額で評価することの困難な無形資産を、租税回避地に所在する現地法人に低額で譲渡する。別の現地法人にはその無形資産の使用料を高額に設定してそれを費用に計上して、租税回避地ではない現地法人の税引前利益を少なくする手法をとる。
租税回避の解決策として 3 つの案が提案された。わかりやすく解説されていたのだが忘れてしまった。
また EU といった超国家的な統治機構がこの歪な状況の是正に一役買うことも期待されている。
感想
グローバル企業の租税回避的行動等によって、中低所得層が割を食っている現状を是正することは必要だろう。
しかし GAFAM 等大手テクノロジー企業や VC は貯め込んだ豊富な資金によって有力スタートアップに多額の資金を供給し、科学技術の飛躍的な発展を成し遂げたことも事実である。それは行政の包括的な企業の支援より無駄が少なく、効率的に資金を投入することを可能にさせただろうと思う。
また株主の利益の最大化を目指すことが使命である株式会社や、競争環境に置かれている会計事務所はそれぞれの目的を達成するため最良の手段を取るだろう。そして、現状、租税回避ができる環境である以上、それを利用するのは必然である。
課税の強化を図る必要があるのは、累進性の喪失による中間層の生活苦から極右の台頭を許し、民主制そのもの危機が生じたことや、政府の役割を強化することによって一般的な経済学でよく用いられている、市場の失敗や独占への対処の強化が必要だからであろう。 -
Posted by ブクログ
昨今の(ときに安易な)脱成長、アンチ資本主義に一石を投じる。
日本企業は、モノ生産中心の産業構造からの転換(著者の言葉で言う資本主義の非物質主義的転回)に乗り遅れ、余剰資金を投資どころか配当に回し、蓄積を失った。
労働力への教育的投資も怠り、今や環境負荷を下げることもできずにいる。
重要なポイントと思うのは、類書(例えば「人新世の資本論」)などと異なり、この本の著者は、環境破壊や格差拡大は経済成長至上主義が原因という立場をとっていないこと。むしろ、正しい成長路線を採ることでこうした問題の解決に向けて踏み出せるとの立場。
その具体的な施策のキーワードが、「社会的投資」。もっと言えば人的投資と脱炭素。
すくなくとも、資本主義の下で成長を目指すと格差が広がるからもう立ち止まって分配しよう、という議論よりはるかに前向きで建設的と私には思えた。
経済学の理論、データの裏付けのしっかりした骨太さも素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ以前、探究活動で「地域活性化」をテーマにいた生徒がいたので、こちらも少し調べておこうと思って購入した本です。ずいぶんと積ん読していました。
人口減少時代の都市は従前のように経済発展を前提としていてはもはや持続させることができません。税収減によるインフラの維持の困難や空き家問題など、さまざまな問題が生じます。しかし筆者はこの危機をチャンスととらえ、都市自身がエネルギー事業や鉄道事業など公益性の高い事業を自ら手がけることで財源を確保し、その収益を住民の福祉に役立てることや、緑地公園の整備など自然資本への投資を通して都市の魅力・価値を高めること、住民自治の涵養によりボトムアップ型の都市経営を目指すことなどを提言しています。
平易な文章で読みやすいため、特に将来は地元での就職を考えている高校生にも読んでもらいたい一冊です。 -
Posted by ブクログ
いやー、なかなか面白かった!
市民革命などの歴史を、税制度に着目して考えたことないし、納税を権利だと考えたこともなかったし。(とはいえ、私の場合は別に納税に対してネガティブでもなかったけど)
あと、哲学的な話かと思いきや、意外にもグローバル税の話にも十分な紙幅を取って言及されていた感じだし、アトキンソンが言ってたような、最近の格差拡大と税金種別の割合の話などにも触れられていた。多国籍企業の税金対策などについても。金融取引税の話も興味深かったな。
あ、あと、世界の話だけでなく、ちょいちょい日本の現状にも触れられているのが良かった。
これだけいろいろ触れられていて、専門性もありながらも、一般人に分かりやすく書いてくれている気がしました。取っ掛かりとしてはありではないかな! -
Posted by ブクログ
[「られる」一辺倒の卒業]給与明細を見るたびに、なんとなく「取られている」と感じてしまう税金。そんな税金がどのような思想を背景として成立し、国民国家内に取り入れられてきたかを解説するとともに、「上からの税金」とは一線を画した考え方について提唱する一冊。著者は、京都大学で教鞭をとられ、財政学を専門とされている諸富徹。
税金というと複雑かつ難解という印象を受けますが、その成立を根本から整理してくれているので非常にわかりやすく、税を(良い意味で)身近なものとして感じられるようになるのではないでしょうか。特に、財政調達と政策達成という二つの手段が税に内包されていることを指摘しながら、ドイツやアメリカの歴史を語る章については、税にまつわる歴史のおもしろさを堪能することができました。
〜「下から」の方向性を徹底させ、そして「市民からの法人への働きかけ」という視点に立つならば、「政策手段としての税」は政権の手にあるだけでなく、たとえ間接的な形ではあれ、私たち自身の手にあると考え直すことができるだろう。つまり、「市民社会が租税を自らの道具として使いこなして経済をコントロールする」という租税観、新たな政策課税論への転換である。〜
古くて新しい問題なんですね☆5つ -
Posted by ブクログ
ネタバレこれは著者が言うように、経済学部に入ったばっかりの人に読んでもらうととても良いと思う。
経済学部というと「金融」をはじめとするイメージが多いうえ、リーマンショックを初めとする危機の原因である「金融」にあまりいいイメージがない人も多いと思う。
が、経済学の根本はこの著者の言うような5つの問題を取り扱ってきた。
①市場と国家の関係
②自然の体系と人為の体系
③金融経済と実物経済
④経済システムの主体は誰か
⑤動態的な経済
であり、中でも④は重要であると思った。
決して「金融」がここに当てはまってきたことはなく、基本的に農業従事者や工場労働者、経営者などがここに当てはまっているとされてきた。租税もここの負担を回避するようにするべきだ、などということが述べられている。ケネーの経済表がまずそれを表している。
また著者が述べる「非物質主義的転回」も注目すべき。というかこれについて3回生の時にゼミでやったなぁ、と思い出した。また「規制があったからこそ成長してきた」という主張。日本の自動車産業を例にあげている。それもまた事実だと思う。規制緩和とはいわゆる「人為の体系」から「自然の体系」への回帰であり、マルクスの描いた最も過酷な資本主義へ近づく。しかし現代では最低限の安全保障はシステムに組み込まれているため、ある程度は防がれてきたがこの社会保障分野も削減に向かいつつある。
2009年時点で原発ではなく再生可能エネルギーについて主張しており、昨今の反動的な反原発主張者よりも冷静で、それでいて熱い心を持っている、経済学者であると感じた。
とはいえマジな学部入りたてやと、そもそもよく分からん状況になるとも思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本作ですが、かなり面白かったです。
税金の本ではあります。いわゆるGAFAなどのデジタル多国籍企業への課税をどのようにして可能にするか、というのが端的なお題目。
これを論ずるにあたって、本来の課税というのは国ごとに行われ、そしてPEという恒久的な施設があることを前提として収益に対して課税していたと。
ところが多国籍企業は重税を逃れるように本社を低税率国に移し、当初の国と移動先との国とで指導料とか、ブランド代とかintangibleな形のない財をやり取りして当該国での収益を低くし課税逃れに走るようになった。移動先の国では低税率で大儲け、当初の国では低収益で課税額も少ないと。また当初の国で経費として計上されるブランド代や指導料は比較対象があまりないため、課税当局も判断が難しいらしい。
更にはGAFAなどのデジタルジャイアントはインターネットを通じて世界中から収益が上がるにも関わらずそれらの国に恒久的施設もないことから、これまでの文脈では各国は彼らに課税することが難しい。
こうした状況が、各国の租税競争を起こし(うちは法人税安いですよー、みなさん来てくださいねー)、そこでは所得税などの直接税を軽く(企業や富裕層が逃げないように)、間接税を重くするという逆進性を助長することになったと論じます。つまり貧乏人はより税金に苦しむようになるということです。こうして所得の再分配が効かなくなります。
これをどうにかするために、一国での課税ではなく、世界政府みたいな大きな括りでGAFAのようなデジタル多国籍企業に立ち向かおう、少なくとも国・課税主体も多国籍企業と同じ土俵で戦わないとだめだ、というお話ですね。
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まあ、考えるまでもなく、各国の思惑がバラバラなので、ワールドワイドでグーグルに課税しましょうとか言ってもこれは課税額の配分などで揉めるのは必須。
売り上げ按分だとか、幾つかの案が出ていましたが、どれも難しそう。
さて、突然ですが、コロナなど疫病対策・ワクチンに関連して、国際公共財という考えがあるそうです。
1)対価を払わないからといって消費から排除されない
2)他の消費者が消費しているからといって自らの消費が排除されるわけではない(P.149)
コロナワクチンは、とりわけアフリカの国々は危うく消費から排除されかけたわけですが(金がないからね)、ここで国際的な公共財の費用を世界で負担するべきという考えが見直されるわけです。これに先駆け、フランスでは国際便の乗客に国際連帯税をかけ、エコノミーは安く、ファーストクラスは高くしたそう。
これは直接的な答えではないものの、そもそも税金というのが所得の再分配の性格を有すことから、一番のお金持ちで課税逃れをしている多国籍企業を国際的な網の目で取っ捕まえたいと考えているのが見て取れました。
ただやはり実施するとしたら国際的な連携が必要ですよね。このあたりがグローバルミニマム課税につながるのでしょうか。
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さて、考えてしまうのは、課税主体としての国家はもう時代遅れになるかもしれない、ということ。
多国籍企業があるのならば、多国籍連携国家も想定するべきなのでしょう。
その一例としてEUが挙げられているわけですが、今のところは国家というこれまでの考えが強すぎてEUは一枚岩でもないですね。
全世界政府とかできたら、富裕層は租税回避のために火星にでも逃げてしまうのでしょうか。
今は戯言ですが、なくはないかもしれない、と感じます。
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ということで、国際的な課税に関する本でした。
個人としてはなるべく税金は安くしたい、と考えていましたが、現実には多国籍企業のお陰で(政治家のせい?)どの国も間接税優位、つまり持たざる者への負担が大きくなっているのが現状のようです。
税金を安くしたいと思うのは心情ですが、安いだけでは駄目かも・安いだけってのはちょっと違う、と感じました。トランプ氏が関税云々いっていますが、あれだってGAFAは大喜びかもしれませんね。
GAFAなどデジタル企業への国際的課税の網の目がじわじわと狭まろうとしていたなかで、紐帯は緩み国家は分断された様相です。
税金とは、政治や国家を考えるうえでは大きな論点かと思います。そうしたことに興味がある方は是非ご一読を。