沼上幹のレビュー一覧
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経営者の付加価値は何か?という経営学の根源的な問いを、GEのウェルチ、日立などを事例に取り上げながら、考察した骨太な一冊。難解ですが、読む価値があります。
【メモ】
・多角化企業の経営者がファイナンスの知識のみで仕事を遂行するなら、資本市場との対話は可能だとしても、その経営者の付加価値がどこにあるのかわからない。資本市場側から要求されていることが何であるのかを理解した上で、それとは別に経営者としての独特の工夫を行って独自の貢献を生み出していなければ、経営者の付加価値は主張できないはずである。
・同じ現場情報を得ても、異なる景色を見ていて、異なる答えを出せる、という点に経営者の付加価値があり、そのような独自の思考を展開していなければ付加価値があるとはいえない、と考えることができるのではないだろうか。
・多角化企業の経営者は、事業部長と頻繁に対話を重ねながら、事業部長とは異なる視点から深い深度の戦略マップを独自に構築していくことができれば、事業部長や単一事業企業の経営者や外部の投資家とは異なる役割を果たしていくことになり、独自の付加価値を主張できると考えられる。
→複数の事業部が共通に活用しているコア・コンピタンスに関する洞察は多角化企業のトップ・マネジメントが行うべき機能であろう。
・事業の生成と閉鎖という新陳代謝のプロセスを創始し、自ら戦略実行管理のための因果理論を構築し続けることが経営者の付加価値を主張する上で不可欠なのである。
・コア・コンピタンスを考え、そこから事業ポートフォリオを創造するところに、多角化企業の経営者の独自の付加価値を主張できるのである。 -
Posted by ブクログ
組織の基礎から噛み砕いて説明してくれるのには価値がある。全体として易しく筋道が立っている印象。ちょっと乱雑にも思うが、雑誌連載をまとめたものとのことで納得した。
面白かったのは、組織を作るメリット、官僚性が基礎であること、官僚性の中での人材育成は構造的に無理があり相当の努力を必要とすること(ジョブ型雇用であれば矛盾しないが、おそらくジョブ型雇用に現場→ミドル→トップという人材育成の概念はない)、フリーライダーや虎の威を借る狐の話などなど。
我々のような下々の者は構造に従い最適解で動くから、組織の腐敗を正せるのは「トップ・ダウンによる乱暴な現状破壊しかない」とのこと。わかる。せめてトップの時間が資源を投入するべきボトルネックであると認識して、それをサポートできるように雑務を引き受けなければならない。 -
Posted by ブクログ
市場・マーケットにどう適合していくか、という観点での組織戦略本は沢山あるが、「組織内部」の問題にフォーカスした本は少なく、後者を論じたのが本書。
組織で働いていると、厄介者やフリーライダー、野党的な人材の他、時代に即しないルールや内向きな議論などが蔓延ってくる。
そのような組織を腐らせる「悪害」とどう対峙し、組織の健全性を保ちながら戦略を立て運営していくか、という点に焦点を当てている本である。
組織が腐っていくプロセスをこれまで上手く言語化しながら解明して解決策を明示できるのは凄いの一言。
この本が最も伝えたいのは以下だと捉えた。
「安全な場所から非難するだけの野党になるな。自分からリスクをとって悪害を壊す改革者になれ」ということである。 -
Posted by ブクログ
一橋大学で名誉教授を務める著者による「日本企業の組織デザインの改善」をテーマとした本。
著者は経営組織論・経営戦略論のスペシャリストであり、本書は経営組織論の内容に寄っている。
本書は著者が自ら冒頭で述べている通り、実用的な内容となっている。「自分が経営するとすればどうするべきか?」という視点を持ちながら読めるのが特徴的で、そこが本書の優れた点だと感じた。
日本企業の一般的な問題点を挙げ、その原因を分析し、有効なソリューションを紹介・解説する形で書かれている。
この問題点補足の精度が高く、個人的にはいままで感じていた問題が「なぜ起こるのか?」の解像度が上がった。
テーマは組織デザイン、人事制度、決断力不足、社内権力の種類、組織腐敗のメカニズムと多岐にわたる。
特に興味深かったのは、「ある問題を解決するためには誰かがコストを負担する必要があるが、それを解決することによる利益は多くのメンバーが受けられるので、誰も積極的にコストを負担しなくなる」というフリーライド問題についてだった。
これを解決するための策として、著者は「かなり少数の人々をコア人材として選別し、その少数のエリート社員が周りの社員にフリーライドされても平気でいられるくらい大幅に高い賃金を獲得し、強い権限を発揮できるようにすること、また自分がかなり確実に会社のトップ層へと登り詰めていくという意識を早い段階から植え付けること」が有効だとする。
確かにこれは欧米でも主流の方法で、一定の成果を発揮できると考える。
ただし、この施策はエリート/ノンエリートの乖離を大きくして対立を強めるものである。だから、この間を取り持ち、当たり前のことを当たり前にやれる中間層の重要性が増す。
しかし、エリート層に金銭・昇進のインセンティブは充ててしまうので、彼らに報酬や昇進で十分に還元することはできない。故にそれに代わる報酬を開発しなければならない。
この報酬のひとつとして著者が挙げているのが、「彼らの働きを褒め、感謝を伝えることで承認・尊厳欲求を満たしてあげること」である。この感情が満たされれば人は頑張れる。
他にも興味深い内容が幾つもあり、実用的なので参考になった。良書。 -
Posted by ブクログ
職場同僚の推薦図書として読んだ。
第2部 組織の疲労 第7章 トラの権力、キツネの権力、第3部 組織の腐り方 第9章
組織腐敗のメカニズム、 が、自分の勤める会社が観察されてたのか、と思うぐらい、グサグサ来た。著者は学者一筋の筈なのに、随分とフィールドワークを熟して来たのだろう。
特に、「宦官vs武闘派」で、外向きにリスクを取って勝負している武闘派が、安全地帯から批評を述べるだけの宦官に屈するパスを解説する箇所は、当たっているだけに恐怖を感じた。(自分の仕事は、ここでいう宦官にかなり近いのでは?と。。)
あと、マトリクス型組織を、ミドルに権限ではなく「悩み」を委譲する形態、と断じる分析が秀逸だった。(P73-76)
組織は生き物であり、破壊と創造、新陳代謝を絶え間なく続けて行かない限り腐敗していくものだ、と肝に銘じたい。
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Posted by ブクログ
ネタバレ三品さんの経営戦略を問いなおすに続く、ちくま新書のロングセラー本。三品さんの本と異なり、連載がベースだったからか、本としてのまとまりは弱いけれど、組織を考えるためには必須の文献と言ってもいいのではないか。
まずは官僚制が組織の基本であるという点。得手して官僚制は唾棄されるべきものと扱われがちだが、官僚制がなければ、都度対応方法を考えなければならず、組織として大きな非効率が生ずる。官僚制により、実力者がルーティンに煩わされない状況を作ることこそ、組織論の第一歩なる。そして、組織設計上の工夫は、官僚制に付加する形で追加的に行われる。
事業部制の目的は、日常的に発生する問題の解決をすべて行えるだけの資源を事業部に与えて自律的にすることで、トップマネジメントが日常業務を離れて長期的なビジョンや経営課題に取り組む時間を得ることができる。一方で、現場=ルーチン、ミドル=例外処理、トップ=戦略とすると人が育たない。緩やかにオーバーラップさせることが必要。
ザ・ゴールにしたがって、ボトルネックを考えることは生産工程に留まらずあらゆる局面で有効。制約条件が何かを見極め、それを取り除くことが組織設計上も有効。
マズローの欲求階層説で重要なのは自己実現ではなく、承認尊厳。給料で答えられなくても、成果を認めること、感謝を示すことは必要。
後半はいかに組織が腐るかが論じられている。多くの兆候はあるものの、やはり議論が内向きになっているときは要注意で、資料の書き方がダメということが議論になっているような企業はやはり危険。そんなことを指摘する経営もどうかと思う。パワポがきれいすぎる会社はやはりダメ。もっと本質的なことを考えろということ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレレビューめっちゃ書いたのに・・・レビュー枠外を一回クリックしただけで、レビュー枠が消えて全部吹っ飛んだ(涙
面倒なので要約すると、組織戦略の基本(官僚制)や組織腐敗のメカニズムが書いてある。が、言葉や概念の定義はなく初心者に優しい本。詳しい事例は挙げられていないが、組織・人事畑じゃない方にもわかりやすく嬉しい。
流行りのGE・グーグルの本を先行して読んで、エッジのきいた人事制度ややたらフラットな組織戦略が頭を支配している私のような人には、良いパフォーマンスを発揮すると思う。
<キーセンテンス>
・官僚制はベースで、そこに時代に合わせた付与されるものがある。
・会社はみんなが自己実現する場ではない。
・調整役はうち内向きの仕事を作るだけ。
・トップ・ミドル・ローワーがそれぞれ、戦略立案・例外対応・ルーチンを正確にこなすことがベース。仕事をプログラム化しないと、トップやミドルが例外対応(個別処理)に追われる生産性の低い組織になる。
・組織変革の本質は、問題を減らすことではなく、問題を適切な階層に分散させること
・ボトルネックになっている場所(問題が発生している場所)に知識・情報をベースとした権力を手中させることが最適解。環境の不確実性が高まるにつれて、現場で大量の問題が発生するだから、意思決定のポイントを組織階層の下位にシフトするとよい。(ただし、決断はシフトさせてはいけない。)