三浦裕子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
素晴らしい小説でした。
日本時代の台湾を舞台に、妙齢の日本人女性作家青山千鶴子と教養あふれる台湾人女性通訳王千鶴の旅と美食と、お互いが寄せ合う心情の機微とが描かれます。二人の立場の違いのせいで、心を寄せ合っていながらも離れざるを得ない二人がなんとも悲しかったです。
初めて読んだときはこの機微に気づかずに、ちょっと鈍感な青山さんのように、王さんがなぜ離れていくのかわからず、最後の場面で二人の真情に触れた思いでしたが、今回はそれぞれの場面で王さんの思いが行間からにじみ出てきて胸に迫るものを感じながら読み進めました。
再読することで感動が増し、すっかり作者の楊双子さんのひいきになってしまいました。 -
Posted by ブクログ
とてもよかった。
堂々たる四十路のおっさんである手前、百合な部分はどうぞどうぞご自由にということで、繊細な恋愛の機微も、友情の萌芽も、そんなものなんですねと受け止めつつ、、、
五人全員が魅力的なキャラクターだったが、それぞれがしっかりと、学問に身を置いた経験があるからこそ滲む、知性のようなものが見え隠れしてて、ただのイマドキな若者たちではない芯のようなものを感じて眩しかった。(全員が学部生ではなく、大学院生、または大学院経験者ってのがいいですよね)
個人的に、後書きに出てきた雲林科技大に仕事で訪れたことがあり、四人の通う大学って、などと想像したりしつつ、楽しかった。
きっとこれから、ドラマ -
Posted by ブクログ
昭和初期。母と叔母と住んでいる青山千鶴は小説家。おうちにいるとお見合いの釣書ばかり見せられるのに嫌気がさし、小説「青春記」が映画化された記念に台湾より招聘されたのを良いことに台湾へと旅立つ。そこで共に大食いの王千鶴さんが通訳としてつく。台湾国内を漫遊しつつ、「台湾漫遊記」を連載。公演などしながら、台湾の旅や食を楽しむふたりだが、もっと仲良くなりたい千鶴と、職業上の関係を保ちたい王の間ですれ違いが起こる。帝国と島、男性と女性、内地人と本島人の差別に敏感なふたりに友情は育まれるのか?あとがきに「青山洋子(千鶴娘)」と「王千鶴」によるものがあったので、本当にあったことなのか!!と驚いたところで、種明
-
Posted by ブクログ
舞台は日本植民地時代の台湾。
講演会のため台湾に滞在する作家の千鶴子と、通訳として彼女の身の回りの世話をする千鶴。2人の女性が共に過ごした日々が丁寧に描かれた小説。
物語の導入や後書きがノンフィクションのように描かれているため、一瞬、小説だという事を忘れてしまいました!物語に入り込む仕掛けとして新鮮で面白い。
登場する多彩な台湾料理は、どれも美味しそうで、どんな料理か想像するだけで楽しい。
鉄道で巡る行き先での旅の風景を、実際に見てみたいという気持ちに駆られました。
2人の繊細な心境の変化が丁寧に描かれ、中盤から後半にかけての展開にグッと引き込まれました。2人の距離がなかなか縮まらない理 -
Posted by ブクログ
昭和12年、作家の千鶴子は赴いた台湾で通訳の千鶴に出会う。千鶴から教わる知らなかった台湾、知らなかった食、そして知らなかった自分の本当の姿。
---------------
台湾を舞台にした百合小説、という触れ込みだったので気軽に読んだのですが、これがなかなかの噛みごたえでした。
以前台湾を旅行する際に、いまだに統治時代の日式建築がたくさん残っていること、その下に埋もれたもの、を意識して街を歩きたいと思っていました。しかし実際に行ってしまうと旅行に浮かれてあまりそうした重い側面について考えられなかったのです。この本ではそうした側面をしっかりと刻みつける意図が感じられて、単なるお気楽百合ものとは -
Posted by ブクログ
“ある場所は、いったん人が踏み込んでしまったら、もう無傷ではいられない”
山に擬した伝説の巨人の身体に足を踏み入れた少年と少女は成長し、様々な人々と出会う。
丁寧に一人ひとりのストーリーを追いながら、台湾の先住民族に対する負の歴史へ、更に日本による占領統治時代へと物語は奥行きを増してゆく。
同時に、原住民であるタロコ族(トゥルク)の村が国策と企業の利権を伴う大規模な開発により押し潰されてゆく様が描かれる。
ここでも無慈悲で大きな力の前で揺れ動く一人ひとりの心情に寄り添い、掬いあげてゆく。
鋭く現実の社会問題に斬り込みながら、ウー・ミンイーはファンタジーと融合することを恐れない。それは決して -
Posted by ブクログ
本書には、ギミックがあり、それを知らなければ面白く読める。もちろんギミックが面白いと感じればであるが。そして、もちろんギミックを知っていても十分に面白いので安心して読んでほしい。
さて本作は、日本統治下の台湾を舞台に、作家の青山千鶴子と通訳の王 千鶴が美食を求めて鉄道旅をするという話である。随所に食の話がちりばめられており、食べたくなることこの上なしである。
この2人、とにかく大食漢であり腹の中に妖怪を住ませている。ページをめくるたびに出てくる食、食、食のオンパレードが楽しい。
また歴史という面でみると、日本統治下という状況を扱った仕事である。統治された側の視点が入っているのは、非常に興