稲見一良のレビュー一覧

  • 遺作集 花見川のハック

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    これはとても良かったです!
    10の短編小説と、最後に詩のような1篇と、本人による「まえがき」と、当時の編集者による「あとがき」という、計13編すべてが良かったです。

    「遺作集」と書かれているとおり、亡くなる直前まで書いていた作品たちだそうです。
    病気だから…といった手抜き感や妥協は感じられません。
    1994年に書かれたという古さもあまり感じなかったです。

    元々がハードボイルド作家だそうなので、あちこちで銃を撃つシーンがあり、日本ではあり得ないなぁと思いつつ、全体的にドラマや映画を見ているような雰囲気に包まれました。
    子どもが出てくる作品が多めなので、「スタンド・バイ・ミー」とか「レオン」み

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    2025年12月07日
  • セント・メリーのリボン 新装版

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    クリスマスが迫ってくると、無性に読みたくなる「セントメリーのリボン」。
    これで四度目かと思います。
    いろんな面白い小説を今年も読んだけど、他では味わうことのできない読後感に再びページをめくりました。そして久々にウィスキーを買ってしまった。
    ハードボイルドな気分でロックで飲みたいと思います。

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    2024年12月11日
  • セント・メリーのリボン 新装版

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    稲見一良『セント・メリーのリボン 新装版』光文社文庫。

    新装版となり、表紙イラストが谷口ジローさんであったことから購入、再読。新潮文庫、光文社文庫の旧版でも、谷口ジローさんの劇画版でも読んでいるのだが、何度でも読み返したくなる大傑作である。

    稲見一良さんの『男とはこうあるべき』という強いメッセージが伝わって来る『焚火』『花見川の要塞』『麦畑のミッション』『終着駅』『セント・メリーのリボン』の珠玉短編5編を収録。新装版では新たな解説が収録されている。

    『焚火』。ピカレスク・ハードボイルドの掌編。反社会的勢力に追われる男とたまたま男を助ける孤独な老人。老人の正体は明かされないが、何故かそれが

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    2018年08月26日
  • ダック・コール

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    信頼のおける読友さんからのおすすめされ読みました。読書スランプの中、時間をかけ読みました。自然と鳥、そしてそこに登場してくるいろいろな人物の思いや人生、モヤモヤしたものはなく、どれも一本筋が通っており、読んでいて心地よかったです。特に密猟者と少年が交流する『密猟志願』源三爺の美しい回想『波の枕』贋作鴨と口の聞けない少年の冒険『デコイとブンタ』にとても惹かれました。どの章もラスト一文に余韻があり、美しさが散りばめられていると感じました。作者の言葉選び、言葉遣いは物語の語り手として完璧です。素晴らしい。感謝。

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    2017年09月21日
  • ダブルオー・バック

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    ポンプ・アクション6連発銃、ウィンチェスターM12。通称“シャクリ”と呼ばれる一丁の銃が人から人へ渡る。その銃を手にした者たちの物語を綴った連作短編集。
    これが稲見氏の小説で一冊の本として纏められた実質上のデビュー作となる。

    その端緒となる第一話「オープン・シーズン」は腰だめで撃つ自分の射撃スタイルにこだわった男が落ちていくさまを描いた哀しい物語。これを筆頭に、収められた4つの物語は何がしか魂を震えさせるものを感じさせてくれる。

    「斧という字の中に父がいる、ということに今頃気づいた」
    という印象的な一文から始まる「斧」は離別し、山に篭って生活する父の許に息子が訪ね、大自然で生きていく術を

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    2017年06月14日
  • ダック・コール

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    稲見一良という作家との出会いは『このミス』である。見慣れない作家が過去にもランクインしているのを見て興味を持ったのが最初。寡作家だったので当時その作品は比較的手に入りやすく、文庫化されていた作品は容易に手に入った。
    物語の構成は世俗に疲れて旅に出た若者が出会った男が紡ぐ物語という構成を取っている。その男は石に鳥の絵を描くのを趣味としており、それら石に纏わる、もしくは連想される話という趣向が取られている。

    「望遠」はCM会社に勤める男が撮影用の写真を撮るため、何日も寝ずに待っていたが、そこに稀少種の鳥がいるのを発見するという話。仕事を取るか、己が心底欲する物を取るか、惑う瞬間を描いた作品。

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    2017年06月12日
  • ダック・コール

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    出合えたことに感謝したくなる一冊。作者の言葉選びのたぐいまれなるセンスに「作家」の底知れぬ力量をみた。神々しい文章に、ただただ感動。

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    2021年02月07日
  • ダック・コール

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     無気力な仕事に疲れ、気ままな旅をしていた青年は、ある日、石に鳥の絵を描く男と出会う。その夜、青年はまどろむうちに鳥と男たちに関する6つの夢を見る。

     ハードボイルドの語りと冒険小説の展開を各作品の基調としつつも、どこかメルヘンチックで幻想的な味わいもある、そんな不思議な作品集です。

     読んでいて感じるのは、カッコよさであったり、子どもみたいなワクワク感です。

     そして、描写も美しく力強い! 第一話の湖から飛び立とうとする鳥。第二話の空を覆い尽くすほどの鳥の群れ。まるでその場にいるように、自分の頭の中にそうした鳥たちの姿が浮かんできます。

     すべてを失ってでも、たった一枚の写真にすべて

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    2016年02月15日
  • セント・メリーのリボン

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    確か、何年か前、病気でお亡くなりになった作家の作品。つまり、この人の作品は増えることがないということ。なかなかファンも多かった作家だけに、残念です。わたしも、今回読んでファンになりました。

    さてこれは「焚火」「花見川の要塞」「麦畑のミッション」「終着駅」「セント・メリーのリボン」の5作が入った短編集です。
    あとがきに「男の贈り物を共通とする主題とした」とある作品集だけに、それぞれの作品で確かに様々な贈り物が出てくる。


    「焚火」ではやくざに追われる主人公の男に、焚火をしていた老人から焼きたての芋とハムが。
    「花見川の要塞」ではフリーカメラマンの男が、ある日花見川付近で見かけた老婆と少年か

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    2015年07月25日
  • ダック・コール

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    ネタバレ

    何でこの本を手に取ったか覚えていないのですが、全く先入観も期待も無く読めたのが逆に良かったです。後から作者のバックグラウンドを知りました。ガンが治らないことを知ってから小説を本格的に書き始め、10年の作家活動の後に亡くなったそうです。
    書評を読むと、どれも「美しい小説」と評してあります。「美しい小説」ってなんじゃらほい、と思いながら読んでみたところ、それが的確な表現であることが分かりました。
    透き通った水がサラサラ流れる川のような文章です。凝った表現は無いのですが、心に文章が染み渡り、情景が目に浮かぶんです。一冊を通して、鳥がモチーフに出てきますが、それぞれの話の伝えたい内容は異なります。私は

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    2014年09月18日
  • ダック・コール

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    「美しい、只々美しい。」

    ハードボイルドだけども美しい。
    冒険譚的なファンタジーだけども美しい。
    かけがえのない一瞬と引き換えに全てを失ったけれども美しい。
    やっぱり矜持は美しい。
    認める事、認められる事が美しい。
    滅びゆくものは美しい。
    年が離れていようが、過ごした時間が短かろうが、友情は美しい。
    潔く見送る事、静かに消える事も美しい・・・・かも。

    美しさの中に見え隠れするもの―――――
    荒々しくも、静謐が伴う物語。
    幻想的だけど、熱い血が通った男の物語。

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    2014年05月20日
  • 猟犬探偵

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    竜門さん、相変わらずです。

    常に持たざる者に心を砕いている所が格好いい。

    この人の物語を、もっともっと読みたかった。

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    2013年11月15日
  • 猟犬探偵 2 サイド・キック

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    猟犬探偵、竜門卓にまたまた奇妙な犬探しの依頼が舞い込む。果たして竜門は無事に犬を探し出すことが出来るのか…

    相変わらず谷口ジローの作画には驚くばかりだ。まるでドラマを観るかのような描写に驚かされる。稲見一良の原作も味わい深く、男を感じるのだが、作画により、さらに臨場感が増している。

    前作の『猟犬探偵① セント・メリーのリボン』も良かったが、この作品も素晴らしい。

    竜門とハナ、セント・メリーの再会シーンには涙。そして、ラストにも涙、涙。この作品を読んでから、稲見一良の原作を読むのも良いだろう。

    そうか、竜門にとってサイド・キックとは!

    岩手の釜石と久慈が登場するのも嬉しい。

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    2012年12月19日
  • ダック・コール

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    自分とはまったく接点のない世界を
    体験できるのが読書の楽しみだとすると
    この作品は、まさにそれをもつものだった。
    正直、最初はなんじゃこりゃ、な感じだったし
    しばらくは全く興味もない鳥の世界の話かと
    つまんなくもおもったが、
    読み進めるうちに・・・はまった。
    それぞれの短編が実に愛おしい。
    ハードボイルドな雰囲気もいいねえ。

    この作者はもう亡くなっているとか。
    藤原伊織も、亡くなってあとに作品を読んだ。
    同じパターン。
    残念です。

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    2012年10月12日
  • 猟犬探偵

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    セントメリーのリボンの続編です。
    連作集ですが,どの作品も素敵です。
    作者にはもっと,竜門卓とジョーが活躍する物語を作って欲しかったです。

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    2011年03月21日
  • ダブルオー・バック

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    『銃が人手を巡り、生みだされた四つの切ない物語。ハードボイルド連作短編』
    流れる文体がとてもきれい
    作り出されている世界観が澄んでいてカッコよい

    稲見さん(1931/1/1 - 1994/2/24)はもうなくなっている作家
    裏表紙に載っているオヤジの写真を見て
    この人がこんな文章を??!と思ってしまった

    山歩きに出かけたくなる

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    2010年12月01日
  • 猟犬探偵

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    やはり読んで良かった。
    まさに「誇り高き男の、含羞を込めた贈り物」であるセントメリーのリボンに続く物語「猟犬探偵」。
    優しく、強く、まさにハードボイルドは主人公を、全く嫌みなく書いている。
    今回は、トナカイも探せば馬も探した。
    さりげなく女にモテるところもニクイ。
    スッキリして、それでいて心がジワっとする作品。

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    2009年10月04日
  • セント・メリーのリボン

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    一番最初に巡りあって、一番好きな稲見作品かもしれない。
    再読した時には『花見川の要塞』に感動を覚えた。そのせいで、当時カメラマンの友人にプレゼントしたっけ。
    最近再販されて、『この文庫がすごい』の1位になったという解説を読んで、涙が出そうになった。

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    2009年10月04日
  • ダブルオー・バック

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    2・3年前に再読した。
    『アーリィタイムス・ドリーム』はハードボイルドを軽いタッチにした、とても良い作品でした。

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    2009年10月04日
  • セント・メリーのリボン

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    感動した。今まで読まなくてごめんなさい。ミステリじゃないからといって読まなくてごめんなさい。何でこの本知ったんだっけ?男の世界を誇り高く描いているから、女性には分からないかもしれないけれど、男である俺には突き刺さった。こんな風に生きてみたい。誇り高く、幻想的で、洒落てて、すかっとして、そして泣かせる。そんなすばらしい短編集だった。

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    2009年10月04日