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石に鳥の絵を描く不思議な男に河原で出会った青年は、微睡むうち鳥と男たちについての六つの夢を見る―。絶滅する鳥たち、少年のパチンコ名人と中年男の密猟の冒険、脱獄囚を追っての山中のマンハント、人と鳥と亀との漂流譚、デコイと少年の友情などを。ブラッドベリの『刺青の男』にヒントをえた、ハードボイルドと幻想が交差する異色作品集。“まれに見る美しさを持った小説”と絶賛された第四回山本周五郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
信頼のおける読友さんからのおすすめされ読みました。読書スランプの中、時間をかけ読みました。自然と鳥、そしてそこに登場してくるいろいろな人物の思いや人生、モヤモヤしたものはなく、どれも一本筋が通っており、読んでいて心地よかったです。特に密猟者と少年が交流する『密猟志願』源三爺の美しい回想『波の枕』贋作...続きを読む鴨と口の聞けない少年の冒険『デコイとブンタ』にとても惹かれました。どの章もラスト一文に余韻があり、美しさが散りばめられていると感じました。作者の言葉選び、言葉遣いは物語の語り手として完璧です。素晴らしい。感謝。
稲見一良という作家との出会いは『このミス』である。見慣れない作家が過去にもランクインしているのを見て興味を持ったのが最初。寡作家だったので当時その作品は比較的手に入りやすく、文庫化されていた作品は容易に手に入った。 物語の構成は世俗に疲れて旅に出た若者が出会った男が紡ぐ物語という構成を取っている。そ...続きを読むの男は石に鳥の絵を描くのを趣味としており、それら石に纏わる、もしくは連想される話という趣向が取られている。 「望遠」はCM会社に勤める男が撮影用の写真を撮るため、何日も寝ずに待っていたが、そこに稀少種の鳥がいるのを発見するという話。仕事を取るか、己が心底欲する物を取るか、惑う瞬間を描いた作品。 「パッセンジャー」は危険と知りながらも敵対する村の近くへ狩りに行った男が目の当たりにする鳥の大量虐殺の話。 「密漁志願」では癌を患って退職した男が狩猟中に出会った少年とのふれ合いを描き、「ホイッパーウィル」ではネイティヴ・アメリカンの脱走兵とそれを捕まえに行った男を描く。 「波の枕」は老人が若かりし頃、難破した船から辛くも逃れて亀に捕まって漂っていた夢を、「デコイとブンタ」は狩猟用の木彫りの鴨の彫刻と少年の冒険譚といずれもメルヘンチックな話。 これらに共通するのは自然の恩恵に対する敬意と慈しむ心だ。読書と銃と狩猟を趣味とした作者が人生の晩年に差し掛かって残そうとした自然に対する思いが優しく、また時に厳しい警告を伴って心に染み渡っていく。 泥臭ささえも感じさせる男の矜持、不器用さ、腕白少年のカッコよさ、自分の主義を愚直なまでに死守する姿勢など、忘れかけていた人間として大切なものを思い出させてくれる。 便利さが横行した現在ではもはやここに書かれている内容はもう既に一昔前の話、老人の昔語り程度ぐらいにしか感じてくれないかもしれない。でも十人のうち一人でもこの稲見一良という作家が残したかった物を感じ取ってもらえればそれで本望ではないだろうか。 私はこの作品を手に取るまでにはずい分と時間が掛かった。ずっと積上げたまま、読むその日が来るのを待っていた。その待っている最中に作者の人となりを知る機会があった。彼自身が癌に侵され、闘病生活の末に生き長らえた事。しかしまだ病巣は残っており、いつ再発してもおかしくない事。そんな背景から彼が高齢になって作家に転身した思いが作品に乗り移っていることを知った。 そしてこの作品に出てくる人物は作者の分身だ。稲見氏の生き様さえも見え隠れして、それまでの歩みを、またはこれからしたいであろう事が語られている。一人の人間として尊敬の念を自然と抱かせてくれる、そんな作品だ。 男ならば是非とも読んでほしい珠玉の短編集。私は永遠にこの本を手元に置いて決して離さずにいようと思う。
出合えたことに感謝したくなる一冊。作者の言葉選びのたぐいまれなるセンスに「作家」の底知れぬ力量をみた。神々しい文章に、ただただ感動。
無気力な仕事に疲れ、気ままな旅をしていた青年は、ある日、石に鳥の絵を描く男と出会う。その夜、青年はまどろむうちに鳥と男たちに関する6つの夢を見る。 ハードボイルドの語りと冒険小説の展開を各作品の基調としつつも、どこかメルヘンチックで幻想的な味わいもある、そんな不思議な作品集です。 読んでい...続きを読むて感じるのは、カッコよさであったり、子どもみたいなワクワク感です。 そして、描写も美しく力強い! 第一話の湖から飛び立とうとする鳥。第二話の空を覆い尽くすほどの鳥の群れ。まるでその場にいるように、自分の頭の中にそうした鳥たちの姿が浮かんできます。 すべてを失ってでも、たった一枚の写真にすべてを懸けた青年の姿が描かれる「望遠」。森の中での銃撃戦と追走劇が描かれ、主人公側も、また逃げる犯罪者側も渋い「ホイッパーウィル」。いずれも男臭くて”カッコいい”の一言に尽きる短編です。 「パッセンジャー」は、鳥の群れに出くわした青年の姿を通して、絶滅した鳥の運命の寂しさや厳しさを描く短編。青年の姿と、絶滅した鳥の種をシンクロさせる、そんなものすごい技を見せられました。 「密猟志願」は中年の男と少年の友情物語。猟を通して意気投合した二人は、地元のあくどい名士の私有地に生息している鴨たちを捕まえ、逃がすことを計画します。 二人が意気投合していく様子が読んでいて清々しい!猟の目的も金儲けなどではなく、自分たちの力を試すためだというのも清々しい!そして、作戦をたてて様々なピンチやアクシデントを乗り越えていく姿も清々しい! 本当に読んでいて、清々しく楽しく、二人と一緒にワクワクした作品でした。童心に帰る、という言葉がぴたりと当てはまります。それだけにラストはなかなか皮肉で切なくもあります。語り手は少年に戻っていったのに、時間の流れや環境の変化は進んでいき、そして非情です。 そういう意味では童心を思い出しただけでなく、その時代には戻れない、ということも感じさせられた短編でした。明るい雰囲気のまま終わらないのもまた、ハードボイルドなのかな、と思います。 「波の枕」は海上で遭難してしまった男の話。この短編集の中では一番メルヘンチックな話でありながらも、浮いている感じがしません。ハードボイルド的な語り口の良さに加え、この話に登場する動物たちの力強さと優しさが、またいい味を出しています。 「デコイとブンタ」の語り手はデコイです。デコイとは囮に使われる鳥の模型のことです。 デコイの心理描写(?)や語り口が絶品!作り物でいつも囮としてボロボロになるまで使われていたデコイは、飛べる鳥たちに憧れ、自分の生に対しても後ろ向きでした。 そのボロボロのデコイが少年に拾われるわけですが、少年によって修理され、色を塗りなおされデコイは、少年に親しみを覚え、彼を見守るような語り口になり、自分の生も悪いものではないかもしれない、と思うようになります。少年とデコイの人とモノを越えた友情が読んでいて心地いいです。 これを読んでいて思い出したのが自分の子供の頃。当時の自分はポケモンの指人形をたくさん集め、それで遊んでいました。人ではないのですが、でも確かにそうしたおもちゃたちとは”友達”だったのだと思います。 飛べないデコイと少年の別れは、さっぱりとした気持ちの良さと感動がありました。こんなに歯切れよく気持ちいい結末は、なかなかないかもしれません。 こうした6つの話をつなぐのが、プロローグ・モノローグ・エピローグの青年と石に鳥の絵を書く男のやり取り。無気力な仕事に疲れ切っていた青年が、鳥の絵と6つの夢で、気持ちの何かが変わるのです。 なんで普通の短編集じゃなくて、こんな形で短編をつないだのか不思議だったのですが、全て読むと納得がいきました。 この青年は、たぶん日々の生活に疲れ切っている読者のことだと思います。そんな読者に対し、夢という形で、カッコよさや子どもの頃のワクワクといったロマンを見せてくれたのだと思います。だからエピローグまでくると、読者もこの青年と同じように、何か気持ちが軽くなり、心にエネルギーが注入されたような感じになるのです。 永遠の少年たちに読んでほしい、そんな小説でした。 第4回山本周五郎賞 1992年版このミステリーがすごい!3位 このミステリーがすごい!ベストオブベスト6位
「美しい、只々美しい。」 ハードボイルドだけども美しい。 冒険譚的なファンタジーだけども美しい。 かけがえのない一瞬と引き換えに全てを失ったけれども美しい。 やっぱり矜持は美しい。 認める事、認められる事が美しい。 滅びゆくものは美しい。 年が離れていようが、過ごした時間が短かろうが、友情は美しい...続きを読む。 潔く見送る事、静かに消える事も美しい・・・・かも。 美しさの中に見え隠れするもの――――― 荒々しくも、静謐が伴う物語。 幻想的だけど、熱い血が通った男の物語。
自分とはまったく接点のない世界を 体験できるのが読書の楽しみだとすると この作品は、まさにそれをもつものだった。 正直、最初はなんじゃこりゃ、な感じだったし しばらくは全く興味もない鳥の世界の話かと つまんなくもおもったが、 読み進めるうちに・・・はまった。 それぞれの短編が実に愛おしい。 ハードボ...続きを読むイルドな雰囲気もいいねえ。 この作者はもう亡くなっているとか。 藤原伊織も、亡くなってあとに作品を読んだ。 同じパターン。 残念です。
その目には誇りのごとき鳥がいる/これは男性の琴線に触れるタイプなんではないかという気がする/プロローグの石に描かれた鳥のエピソードで引き込まれた/この早朝しかないという写真を撮ろうとするカメラマン助手の前にめったに見られないシベリヤ・オオハシシギが現れる/猟師のサムは美しいハトの大群と出会い大変な目...続きを読むに遭う/密猟に憧れつつも失敗し続ける男の前に密猟の上手い少年ヒロが現れ弟子入りさせてもらうことになった/ケンは保安官の依頼で三人の脱獄囚を追跡することになった。オーキィとの邂逅がとろけるようにカッコいい/デコイの「俺」と少年ブン。 【一行目】川の流れに手を入れた時だった。ああ、この夏も終るな、とぼくは感じた。水が冷たかったのだ。九月の初めの、遅い午後だった。 読んだのは単行本です。
男が心に古郷を作るみたいな(解説で「原風景を獲得する」って書かれていた。そっちの方が言葉のチョイスとして良いね)、そんな感じの短編集。 野鳥の描写が素晴らしくて、特にコガモの着水など風景としての美しさとコミカルさがこんなに少ない言葉で表し切れるのかと驚いた。リョコウバトの話が青い鳥要素もあって物悲し...続きを読むくて特に良かった
全てに鳥が絡む短編集で面白かったが、これが歴代のミステリランキングの上位に入る作品として評価されている点については、それほどかなぁという気がする。
男のお伽話という趣きの短編集です。一人の男が夢を見ているような設定ですが、短編自体に鳥以外の接点はありません。どれもこれも雰囲気の違う話で全く飽きません。 ハードボイルドな雰囲気のものもあれば、ジュブナイルっぽいものもあります。 途中何故か僕の敬愛する野田知佑さんの本の引用も有ったりして、とてもとて...続きを読むもわくわくしました。 そういう副産物を省いたとしても、皆味わい深い短編となっているので、是非皆様に手に取って頂きたい佳作となっています。 狩猟というものが持つ残酷な部分というのは、必ず誰かが処理してくれている血なまぐささを無視する傲慢さとつながっていると思います。自然を破壊するのは自然から命を間引いて食す人ではなく、自然から遠く離れた人々の手で行われます。 狩猟や釣りを残酷だという気持ちも分かるのですが、そこに関わっている人は自然を愛している人たちなので、自然に関心が無い人たちは情け容赦なく、死刑宣告の書類にサインをするのです。 閑話休題 とにかく、自然に包まれたくなる本です。今すぐ釣りに行きたくなります(僕は狩猟は無理)
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