【感想・ネタバレ】税の日本史のレビュー

あらすじ

「税」で読み解く、日本史と日本人
先の参議院選挙でも争点となった「税金」。古代から現代まで、この国では税はどう扱われ、税制はどのように変化してきたのか。また、時の為政者・納税者は税をどう捉えたのか。「政府税制調査会」特別委員などを歴任した財政学の第一人者が、経済成長や産業構造の変化と共に読み解いていく。見えてきたのは日本独自の徴収方法や、日本人の税に対する考えである。今後ますます増加する社会保障費の財源など、日本の税制は変わらざるを得ない。その「答え」を著者は歴史から導き、新税を提案する。巻末には、磯田道史国際日本文化研究センター教授との対談も。「税の日本史」から学ぶことは多い。

(以下、目次)
第一章 古代――わが国の租税の始まりと律令制
第二章 中世――鎌倉・室町幕府の経済成長への対処
第三章 近世――豊臣政権下の大変化、江戸幕府の経済政策
第四章 近代――租税国家としての明治政府の革新性
第五章 戦前――格差社会、戦争による現代税制への移行
第六章 戦後――今も古びないシャウプ勧告
特別対談 日本人と税(磯田道史×諸富 徹)

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Posted by ブクログ

大和時代からの日本の税の変遷を解説していく内容なのだが、小学校の日本史と最低限の経済学の知識がきちんと頭に入っている人間にとっては全く信じられないくらい面白い。大化の改新、大宝律令、墾田永年私財法、出挙、太閤検地などただ無味乾燥な文字列を覚えて100点を取っていた小中学校の日本史の解像度が極端に上がり政治哲学や経済学とがっちりとリンクする。ストーリーとしての整合性が非常に高く日本史の教科書としての完成度がそもそも異常に高い。そしてこれを読むと小中学校の教科書って要点をきちんと包括していたんだなと改めて思う。同時に教師の無能が悔やまれる。

明治維新と比べて影が薄いがそれに匹敵する大改革である大化の改新。奈良時代から既にあった元祖MMTともいえる出挙(政府が農民に強制的に稲を貸し付けて利子とともに返させる)と貨幣鋳造(しかも偽金作ったやつは死刑)。「上に政策あれば下に対策あり」という中国の諺を思い出す税金逃れの手段の数々(人頭税中心の時代のため戸籍に老人と女ばかり登録する。調として質の悪い布などを物納するなど)。資本(コメ)を蓄財し勝手に自分で出挙(コメの貸付)を始める奴らなど、古代から既に超面白い。そして歴史の勉強ばかりかと思っていると突然、時代の進展に伴う産業構造の変化と税制の変遷に関する核心的な記述が来たりして非常に勉強になる。

農業などの一次産業が中心の時代には人ないしは土地に課税し主に物納させる直接税が主流であり、それでも民間の蓄財への要求は常にあり結局資本は集積しそれが商業や貿易への投資にまわり発展する。為政者はその変化をうまく捉え経済成長を税収として取り込む必要があるが、ここが上手い(もしくは財源不足からそうせざるを得なかった)改革派の為政者(室町幕府、荻原重秀、田沼意次)と、従来の税収に固執する(もしくは自身のポジションのために固執せざるを得ない)保守派の為政者(鎌倉幕府、新井白石、松平定信)が居る。教師というのがそもそも保守的な生き物だからか学校の授業では後者の方が何となく印象が良かったが、経済学を学んだ後では経済音痴にも程がある政策ばかりで全く呆れる。また室町幕府の分一銭の出現のように権力が移る前の哀れな泥舟補修の様子は涙を誘う。

コメなどを半ばみかじめ料として納めさせられていた前近代に対し、明治維新後は徐々に社会契約の概念と民主主義が浸透し、さらに産業構造の急速な変化も相まって税金の性格が大きく変わっていく。先行する欧米を手本にそれなりに形になる税制を作ったものの、度重なる戦争と不景気による財政悪化に対し、保守派の金持ち地主が牛耳る未熟な民主主義により時代の変化を捉えた的確な税制の変革を行うことができず、物言えぬ(選挙権を持たずロビイングもできないような)民衆など取れるところから取ることを繰り返した結果、現代アメリカ以上の格差の拡大と、累進性の低くかつ収入源によっても不公平さの大きい税制を産んでしまった。この不公平がようやく是正されたのが第二次世界大戦前の実質的な軍事政権による全体主義的政策というのは非常に悲しい。

戦後のアメリカ統治には賛否両論あるが、少なくとも税制の設計は素晴らしいとしか言いようがない。その後民間による蓄財への要求により富裕税(いわゆる資産課税)廃止や配当所得課税の再分離化(現代でも1億円から累進性が弱まるアレの主因)などある程度揺り戻されるものの、一旦は垂直にも水平にも(つまり十分な累進性と所得の種類によらない公平性を兼ね備えた)公平な税制が完成したことは世界に誇るべきである。

戦前の日本や現代アメリカのような超格差社会の荒み様を見ているとやはり大きすぎる格差は社会を不安定化させるという点で悪に他ならないと感じるものの、ある程度の資本集積によって産業が急速に発展した事もまた事実であり、どの程度の集積と再分配を良しとするかというのは今後も我々が悩み続けなければならないテーマであり、成熟した民主主義社会を生きる我々は政治(議会制民主主義)を通して成員全員で社会的合意を形成していかなければならない。

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2026年01月17日

Posted by ブクログ

税の公平性などを聞くこともあり、国がどのように税金を設定してきたかについて気になっていた。

歴史の授業で税について学んでもピンと来なかったが、一貫した説明があるとわかりやすいし、国の存亡にも関わる重要なことということがわかった。

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2025年12月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<目次>
第1章  古代
第2章  中世
第3章  近世
第4章  近代
第5章  戦前
第6章  戦後

<内容>
コンパクトにかつわかりやすくまとめられている。税制にスポットをあてた日本史。律令制にしても、中世の幕府の財源、近世の重農主義の問題点、近代の直接税中心。戦後もシャウプ勧告が早くに破られたこと。しっかりと書かれています。

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2025年12月13日

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