稲見一良のレビュー一覧
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かつてこの著者の「セントメリーのリボン」を私は年間ベストワンに推したことがある。それほどまでに、彼が書く小説は衝撃的だった。
稲見一良(いなみいつら)、1931年大阪生まれ。テレビCF、記録映画の記録製作などに携わり、84年肝臓がんの宣告を受けてのち、本格的執筆活動に入る。91年「ダック・コール」で山本周五郎賞を受賞。他著に「男は旗」「ダブルオー・バック」「ソー・ザップ」など。94年逝去。
稲見一良は10年生きた。何度も手術を繰返しながら、最後のほうの「鳥」などは原稿用紙一枚、ほとんど「詩」である。それでも男として生き切った。その足跡に痺れたのだと思う。最初の頃は正調ハードボイルドで、 -
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絶版。稲見さんは大阪出身でドキュメンタリーの監督などを経て、その傍ら、作家活動。千葉市花見川区を舞台(実名でないときもあるが、モデルであることは確か)に多くの短編小説を中心に書き、94年2月にガンの闘病の末、亡くなった。
その名前すら知らなかったのだけど、ネット検索すると、「もっと知られてもいい作家」とみなさんが書いている。その通りだと思う。死後10年過ぎただけで、絶版がいくつもあるのは寂しい。そんな風に思ったのは僕だけじゃないようで、光文社文庫からは復刊もされている。
稲見さんの小説を単純に言えば、ハードボイルド・ファンタジー。銃、狩猟、焚火といった男くさい世界の中に、メローな世界が溶け -
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1991年第4回山本周五郎賞
小説も稲見さんも初読
いなみいつらさんとお読みする
1994年に癌のため亡くなっている
趣味が猟銃だったそうで
6話の短編からなる一冊ですが
各短編に野鳥が象徴的に登場する
“まれに見る美しさを持った小説”と評されていた
私は全く予備知識なしで読み始めたので
小説の流れがわからなくて、途中で解説を探した
もう古い作品ですから ネタバレと言っても
構成の部分を覚書程度に
プロローグで ちょっと仕事に疲れた青年が
川のほとりで雨にあい、近くにいた男性も
自分の車に誘う
その男は不思議な佇まいで石に野鳥を描いていた
青年はその絵の見事さに心打たれる
で、ここで多 -
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著者は草木にも野鳥にも詳しくないらしい。それでも本著に登場する野鳥は珍しいものもあり、物語に効果を与える重要な役割を担う。短編集である。キャンピングカーをベースに、子供と猟をする話が非常に良かった。キャンピングカーというだけで胸踊るが、そこで仕留めた鴨を料理する。非日常のワイルドさを疑似体験した。
何かに詳しくない、というのは、その分野や世界が自分自身から抜け落ちているような感覚だ。鳥の名前を知らないと正確で色彩豊かな文章は書けないし、読み手ならば、名前が知らないと脳内イメージが名もなき野鳥一匹になる。小説で想起するイメージは、自らが体験した過去のデータベースとその組み合わせに限られる。それ