庄野潤三のレビュー一覧

  • ザボンの花

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    ネタバレ

    今年No.1の読書かもしれない。ページを開くだけで1950年代の昭和へ自然なタイムトリップ。作中にプンプン漂う昭和の香りと深いノスタルジーは、常に繋がりや効率を求める現代のスマホ文化とは対極にある。不便さの中にあったはずの「ゆとり」や「間」を、今失った豊かな文化を教えてくれる。何より、登場人物が素直で愛嬌に溢れ、彼らが織りなす何気ない日常がたまらなく愛おしい。情報過多な現代から少し離れ、人間本来の温かみと古き良き時代の空気感を心ゆくまで満喫できた。この時代の良さを再発見できる、極上の読書だった。⑤↑↑↑

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    2026年10月06日
  • 夕べの雲

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    癒される。五人家族の、特に落ちもつかない日常の他愛無いエピソード群を、周りの自然や季節とのかかわりを盛り込みながら綴っているのだけど、それが平和で愛おしい。だれかの生活を遠目から見たらそれは眩しいものなんだろうなと思った。温度感はこちらのほうが落ち着いているけれど、舞台が昭和三十年代ということもあって、『ALWAYS三丁目の夕日』を思い出した。

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    2026年09月07日
  • インド綿の服

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    昨日、帰りの電車にて読み終わった。ちょうど今任されている手紙入力の仕事と重なる、夏子さんからの手紙を題材にした作品集だったので、もしかしたらと思ったが、入力した手紙が作中に出てきたので嬉しく驚いた。「誕生日の祝い」「足柄山の春」あたり、何通か思い当たるものがあった。気づいていないだけで、あと何通もそういったものがあったように思う。夏子さんの歯槽膿漏の話(113頁)、猫を捕まえるための「すごい仕かけ」(130〜132頁)や、宝塚に行った日の思い出(142頁)など、読んでいて嬉しい気持ちになった。特に宝塚に行った日の思い出は、庄野潤三が脳出血で倒れ、リハビリを重ねて、大外出できるようになったことへの喜びだと補記されていた。感じる気持ちがより大きくなった。夏子さんのニャン次郎、宗近さん、ミスアイレスバロウなどの手紙に出てくる人・動物たち。庄野が彼らのこと、手紙の外のことをさり気なく書いている。ニャン次郎になぜ片目がないのか、その顛末には夏子さんみたく驚いてしまった。(夜な夜な狸と喧嘩していたなんて……、それはビー玉みたいにしばらく目の所にぶら下がっていて、あるときから無くなって空っぽの目になった)
    後は、ウーマンズ・ミーティングがなんと楽しそうなことか。庄野家の女性陣で定期的に開催されるお茶会・食事会のこと。もちろん敦子さんも、長男の妻あつ子・あっちゃんとして出てくる。読んでいると、このあつ子さんの活躍が目ざましい。お父君、お母君への洋服やステッキのプレゼントを選ぶのに一役買って出ている。実際、お会いする敦子さんが、会うたびに毎回素敵な洋服を着ていること。僕の妻も、「あんなふうに歳を取りたいなあ、あこがれちゃう」と言っていた。この数年の関わりの中で、庄野作品を読むときの目の留まる所がさらに大きくなったことに、この作家と深く関わることの喜びを感じた。不思議なものだなあ……。

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    2026年06月25日
  • 夕べの雲

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    次男の正次郎が風邪をひいて冬至の柚子湯に入れなかった時に、母と姉が洗面器でその湯を汲んで、その中に柚子の汁をしぼり入れて、そこに浸したタオルで顔をふいてやるとか、ほのぼのエピソードがいっぱい。
    世の中がどんなに変わろうとも、庄野潤三の世界観のようなものを、自分の中の片隅に置いておきたい。

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    2025年08月09日
  • 夕べの雲

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    一家族の何気ない日常、でもそれは二度とはない日々の連なり。そういったものを小説に描いた一作。
    なのでストーリーに頼った(それが悪いと言ってはいないです、誤解なきよう)小説のように大きな出来事が起こることはない。
    なのに読んでいて楽しい。それは家族の会話だったり、周りの人との関係性が暖かかったり、季節や気候、または動植物への視座と描写。作者の巧み且つわかりやすい表現でとても味がありました。
    全13話(章?)にわかれ繋がってはいるものの短編としても十分読めるので、好きな話を何度も読みたくなる、とても好きな1冊になりました。

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    2024年07月17日
  • 自分の羽根

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    ネタバレ

    ああ、いい一冊だ。僕も、自分の羽根だけを打ちたい。経験したことをちゃんと見て、書きあらわす。他の人にとって大事なことは他の人が書きあらわせばいいのだと勇気づけられた。多くの随筆に生きる希望を与えられた。ありがとう。

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    2022年10月26日
  • 明夫と良二

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    ネタバレ

    地元のアルバイトしていた書店の古本屋コーナーにあった。先生が解説を書いている!と思い、880円ですこし高いけど買った。

    何回も声を出して笑ったなあ。明夫と良二のやり取りは兄と弟によくありそうな出来事ばかりなのに、つい笑ってしまう。ちょっかいをかける兄とそれに困る弟の姿をこんなに楽しく読ませることができるのすごい。今年読んだ小説のなかで三本の指に入るくらい好きだったかもしれない。
    解説を早く読みたくて買ったところもあったのに、小説が好きすぎてむしろ落ち着いた気持ちで先生の解説を読めた。長女・夏子さんの文章も書かれていて、すごくよかった。

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    2021年10月02日
  • 夕べの雲

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    はっきり言って何も起きない、筋書きがあるともいえない、ないないづくしの家族小説(大きな出来事は落雷くらい)。なのだけれど、この平凡な家族の生活をいつまでも見ていたいような、不思議な気分に浸ってしまった。そう思わせるのは、解説が指摘するように、結局はこの平凡な生活が永遠には続かないことへの切なさが、背後に流れているからだろうか。

    本作は、1964年9月~65年1月の『日本経済新聞』夕刊連載小説。つまり、東京五輪とまさに同時期なわけで、五輪の「華やかさ」で印象付けられる年に、こうした静謐な作品が連載されていたことに、高度成長という時代の多面性も感じた。

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    2021年03月02日
  • P+D BOOKS 鉛筆印のトレーナー

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    何度も読んだ本ですが
    これからは、いつでも読める

    本の中で庄野さんご夫妻の
    清水さんのお宅の結納の日
    北京餃子をつくり、届けて
    夕方、清水さん今頃、ほでしょうね。
    本当にほ、だろうなー
    と言う会話が大好きです。

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    2020年04月22日
  • 明夫と良二

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    元は岩波少年文庫だったこともあってかさらさら読めました。家族の穏やかな日々の暮らしに、なんとも心がじんわりしてきます。良かったぁ。

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    2019年10月29日
  • 明夫と良二

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    日常の一コマを丁寧に綴る。
    明夫と良二という兄弟を中心に、姉の和子、子供達を優しく見守る父母。5人が暮らす井村家。
    温かい家族の日常は、いつまででも浸っていたい空気に包まれている。
    〝翌日〟を〝あくる日〟と言うのが、なんとも言えずやわらかい。

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    2019年02月17日
  • ザボンの花

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    郊外に越してきた、父、母、三人の子どもたち。
    彼らの平凡な暮らしが、彩り豊かに描かれる。
    雲雀を追いかけて、えびがにで大騒ぎして、ゴムだんで遊んで、はちみつをつまみ食いして、アフリカに思いを馳せて、花火して…。
    何気ない日常が、これほど愛おしいものとは。
    騒がしく、楽しく、すこしとぼけて、愛らしくて、ほんの少し寂しさを感じて。
    ずっと彼らの暮らしを見ていたくなる。

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    2018年10月14日
  • 夕べの雲

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    なんでもない日常の光景が、こんなに輝いていたなんて。
    近所の野山で遊んだり、学校帰りに梨を買ったり、部屋にムカデが出たり、風邪ひいたり…。
    懐かしくて、温かくて、優しい毎日が、美しく移ろってゆく。
    ずっと浸っていたい空気がここにある。

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    2018年10月06日
  • インド綿の服

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    庄野さんご一家(主に長女のお夏さん(笑))のまったりエッセイ。
    「金時のお夏」、こと長女の夏子さんによるお手紙がユーモラスでこちらまで幸せな気分を味わえます。
    なんだか無性にお手紙を書きたくなる。
    そんな微笑ましいエッセイです☆

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    2012年07月23日
  • インド綿の服

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    庄野さんと奥様との暮らしと独立したお子さん
    お孫さんとの交流などなど庄野さんの日々です。

    ユーモアがあって楽しい娘さんの・・・夏子さんのファンです。

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    2009年10月07日
  • 夕べの雲

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    丘の上の新しい家に越してきた家族が、その土地になじみ毎日を過ごしていく様子を穏やかに描いています。

    この小説には、萩、金木犀、山茶花、ムカデ、梨・・・といった季節季節の自然が出てきます。
    自然と交流しながら成長していく子供達、子供とのやりとりを楽しみ支えていこうとする主人公の父親、家族にそっと寄り添う母親が目に浮かびます。

    一見して、平凡で当たり前で目立たない、落ち着いた生活を見つめた作品です。
    しかし、作者の柔らかく美しい文章が、そうした生活の尊さや深さに気づかせてくれます。

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    2009年10月07日
  • 夕べの雲

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    <poka>
    小田急線生田駅近くの西三田団地が舞台の家族小説。
    大学がその近くだったので懐かしかった。
    文体は穏やかで疲れることはありません。こんな文章を書きたくなります。

    <だいこんまる>
    ビートたけしは、生田大学のあの階段を上るのが面倒で大学を辞めたとか。

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    2009年10月25日
  • 野菜讃歌

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    子どもたちを始めとした家族とのだんらんや文筆家仲間の死を悼む文章が印象に残っている。
    内から滲みでるあたたかい言葉を読みたい時に、この人の作品を読む。

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    2026年06月05日
  • 夕べの雲

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    昭和39年に新聞に連載された小説
    大阪から東京の丘の上の一軒家に越してきた
    大浦一家
    風除けの木の選定に悩む物書きの主人とその妻
    3人の子供達の日常が主人の目線で語られていきます

    ムカデに刺されたり雷が家の中に落ちたり
    と事件らしいこともあるけれど

    夏休みの宿題を子供達以上に必死に段取りをする両親 ぼんやりとなすがままの子供達の姿に既視感を覚え
    父と息子がお昼ご飯の時一緒にお湯を沸かす一部始終が妙に可笑しかったり

    家族以外の人達にはどうでも良い
    平凡でつまらない家庭内の出来事や約束事が
    何でこんなに面白いんだろう
    読みながらずっとニヤニヤしていて
    そして思い出した
    気がついた

    家族との何でもない日常
    記憶にも残らないそんな毎日が
    とても暖かくて楽しい時間だった事
    それは現在進行形でもある事

    60年以上も前の昭和の家族風景
    自然と昆虫が人にとても近しい存在だったけれど
    みんなが普通に穏やかに生きている毎日は
    昔も今もこれからも同じ
    幸せな風景




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    2026年04月30日
  • P+D BOOKS エイヴォン記

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    激しい情動を呼び起こす本ではないので、感情にまかせて「★5つ!」とはしなかったが、ひたひたと温かさが心に広がる良い本だった。
    孫娘のフーちゃんの様子を綴りつつ、作者の心に残った短編集を紹介している。

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    2024年10月22日