庄野潤三のレビュー一覧
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ネタバレ地元のアルバイトしていた書店の古本屋コーナーにあった。先生が解説を書いている!と思い、880円ですこし高いけど買った。
何回も声を出して笑ったなあ。明夫と良二のやり取りは兄と弟によくありそうな出来事ばかりなのに、つい笑ってしまう。ちょっかいをかける兄とそれに困る弟の姿をこんなに楽しく読ませることができるのすごい。今年読んだ小説のなかで三本の指に入るくらい好きだったかもしれない。
解説を早く読みたくて買ったところもあったのに、小説が好きすぎてむしろ落ち着いた気持ちで先生の解説を読めた。長女・夏子さんの文章も書かれていて、すごくよかった。 -
Posted by ブクログ
はっきり言って何も起きない、筋書きがあるともいえない、ないないづくしの家族小説(大きな出来事は落雷くらい)。なのだけれど、この平凡な家族の生活をいつまでも見ていたいような、不思議な気分に浸ってしまった。そう思わせるのは、解説が指摘するように、結局はこの平凡な生活が永遠には続かないことへの切なさが、背後に流れているからだろうか。
本作は、1964年9月~65年1月の『日本経済新聞』夕刊連載小説。つまり、東京五輪とまさに同時期なわけで、五輪の「華やかさ」で印象付けられる年に、こうした静謐な作品が連載されていたことに、高度成長という時代の多面性も感じた。 -
Posted by ブクログ
まず前提として、本書は“純文学”であるということを分かっていなければならない。決してエンタメ小説ではない。基本、“退屈でつまらない”、それが純文学である。人を楽しませるために書かれた本ではない。
前情報なく、本書を読み始めると、「何だこの退屈な小説は」と思い、途中で投げ出してしまうかもしれない。なので、巻末の解説を最初に読むことをおすすめする。
「幸せとは何でもない日常にこそあるのだ」
確かにそうだろう。そう思って読んでいた。退屈を愛でること、それこそが幸福であると。
しかし、どうやらそんな単純な話ではないことに途中気づいた。
当たり前の日常は、当たり前“だけ”ではない。退屈な日常は、実は、