【感想・ネタバレ】組織戦略の考え方 ――企業経営の健全性のためにのレビュー

あらすじ

日本型組織の本質を維持しつつ、腐った組織に堕さないよう、自ら主体的に思考し実践していこう。本書は、常識的な論理をひとつずつ積み上げて、組織設計をめぐる誤解を解き明かす。決断できるトップの不在・「キツネ」の跋扈・ルールの複雑怪奇化等の問題を切り口に、組織の腐り方を分析し対処する指針を示す。

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Posted by ブクログ

組織の基礎から噛み砕いて説明してくれるのには価値がある。全体として易しく筋道が立っている印象。ちょっと乱雑にも思うが、雑誌連載をまとめたものとのことで納得した。

面白かったのは、組織を作るメリット、官僚性が基礎であること、官僚性の中での人材育成は構造的に無理があり相当の努力を必要とすること(ジョブ型雇用であれば矛盾しないが、おそらくジョブ型雇用に現場→ミドル→トップという人材育成の概念はない)、フリーライダーや虎の威を借る狐の話などなど。

我々のような下々の者は構造に従い最適解で動くから、組織の腐敗を正せるのは「トップ・ダウンによる乱暴な現状破壊しかない」とのこと。わかる。せめてトップの時間が資源を投入するべきボトルネックであると認識して、それをサポートできるように雑務を引き受けなければならない。

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2026年04月19日

Posted by ブクログ

市場・マーケットにどう適合していくか、という観点での組織戦略本は沢山あるが、「組織内部」の問題にフォーカスした本は少なく、後者を論じたのが本書。

組織で働いていると、厄介者やフリーライダー、野党的な人材の他、時代に即しないルールや内向きな議論などが蔓延ってくる。
そのような組織を腐らせる「悪害」とどう対峙し、組織の健全性を保ちながら戦略を立て運営していくか、という点に焦点を当てている本である。
組織が腐っていくプロセスをこれまで上手く言語化しながら解明して解決策を明示できるのは凄いの一言。

この本が最も伝えたいのは以下だと捉えた。
「安全な場所から非難するだけの野党になるな。自分からリスクをとって悪害を壊す改革者になれ」ということである。

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2025年12月05日

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2025.11.10
抜群に面白い
社内評論家、宦官、キツネの権力がうまれるメカニズムをわかりやすく解説
組織の問題ではなく人の問題であることを疑うなど、目からウロコ

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2025年11月10日

Posted by ブクログ

一橋大学で名誉教授を務める著者による「日本企業の組織デザインの改善」をテーマとした本。
著者は経営組織論・経営戦略論のスペシャリストであり、本書は経営組織論の内容に寄っている。

本書は著者が自ら冒頭で述べている通り、実用的な内容となっている。「自分が経営するとすればどうするべきか?」という視点を持ちながら読めるのが特徴的で、そこが本書の優れた点だと感じた。

日本企業の一般的な問題点を挙げ、その原因を分析し、有効なソリューションを紹介・解説する形で書かれている。
この問題点補足の精度が高く、個人的にはいままで感じていた問題が「なぜ起こるのか?」の解像度が上がった。

テーマは組織デザイン、人事制度、決断力不足、社内権力の種類、組織腐敗のメカニズムと多岐にわたる。

特に興味深かったのは、「ある問題を解決するためには誰かがコストを負担する必要があるが、それを解決することによる利益は多くのメンバーが受けられるので、誰も積極的にコストを負担しなくなる」というフリーライド問題についてだった。
これを解決するための策として、著者は「かなり少数の人々をコア人材として選別し、その少数のエリート社員が周りの社員にフリーライドされても平気でいられるくらい大幅に高い賃金を獲得し、強い権限を発揮できるようにすること、また自分がかなり確実に会社のトップ層へと登り詰めていくという意識を早い段階から植え付けること」が有効だとする。
確かにこれは欧米でも主流の方法で、一定の成果を発揮できると考える。

ただし、この施策はエリート/ノンエリートの乖離を大きくして対立を強めるものである。だから、この間を取り持ち、当たり前のことを当たり前にやれる中間層の重要性が増す。
しかし、エリート層に金銭・昇進のインセンティブは充ててしまうので、彼らに報酬や昇進で十分に還元することはできない。故にそれに代わる報酬を開発しなければならない。
この報酬のひとつとして著者が挙げているのが、「彼らの働きを褒め、感謝を伝えることで承認・尊厳欲求を満たしてあげること」である。この感情が満たされれば人は頑張れる。

他にも興味深い内容が幾つもあり、実用的なので参考になった。良書。

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2024年04月24日

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職場同僚の推薦図書として読んだ。

第2部 組織の疲労 第7章 トラの権力、キツネの権力、第3部 組織の腐り方 第9章
組織腐敗のメカニズム、 が、自分の勤める会社が観察されてたのか、と思うぐらい、グサグサ来た。著者は学者一筋の筈なのに、随分とフィールドワークを熟して来たのだろう。

特に、「宦官vs武闘派」で、外向きにリスクを取って勝負している武闘派が、安全地帯から批評を述べるだけの宦官に屈するパスを解説する箇所は、当たっているだけに恐怖を感じた。(自分の仕事は、ここでいう宦官にかなり近いのでは?と。。)

あと、マトリクス型組織を、ミドルに権限ではなく「悩み」を委譲する形態、と断じる分析が秀逸だった。(P73-76)

組織は生き物であり、破壊と創造、新陳代謝を絶え間なく続けて行かない限り腐敗していくものだ、と肝に銘じたい。

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2024年02月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

三品さんの経営戦略を問いなおすに続く、ちくま新書のロングセラー本。三品さんの本と異なり、連載がベースだったからか、本としてのまとまりは弱いけれど、組織を考えるためには必須の文献と言ってもいいのではないか。
まずは官僚制が組織の基本であるという点。得手して官僚制は唾棄されるべきものと扱われがちだが、官僚制がなければ、都度対応方法を考えなければならず、組織として大きな非効率が生ずる。官僚制により、実力者がルーティンに煩わされない状況を作ることこそ、組織論の第一歩なる。そして、組織設計上の工夫は、官僚制に付加する形で追加的に行われる。
事業部制の目的は、日常的に発生する問題の解決をすべて行えるだけの資源を事業部に与えて自律的にすることで、トップマネジメントが日常業務を離れて長期的なビジョンや経営課題に取り組む時間を得ることができる。一方で、現場=ルーチン、ミドル=例外処理、トップ=戦略とすると人が育たない。緩やかにオーバーラップさせることが必要。
ザ・ゴールにしたがって、ボトルネックを考えることは生産工程に留まらずあらゆる局面で有効。制約条件が何かを見極め、それを取り除くことが組織設計上も有効。
マズローの欲求階層説で重要なのは自己実現ではなく、承認尊厳。給料で答えられなくても、成果を認めること、感謝を示すことは必要。
後半はいかに組織が腐るかが論じられている。多くの兆候はあるものの、やはり議論が内向きになっているときは要注意で、資料の書き方がダメということが議論になっているような企業はやはり危険。そんなことを指摘する経営もどうかと思う。パワポがきれいすぎる会社はやはりダメ。もっと本質的なことを考えろということ。

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2021年11月03日

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学者が書いた本とは思えない現実的な内容
組織は人が動かしているため、組織形態を変更しただけで効果が出ると考えない方が良いと本書は警告する。人がいかにして組織を内向きに腐らせていくのか、そのために人を中心に組織をいかにして設計していくのかが述べられる。

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2021年09月23日

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沼上氏の文章は、書籍にしろ論文にしろ、ロジックが明快であり、学ぶことが多い。ロジカルな文章を書く上で、何か一つは読むと良いと思う。

本書は組織戦略についての論考であるが、ロジックが明快であるぶん読みやすい。ややオーバーに書かれているところもあるが、これは筆者の意図するところだろう。

自分の勤務先がどうなのかをイメージしながら読み進めると良いだろう。さらには、自分自身が「フリーライダー」や「キツネ」になっていないか、よく考えながら読むべきである。

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2021年08月30日

Posted by ブクログ

発行された当時の若い頃に読んでも、抽象的と感じたかもしれないが、ある程度の経験があると非常に参考になると思う。

学者の理想論と思いきや、まるで色々な現場を動かしてきたような印象を受けた。

自分の仕事の考え方に幅がついたかもしれない。

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2021年03月09日

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日本的経営への評価や流行りの組織論と少し距離を置きながら、大きな組織の中で発生しがちな実際的な問題を考察して解決に向けた考え方を示す本。
「組織デザインは万能薬でない」「問題を処理するのはヒトであって、組織構造ではない」、自己実現や平等主義の罠など、まさにうちの会社のことを言い当てていると思う箇所がいくつもあった。
結局「この仕事は会社を良くしているのか」ということを真摯に問い続けることを忘れてはいけないということだと思う。

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2020年07月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

レビューめっちゃ書いたのに・・・レビュー枠外を一回クリックしただけで、レビュー枠が消えて全部吹っ飛んだ(涙

面倒なので要約すると、組織戦略の基本(官僚制)や組織腐敗のメカニズムが書いてある。が、言葉や概念の定義はなく初心者に優しい本。詳しい事例は挙げられていないが、組織・人事畑じゃない方にもわかりやすく嬉しい。
流行りのGE・グーグルの本を先行して読んで、エッジのきいた人事制度ややたらフラットな組織戦略が頭を支配している私のような人には、良いパフォーマンスを発揮すると思う。

<キーセンテンス>
・官僚制はベースで、そこに時代に合わせた付与されるものがある。
・会社はみんなが自己実現する場ではない。
・調整役はうち内向きの仕事を作るだけ。
・トップ・ミドル・ローワーがそれぞれ、戦略立案・例外対応・ルーチンを正確にこなすことがベース。仕事をプログラム化しないと、トップやミドルが例外対応(個別処理)に追われる生産性の低い組織になる。
・組織変革の本質は、問題を減らすことではなく、問題を適切な階層に分散させること
・ボトルネックになっている場所(問題が発生している場所)に知識・情報をベースとした権力を手中させることが最適解。環境の不確実性が高まるにつれて、現場で大量の問題が発生するだから、意思決定のポイントを組織階層の下位にシフトするとよい。(ただし、決断はシフトさせてはいけない。)

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2019年02月05日

Posted by ブクログ

今の組織に行き詰まり感があって、手にした本。官僚組織を肯定し、会社のベースが安定しているからこそ、新たな企画やチャレンジングな取り組みも行える。会社の風通しをよくするとかの建前で安易に組織の見直しを取り仕切る人には読んで反省してもらいたい。

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2025年10月15日

Posted by ブクログ

全般的に読みやすい。
あー、なるほどなーという事実と解釈が書かれており理解しやすい。
自分の会社に例えるとなお頭に入ってきやすいかと思う。

62-64
組織は仕事の邪魔はできても、自動的に仕事を処理してくれるわけではない
組織変革でいい人がすぐに出てくると勘違いしている
組織変更後に実るのは数年後でしかない

82
マズローの欲求階層説
人は自己実現よりも承認欲求が潜在的にある。
カネもポストもあげれなくても、褒めることが大事
平等感という意味がわからないものに縛られて、差をつけすぎないで、なにを満たすことができるのか

102 第5章
フリーライド(人の貢献に乗っかる人)
コア人材の少数エリートに対して賃金格差を設けると、ノンエリートから社内野党が増えてくる
なにも言わずに成果をあげる中間層にいかにして、生産性をあげつつ、仕事してもらうのか

139 第7章
トラの権力 キツネの権力
厄介者の存在。
顧客や上層部からのメッセンジャーとしての立ち位置を利用して、誇張表現する。
自分の立場を利用して、権力を行使する人、たしかにいる!

178,204 第9章、10章
組織腐敗は成熟化の部分が面白い。
優秀ゆえに効率化していき、同じ仕事をこなしていても暇になっていく。
その暇を潰すために無駄に指摘を増やし、無駄な仕事を増やす。
なるほどと思った。
また社内の雑談の質からも腐敗しているかわかるとのこと。
社内の内向きの話(誰それと誰それが仲が悪いだの)よりも、外向きの話(なぜあの事業は失敗したのか)という高質な雑談をしているかどうか。
なるほど、前職では内向きな話が最後は多いようであったと実感。

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2022年04月02日

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会社の同僚からの勧めで読みました。そうでなければ、手に取らなかったでしょう。社会に出て、会社に勤める中で、日々思う事が言語化されております。腑と落ちる、納得感がありました。

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2022年02月06日

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あとがきには、筆者は啓発本の類と書いてみえたが、私にはアカデミックな部類だと思った。
組織戦略について、あまり考えたことがなかったが、考えさせられることがいくつもあった。
特に以下の描写が心に残った。
・縁の下の力持ちをコトバで支える
給与で報いるという方法でなくても、ホントに感謝していると、誠意ある言葉で報いる方法もある
・フリーライダーとは
会社の業績の高さは、従業員にとって集合財。誰かが頑張れば、会社の業績は高まり給与は手に入れられる。

この本が書かれたのは2003年。20年程時が経ったが、日本の組織のあり方を大きな変化はなさそうだ。これは良いのか悪いのか?

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2021年06月16日

Posted by ブクログ

「組織の基本は官僚型です」
とのことでまあそうだよなと思いつつ、
昨今のティール型組織は、その違和感を何とかしたい、人類を未来に進めたい、と考える人たちの挑戦なのかもしれません。より戻しをビジネスにしている、あるいはそれを信じ切っている方々には異議申し上げです。

・組織構造を変えることにより、マイナスは打ち消せるが、プラスの効果は、数年後にしか現れない。結局は、個々の能力がどれくらいか、それを最大限引き出せているか、にかかっている。だから採用大事。
・フリーライダーを生み出してはいけない。

#実践しきれてないけど組織を知るための良本ですシリーズ②

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2021年03月08日

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ちくま新書セールの際に衝動買いした本の一冊。

日本の「コア人材を長期雇用する」という組織構造を、全否定するわけではなく、全肯定するわけでもなく、客観的にそのメリットとデメリットや対策を考えているという視点が新しかった。

# 組織とは
「プログラム」
「ヒエラルキー」
が組織の2大要素

- 例外処理は上にあげる

# Japan is No.1の時代があった。
- 高度成長時代に、日本モデルは嵌っていた。
- 終身雇用前提で、組織として効率性を突き詰めた。

# 例外処理が増えて、組織が回らなくなったときの対処方法
-下の処理あげる
-上の処理あげる
-システム(IT)使った処理効率up
-垂直分業

# GOALがもたらした価値観
- 徹底的に事業のボトルネックを考え、それに合わせて対処する。

- (余談) 教育のボトルネックについて考えてみると面白い。
日本の教育のボトルネックはどこか?

- 組織より大事なのはヒト = 結局実行し、問題解決するのはヒト

- マズローの5段階仮説
生理的欲求 => 安全の欲求 => 所属と愛の欲求 => 承認欲求 => 自己実現の欲求

2.承認 3.所属が軽視されがち、組織はこの欲求も満たす必要あり。

# フリーライド問題
解決は難しい。それぞれが自分ごととして捉えることが必要。

# 組織は複雑化、腐敗が進んでいく。
- 無駄な内的な仕事が生まれていく
- ルールのための行動が生まれていく

日本の組織論を考え、面白かった!!!

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2020年08月31日

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勧められた本を素直に読んでみました。組織論もさることながら、自分でしっかり考えることの大切さを再認識させられました。仕事に限らず、あらゆることについて考え抜き結論を出す。これを根っこに出来る様にしていきたいと思います。はい。

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2020年02月24日

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色々と書いてあるが、結局は「守・破・離」ということ。アメリカ人が書いたソフトウエア・マネージメントの本にも「守・破・離」の大切が力説されているものがあるが、これが伝承の原理原則。未熟者に告ぐ、「徹底的にトッププレイヤーのまねをせよ。それができたら、受け継いだものにオリジナリティーを付け加えよ」。その後は、まさに”離”の世界だがこれはなかなか難しい。

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2018年10月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者が「自分で経営した場合、どういった点に気を付けるか」という点にこだわり書き上げたという、組織マネジメントの本。2003年発行だが現在読んでも全く違和感がない。
TOC、マズロー、事業部制といった組織論を交えながらも、著者が自分の言葉で咀嚼しており、内容は非常に分かりやすい。
例えば組織設計でのトップダウンで作り上げた理論に対して現実が追いつかない点に対して「スパッと割り切った組織に不純物を後から混ぜる。最初から混ぜて作るのでは、しがらみだらけの組織になる」といったように。また、組織へのフリーライド(ただ乗り)、キツネ(宦官的振る舞い)の悪癖だけでなく、それらを生み出す「大人しい優等生」の無責任さを問う等、切れ味も鋭い。

●メモ
・日本の高度成長、世界最高の水準になったのは日本が優れてただけでなくアメリカに大いに問題があったのではないか
・日本は長期雇用が前提である。アメリカ、その他の国のような雇用へ簡単になるわけではない。その問題を捉えながら現実的な施策が必要
・組織は毎回発生する問題を都度考えては組織の意味がない。手順、ルール遂行により実現してこそである
・人は目の前に大量のルーチンワークが積まれると、それを優先し、創造的な仕事を後回しにする
・経営のボトルネックは短期と長期で異なる
・マトリクス組織にてパワーバランスを取るのは難しい。解決策は「腹を割って話す」「トップ判断」「ミドル層がバランスを取る」。だが3つ目は本来両組織のトップが決断することを放棄しただけ
・マズローの法則では自己実現の前に「承認欲求」がある。これを如何に実現するか。これを軽視している傾向がある
・フリーライダーを防ぐことは難しい。責任感の強い人を採用し、会社と自分の運命がリンクすることを示していくしかないのではないか。エリートと呼ばれる人の賃金を大幅にあげるなどの考えもある。その場合、階層が生まれるため、その中間層が重要になってくる
・決断とは「何かを取り、何かを捨てる」ため、一部の人には苦痛を強いるものだ
・何本ものプロジェクトが乱立する状態は危険、「決断したつもり」に経営者がなっている可能性が高い
・エースの無駄遣いには注意。エースには仕事が集まる。無能な人間は暇である。
・意思決定で「自分の考えとは違うが、●●さんの意向を踏まえて…」という理由での決定は健全な議論を黙殺してしまう。議論の相手が存在しなくなる
・成熟した組織から人を抜くのは難しい。
 彼らは生産性も高く優秀だが、その場から抜け出さないし、権力もある。だが、彼らの忙しさは「内向き」である。なぜなら生産性が高いため、新規事業より忙しいはずがない。これは組織腐敗の始まり
・組織腐敗が最悪まで進んだ場合、「複雑怪奇なルールの廃止」「成熟事業部から優秀な若手を乱暴に引き抜く」「優秀な人材が暇になるような組織にする」ことである





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2017年08月19日

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ネタバレ

バブル期には絶賛された日本的経営も、いまや全否定の対象とすらなる。
だが大切なのは、日本型組織の本質を維持しつつ、腐った組織に堕さないよう、自ら主体的に思考し実践していくことだ。
本書は、流行りのカタカナ組織論とは一線を画し、至極常識的な論理をひとつずつ積み上げて、
組織設計をめぐる多くの誤解を解き明かす。
また、決断できるトップの不在・「キツネ」の跋扈・ルールの複雑怪奇化等の問題を切り口に、
組織の腐り方を分析し対処する指針を示す。自ら考え、自ら担うための組織戦略入門。

目次
第1部 組織の基本
組織設計の基本は官僚制、ボトルネックへの注目、
組織デザインは万能薬ではない、欲求階層説の誤用(承認・尊厳欲求が大事)

第2部 組織の疲労
組織の中のフリーライダー、決断不足、トラの権力、
キツネの権力、奇妙な権力の生まれる瞬間(バランス感覚のある宦官)

第3部 組織の腐り方
組織腐敗のメカニズム、組織腐敗の診断と処方

★ポイントは、企業理念に基づいて、利益を産み出す行為か否か、ということ。

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2017年05月15日

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 簡単にまとめておこう。軍事組織であろうと、企業組織であろうと、組織と呼ばれるものの特徴は、基本的に分業と調整の二つである、と本書では考えている。
(1)分業役割が分けられ、それぞれの役割を分けることで、たとえば専門性を発揮させるなど、何らかのメリットを追求している
(2)調分業の一部ずつ担っている人の活動が、時的・空間的に調整され、多数の人々の活動が、あたかも一つの全体であるかのように連動して動くようになっている(あるいは、そうなろうと努力しいる)

 どのような組織であろうと、合理的に運営しようと意図されているのであれば、基本的にはれら二つの要素を備えようと努力しているはずである。ただし、本書は、このような二つの顔をもつ組織うち、企業組織に対象を限定して議論を展開していく。本書が主たる読者層「して想定しているのは、現在すでに企業人であるか、もしくはすぐにでも企業人になろうとしている人かのいずれかである。


 しかし、これらの多面的な議論は本書を通じて徐々に明らかにしていくことにして、ここでは必要最低限の組織形態に関する知識を紹介することを優先することにしよう。それ故、〈製品・市場への適応〉と〈機能統合によるメリット)の二つを秤にかけて、どちらが重要かに応じて事業部制が採用されたり、機能別組織が採用されたりする、という最も単純なだけ頭に入れておいて欲しい。さて、この点まで理解された後で次に問題になるのは、〈製品・市場への適応〉と〈機能統合によるメリット)のどちらを優先するべきかという問いに対して簡単には答えが出ない場合にはどうすればよいのか、ということであろう。〈製・市場への適応〉も〈機能統合によるリット)もどちらも高度に重要であり、意思決定のたびに、どちらを優先するべきかじっく考えながら仕事を進める必要がある、という場合である。
 このような場合には、〈製品・市場への適応〉と〈機能統合によるメリット〉という二つの軸を両方盛り込んだ組織形態を作るという手ではその軸を両方盛り込んだ組織形態を作るという手がある。実際には様々な中間形態があるのだが、ここではその究極の典型例であるマトリクス組織(matrixorganizationform)を例に取り上げておこう。
 マトリクス組織は、組織を分割する際の〈軸〉そのものを複数にした組織である。図1-3の例でいえば、最高意思決定者のすぐ下に各事業部長を置くと同時に、各機能部門長をも置くのである。図中の○印の人々は、一方では個々の製品・市場への迅速かつ柔軟な対応を目指す事業部長の管轄下に置かれると共に、他方では開発・生産・販売といった各機能別の資源共有や専門知識蓄積を重視する機能部門長の管轄下にも置かれる。
 大きな意思決定のたびに、製品・市場の要求と機能部門の要求が対立するかもしれない。この対立を実際に組織内で表出させ、そのたびごとにトップがどちらの軸を優先するか意思決定を行い、ダイナミックに二つの要求をバランスさせていくという意図をもってマトリクス組織は採用される。なお、図中の○印の人から見て図中の○印の人から見ると上司(ボス)が二人いるから、これをツーボス・システムと呼ぶこともある。


 一般に、分業すると、その仕事の切れ目を境にして異なる組織文化が発達するといわれる。異なる仕事を任されると、異なる環境に日々直面するようになり、何を大と思うかがその環境ごとに異なってくる。この日々の仕事環境に合わせて、人々の言葉いや時間感覚、仕事観などが異質なものになっていくのである。それ故、たとえもし本来は協働しあわなければならないとしても、分割したこと自体が逆に協働を阻害する側面をもつ。いったん分割したものを、機能的に統合しなければならないのだが、この統合を自然に達成することは難しそうだ。そこに調整の努力が必要になる理由がある。


 たびたび指摘しているように、一度分解した、今度は組み立て直さなければならない。一度分けたものを組み立て直す作業がどの程度低コストで実行可能かという点が、分業のメリットをプラスにするかマイナスにするかの最も重要なポイントである。
 あるプランに従って分割したのだから、そのプラン通りに組み立て直せばよい、と思われるかもしれないが、人間の作る組織はそれほど単純ではない。いったん組織的に分けることで、分かれた者たちの言葉遣い・行動様式・意識・考え方が変わってしまう可能性があるからである。組織内で分業を進め、既存の部署を分けて新しい複数の部署を作るということは、同時に、組織内に新しい「種族」を生み出すという覚悟をもって臨まなければならない。
 

 こう考えてみれば、市場というのは、製品のアーキテクチャー部分を標準化して、所有権の異なる人々の間で並行分業を行っているものだということができるであろう。だから、産業政策を立案するとか、国家経済を成長させようと意図する政策立案者は、アーキテクチャーを考えて世の中の分業のあり方に影響を及ぼす組織のデザイナーだと考えることが可能である。
 さらに根本までさかのぼって考えてみると、尺貫法をメートル法に置き換えたり、日本語の標準語を設定して全国一律の日本語教育を施したり、といった標準化も、こういったユニット間のやりとりの部分を標準化する作業の一種と捉えることもできるであろう。標準語を作るとか、計測尺度を標準化するとか、法律を制定するといった作業は、一つの巨大な国民経済という分業体系を構築し、統合する手段なのである。


 小バッチ化は単に在庫量を減らすというメリットばかりではなく、市場への適応と組織の学習という意味でも非常に意味が大い。多品種少量生産が求められ、日々刻々と市場や技術が変化する時代に、失敗から学び、日々改良を積み上げていく組織を形成するうえで、小バッチ化は決定的に重要なのである。これを究極まで突き詰めていけば、パッチ・サイズを一つずつにするということになる。いわゆる「1個流し」の生産システムは、ダイナミックに学習する現場組織の究極の姿なのかもしれない。
 小バッチによるメリットを突き詰めていくと、自社内の工程についてバッチ・サイズを小さくしていくだけでは限界に直面する。なぜなら部品納入業者からの部品供給が自社のバッチの大きさと一致していなければ、部品納入業者か自社のちらかに部品在庫が大量に積まれる可能性があるからである。在庫費用を部品メーカーが担っていたとしても、その費用を削減できれば部品コストを下げることが可能かもしれない。また、迅速な組織学習によって製品システム全体の性能向上を進めていくうえで、問題の発見とそのフィードバックは自社内で完結するものではない。部品メーカーまで含めた全体が迅速な学習を行うネットワークになっている必要がある。もし部品納入業者の倉庫に部品在庫の山があり、その山の中に不良品が入っていれば、それだけでネットワク全体の学習速度は遅くなってしまう。自社内で問題が解決せず、部品納入業者や流通業者などサプライ・チェーン全体のマネジメントが重要なのである。
 また、「作業の流れ」に含まれるのは、モノづくりのプロセスばかりではない。製品開発や注文処理、販売活動など、設計図(アイデア)やサービスを生産する活動まで含めて、何かを生産する活動はすべて「作業の流れ」として考える必要がある。新製品開発は、多様なアイデアを原材料として、一つの製品の設計図を生産する活動である。管理者たちの意思決定は、現場で生じている問題・課題に関する情報を原材料として、その問題を解決するための決断を生産する活動である。
 これらは、一見すると生産活動でないかのように見えるかもしれない、実はすべて「業の流れ」から構成される産活動だと捉えることが可能なのである。これら広い視野で捉えられた「作業の流れ」が速いサイクルで回るようになると、多様なメリットが達成可になる。
 すでに紹介したものも含めて、最後に簡単に整理しておくことにしよう。
 まず第一に市場需要に短い時間で対応する迅速さが発揮できる。短い時間で市場に対応できるのであれば、市場の変化予測する期間を短くできる。変化に五年かかる会社は五年先の市場環境を予測しなければならないが、三日で反応を変えることのできる組織は三日先の市場環境を予測すればよい。予測が容易であれば、それに対する準備も容易になり、経営資源のムダ遣いを大幅に低く抑えることができる。すなわち市場への適応力が高まるのである。
 第二に、「作業の流れ」が速いサイクルで回るのであれば、市場需要の反応も、工程の異常や技術変化も、比較的早いタイミングで発見でき、それを同様に早くフィードバックすれば学習スピードの速い組織が出来上がる。組織学習が促進されるのである。ミスが放置されず、ムダを削減するスピードが速く、他業よりも早いサイクルで製品を改良していくことができる企業は、コスト面と品質面の両面で同時に他社よりも優位に立てる可能性がある。
 しかも第三に、「作業の流れ」の高速サイクル化は、特定の顧客や市場セグメントに対応するサプライ・チェーン全体が連動することを意味している。機能別分業によって特定の工程や専門にのみ目を向けていた作業者たちが、特定客向けの「作業の流れ」の中で連結され、非常に速いフィードバックをもらいながら作業を行っていくため、自然に顧客の反応にも目を向けていくようになる可能性が大きい。機能部門の利益よりも事業全体の利益に対して敏感になるのである。この点が市場への適応力をさらに高め、組織学習をなお一層進展させる重要な加速要因となる。
 狭い意味での生産現場ばかりでなく、事務作業や製品開発、意思決定等々、さまざまな組織内のタスクに関して、「作業の流れ(処理プロセス)」を速いサイクルで回転させることには大いに意味がある。処理プロセスの標準化を進めていくにも、また次章以後で解説するヒエラルキーや水平関係を構築していく際にも、この高速サイクルで動くことによるメリットを常に視野に入れておかなければならない。


 結局のとこ、事前の調整手段である標準化は、予想可能な世界の中で有効であり、世の中で発生する事態が予想不可能になっていくにつれて事前の調整手段は機能しにくくなり、事後的な調整手段が必要になっていく。予想できる世界というのは確実性の世界であり、予想できないことが起きる世界は不確実性の世界である。したがって、不確実性が高ければ高いほど、標準化の有効性が低下し、事後的な調整手段の必要性が増すのである。その事後的な調整手段の中で、最も古典的で、現在でも最も一般的に使われるものがヒエラルキー(階層制)である。


(1)判断能力のある下位階層の構築———————自律的作業集団・職場集団
 上程される例外の数が多すぎる理由の一つは環境の不確実性が大きいことであり、もう一つは組織メンバーの熟練が不足していることである。それ故、組織メンバーの側の熟練が十分に蓄積されていれば上程される例外の数を減らすことが可能である。つまり適切な判断力を現場の集団にもたせれば、上司が判断しなければならない問題の数が減るのである。
 自ら適切な判断を下す集団を構築するためには、人材の確保:人材の採用に力を注ぎ、有能な人材を確保する、(6)人材の育成:Off-JT(新入社員研修等、仕事を離れて行われる教育訓練)やOJT(仕事の場で、職務遂行に即して行われる教育訓練)に注力して人材を育成する、構造的工夫:意図的にローテーションのやり方やキャリア・パスを工夫して、全業務に通じた幅広い熟練をもった多能工的人材を育成し、配置するように心がける、といった方法が考えられる。
 判断力の高い人材の確保とその育成によって上程される例外数が削減できることは、即座に理解できるはずである。だが、の構造的工夫については若干の解説が必要であろう。いま、三つの職務AとB、Cがあるとしよう。この三つの職務のそれぞれに一人ずつの社員をあてれば、各人は能力開発を通じて自分の職務に関わる例外的問題を解決できるかもしれないが、すべての職務にまたがる例外的問題を解決することは難しい。ところが、これら三つの職務を各人が一定期間ずつ経験した後にローテーションすることに決めれば、時と共に三人は三つの職務にまたがる例外的問題を考えることができるようになるであろう。
 全員がすべての職務を経験しないまでも、入社時の職務を出発点として、徐々に、より複雑な職務に進んでいくキャリアが用されていれば、同様の効果が得られる可能性が高い。このようなキャリア・パスが用意さていれば、先輩は自分よりも年次が下の後輩たちの職務に通じていることになる。したがって、後輩たち全員の携わっている職務にまたがる問を先輩は解決できるはずである。全員が全部の職務を知っている場合でも、先輩が自分より年次の下の後輩たちの職務を知っている場合でも、上程される例外の数を減らすことができるはずである。

(2)管理者の例外処理能力の開発
 管理者の例外処理能力が高まれば、多くの問題が解決可能である。しかし、例外的な問題を分析し、その背後にある問題の本質を把握し、実行可能な対応策を考えて、決断し、部下に実行させるという仕事をうまく遂行する能力を簡単に身につけることは難しい。もともとの才能も重要であるかもしれない。育成可能だとしても、一年や二年程度では成長するものではなく、もっと長い年月をかけて育成されていくものであろう。したがって、基本的には、管理者階層の人員あるいはその予備軍に対して概念的な能力を開発できるような仕事や研修機会を与えてじっくり育てていくというのが基本であろう。
 そのような努力を行っていることを前提としたうえで、次に気をつけるべきポイントは昇進評価であろう。管理者としての潜在的な能力を長期的な観察を通じて一所懸命に把握する努力を続けなければ、管理階層の中に多数の欠陥管理者が発生し、組織内における作業の流れはスムーズに動かなくなってしまう。これらの努力を行ったうえでさらに工夫できるポイントは、管理者に「アジェンダ」をもつことの重要性を自覚させることであろう。アジェンダというのは、今後自分たちがどのような時間幅で何を目指しているのか、現時点で重要な課題は何であるのか、といったことを示唆する見取り図とか計画表のことである。いつの時点で何が重要なのかということが分かっていれば、貴重な時間の配分方法を効率的に行うことができるようになる。この時間配分の工夫に気づくだけでも、例外処理能力の向上を望める管理者が実は多いのではないだろうか。

(3)管理者の例外処理能力を補強する構造の構築-スタッフ部門の創設
 管理者の例外処理能力そのものを短期的に増大させることができない場合、管理者の職務を分割して、最も難しい部分だけ管理者に与え、それ以外の部分を他の人に任せるという方法が考えられる。これはⅡ章で述べたバベッジの原理に基づく分業のメリットを追求するということである。もう少し体的に説明しよう。
 例外処理の仕事が図5-4に見られるように次の作業から成り立っていると考えよう。まず部下が上程してきた例外が前例や規則を用いて解決可能なものであるのか、それとも新たに分析するべき問題であるのかを判断し、そのうえで考えなければならない問題が何であるのかを定義する。この問題の定義に基づいて情報を収集し、その情報を分析する。この分析結果を基礎に置いて、とりうる選択肢を明らかにし、その中から選択を行う。この選択の結果、すなわち、この例外的な問題に関して何をどうすることで対処することに決めたのかという結論を部下に伝達する。本来はこの他にも、その決定を組織内で了承してもらう作業や、伝達した命令が実際に実行されてうまく機能しているか否かを確認する作業などが入るが、ここでは問題を簡単にするために、これらを含めないで話を進めよう。
 これら一連の作業の中で、問題の認識・定義と選択そのものはまさに有能な経営管理者がなすべき作業であることは明らかであろう。最も根元的な選択そのものまでも部下に放り投げて、自分は何も決めないという経営管理者の行動は、実務家の間では「丸投げ」と言って批判されることが多い。これらが経営管理者の果たさなければならない責務であり、また有能な経営管理者の時間を集中するべき作業である。しかし、これ以外の部分、たとえば、情報の収集と分析は他の人に任せてもよいであろう。場合によっては、選択肢を生成するところまでも他者に任せてもよい場合もあるだろう。また伝達のための文書作成等の作業も他の人に任せることができるはずである。
 このように考えると、経営管理者が遂行する例外処理の仕事は経営管理者が自分自身で遂行しなければならない部分と、それ以外の部分に分けられることが分かる。通常、図5-4の左下部分、すなわち情報収集や分析、選択肢生成をサポートする役割をスタッフという。これに対して、実際に選択・実行・実行管理の仕事を担う役割をラインいう。右下の部分、すなわち部下への伝達文書作成の部分を担うのは、通常、秘書と呼ばれる職種の人々である。ちなみに、ラインとスタッフから構成される組織をライン・アンド・スタッフ・オーガニゼーションという。軍事組織でいえば、ラインが戦闘を行う部隊であり、スタッフは参謀である。
 さて、経営管理者が「問題の認識・定義」と「選択」に集中で、それ以外の作業をスタッフや秘書に任せることができるのであれば、経営管理者とスタッフ、秘書のチームが処理できる例外の数は、もともと一人で処理できた例外の数よりも多くなるはずである。しかもこの分業自体は並行分業ではなく機能別分業であるから、増やした人数以上に飛躍的に処理能力を高めることができるはずである。
 「はずである」と書いているのは、スタッフが適切な情報収集・分析・選択肢生成を行うか否か、十分に気をつけておかないとならないからである。当初、ラインの経営管理者たちが「主」で、サポートを行うスタッフたちが「従」であったのに、徐々にスタッフが「主」でライン管理者たちが「従」であるようなパワー関係の変化が起こることがある。本社スタッフは現場ではなく本社に、事業部スタッフは工場ではなく本部に置かれ、本社や本部には社長や事業部長という権力の中枢に位置する人物のオフィスが存在するのが一般的である。権力の中枢に位置する人物と頻繁に接することのできる部署のパワーは、大きくなる可能性が高い。しかも、情報の収集と分析に携るスタッフは、専門性の高い知識を駆使するようになり、独特のジャーゴン(難解な専門用語)を用いるようになる。このジャーゴンを駆使する人々の集団が独自の地位を組織内で確保していく、という現象が起こる可能性もある。これらのパワー・ベースを手に入れたスタッフたちは、社内における自分たちの利益を追求して、自分たちに有利になるような選択肢ばかりを経営管理者に提示するかもしれな。選択肢の作り方次第では、比較的簡単に相手の選択をコントロールすることができる。たとえば、選択肢を同時に並べて示す場合には、スタッフが推している選択肢を、それよりも魅力のない選択肢と組み合わせて提示するという方法がある。あるいは、選択肢を時と共に少しずつ提示する場合は、初めに魅力的でない選択肢を多数提案し続け、経営管理者が「却下」を何度も繰り返した後で、初めて「まとも」な選択肢を提示するといったやり方もある。
 図5-4で選択肢生成の部分だけは経営管理者とスタッフの中間に置かれているのは、択肢生成が「選択そのもの」をコントロールする力があることに注意を促すためである。経営管理者が「ありうる選択肢」について考える作業を一切放棄してしまえば、この種のスタッフによるライン管理者のコントロールが蔓延する恐れがある。
 また、権力を強めたスタッフ部門の中には、問題の認識・定義自体を自ら主体的に行うものも出てくる。その問題の認識・定義がたしかに全社的に見て有効なものである場合もあるが、同時に、現場の問題と結びついていないスタッフの言葉遊びによって、実在しない問題が創作され、全社プロジェクトが形成されることもある。
 組織デザインに用いられるメカニズムは、どのようなものでも完全にプラスばかりのものはない。常にプラスの面とマイナスの面と両方がある。マイナスの面が強く出ないように気をつけながら、プラスの面をうまく活用するというのが組織設計の基本である。スタッフもその一例に過ぎない。


 ヒエラルキーはまず第一優先順位の相互依存関係をグルーピングし、そのうえで第二優先順位の相互依存関係が次に緊密に相互調整しやすいようにグルービングする、という順序で複数の階層をもって形成されていくのである。これまでの議論を要約しておこう。
①潜在的相互依存関係分業によって成立した個々の職務は、潜在的に複数の相互依存関係をもっている
②戦略的に重要な相互依存関係その相互依存関係の中で何が最も主要な調整を必要とるものになるのか、という問題は、職務そのものに備わった特徴というよりも、市場競争において何が成功要因であるのかとか、企業が競争上の武器として何を重視しているのか、という環境や戦略によって決まってくる。
③グルーピングによる情報処理効率化市場からの要請あるいは企業の主体的な戦略によって決まる決定的な相互依存関係をもつ職務を、できるだけ同じ組織ユニットにグルーピングすることで、最も頻繁に相互調整を必要とするユニットが近くに置かれることになる。近くに置かれた組織ユニットは、共通の上司までの距離が短いので、ヒエラルキー内でやりとりされるコミュニケーションの数が少なくて済む。だから、競争上最も重要な相互依存関係を決め、それを最もコンパクトな組織ユニットにまとめる努力を行うことで、相互調整のための情報処理効率が高くなる。
④第二位・第三位等の重要度をもつ相互依存関係同様に、優先順位第一位の相互依存関係をグルーピングした後で、次に相互調整を必要とするユニットをグルーピングする、といった手順を繰り返すことで情報処理率の高いヒエラルキーを構築することが可能である。


 このようにして、組織全体のパフォーマンスを犠牲にして自分自身の組織内における価値を高め、達成感を獲得していく、ということが生じる可能性がある。本来、調整の必要があった部門間を、さらに互いに遠ざけてしまうという問題が調整担当職を置くことで発生する可能性がある。この問題を解決する方法は、基本的には二つある。まず第一に、直接折衝しないで媒介者を置くが故に発生する問題なのだから、できる限り直接対面状況で意見交換する機会を設けることである。直接折衝を毎日行わないまでも、週に一回とか、月に一回といった頼度で小人数の会合を開き、互いに直接意見を言い、それを聞く機会を設けることで、互いに遠く離れすぎないようにすることが可能になる。
 二つ目の解決策は、調整担当職に応分の権限と責任を与えることである。プロダクト・マネジャーや事業部長など、B製品の市場における経営成果に責任を負わなければならない立場に置かれれば、自分自身の組織内の存在価値を高めることと組織の業績向上を追求することとが矛盾する可能性は低くなる。事業の成果そのものが、自分自身の存在価値そのものになるはずである。それ故、応分の権限と責任を付与された管理職として調整を行うようにすることで、媒介者の権力がX事業部の業績を低下させる危険性を回避することができるはずである。


 企業組織が追求するものはオペレーションの効率性ばかりでなく、戦略の創発や人材の育成など多様である。それら多様な目標を念頭に置き、その時々の環境や目標に応じて、組織デザインに適宜若干の補正を施し、オペレーションの効率性追求を若干犠牲にしながら、他の効果を手に入れられるように舵取りをしていく。組織デザイナーの仕事とは、このように多元的な効果をダイナミックにバランスさせていくために、その都度状況に合わせて多様な手段を折衷主義的に組み合わせいくものなのである。
 言い換えれば、組織デザイナーは、純粋な原理主義者のように振る舞うのではなく、一見無節操な現実主義者のように振る舞うのである。だが、実際には、現実に合わせて折衷主義的にならざるを得ないが故に、かえって業や調整の原理原則を深く理解することが不可欠である。本書がそのような原理原則の理解に若干でも貢献できれば幸いである。


キツネの権力の予防法
 ここまで考えてくれば、キツネの権力が発生しやすくなる仕組みがどのようなものかの見当もついてくるであろう。論を先取りすれば、複数の部門の調整を担当するポスト(リエゾンと言う)を作らないこと、できる限り直接当事者が話し合うようにすることである。当たり前なのだが、多くの企業人が逆の選択をする機会も多いので、簡単に解説を加えておこう。
 まず、キツネの権力が発生してくる典型的なプロセスは、高度な分業から始まる。分業を高度に進めていくと、異なる部門で異なる志向性が発達する。そうなると複数の部門をまたがる調整が難しくなっていく。利害も対立するし、言葉づかいすら異なる場合も出てくる。この志向性の相違にどう対処するかがキツネの権力を生みだすか否かの分かれ道である。

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2026年09月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

尊敬する経営学者の著書。新書故に語り口は軽やかだが、組織戦略を考えるにあたり重要な点が簡潔に述べられている。先ず、本書の中で強調されているように「組織(構造)」は万能ではない。何か問題が発生した際に、組織構造を再検討するというのはよく見られる光景であるが、組織とは他にもヒト(誰をその役職にアサインするか)、ルール(どのようなソフトなルールで円滑なコミュニケーションを可能にするか)という検討すべき重要な要素がある。先ずはこれら2つも検討に加えることが必須。その上で、過去の組織(上記の3要素の集合)はある種合理的な対応の積み重ねの結果として生まれてきたものである、という前提の上で、必要な場合はそれを意思を持って壊すということ。もちろん、逆機能の観点からも非の打ち所がない意思決定はあり得ないのだが、組織変革を行うためには時に何かを犠牲にする必要がある。更に、個人的に腹落ちしたのが、「世の中には給料は増やせないけれども、本当に感謝していると、誠意のあるコトバで報いるという方法があるではないか(p.94)」というポイント。組織変革は多くの場合、何かの問題(例:本業が傾きかける、人材流出の増加)が顕在化したタイミングで検討が開始されるが、組織には流れがあるため、急に給与を増やすなどの打ち手を取れないことが多い。その際に問われるのは、マネジメントの人間洞察の深さであると思う。給与は出せないけれども何気ない声かけで防ぐことのできる人材の離脱や、すぐに昇格はさせられないけれどもその理由を個別に伝えることによる組織へのロイヤリティ維持など、本来打ち手は沢山あるはずなのである。この打ち手仮説なしに、ただメンバーの話を聞いて課題を理解した気になっているマネジメントがいまだに多いのではないか。

特に印象に残った箇所は以下
・問題に対する解答は、各人がその場その場で自分の頭で考え出していくべきものだ。だから経営学は答えを教える学問ではない、しかし経営学における理論的思考は、各人が自分の置かれた状況を分析する際の指針とか思考の手順程度のものは提供できると筆者は考えている(p.13〜14)
・ここで言いたいのは、いろいろな組織設計上の工夫は、「官僚制を打破して、官僚制を代替するべく」行われるのではなく、むしろ「官僚制に付加する形」で追加的に行われる、ということである(p.24〜25)
・組織論の基本を学んだことのない人は、事業部制というと分権的組織だと簡単に片付けてしまうことが多いが、事業部制の本質的な特徴は、日常業務の処理と戦略的な課題とをそれぞれ事業部と本社に分割する点にある(p.34)
・組織は仕事の邪魔はできても、自動的に仕事を処理してくれる機械ではない、最後に判断し、実行するのはヒトであり、そのヒトの中には自分も含まれるのだ(p.64)
・事業部制やカンパニー制を採用していると、短期的な市場への適応には都合が良いのだが、シナジーを達成しにくいとか、共通資源の蓄積に難があるとか、効率性が低下してしまうといった問題が出て来やすい(p.67〜68)
・世の中には給料は増やせないけれども、本当に感謝していると、誠意のあるコトバで報いるという方法があるではないか(p.94)
・組織を読み解く上では、たかだか一パーセント程度でも、この種のフリーライダーが出てきたときに、他の人々がどのように行為を変えていくのか、と考えていくことが大事である(p.108)

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2026年08月22日

Posted by ブクログ

自分の会社と照らし合わせながら読んだが、薄々気がついていたことを論理的に説明されていた。
ただ、少し机上の空論感を感じた。言うは易し。。

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2026年05月02日

Posted by ブクログ

斬新さはないが、サラリーマンからすると、なるほどと思える内部が多かった。
学者の立場ながら、企業内部のこうした事情に精通できている点が興味深い。

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2022年04月10日

Posted by ブクログ

一橋大教授で経営戦略・経営組織・経営学方法論等を専門とする沼上幹の新書。現実的・本質的な実践を念頭に会社組織構成について基本的な考え方と、日本社会において起こりがちな組織腐敗の事例とその対処の基本的理論を紹介している。これを読むことで、一般的な組織構造の意義と、陥りがちなミスや腐敗への対処法を学ぶことができる。また経営者側の立場に寄り添って組織戦略の考え方を書いているため、いち従業員の立場で読むと観点の違いをよく知ることができると思う。

一旦読んだが、咀嚼しきれていない。
「官僚制」は批判されるが、組織で価値を生み出すための基本構造であり、官僚制の腐敗は憎むべきだが、官僚制の基本的な構造自体は憎むべきでない、という立場で始まる組織戦略の考え方の一章や、それ以降のいくつかの議論は、当たり前だけど何故か誰も言わなくなってしまったことを再度述べている。基本を疎かにしてはいけないと感じる。

あと口が悪い。

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2022年03月22日

Posted by ブクログ

事象が言語化されている、という意味において気付きもあったけれど、課題に対する改善方法に膝を打つようなものが見つけられず、少しモヤモヤが残った。
自分にとっては、学問的な考察を学ぶよりも、現役の経営者の考え(判断基準や直観の用い方)を知る方が役立つと思った。

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2022年03月03日

Posted by ブクログ

フリーライダーのとこはおもしろかった。特に、フリーライドを上回るメリットを感じられれば、この問題は克服できるだろうなと思い、一次的にはWG、二次的には別の策を考えていかないとないと思った次第。

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2021年10月15日

Posted by ブクログ

久しぶりにビジネス書を読んだ。本書では、典型的な組織を検討対象とし、それらの特質を了解した上で、よりベターな体制に整備できるよう、構成員自らが主体的に考えるためのケース群が紹介されている。大学の組織は、設置者を問わず基本的に官僚制組織なので、第1章の内容は参照しやすく、読者が持つ課題に引き寄せやすいだろう。第3章の組織改編のための視点はこうだ。①メンバー固定・組織構造変革、②組織構造固定・メンバー変革、③メンバー変革・組織構造変革の3点を、現実に照らし合わせを考えることが求められている。第5章の組織におけるフリーライダー説は、多くの大学に何人かはいるというイメージがなんとなくある。自分は特に何もプラスの貢献をせず「学内野党」として生活している人々のことだ。第10章の組織が腐敗してからの処方箋は興味深く、本格的に自組織が崩れる前に一読しておくとよいだろう。人材の優秀層とそれ以外をわけ、前者が新規事業を考案し、実践していく作業に取り組んでいくプロセスが、人材育成と説かれている。

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2019年08月18日

Posted by ブクログ

奇妙な権力(キツネの権力)と組織の腐敗について詳しく書いてある。組織タイプや分業、調整については、同著者の別書「組織デザイン」の方が詳しい。

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2018年07月19日

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