庄野潤三のレビュー一覧

  • 夕べの雲

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    次男の正次郎が風邪をひいて冬至の柚子湯に入れなかった時に、母と姉が洗面器でその湯を汲んで、その中に柚子の汁をしぼり入れて、そこに浸したタオルで顔をふいてやるとか、ほのぼのエピソードがいっぱい。
    世の中がどんなに変わろうとも、庄野潤三の世界観のようなものを、自分の中の片隅に置いておきたい。

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    2025年08月09日
  • 夕べの雲

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    一家族の何気ない日常、でもそれは二度とはない日々の連なり。そういったものを小説に描いた一作。
    なのでストーリーに頼った(それが悪いと言ってはいないです、誤解なきよう)小説のように大きな出来事が起こることはない。
    なのに読んでいて楽しい。それは家族の会話だったり、周りの人との関係性が暖かかったり、季節や気候、または動植物への視座と描写。作者の巧み且つわかりやすい表現でとても味がありました。
    全13話(章?)にわかれ繋がってはいるものの短編としても十分読めるので、好きな話を何度も読みたくなる、とても好きな1冊になりました。

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    2024年07月17日
  • 自分の羽根

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    ネタバレ

    ああ、いい一冊だ。僕も、自分の羽根だけを打ちたい。経験したことをちゃんと見て、書きあらわす。他の人にとって大事なことは他の人が書きあらわせばいいのだと勇気づけられた。多くの随筆に生きる希望を与えられた。ありがとう。

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    2022年10月26日
  • 明夫と良二

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    ネタバレ

    地元のアルバイトしていた書店の古本屋コーナーにあった。先生が解説を書いている!と思い、880円ですこし高いけど買った。

    何回も声を出して笑ったなあ。明夫と良二のやり取りは兄と弟によくありそうな出来事ばかりなのに、つい笑ってしまう。ちょっかいをかける兄とそれに困る弟の姿をこんなに楽しく読ませることができるのすごい。今年読んだ小説のなかで三本の指に入るくらい好きだったかもしれない。
    解説を早く読みたくて買ったところもあったのに、小説が好きすぎてむしろ落ち着いた気持ちで先生の解説を読めた。長女・夏子さんの文章も書かれていて、すごくよかった。

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    2021年10月02日
  • 夕べの雲

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    はっきり言って何も起きない、筋書きがあるともいえない、ないないづくしの家族小説(大きな出来事は落雷くらい)。なのだけれど、この平凡な家族の生活をいつまでも見ていたいような、不思議な気分に浸ってしまった。そう思わせるのは、解説が指摘するように、結局はこの平凡な生活が永遠には続かないことへの切なさが、背後に流れているからだろうか。

    本作は、1964年9月~65年1月の『日本経済新聞』夕刊連載小説。つまり、東京五輪とまさに同時期なわけで、五輪の「華やかさ」で印象付けられる年に、こうした静謐な作品が連載されていたことに、高度成長という時代の多面性も感じた。

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    2021年03月02日
  • P+D BOOKS 鉛筆印のトレーナー

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    何度も読んだ本ですが
    これからは、いつでも読める

    本の中で庄野さんご夫妻の
    清水さんのお宅の結納の日
    北京餃子をつくり、届けて
    夕方、清水さん今頃、ほでしょうね。
    本当にほ、だろうなー
    と言う会話が大好きです。

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    2020年04月22日
  • 明夫と良二

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    元は岩波少年文庫だったこともあってかさらさら読めました。家族の穏やかな日々の暮らしに、なんとも心がじんわりしてきます。良かったぁ。

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    2019年10月29日
  • 明夫と良二

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    日常の一コマを丁寧に綴る。
    明夫と良二という兄弟を中心に、姉の和子、子供達を優しく見守る父母。5人が暮らす井村家。
    温かい家族の日常は、いつまででも浸っていたい空気に包まれている。
    〝翌日〟を〝あくる日〟と言うのが、なんとも言えずやわらかい。

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    2019年02月17日
  • ザボンの花

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    郊外に越してきた、父、母、三人の子どもたち。
    彼らの平凡な暮らしが、彩り豊かに描かれる。
    雲雀を追いかけて、えびがにで大騒ぎして、ゴムだんで遊んで、はちみつをつまみ食いして、アフリカに思いを馳せて、花火して…。
    何気ない日常が、これほど愛おしいものとは。
    騒がしく、楽しく、すこしとぼけて、愛らしくて、ほんの少し寂しさを感じて。
    ずっと彼らの暮らしを見ていたくなる。

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    2018年10月14日
  • 夕べの雲

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    なんでもない日常の光景が、こんなに輝いていたなんて。
    近所の野山で遊んだり、学校帰りに梨を買ったり、部屋にムカデが出たり、風邪ひいたり…。
    懐かしくて、温かくて、優しい毎日が、美しく移ろってゆく。
    ずっと浸っていたい空気がここにある。

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    2018年10月06日
  • インド綿の服

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    庄野さんご一家(主に長女のお夏さん(笑))のまったりエッセイ。
    「金時のお夏」、こと長女の夏子さんによるお手紙がユーモラスでこちらまで幸せな気分を味わえます。
    なんだか無性にお手紙を書きたくなる。
    そんな微笑ましいエッセイです☆

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    2012年07月23日
  • インド綿の服

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    庄野さんと奥様との暮らしと独立したお子さん
    お孫さんとの交流などなど庄野さんの日々です。

    ユーモアがあって楽しい娘さんの・・・夏子さんのファンです。

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    2009年10月07日
  • 夕べの雲

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    丘の上の新しい家に越してきた家族が、その土地になじみ毎日を過ごしていく様子を穏やかに描いています。

    この小説には、萩、金木犀、山茶花、ムカデ、梨・・・といった季節季節の自然が出てきます。
    自然と交流しながら成長していく子供達、子供とのやりとりを楽しみ支えていこうとする主人公の父親、家族にそっと寄り添う母親が目に浮かびます。

    一見して、平凡で当たり前で目立たない、落ち着いた生活を見つめた作品です。
    しかし、作者の柔らかく美しい文章が、そうした生活の尊さや深さに気づかせてくれます。

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    2009年10月07日
  • 夕べの雲

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    <poka>
    小田急線生田駅近くの西三田団地が舞台の家族小説。
    大学がその近くだったので懐かしかった。
    文体は穏やかで疲れることはありません。こんな文章を書きたくなります。

    <だいこんまる>
    ビートたけしは、生田大学のあの階段を上るのが面倒で大学を辞めたとか。

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    2009年10月25日
  • P+D BOOKS エイヴォン記

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    激しい情動を呼び起こす本ではないので、感情にまかせて「★5つ!」とはしなかったが、ひたひたと温かさが心に広がる良い本だった。
    孫娘のフーちゃんの様子を綴りつつ、作者の心に残った短編集を紹介している。

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    2024年10月22日
  • 夕べの雲

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    著者の出身地の近くに現在自分が住んでいる事もあり、以前から作品を読んでみたいと思っていたが、先日読んだ島田潤一郎「古くてあたらしい仕事」にも触れられていたので読んでみた。

    著者の日記の様な作品であるし、実際事実に基づいた部分も一定以上あるだろう。日常を土台とし、飛躍はない。エンターテイメント性は皆無だが、読み進めて行くとずっと読んでいたくなる中毒性も含まれる。他人の日記を読む面白さにも似た感じか。

    ホームドラマへの懐古趣味と切り捨てられるかも知れないが、日々を丁寧に生きる姿は今も共通して尊いものだ。

    蔦谷書店京都岡崎店にて購入。

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    2024年08月24日
  • ザボンの花

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    1955年に『日本経済新聞』に連載された長編家族小説。つまみ食い、子どもの留守番、ヤドカリ飼育など、日常的な話題でここまで展開する点に、庄野潤三らしさが表れている。同じく新聞連載で著名な『夕べの雲』と比べると、まだ試行錯誤といった部分も感じた。

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    2024年07月24日
  • P+D BOOKS 早春

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    大阪と神戸出身の
    まぁまぁええとこの元ぼんぼん達
    (明治と大正生まれ)の
    行儀良くて教養のある、テンポ良い会話。

    いとこいの漫才のようで
    心地良かったです。

    昭和55年のお話なので
    このあたりの出身の私には
    地名、校名、店名、人名など
    お馴染みのものが多く尚楽しかった。

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    2024年03月09日
  • 夕べの雲

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    まず前提として、本書は“純文学”であるということを分かっていなければならない。決してエンタメ小説ではない。基本、“退屈でつまらない”、それが純文学である。人を楽しませるために書かれた本ではない。
    前情報なく、本書を読み始めると、「何だこの退屈な小説は」と思い、途中で投げ出してしまうかもしれない。なので、巻末の解説を最初に読むことをおすすめする。

    「幸せとは何でもない日常にこそあるのだ」
    確かにそうだろう。そう思って読んでいた。退屈を愛でること、それこそが幸福であると。
    しかし、どうやらそんな単純な話ではないことに途中気づいた。
    当たり前の日常は、当たり前“だけ”ではない。退屈な日常は、実は、

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    2023年12月29日
  • P+D BOOKS 貝がらと海の音

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     昭和の"第三の新人”庄野潤三後期の私小説。
     東京郊外の住まいで庭の花や水盤に来る野鳥を愛で、ご近所と到来ものの果物等と畑で作った野菜や花のお裾分けをし合い、妻のピアノに合わせてハーモニカを吹く。子や孫達と頻繁に交流し、時には観劇や郷里大阪への旅行も楽しむ。
     うれしい、おいしい、ありがとうが頻出する精神的にも物質的にも豊かな一昔前の「理想の老後」。
     読んでいるうちに心が平らかになり、登場人物達に近しい親戚のような親しみを覚える作品群の中の一作である。
     作家と夫人亡き後の邸宅は公開されているのでいつか訪れてみたい。

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    2023年11月22日