三浦裕子のレビュー一覧
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ネタバレ前半は台湾料理ばかりであまり進まなかった。
植民地にする側とされる側、千鶴子にはそんな認識なかったのかもしれないけど、それでも底の底の根っこにはそんな意識があって、知らず知らずのうちに平等であるべき立場に上下ができてしまっていたんだな。
この時代は現在とは違うけれど、それでも千鶴子のような言動は私自身無意識のうちに取ってしまっていることがあるかもしれない。傲慢だ。
恥ずかしながら台湾が日本の植民地だった時代の出来事や詳細は知らなかったけれど、植民地にされた土地は、その土地の伝統ある文化や遺物や考えが淘汰される、それが支配されることなんだなと考えた。
最後の構成が素敵だった。まるで青山千鶴 -
Posted by ブクログ
傲慢で愚鈍で、どうしようもない大食漢で心優しい青山さんだからこそ救いも。ただ「帝国の政策を批判するのも称賛するのも、それが正しいか正しくないかではなく、青山先生の好き嫌いで考えているにすぎない。自分の好みに合わせて強引に解釈づけるのは知識階級の傲慢。帝国は、本島に美しいものを生み出したという青山先生のそのお言葉は、本島と本島人を侮辱するに等しいもの」「善意からの援助であっても、基本的にはただの傲慢にすぎない」「この世界で、独りよがりな善意ほど、はた迷惑なものはない」のも事実。抑圧と葛藤抱えながら大人の振る舞いに終始した千鶴。台湾が歩んできた複雑な歴史、大日本帝国の爪痕。友好、漫遊ではすまない。
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Posted by ブクログ
今までありそうでなかった、そんな日本・台湾横断型旅小説。
実際の明治期〜昭和期にはこの手の植民地見聞録、弥次喜多道中的ジャンルはよくあったわけで。
敗戦と共にぶっちり途絶えたジャンルの一つと言える。
この小説のすごいところは何より、台湾人作者が描いていると言うこと。
食べ物漫遊録というキャッチーさを兼ね備えつつ、植民地における支配者と被支配者の機微を下手にデフォルメせずに丹念に描いている。でも本来の漫遊録もののエンタメ性も損なっていない。
詰まるところ、漫遊録ものの脱構築をかなり巧みにやっている。
2人の女性の造形がまた上手い。千鶴子のお嬢様知識人設定もよく生きている。
彼女の終盤での悟り -
Posted by ブクログ
昭和13年の台湾食文化✕台湾鉄道✕台湾友達をテーマにしている
日本人小説家千鶴子(ちづこ)と台湾人通訳千鶴(ちづる)の話
台湾料理のバラエティが富すぎて何も頭に入ってこないし、鉄道も地図で見てないからぼんやりとしかイメージできず。
千鶴子と千鶴の交流に焦点を当てて読み進めると、何とか読めた。
分かりやすくいうと
千鶴子は無神経(本人に悪気がないので気づかず 無邪気)
「千鶴ちゃんの人生がかわいそうでしょうがない」
「本島の大家族、千鶴ちゃんの身の上の物語、異国情緒たっぷりのドラマよね。」
ひとの人生をかわいそうと言っちゃう
苦労もあったであろうその身の上を異国情緒たっぷりと例えてしまう