【感想・ネタバレ】ダック・コールのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2017年09月21日

信頼のおける読友さんからのおすすめされ読みました。読書スランプの中、時間をかけ読みました。自然と鳥、そしてそこに登場してくるいろいろな人物の思いや人生、モヤモヤしたものはなく、どれも一本筋が通っており、読んでいて心地よかったです。特に密猟者と少年が交流する『密猟志願』源三爺の美しい回想『波の枕』贋作...続きを読む鴨と口の聞けない少年の冒険『デコイとブンタ』にとても惹かれました。どの章もラスト一文に余韻があり、美しさが散りばめられていると感じました。作者の言葉選び、言葉遣いは物語の語り手として完璧です。素晴らしい。感謝。

0

Posted by ブクログ 2017年06月12日

稲見一良という作家との出会いは『このミス』である。見慣れない作家が過去にもランクインしているのを見て興味を持ったのが最初。寡作家だったので当時その作品は比較的手に入りやすく、文庫化されていた作品は容易に手に入った。
物語の構成は世俗に疲れて旅に出た若者が出会った男が紡ぐ物語という構成を取っている。そ...続きを読むの男は石に鳥の絵を描くのを趣味としており、それら石に纏わる、もしくは連想される話という趣向が取られている。

「望遠」はCM会社に勤める男が撮影用の写真を撮るため、何日も寝ずに待っていたが、そこに稀少種の鳥がいるのを発見するという話。仕事を取るか、己が心底欲する物を取るか、惑う瞬間を描いた作品。

「パッセンジャー」は危険と知りながらも敵対する村の近くへ狩りに行った男が目の当たりにする鳥の大量虐殺の話。

「密漁志願」では癌を患って退職した男が狩猟中に出会った少年とのふれ合いを描き、「ホイッパーウィル」ではネイティヴ・アメリカンの脱走兵とそれを捕まえに行った男を描く。

「波の枕」は老人が若かりし頃、難破した船から辛くも逃れて亀に捕まって漂っていた夢を、「デコイとブンタ」は狩猟用の木彫りの鴨の彫刻と少年の冒険譚といずれもメルヘンチックな話。

これらに共通するのは自然の恩恵に対する敬意と慈しむ心だ。読書と銃と狩猟を趣味とした作者が人生の晩年に差し掛かって残そうとした自然に対する思いが優しく、また時に厳しい警告を伴って心に染み渡っていく。
泥臭ささえも感じさせる男の矜持、不器用さ、腕白少年のカッコよさ、自分の主義を愚直なまでに死守する姿勢など、忘れかけていた人間として大切なものを思い出させてくれる。

便利さが横行した現在ではもはやここに書かれている内容はもう既に一昔前の話、老人の昔語り程度ぐらいにしか感じてくれないかもしれない。でも十人のうち一人でもこの稲見一良という作家が残したかった物を感じ取ってもらえればそれで本望ではないだろうか。
私はこの作品を手に取るまでにはずい分と時間が掛かった。ずっと積上げたまま、読むその日が来るのを待っていた。その待っている最中に作者の人となりを知る機会があった。彼自身が癌に侵され、闘病生活の末に生き長らえた事。しかしまだ病巣は残っており、いつ再発してもおかしくない事。そんな背景から彼が高齢になって作家に転身した思いが作品に乗り移っていることを知った。

そしてこの作品に出てくる人物は作者の分身だ。稲見氏の生き様さえも見え隠れして、それまでの歩みを、またはこれからしたいであろう事が語られている。一人の人間として尊敬の念を自然と抱かせてくれる、そんな作品だ。
男ならば是非とも読んでほしい珠玉の短編集。私は永遠にこの本を手元に置いて決して離さずにいようと思う。

0

Posted by ブクログ 2021年02月07日

出合えたことに感謝したくなる一冊。作者の言葉選びのたぐいまれなるセンスに「作家」の底知れぬ力量をみた。神々しい文章に、ただただ感動。

0

Posted by ブクログ 2016年02月15日

 無気力な仕事に疲れ、気ままな旅をしていた青年は、ある日、石に鳥の絵を描く男と出会う。その夜、青年はまどろむうちに鳥と男たちに関する6つの夢を見る。

 ハードボイルドの語りと冒険小説の展開を各作品の基調としつつも、どこかメルヘンチックで幻想的な味わいもある、そんな不思議な作品集です。

 読んでい...続きを読むて感じるのは、カッコよさであったり、子どもみたいなワクワク感です。

 そして、描写も美しく力強い! 第一話の湖から飛び立とうとする鳥。第二話の空を覆い尽くすほどの鳥の群れ。まるでその場にいるように、自分の頭の中にそうした鳥たちの姿が浮かんできます。

 すべてを失ってでも、たった一枚の写真にすべてを懸けた青年の姿が描かれる「望遠」。森の中での銃撃戦と追走劇が描かれ、主人公側も、また逃げる犯罪者側も渋い「ホイッパーウィル」。いずれも男臭くて”カッコいい”の一言に尽きる短編です。

「パッセンジャー」は、鳥の群れに出くわした青年の姿を通して、絶滅した鳥の運命の寂しさや厳しさを描く短編。青年の姿と、絶滅した鳥の種をシンクロさせる、そんなものすごい技を見せられました。

「密猟志願」は中年の男と少年の友情物語。猟を通して意気投合した二人は、地元のあくどい名士の私有地に生息している鴨たちを捕まえ、逃がすことを計画します。

 二人が意気投合していく様子が読んでいて清々しい!猟の目的も金儲けなどではなく、自分たちの力を試すためだというのも清々しい!そして、作戦をたてて様々なピンチやアクシデントを乗り越えていく姿も清々しい!

 本当に読んでいて、清々しく楽しく、二人と一緒にワクワクした作品でした。童心に帰る、という言葉がぴたりと当てはまります。それだけにラストはなかなか皮肉で切なくもあります。語り手は少年に戻っていったのに、時間の流れや環境の変化は進んでいき、そして非情です。

 そういう意味では童心を思い出しただけでなく、その時代には戻れない、ということも感じさせられた短編でした。明るい雰囲気のまま終わらないのもまた、ハードボイルドなのかな、と思います。

「波の枕」は海上で遭難してしまった男の話。この短編集の中では一番メルヘンチックな話でありながらも、浮いている感じがしません。ハードボイルド的な語り口の良さに加え、この話に登場する動物たちの力強さと優しさが、またいい味を出しています。

「デコイとブンタ」の語り手はデコイです。デコイとは囮に使われる鳥の模型のことです。

 デコイの心理描写(?)や語り口が絶品!作り物でいつも囮としてボロボロになるまで使われていたデコイは、飛べる鳥たちに憧れ、自分の生に対しても後ろ向きでした。

 そのボロボロのデコイが少年に拾われるわけですが、少年によって修理され、色を塗りなおされデコイは、少年に親しみを覚え、彼を見守るような語り口になり、自分の生も悪いものではないかもしれない、と思うようになります。少年とデコイの人とモノを越えた友情が読んでいて心地いいです。

 これを読んでいて思い出したのが自分の子供の頃。当時の自分はポケモンの指人形をたくさん集め、それで遊んでいました。人ではないのですが、でも確かにそうしたおもちゃたちとは”友達”だったのだと思います。

 飛べないデコイと少年の別れは、さっぱりとした気持ちの良さと感動がありました。こんなに歯切れよく気持ちいい結末は、なかなかないかもしれません。

 こうした6つの話をつなぐのが、プロローグ・モノローグ・エピローグの青年と石に鳥の絵を書く男のやり取り。無気力な仕事に疲れ切っていた青年が、鳥の絵と6つの夢で、気持ちの何かが変わるのです。

 なんで普通の短編集じゃなくて、こんな形で短編をつないだのか不思議だったのですが、全て読むと納得がいきました。

 この青年は、たぶん日々の生活に疲れ切っている読者のことだと思います。そんな読者に対し、夢という形で、カッコよさや子どもの頃のワクワクといったロマンを見せてくれたのだと思います。だからエピローグまでくると、読者もこの青年と同じように、何か気持ちが軽くなり、心にエネルギーが注入されたような感じになるのです。

 永遠の少年たちに読んでほしい、そんな小説でした。

第4回山本周五郎賞
1992年版このミステリーがすごい!3位
このミステリーがすごい!ベストオブベスト6位

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年09月18日

何でこの本を手に取ったか覚えていないのですが、全く先入観も期待も無く読めたのが逆に良かったです。後から作者のバックグラウンドを知りました。ガンが治らないことを知ってから小説を本格的に書き始め、10年の作家活動の後に亡くなったそうです。
書評を読むと、どれも「美しい小説」と評してあります。「美しい小説...続きを読む」ってなんじゃらほい、と思いながら読んでみたところ、それが的確な表現であることが分かりました。
透き通った水がサラサラ流れる川のような文章です。凝った表現は無いのですが、心に文章が染み渡り、情景が目に浮かぶんです。一冊を通して、鳥がモチーフに出てきますが、それぞれの話の伝えたい内容は異なります。私は、乱獲により絶滅した鳩の物語や、少年とおじさんの交流の話、そして、カメが命を助けてくれた話がとても印象的で、素敵だと思いました。教科書に出てきそうな話です。出てきた鳥がどんなものか知りたくて、あとでインターネットで調べてみました。
地味ですが、いい本でした。

0

Posted by ブクログ 2014年05月20日

「美しい、只々美しい。」

ハードボイルドだけども美しい。
冒険譚的なファンタジーだけども美しい。
かけがえのない一瞬と引き換えに全てを失ったけれども美しい。
やっぱり矜持は美しい。
認める事、認められる事が美しい。
滅びゆくものは美しい。
年が離れていようが、過ごした時間が短かろうが、友情は美しい...続きを読む
潔く見送る事、静かに消える事も美しい・・・・かも。

美しさの中に見え隠れするもの―――――
荒々しくも、静謐が伴う物語。
幻想的だけど、熱い血が通った男の物語。

0

Posted by ブクログ 2012年10月12日

自分とはまったく接点のない世界を
体験できるのが読書の楽しみだとすると
この作品は、まさにそれをもつものだった。
正直、最初はなんじゃこりゃ、な感じだったし
しばらくは全く興味もない鳥の世界の話かと
つまんなくもおもったが、
読み進めるうちに・・・はまった。
それぞれの短編が実に愛おしい。
ハードボ...続きを読むイルドな雰囲気もいいねえ。

この作者はもう亡くなっているとか。
藤原伊織も、亡くなってあとに作品を読んだ。
同じパターン。
残念です。

0

Posted by ブクログ 2022年03月30日

全てに鳥が絡む短編集で面白かったが、これが歴代のミステリランキングの上位に入る作品として評価されている点については、それほどかなぁという気がする。

0

Posted by ブクログ 2020年06月06日

男のお伽話という趣きの短編集です。一人の男が夢を見ているような設定ですが、短編自体に鳥以外の接点はありません。どれもこれも雰囲気の違う話で全く飽きません。
ハードボイルドな雰囲気のものもあれば、ジュブナイルっぽいものもあります。
途中何故か僕の敬愛する野田知佑さんの本の引用も有ったりして、とてもとて...続きを読むもわくわくしました。
そういう副産物を省いたとしても、皆味わい深い短編となっているので、是非皆様に手に取って頂きたい佳作となっています。
狩猟というものが持つ残酷な部分というのは、必ず誰かが処理してくれている血なまぐささを無視する傲慢さとつながっていると思います。自然を破壊するのは自然から命を間引いて食す人ではなく、自然から遠く離れた人々の手で行われます。
狩猟や釣りを残酷だという気持ちも分かるのですが、そこに関わっている人は自然を愛している人たちなので、自然に関心が無い人たちは情け容赦なく、死刑宣告の書類にサインをするのです。

閑話休題
とにかく、自然に包まれたくなる本です。今すぐ釣りに行きたくなります(僕は狩猟は無理)

0

Posted by ブクログ 2019年01月13日

人からオススメされて読みました。
鳥をテーマにした連作短編集。

透明な文体というのか、読んでいてスッと入ってくる。
美しい文章でした。
天才的な狩りのセンスを持つ子供と一緒に狩りをする話がお気に入り。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年10月13日

石を拾い集めてそこに鳥の絵を描いている男性と出会った青年が、男性の描いた絵をひとつひとつ見ながら
その石に書かれた鳥にまつわる6つの夢を見る、という体で、
6話の短編が展開されていきます。

短いながらもそれぞれに趣深く美しいお話です。
淡々とした静かな文体の中に生命の美しさと切なさが溢れています。...続きを読む
一般的な所謂『ハードボイルド』のイメージとは異なる、
綺麗で儚く、それでいて男らしい不思議な魅力のあるお話ばかりです。

0

Posted by ブクログ 2017年09月04日

日本のハードボイルドの中では
伝説的な作品と言われているこの小説。
実はハードボイルドというよりも大人のメルヘンという感じの
優しくてhappyな気分にさせてくれる短編集です。この小説は文体的にはハードボイルドだし
狩猟とかマンハントなんかがモチーフになってるんですが
実は思い切りメロウな大人のメル...続きを読むヘンなんですね。
そしてファンタジー。
魔法使いとかが出て来るわけではないんですが、
苦境に立たされる主人公を救うことになるアイデア
つまり筆者である、稲見一良さんの描く奇跡がなんとも良いんですよ。
暖かくて優しい奇跡を物語の中で描いてくれるんですね。

どんな奇跡なのか?という事を書いてしまうと
もしもこれから読む方がいらっしゃるとしたら
マズイのでもちろん書きませんが(笑)
ネタバラシしたいなぁと思わずにはいられないので
奇跡を必要とする登場人物たちの苦境だけ少し書きましょうか(笑)

6篇の短編が収録されていますが、ラストの2篇は最高ですね。
【波の枕】では東南アジア沖で乗船が火事になり
ただ一人で海に漂うという男の話。
この男いかつい顔の無愛想な朴念仁ではあるんですが、
陸に帰れば怪我をした鳥や小動物なんかを元気になるまで
介抱してやるような優しい男でもあるんですね。
で、だだっ広い海で一人ぷらぷらもうどうなってもいいか、
なんて諦めはじめているところでちょっとした奇跡が起きるんですね。
その奇跡というのが良いんだな、まさかそんな展開とは!!
と私は思いました。

それから【デコイとブンタ】これは結構変わった設定で
デコイつまり鴨狩りなんかで使う木製の囮の模型ですね、
これが語り手の話なんですよ。
そのデコイがブンタという少年に拾われて大事に扱ってもらう。
その少年は一人で遊園地へ行くのですが観覧車のてっぺんで
置き去りになってしまうんですね、もちろんデコイも一緒に。
そして間の悪いことにその日からしばらく遊園地は休園の予定で
このままではずっと観覧車に閉じ込められたままになる。
もちろん、食料もないし、昔の話ですから携帯もあるわけなく
助けを呼ぶことも出来ない。
だけど、この少年あきらめないんですね、そこで奇跡が起きる、
そして少年に奇跡が起きるように、デコイにも何かが起きるんですね。
はい、どんなことが起きるのでしょうか??

どちらも見事なメルヘンですし、happyな気分にさせてくれます。
この本、久々に読んでおセンチになっていた私も元気になりました(笑)
ということでオススメですよ。
2017/08/20 21:12

0

Posted by ブクログ 2017年08月03日

点数は3.5にしたいのだけど、どちらかといえば4寄りといったところ。ハードボイルドの嫌なところが結構出ている。それは、童心とか男の夢といった、男の甘えのようなもの、そもそも童話のようなものをハードボイルドの文体で描くという試みは、そのような甘えを感傷や哀傷であると勘違いしており根本的にまちがっている...続きを読むとしか思えない。その意味で、マンハントの話や子どもとの交流の話は全く受け付けない。
反面、海で遭難していたら亀と鳥がいたという話はとぼけた味わいがあって楽しい。生と死のはざまの厳しさというものも、トビウオを食べるシーンで印象的に表現されている。とぼけた味わいと厳しさのバランスが、実にリアル、
最後の話もなかなかよい。人間同士のドラマではないのにきちんと最後にクライマックスがあるのが素晴らしい。そして風船の絵がすごく美しい。
各話のベースになる石に絵を描く男の話も地味によかった。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年11月08日

全編鳥が何らかの形で関係しています。
最初はなんかピンときませんでしたが、ヒロと密漁を企てる密漁志願のワクワク感がよく、その次のホイッパーウイルのハードボイルドも格好良かった。波の枕、デコイの話は美しいファンタジーな感じで、読後感が非常に爽やかでした。

0

Posted by ブクログ 2015年05月29日

タイトルとか表紙からして、鳥がかなり関与してくるものであろうとの想像は難くない。とすると、自分的にはあまり興味も持てず、イマイチ好きになれないかも…みたいな予感とともに挑戦。前半(というか最初の2話)が結構辛くて、正直匙を投げかけました。あまりそそられるものがないというか…でも後半にかけて盛り上がっ...続きを読むた感あり、マンハントの物語をピークに、最後2話も短いながら味わい深い物語でした。爽やかな余韻を残すタイプの。という訳で、手放しに好きではないけど、それなりに楽しませて頂きました。

0

Posted by ブクログ 2015年04月28日

渋くて精謐な小説。
時代も立場も、主人公のキャラクターも違うが、ストイックで誇り高い感じが一貫した連作短編。
書き口や布石からなんとなく予想される通りに進む話は好きではないが、本作はストーリーに頼らず色合いを鉄幹していたので、楽しめた。
話としては「密猟志願」が、人物と雰囲気は「ホッパーウィル」が好...続きを読むき。
4

0

Posted by ブクログ 2013年12月20日

ブラッドベリの「刺青の男」にヒントを得たという
全6編の連作小説。
すべて野鳥絡み。鳥は撃たれるばっかだけど・・・。
内容はそれに対する男達の話で、
なんというか・・・ハードボイルドです。
それでいてどの話も全て美しいです。
そしてどこか切ない感じが拭えません・・・。
面白かったと言う本ではありませ...続きを読むん。
でもかなりいい本です。

どのように?
う~ん・・・心が洗われるようなってこういう本かも。

0

Posted by ブクログ 2013年09月03日

家に居ながら、自然の大いなるバイタルを感じることのできる素敵な本に出会った。シンプルで覚悟に満ちた自然の命には悲しさと同時に美しさとロマンがある。都会の生活に慣れきった自分には”インディアンの挨拶「死ぬにはいい朝だ」”というマインドが新鮮でした。命のある限り自然に生きれば風景の見え方も変わるかな。ワ...続きを読むイルドに森に出かけようか、鳥になって大空を羽ばたこうか(笑)。

0

Posted by ブクログ 2013年03月16日

友人の部屋の本棚から勝手に拝借してきた一冊。恥ずかしながら、オイラこの作家を存じませんでした。まだ未読の素晴らしい作家って一体どれだけいるのか……

6つの短編・中編が納められている本作。一見バラバラに思える物語であるが、「鳥」が題材になっている作品ばかり。そしてそのどれもが息を飲む美しさ、強さ、...続きを読む非情さ、哀しさに彩られている。
さらに素晴らしいのが、端正で無駄のない文体。実に味わい深い作品集なのだ。

個人的に最も良かったのは、ハワイ育ちの日系二世の元軍人が、人種差別に満ちた本土の片田舎で、脱獄囚の山狩りでの働きを描く「ホイッパーウィル」だ。男はこうあるべきだっていう見本のような物語で、胸を打たれた。
この物語以外もすべてハズレなし。

男のロマンに満ちた感動の一冊なのであった。

0

Posted by ブクログ 2012年05月18日

短編として6つの話で構成。
それぞれが独特の味わいがある。
最初は、読みづらく感じたがそれは自分の錯覚。自分の知らない世界へ連れて行ってくれる感慨深い話ばかりだった。
リョコウバトについては、小学校のころ聴いたことがある。大量にいたはずの鳥が絶滅してしまった。なんと、人間って身勝手な生き物だこと。
...続きを読む作者がすでにこの世にいないとなると非常に残念。

0

Posted by ブクログ 2012年05月07日

単調な生活や仕事に倦み、旅に出た青年。
何か新鮮な発見があるのではと旅に期待していた彼だったが、
金も底を尽き、心身ともに疲れて帰途につこうと思っていたとき、
河原で、拾った石に鳥の絵を描く不思議な男と出会う。
男の描いた絵に魅せられつつ、彼は眠りに落ちる。
そして、鳥と人間たちにまつわる...続きを読む六つの夢を見る――。

地方の新興都市のPR映画の最後のワンシーンである、
日の出の瞬間を撮影するために山でそのときを待つ若者。
肝心のタイミングがやってきたそのとき、
若者の目の前に、幻の渡り鳥が現れて――「望遠」。
猟に入った森で見かけた、見たこともないような
鮮やかな色彩の鳥を追って、隣村までやってきてしまったサム。
そこで彼が見た驚くべき光景――「パッセンジャー」。
密猟のスリルに憧れる初老の男と、パチンコ名人の少年。
不思議な友情で結ばれた彼らは、傲慢な金満家の敷地にある
通称“男爵の森”の獲物の総獲りを目論む――「密猟志願」。
脱獄し森に逃げた凶悪な囚人たちを追ってのマンハント。
追跡隊に駆り出された日系二世のケン・タカハシは、
囚人のうちの一人が、死にいたる病に冒されており、
死ぬ前に故郷を目指していると知って――「ホイッパーウィル」。
漁師の源三は、遠洋漁業の航海中に起きた火事によって
海に投げ出され、仲間ともはぐれ漂流するはめに陥る。
大海原を漂う源三の前に現れたのは、大きな船板にとまる一羽の鳥と、
板に頭をもたせて泳ぐ巨大な亀だった――「波の枕」。
鳥たちをおびき寄せるための、精巧に作られた木製の鴨、デコイ。
打ち捨てられていたデコイはブンタという少年に拾われる。
ひ弱に見えるブンタだが、野を駆ける生き生きとした様子や、
秘めた力強さを持っていることが次第にわかり――「デコイとブンタ」。

鳥のいる風景と、人間たちの生を切り取り、活写した六つの物語。
稲見一良の珠玉の短編集。

本選びの際の指標として重宝している「このミス」別冊版において
この20年の国内作品のランキングで第6位に輝いた作品。
そうでなければ稲見一良という作家を知ることはなかったかもしれない。

初めに言っておくが、これはいわゆる「ミステリ」ではない。
作品中にミステリ的な要素は一切登場しないのである。
なので、変な期待をして読まないほうが良い。
自分が勝手に抱いていた期待を裏切られただけで
その作品に対して悪印象を持つ方もいるようなので、
念のために注意を喚起しておく。

そんなジャンルなどといった些末なことはどうでも良い。
素直に読めば、この作品集を読んで、
楽しめない人間はまずいないだろうとさえ思える。
そのくらい、素敵な作品集である。

豊かな語彙によって鮮やかに描写される情景。
鳥や、猟についてはまったくの無知である私のような読者でも、
深い興味を抱かずにはおれなくなるような表現。
そしてストーリー展開も派手ではないが、
手堅く綺麗にまとまっており、余韻も深い。

分量の点では、「密猟志願」「ホイッパーウィル」が目立つため、
印象に残りやすいかと思うが、実はそのようなこともなく、
他の短い作品も、豊饒な魅力をたたえているのである。

物語を読む歓びとともに、素晴らしい文章を読む悦びも味わえる。
流行りの作品ばかりに手を出すのもいいが、
こういったものを見落とすのはあまりに惜しい。
そのように感じた一冊である。

0

Posted by ブクログ 2012年04月21日

プロローグ
第一話 望遠
第二話 パッセンジャー
第三話 密猟志願
モノローグ
第四話 ホイッパー・ウィル
第五話 波の枕
第六話 デコイとブンタ
エピローグ
という構成。一連の繋がりのあるプロローグ、モノローグ
、エピローグ以外の六話は、テーマはなんとなく共通しているが、それぞれ独立した短編。野鳥...続きを読むやその他の野生動物、自然の描写がすばらしかった。久しぶりにじんわりと味わい深い作品に出会えた。

0

Posted by ブクログ 2024年01月06日

ハードボイルドであり冒険小説であり奇妙な小説でもある本書。ただ統一されているのは「鳥」にまつわる話で固められた物語であるということだ。著者の稲見一良さんがそうだったためか狩猟や自然にまつわる描写が丁寧で丹念。ある青年が出会った不思議な石を書く男性。彼の描いた石(鳥の絵)から物語が飛ばされていく。鳥と...続きを読むいう生態を通して生と死をまざまざと見せつけてくる。良かったのは「ホイッパーウィル」脱獄囚の狩りを頼まれた主人公をハードタッチで描く。これがたっぷりと読ませられた。

0

Posted by ブクログ 2023年12月07日

著者は草木にも野鳥にも詳しくないらしい。それでも本著に登場する野鳥は珍しいものもあり、物語に効果を与える重要な役割を担う。短編集である。キャンピングカーをベースに、子供と猟をする話が非常に良かった。キャンピングカーというだけで胸踊るが、そこで仕留めた鴨を料理する。非日常のワイルドさを疑似体験した。
...続きを読む
何かに詳しくない、というのは、その分野や世界が自分自身から抜け落ちているような感覚だ。鳥の名前を知らないと正確で色彩豊かな文章は書けないし、読み手ならば、名前が知らないと脳内イメージが名もなき野鳥一匹になる。小説で想起するイメージは、自らが体験した過去のデータベースとその組み合わせに限られる。それも悔しいので、最近、分からない単語はネットで検索しながら読んでいる。

キャンピングカーと雨。ウィスキーが合いそうな小説だった。もしかしたら、このイメージも結局は登場する固有名詞から連想し、自らの過去の体験を照らし合わせた、オリジナルなものかも知れないが。小説はそういう楽しみ方で良いかな、と。

0

Posted by ブクログ 2023年10月01日

ちょっと文体(〜た。の連続)と作風が自分の好みに合わず、途中から流し読みになってしまいました。

東西ミステリーベスト100ランクインの本作なんだけど謎解きと言うよりハードボイルドです。

妻と言うか女性の扱いがちょっとカワイソウかな。
描写に鮮やかさを感じさせる部分はあると思います。

0

Posted by ブクログ 2016年01月02日

面白かった。
読みやすくて、鳥にまつわる話として飽きることなく読めました。すべてのストーリーで余韻もよかったですね。とても残念なのは、ミステリーを期待してよんだのでちょっとテンションにはあってなかったですね。物語としてはとてもよい作品だったと思います。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年05月24日

望遠が一番好き。
こんなに素晴らしいのに世間の反応がイマイチ、ということが自分にもよくあるので若者の気持ちが分かる。切ない。
ホイッパーウィルの最後は美しかった。
行動力のある少年たち、見てるこっちは心配だけど自分には真似できないからちょっと羨ましい。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年01月04日

いいわけではないが書いておこう。
私は鳥が嫌いだ。

というわけで、私は鳥が嫌いだから、鳥の話も嫌い。
それだけ?

うん。それだけ。

確かに鳥の話ってわけでもない。
野鳥を愛でる友の会の話ってわけでもない。
どちらかと言えば、バードウォッチャーに喧嘩を売っているような話もある。

それでもあまり...続きを読む好きになれないんだよね。

面白いことは面白いんだ。

豪邸に忍び込んで密漁をしようと言う話。
成功するのか、失敗するのか、捕まって牢屋にぶち込まれるのか、逃げおおせるのか。

ドキドキしながら読み進めていたのも事実。それでも、どうしても好きだ。とか良かったとか言えないんだよね。

ま、バイアスで★-1くらいになっているということで。

0

Posted by ブクログ 2014年07月06日

野鳥や自然の描写が細やかで美しい。6つの短編が収められていて、どの登場人物もゆずれないロマンや誇りを持っている。個人的によかったのは「密猟志願」少年と初老の男性との触れ合いもよく描かれており、心和んだ作品だった。

0

Posted by ブクログ 2014年07月01日

もうこの人の新作が読めないと思った時に、とても残念に思った。それがこの作品を読み終わった時の感想でした。

生き物が好きなのに、狩猟に惹かれる…女には分からない部分なのかも。ただ好きっていうのではないのでしょうね。

短編のスタイルとしても、なんとなく気に入りました。稲見さん、素敵な物語をアリガトウ...続きを読む

0

「小説」ランキング