庄野潤三のレビュー一覧
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昨日、帰りの電車にて読み終わった。ちょうど今任されている手紙入力の仕事と重なる、夏子さんからの手紙を題材にした作品集だったので、もしかしたらと思ったが、入力した手紙が作中に出てきたので嬉しく驚いた。「誕生日の祝い」「足柄山の春」あたり、何通か思い当たるものがあった。気づいていないだけで、あと何通もそういったものがあったように思う。夏子さんの歯槽膿漏の話(113頁)、猫を捕まえるための「すごい仕かけ」(130〜132頁)や、宝塚に行った日の思い出(142頁)など、読んでいて嬉しい気持ちになった。特に宝塚に行った日の思い出は、庄野潤三が脳出血で倒れ、リハビリを重ねて、大外出できるようになったことへの喜びだと補記されていた。感じる気持ちがより大きくなった。夏子さんのニャン次郎、宗近さん、ミスアイレスバロウなどの手紙に出てくる人・動物たち。庄野が彼らのこと、手紙の外のことをさり気なく書いている。ニャン次郎になぜ片目がないのか、その顛末には夏子さんみたく驚いてしまった。(夜な夜な狸と喧嘩していたなんて……、それはビー玉みたいにしばらく目の所にぶら下がっていて、あるときから無くなって空っぽの目になった)
後は、ウーマンズ・ミーティングがなんと楽しそうなことか。庄野家の女性陣で定期的に開催されるお茶会・食事会のこと。もちろん敦子さんも、長男の妻あつ子・あっちゃんとして出てくる。読んでいると、このあつ子さんの活躍が目ざましい。お父君、お母君への洋服やステッキのプレゼントを選ぶのに一役買って出ている。実際、お会いする敦子さんが、会うたびに毎回素敵な洋服を着ていること。僕の妻も、「あんなふうに歳を取りたいなあ、あこがれちゃう」と言っていた。この数年の関わりの中で、庄野作品を読むときの目の留まる所がさらに大きくなったことに、この作家と深く関わることの喜びを感じた。不思議なものだなあ……。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ地元のアルバイトしていた書店の古本屋コーナーにあった。先生が解説を書いている!と思い、880円ですこし高いけど買った。
何回も声を出して笑ったなあ。明夫と良二のやり取りは兄と弟によくありそうな出来事ばかりなのに、つい笑ってしまう。ちょっかいをかける兄とそれに困る弟の姿をこんなに楽しく読ませることができるのすごい。今年読んだ小説のなかで三本の指に入るくらい好きだったかもしれない。
解説を早く読みたくて買ったところもあったのに、小説が好きすぎてむしろ落ち着いた気持ちで先生の解説を読めた。長女・夏子さんの文章も書かれていて、すごくよかった。 -
Posted by ブクログ
はっきり言って何も起きない、筋書きがあるともいえない、ないないづくしの家族小説(大きな出来事は落雷くらい)。なのだけれど、この平凡な家族の生活をいつまでも見ていたいような、不思議な気分に浸ってしまった。そう思わせるのは、解説が指摘するように、結局はこの平凡な生活が永遠には続かないことへの切なさが、背後に流れているからだろうか。
本作は、1964年9月~65年1月の『日本経済新聞』夕刊連載小説。つまり、東京五輪とまさに同時期なわけで、五輪の「華やかさ」で印象付けられる年に、こうした静謐な作品が連載されていたことに、高度成長という時代の多面性も感じた。 -
Posted by ブクログ
昭和39年に新聞に連載された小説
大阪から東京の丘の上の一軒家に越してきた
大浦一家
風除けの木の選定に悩む物書きの主人とその妻
3人の子供達の日常が主人の目線で語られていきます
ムカデに刺されたり雷が家の中に落ちたり
と事件らしいこともあるけれど
夏休みの宿題を子供達以上に必死に段取りをする両親 ぼんやりとなすがままの子供達の姿に既視感を覚え
父と息子がお昼ご飯の時一緒にお湯を沸かす一部始終が妙に可笑しかったり
家族以外の人達にはどうでも良い
平凡でつまらない家庭内の出来事や約束事が
何でこんなに面白いんだろう
読みながらずっとニヤニヤしていて
そして思い出した
気がついた
家族との何でもない日常
記憶にも残らないそんな毎日が
とても暖かくて楽しい時間だった事
それは現在進行形でもある事
60年以上も前の昭和の家族風景
自然と昆虫が人にとても近しい存在だったけれど
みんなが普通に穏やかに生きている毎日は
昔も今もこれからも同じ
幸せな風景