庄野潤三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
昭和39年9月から40年1月まで日経新聞夕刊に連載された家族の日常を描いた小説。
丘の上に家を建てた著者と家族を、大浦家の5人家族として表し、淡々と描いているが、家族のユーモラスな会話が散りばめられ、全体的に温かくほのぼのとしている。 四季の自然が詩情豊かに描かれているのも特徴。
長男で中学生の安雄が帰り道、毎日、梨売りの爺さんから梨を買う話、大浦の細君が刺されたことから広がっていくムカデの話、細君が、次男の正次郎の風邪を大根おろしと梅干し入りのお茶で治そうとする話など、興味深く面白かった。
今のように贅沢な物が溢れる時代ではないからこそ、生き物や自然に目が向き、素朴ながらも家族の団欒 -
Posted by ブクログ
1967年から71年にかけて発表された、著者の短編作品10編を収録しています。
長女の和子と、明夫、良二という二人の息子とともに暮らす家族のすがたがえがかれています。最後に収録されている「絵合せ」では、和子が他家に嫁ぐことがきまっている家族の一コマがえがかれていますが、それ以外の諸編でも、二人の息子の成長していくようすがうかがわれます。いつまでも変わることのないように見える、何気ない家族のひとときのなかにも、意識に上ることのない無数の変化をはらんでいることに気づかされます。
「星空と三人の兄弟」や「さまよい歩く二人」では、家族の日常の出来事を、グリム童話の話になぞらえつつ語られているところ