三浦裕子のレビュー一覧
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鉄道旅行、美食、百合をキーワードにした少女たちの物語。
日本の植民地化にある台湾を舞台に、日本人の女流作家千鶴子と台湾人の千鶴が関係を深めていきます。
台湾の美食、美しい景観はもちろんですが、二人の関係が最も美しいです。支配者、被支配者の関係であるのにもかかわらず、対等だと無神経な発言を繰り返す千鶴子と、柔らかな笑顔の下に頑固で冷ややかな心を隠す千鶴の対照が面白かったです。友達以上の関係性が特別で切なく思いました。
小説内小説では日本も台湾も変わらず封建的な社会で女性の権利が抑圧されていますが、小説内後書き(後世)では女性の社会進出が進んでいることが表現されていて印象的でした。 -
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異国情緒ある表紙絵がステキです。
1939年台湾にて、作家青山千鶴子と通訳の王千鶴は出会います。2人とも鉄道での講演旅行で、食べるわ食べるわ。台湾グルメ満載!肩のこらない親しみやすい文章で、セリフが多くどんどん読めてしまいます。ここが作家さんの狙いなんだろうなあ。
千鶴子さん、千鶴さんと仕事の関係性を超えて本当のお友達になりたいがために、グイグイ質問攻め。さらりとかわす千鶴さん。おもしろい。
食べるときもグイグイいくし、質問もグイグイの千鶴子さん。だから、読者の私も千鶴さんの境遇、当時の台湾の様子が分かるのですが。
中盤ぐらいから、このままいってこの2人、大丈夫?と思ってしまいました。 -
Posted by ブクログ
無邪気に台湾を旅する千鶴子に、先日、台湾旅行を気軽に楽しんだ自分が重なって、いたたまれない気持ちになった。
なんとなく日本では、台湾とえいば「親日」というイメージが共有されているけど、統治下にある当時〜現代に至るまで、決して単純なものではなくて、複雑な日本への想い、故郷への想い、を持ち続けていることに気づかされた。
「好き」であると語るなら、上辺だけでなくちゃんとその土地の歴史を学ばないとなと痛感した次第。
千鶴は教養もあり語学も堪能で、ちゃんと自分で自分を守れる人。それにも関わらず、無意識に庇護の対象として扱う千鶴子。これこそが一見して分かりづらいけど、差別のひとつの形なんだろうな。
建 -
Posted by ブクログ
同時期に読んだダガー賞受賞作のシスターフッドものがあまりにピンと来なかったことも影響しているのか、翻って、本作はものすごく良かった。ヤクザの世界を通して男性性をことさら強く意識付け、メインキャストの性を相対化させる件の作を評価した英国ミステリー界を全く理解できない我が身としては、多様性を一個性として認めながら人間同士の魂の交流、成長のあゆみをつぶさに描き出す本作、大衆百合文学こそを激推ししたい。メシもうまそうだし言うことない。肝はやはり「舞台裏」。政治的に無気力な自分は本作者のような熱量を物語にこめることは、不可能、なのだろうか。自らのアイデンティティを見つめ続ける姿勢に何よりの敬意を覚えた。
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Posted by ブクログ
ネタバレなんとなく『海街diary』を思い出した。(ただしこちらの5人はまったくの他人であるが)ただ、なんとなく。
自分は何者なのか?(エスニック・グループであったり性的志向であったり……)が、シェアハウスの店子4人と大家、それぞれの(時間的なズレはあるものの)意識の表面に(自然と、あるいは他からの刺激によって)顕れてくる。登場人物全員が女性なので「百合もの」の色合いは帯びるものの、それがテーマではない。
登場人物ごとに章を割いて描いていくが、人数が多いせいか、『台湾漫遊鉄道のふたり』ほどの彫り込みには至っていない印象。
作中にでてくる1914年出版のレシピ本、実在するそうなので(解説文)、翻 -
Posted by ブクログ
物語の舞台は1938〜39年にかけての台湾
日本人作家・青山千鶴子と台湾人通訳・王千鶴の
二人が、台湾中を鉄道で巡り、美食を堪能する。
この二人、特に青山は〝大食いの妖怪〟
と表現されているだけあって、まぁよく食べること!
日本人向けに味付けされたものには興味がなく、あくまでも現地、本島人が食べているものと同じ食事を好む。
行く先々で登場する魅力的な食べ物たち!
時には通訳の千鶴が調理する場面もある。
本当にどれも美味しそうで、食いしん坊の私は序盤こそ画像検索をし、いつか食べたいとメモをとっていた。
が、あまりにも多すぎてすぐに諦めた(;^ω^)
私は食にはもちろん興味があるけど、こ