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経済学は、時代ごとの大きな社会経済問題と格闘し、発展を遂げてきた。その歴史をふりかえることを通して、現代社会が直面する課題──経済のグローバル化、金融資本主義化によるバブルの生成と崩壊、地球環境問題など──に、経済学がどのように応え、「持続可能な発展」のために、いま何をなしうるのかを考える。
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Posted by ブクログ
人文社会科学としての経済学が、「社会に対して果たせる役割」・「経済学の変遷とその背景にある各経済学者の課題認識」・「現在の諸課題に対する経済学の意味合い」という3つの柱から、大学に入って経済学を初めて学ぼうとする初学者をメインターゲットとして、アカデミックな語り口ながら極めて明快にまとめられている。...続きを読む 経済学の入門書という位置づけであるが、本書で一貫している著者の課題認識は、数学や統計学などの定量的技法を唯一社会科学の学問の中で有している経済学が、貧困や公平性、正義の問題などに目を背けた「冷たい科学」になっているのではないか、というものである。この課題認識は、アダム・スミスやマルクス、ケインズに至る各経済学者の理論の解説においても貫かれており、彼らがその時々の社会が面していた前述の問題に対して、どのように経済学という学問を通じて改善の道を理論化しようとしたかという苦労がしっかり描かれている。その点で、リーマンショックのような市場主義経済の行き過ぎから発生した問題や、止まらぬ資本主義のグローバル化の中で、ますます「分配」の問題(これは各国家の内部で発生するものと、国家間の関係性の中で発生する2種類が存在するだろう)が重要になりつつある現在、これらの点を意識した経済学の発展が必要になると結論付けられている。 個々の経済学者の解説のうち、特に20世紀に最も多くの国の経済政策に大きな影響を与えたケインズに関しては、定量的なモデルも含めて、他の経済学者よりも多めのページが割り振られているため、わかりやすい。単に「市場を中心とした自由経済から、国家による部分的な管理をベースとした資本主義のモデル」を作り上げたというケインズの功績にとどまらず、その背景として、ケインズが従来の古典派経済学が実物経済と貨幣による金融経済を同一視していたことを批判し、その両者が利子率というファクターを媒介として相互依存性を持っているという理論は、「金利(利子率)と債券価格は逆向きに動く」という経営学におけるファイナンスの常識に対する理論的根拠だということが、ようやくわかった。 また、同じくケインズが、金融経済よりも実物経済の安定性に重きを置き、物価の安定と雇用の確保をその理論の成果として考えていた点に触れ、利害相反関係が発生しやすい投資家と企業家・労働者間では、後者にメリットをもたらすインフレーションの方がまだ優れているという観点から、通貨政策においても、自由な金本位制ではなく、固定相場をベースとした国家による管理通貨制度を採用すべきであると主張し、それが戦後のブレトン・ウッズ体制に繋がっていったという流れがまとめられている。この流れは、通貨政策に疎い自分にとって、体系的なつながりを意識させてくれた点で、非常に意義深かったし、「市場ではなく国家による管理」が通貨政策においても行われていたというケインズの理論の一貫性を強く感じた。 アカデミックな本ではあるが、経済学の概略を掴むには非常に最適だと思う。
岩波のヒューマニティーズ・シリーズの経済学は、京都大学大学院経済学研究科准教授(環境経済学)の諸富徹(1968-)が担当。 【構成】 はじめに 1 社会認識の学としての経済学-経済学は社会の役に立つのか 2 経済学はどのようにして生まれたのか-そして、それはどのように発展を遂げたのか 3 経済学の...続きを読む未来はどうなるのか-または、経済学はこれから何を考えていくべきか 4 経済学を学ぶ意味とは何か-読者への期待を込めて 5 経済学を学ぶために何を読むべきか おわりに 本書は、最新のマクロ経済学やミクロ経済学の概説ではなく、経済学史である。ケネー、スミス、リカード、マルクス、ピグー、ケインズ、シュンペーターの7名の学者を取り上げ、経済学が問うべき根源的な課題について論じようとしている。 資本主義という概念の創出から、マルクスに象徴される恐慌の出現による資本主義への疑義、そしてケインズをはじめとする「自然の体系」から「人為の体系」への志向を経て、実体経済のための金融経済を目指したシュンペーターまで話がつながっていく。 本書は評者のように経済学を大学で学んだことのない人間でも十分理解できる内容である。しかし、おそらく本書の内容を理解できたとしても、現在のメインストリームであるミクロ経済学・マクロ経済学の複雑な数式モデルや理論はとても理解できないだろう。それは本書の狙いではないからである。 近年の経済学は数学的な合理性・妥当性を追求してきた。そしてそのような経済学を学んできたあるいは学ぼうとしている人に対して、経済学は「人間の営み」という極めて複雑で一貫性を欠いた人文的な事象を本来対象にしてきた学問であるということを再認識してもらうこと、これが本書のねらいであろう。
[ 内容 ] [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時...続きを読む間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
授業で使ってる本なんですが、とてもいい本だそうです。 ちょっと難しいかなって気もしますが、経済学のことを知りたい人にはお勧めです。
あまり勉強してない経済学部生が、勉強したい!と思った時におすすめ。非常にコンパクトにまとまっていて良いです。
これは著者が言うように、経済学部に入ったばっかりの人に読んでもらうととても良いと思う。 経済学部というと「金融」をはじめとするイメージが多いうえ、リーマンショックを初めとする危機の原因である「金融」にあまりいいイメージがない人も多いと思う。 が、経済学の根本はこの著者の言うような5つの問題を取り扱...続きを読むってきた。 ①市場と国家の関係 ②自然の体系と人為の体系 ③金融経済と実物経済 ④経済システムの主体は誰か ⑤動態的な経済 であり、中でも④は重要であると思った。 決して「金融」がここに当てはまってきたことはなく、基本的に農業従事者や工場労働者、経営者などがここに当てはまっているとされてきた。租税もここの負担を回避するようにするべきだ、などということが述べられている。ケネーの経済表がまずそれを表している。 また著者が述べる「非物質主義的転回」も注目すべき。というかこれについて3回生の時にゼミでやったなぁ、と思い出した。また「規制があったからこそ成長してきた」という主張。日本の自動車産業を例にあげている。それもまた事実だと思う。規制緩和とはいわゆる「人為の体系」から「自然の体系」への回帰であり、マルクスの描いた最も過酷な資本主義へ近づく。しかし現代では最低限の安全保障はシステムに組み込まれているため、ある程度は防がれてきたがこの社会保障分野も削減に向かいつつある。 2009年時点で原発ではなく再生可能エネルギーについて主張しており、昨今の反動的な反原発主張者よりも冷静で、それでいて熱い心を持っている、経済学者であると感じた。 とはいえマジな学部入りたてやと、そもそもよく分からん状況になるとも思う。
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