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市民にとって納税は義務なのか、権利なのか? また、国家にとって租税は財源調達手段なのか、それとも政策遂行手段なのか? 17世紀の市民革命から21世紀のEU金融取引税まで、ジョン・ロックからケインズそしてジェームズ・トービンまで――世界の税制とその経済思想の流れを辿り、「税」の本質を多角的に解き明かす。
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Posted by ブクログ
近代国家の成り立ちを租税システムから鮮やかに照らして見せる本。とにかく面白かった。今では当たり前の所得税が、どれだけ導入までにハードルが高かったか。それを可能にするのはやはり戦争であり、一度導入されると所得税は極めて強力なシステムとして機能した。 具体例として挙げられるイギリスの市民革命やアメリカ...続きを読むの南北戦争に、租税システムがこれほど深く関わっているとは想像したこともなく、とても興味深く読んだ。
あとがきで、「日本の明治期の税制では、直接国税を一定額以上納めた者に対して選挙権が与えられた歴史があり、納税が「義務」どころか一種の「特権」「恩恵」と理解されるという歪みが生じた」という事が書いてあり、これはなんか現代に繋がっているなと思った。
いやー、なかなか面白かった! 市民革命などの歴史を、税制度に着目して考えたことないし、納税を権利だと考えたこともなかったし。(とはいえ、私の場合は別に納税に対してネガティブでもなかったけど) あと、哲学的な話かと思いきや、意外にもグローバル税の話にも十分な紙幅を取って言及されていた感じだし、アトキ...続きを読むンソンが言ってたような、最近の格差拡大と税金種別の割合の話などにも触れられていた。多国籍企業の税金対策などについても。金融取引税の話も興味深かったな。 あ、あと、世界の話だけでなく、ちょいちょい日本の現状にも触れられているのが良かった。 これだけいろいろ触れられていて、専門性もありながらも、一般人に分かりやすく書いてくれている気がしました。取っ掛かりとしてはありではないかな!
[「られる」一辺倒の卒業]給与明細を見るたびに、なんとなく「取られている」と感じてしまう税金。そんな税金がどのような思想を背景として成立し、国民国家内に取り入れられてきたかを解説するとともに、「上からの税金」とは一線を画した考え方について提唱する一冊。著者は、京都大学で教鞭をとられ、財政学を専門とさ...続きを読むれている諸富徹。 税金というと複雑かつ難解という印象を受けますが、その成立を根本から整理してくれているので非常にわかりやすく、税を(良い意味で)身近なものとして感じられるようになるのではないでしょうか。特に、財政調達と政策達成という二つの手段が税に内包されていることを指摘しながら、ドイツやアメリカの歴史を語る章については、税にまつわる歴史のおもしろさを堪能することができました。 〜「下から」の方向性を徹底させ、そして「市民からの法人への働きかけ」という視点に立つならば、「政策手段としての税」は政権の手にあるだけでなく、たとえ間接的な形ではあれ、私たち自身の手にあると考え直すことができるだろう。つまり、「市民社会が租税を自らの道具として使いこなして経済をコントロールする」という租税観、新たな政策課税論への転換である。〜 古くて新しい問題なんですね☆5つ
とても勉強になります。二度目の読みなおし中です。 タイトルから感じられた哲学的なところまでは掘り下げられていませんでしたが、税に関するわかりやすい思想史であり、現代の課題も丁寧に書かれていて、仕事にも直接的に役立ちます。素晴らしい一冊だと感じています。
開始:2022/10/31 終了:2022/11/8 感想 税の切り口から経済史、経済思想史を概観する。税は単なる政府財源ではない。あらゆる経済主体に影響を与え、ひいては資本主義の手綱を取る。
●非常に難しかった。しかし、どのような経緯を経て近代国家に租税が課されていったのかがおおよそ理解できた。
イギリス、ドイツ、アメリカの近代以降の租税論通史の本。ホッブス、ロックにはじまり ニューディール政策、現代の国際租税回避まで、わかりやすく説明されている。それぞれに ドラマがある 個人の所得に応じた累進課税による所得税、消費(支払能力)を反映した内国消費税、富の再配分としての相続税、独占企業政策や...続きを読む個人所得税の補完としての法人税 、戦時の異常税率などの導入経緯、根拠、歴史的変遷を記述 次の論述と税金との関係性を整理することから 始まる *ホッブスやロックの国家論 *アダムスミスの国富論 *ヘーゲルの市民社会の原理 ドイツ租税論(シュタイン、ワグナー) *個人と国家は運命共同体 *納税=個人の義務 *日本は ドイツ租税論を導入 ニューディール租税政策 税金は 単なる財源調達手段としてでなく、所得や富の再配分、独占企業のコントロールなど 政策手段としても 用いている
少し堅く言えば、租税を通して見た国家論です。扱っている範囲が近代の欧米、それも英米仏と独が中心なので、そういう意味での限界はあるでしょうが、現在の日本国民が考えなければいけない項目はキチンと提示されていると思います。バランス良く叙述しながら、これからの最大の課題である、国境を超えた金融取引と課税回避...続きを読む行為について、読者が前向きに考える材料を提供しています。 国家の役割と限界、グローバル化してゆく資本主義経済の制御、そのためのトービン税(金融取引税)など新たな税制の可能性、と書くとなんだかとっつきにくそうな印象を受けるでしょうが、大学教養課程程度、かつ、表現も平易で読みやすい本です。
諸富徹『私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史』新潮社。市民革命以降の欧米の税制の思想史から税金と共同体の関わりを考える一冊。租税は国家が市民の生命財産を保護することの対価と考えたロック。参加し担うから「仕方なく払う」のではない。税制輸入した日本とは対極的だ。 財務危機が日常化する現在、単...続きを読む純な増税が決していいわけではない。税金を切り口に参加型民主主義を経済の側面から考察する上では、非常に刺激的な一冊。経済行為がやすやすと国境を越えていく現在、著者は租税に関しても国際的な規制(「世界国税庁」)をも視野に入れる。 ややもすれば感情論で扱いがちなやっかない「税」の問題を本書は、国家や市場経済とどのように結びつくのかわかりやすく解き明かす一冊。消費税増税前に読んでおきたい。
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