稲見一良のレビュー一覧
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これはとても良かったです!
10の短編小説と、最後に詩のような1篇と、本人による「まえがき」と、当時の編集者による「あとがき」という、計13編すべてが良かったです。
「遺作集」と書かれているとおり、亡くなる直前まで書いていた作品たちだそうです。
病気だから…といった手抜き感や妥協は感じられません。
1994年に書かれたという古さもあまり感じなかったです。
元々がハードボイルド作家だそうなので、あちこちで銃を撃つシーンがあり、日本ではあり得ないなぁと思いつつ、全体的にドラマや映画を見ているような雰囲気に包まれました。
子どもが出てくる作品が多めなので、「スタンド・バイ・ミー」とか「レオン」み -
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稲見一良『セント・メリーのリボン 新装版』光文社文庫。
新装版となり、表紙イラストが谷口ジローさんであったことから購入、再読。新潮文庫、光文社文庫の旧版でも、谷口ジローさんの劇画版でも読んでいるのだが、何度でも読み返したくなる大傑作である。
稲見一良さんの『男とはこうあるべき』という強いメッセージが伝わって来る『焚火』『花見川の要塞』『麦畑のミッション』『終着駅』『セント・メリーのリボン』の珠玉短編5編を収録。新装版では新たな解説が収録されている。
『焚火』。ピカレスク・ハードボイルドの掌編。反社会的勢力に追われる男とたまたま男を助ける孤独な老人。老人の正体は明かされないが、何故かそれが -
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ポンプ・アクション6連発銃、ウィンチェスターM12。通称“シャクリ”と呼ばれる一丁の銃が人から人へ渡る。その銃を手にした者たちの物語を綴った連作短編集。
これが稲見氏の小説で一冊の本として纏められた実質上のデビュー作となる。
その端緒となる第一話「オープン・シーズン」は腰だめで撃つ自分の射撃スタイルにこだわった男が落ちていくさまを描いた哀しい物語。これを筆頭に、収められた4つの物語は何がしか魂を震えさせるものを感じさせてくれる。
「斧という字の中に父がいる、ということに今頃気づいた」
という印象的な一文から始まる「斧」は離別し、山に篭って生活する父の許に息子が訪ね、大自然で生きていく術を -
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稲見一良という作家との出会いは『このミス』である。見慣れない作家が過去にもランクインしているのを見て興味を持ったのが最初。寡作家だったので当時その作品は比較的手に入りやすく、文庫化されていた作品は容易に手に入った。
物語の構成は世俗に疲れて旅に出た若者が出会った男が紡ぐ物語という構成を取っている。その男は石に鳥の絵を描くのを趣味としており、それら石に纏わる、もしくは連想される話という趣向が取られている。
「望遠」はCM会社に勤める男が撮影用の写真を撮るため、何日も寝ずに待っていたが、そこに稀少種の鳥がいるのを発見するという話。仕事を取るか、己が心底欲する物を取るか、惑う瞬間を描いた作品。
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無気力な仕事に疲れ、気ままな旅をしていた青年は、ある日、石に鳥の絵を描く男と出会う。その夜、青年はまどろむうちに鳥と男たちに関する6つの夢を見る。
ハードボイルドの語りと冒険小説の展開を各作品の基調としつつも、どこかメルヘンチックで幻想的な味わいもある、そんな不思議な作品集です。
読んでいて感じるのは、カッコよさであったり、子どもみたいなワクワク感です。
そして、描写も美しく力強い! 第一話の湖から飛び立とうとする鳥。第二話の空を覆い尽くすほどの鳥の群れ。まるでその場にいるように、自分の頭の中にそうした鳥たちの姿が浮かんできます。
すべてを失ってでも、たった一枚の写真にすべて -
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確か、何年か前、病気でお亡くなりになった作家の作品。つまり、この人の作品は増えることがないということ。なかなかファンも多かった作家だけに、残念です。わたしも、今回読んでファンになりました。
さてこれは「焚火」「花見川の要塞」「麦畑のミッション」「終着駅」「セント・メリーのリボン」の5作が入った短編集です。
あとがきに「男の贈り物を共通とする主題とした」とある作品集だけに、それぞれの作品で確かに様々な贈り物が出てくる。
「焚火」ではやくざに追われる主人公の男に、焚火をしていた老人から焼きたての芋とハムが。
「花見川の要塞」ではフリーカメラマンの男が、ある日花見川付近で見かけた老婆と少年か -
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ネタバレ何でこの本を手に取ったか覚えていないのですが、全く先入観も期待も無く読めたのが逆に良かったです。後から作者のバックグラウンドを知りました。ガンが治らないことを知ってから小説を本格的に書き始め、10年の作家活動の後に亡くなったそうです。
書評を読むと、どれも「美しい小説」と評してあります。「美しい小説」ってなんじゃらほい、と思いながら読んでみたところ、それが的確な表現であることが分かりました。
透き通った水がサラサラ流れる川のような文章です。凝った表現は無いのですが、心に文章が染み渡り、情景が目に浮かぶんです。一冊を通して、鳥がモチーフに出てきますが、それぞれの話の伝えたい内容は異なります。私は -
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猟犬探偵、竜門卓にまたまた奇妙な犬探しの依頼が舞い込む。果たして竜門は無事に犬を探し出すことが出来るのか…
相変わらず谷口ジローの作画には驚くばかりだ。まるでドラマを観るかのような描写に驚かされる。稲見一良の原作も味わい深く、男を感じるのだが、作画により、さらに臨場感が増している。
前作の『猟犬探偵① セント・メリーのリボン』も良かったが、この作品も素晴らしい。
竜門とハナ、セント・メリーの再会シーンには涙。そして、ラストにも涙、涙。この作品を読んでから、稲見一良の原作を読むのも良いだろう。
そうか、竜門にとってサイド・キックとは!
岩手の釜石と久慈が登場するのも嬉しい。