三浦裕子のレビュー一覧
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同時期に読んだダガー賞受賞作のシスターフッドものがあまりにピンと来なかったことも影響しているのか、翻って、本作はものすごく良かった。ヤクザの世界を通して男性性をことさら強く意識付け、メインキャストの性を相対化させる件の作を評価した英国ミステリー界を全く理解できない我が身としては、多様性を一個性として認めながら人間同士の魂の交流、成長のあゆみをつぶさに描き出す本作、大衆百合文学こそを激推ししたい。メシもうまそうだし言うことない。肝はやはり「舞台裏」。政治的に無気力な自分は本作者のような熱量を物語にこめることは、不可能、なのだろうか。自らのアイデンティティを見つめ続ける姿勢に何よりの敬意を覚えた。
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Posted by ブクログ
ネタバレなんとなく『海街diary』を思い出した。(ただしこちらの5人はまったくの他人であるが)ただ、なんとなく。
自分は何者なのか?(エスニック・グループであったり性的志向であったり……)が、シェアハウスの店子4人と大家、それぞれの(時間的なズレはあるものの)意識の表面に(自然と、あるいは他からの刺激によって)顕れてくる。登場人物全員が女性なので「百合もの」の色合いは帯びるものの、それがテーマではない。
登場人物ごとに章を割いて描いていくが、人数が多いせいか、『台湾漫遊鉄道のふたり』ほどの彫り込みには至っていない印象。
作中にでてくる1914年出版のレシピ本、実在するそうなので(解説文)、翻 -
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考えさせられた 台湾統治時代の、内地からきた日本人と本島人の二人の女性の心の交流の物語。
最初はたくさんの美味しいものが書かれ、女性二人の珍道中的なものかと思いきやテーマはとても重かった。
統治側と非統治側に属する二人の間に、真の、平等な友情は育まれるのか。
日本人側の視点で描かれる親切や価値観。
これが押し付けであることに気づけるかどうかが肝心では、と思う。
求めてすらいないのに便利だからこうしろ、きっと似合うからこうしなさい…断られることを想定していないそれらの提案を、本島人である千鶴はどんな思いで受け止めたのか。
気づかなかったから、では済まされない。
気づかなければならないのだ。
悪 -
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ネタバレ友好の印象が強い台湾。震災のときの多額の寄付・救護支援、ただただ甘受するだけになっていたかもしれません。前半にでてきた千鶴子と千鶴が役割交代して日本巡り旅行記第2弾は、「いいじゃん、楽しそう」って普通に思ってしまいました。相手が望んでいるものと合致してこその御返しですものね。
『私は思わず立ち上がり、大声で宣言した。「いっしょに台湾を食べ尽くしましょう!」千鶴は驚いた顔をしたが、すぐににっこり笑ってうなずいた。』
どこから2人がすれ違っちゃったのかなって読み返すけど、もうそれぞれの立場含めて最初からなのかもしれない。でもこの2人じゃないと見れない景色も、食べられない美味しいものも、あったんだ -
Posted by ブクログ
前半は、主人公・千鶴子のズケズケとした物言いや振る舞いに強い違和感があり、なかなか読み進めることができなかった。
しかし、ふたりの関係に決定的な亀裂が入って以降は一気に引き込まれ、夢中で読み進めた。
物語を通して見えてきたのは、ふたりの関係が本質的には対等ではあり得ないという構造である。
それにもかかわらず、千鶴子の開けっぴろげで率直な性格、そして後半に見せる反省と真っ直ぐな気持ちによって、一瞬ではあっても確かな絆が生まれたことが印象に残った。
前半の読みにくさは、単なる性格の問題ではなく、支配階級に属する者としての無意識の傲慢さが滲んでいたためだと、読み終えてから納得できた。
また、こ -
Posted by ブクログ
昨年初めて台湾に行って、街並みや気候が想像していたよりもずっと日本とは違って、面白いなぁと興味を持った。本作に出てくる女性たちの会話の内容(特に、ふいに中医学的な知識が出てくるところ)や行動もとても興味深くて、当たり前だけれど、歴史や文化の違いを感じた。台湾て、外省人・本省人・もっと細かいルーツや出身民族、政治(独立派・反独立派)、世代間の違い(中国人として教育を受けたか、台湾人として教育を受けたか)、地域ごとの独特の文化など、思っていたよりもずっとずっと複雑な社会なんだなと感じた。
出てくる料理は味がまったく想像つかないようなものが多くて好奇心をくすぐられるし、なじみのある日本のアニメの決め