あらすじ
日本型組織の本質を維持しつつ、腐った組織に堕さないよう、自ら主体的に思考し実践していこう。本書は、常識的な論理をひとつずつ積み上げて、組織設計をめぐる誤解を解き明かす。決断できるトップの不在・「キツネ」の跋扈・ルールの複雑怪奇化等の問題を切り口に、組織の腐り方を分析し対処する指針を示す。
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Posted by ブクログ
三品さんの経営戦略を問いなおすに続く、ちくま新書のロングセラー本。三品さんの本と異なり、連載がベースだったからか、本としてのまとまりは弱いけれど、組織を考えるためには必須の文献と言ってもいいのではないか。
まずは官僚制が組織の基本であるという点。得手して官僚制は唾棄されるべきものと扱われがちだが、官僚制がなければ、都度対応方法を考えなければならず、組織として大きな非効率が生ずる。官僚制により、実力者がルーティンに煩わされない状況を作ることこそ、組織論の第一歩なる。そして、組織設計上の工夫は、官僚制に付加する形で追加的に行われる。
事業部制の目的は、日常的に発生する問題の解決をすべて行えるだけの資源を事業部に与えて自律的にすることで、トップマネジメントが日常業務を離れて長期的なビジョンや経営課題に取り組む時間を得ることができる。一方で、現場=ルーチン、ミドル=例外処理、トップ=戦略とすると人が育たない。緩やかにオーバーラップさせることが必要。
ザ・ゴールにしたがって、ボトルネックを考えることは生産工程に留まらずあらゆる局面で有効。制約条件が何かを見極め、それを取り除くことが組織設計上も有効。
マズローの欲求階層説で重要なのは自己実現ではなく、承認尊厳。給料で答えられなくても、成果を認めること、感謝を示すことは必要。
後半はいかに組織が腐るかが論じられている。多くの兆候はあるものの、やはり議論が内向きになっているときは要注意で、資料の書き方がダメということが議論になっているような企業はやはり危険。そんなことを指摘する経営もどうかと思う。パワポがきれいすぎる会社はやはりダメ。もっと本質的なことを考えろということ。
Posted by ブクログ
レビューめっちゃ書いたのに・・・レビュー枠外を一回クリックしただけで、レビュー枠が消えて全部吹っ飛んだ(涙
面倒なので要約すると、組織戦略の基本(官僚制)や組織腐敗のメカニズムが書いてある。が、言葉や概念の定義はなく初心者に優しい本。詳しい事例は挙げられていないが、組織・人事畑じゃない方にもわかりやすく嬉しい。
流行りのGE・グーグルの本を先行して読んで、エッジのきいた人事制度ややたらフラットな組織戦略が頭を支配している私のような人には、良いパフォーマンスを発揮すると思う。
<キーセンテンス>
・官僚制はベースで、そこに時代に合わせた付与されるものがある。
・会社はみんなが自己実現する場ではない。
・調整役はうち内向きの仕事を作るだけ。
・トップ・ミドル・ローワーがそれぞれ、戦略立案・例外対応・ルーチンを正確にこなすことがベース。仕事をプログラム化しないと、トップやミドルが例外対応(個別処理)に追われる生産性の低い組織になる。
・組織変革の本質は、問題を減らすことではなく、問題を適切な階層に分散させること
・ボトルネックになっている場所(問題が発生している場所)に知識・情報をベースとした権力を手中させることが最適解。環境の不確実性が高まるにつれて、現場で大量の問題が発生するだから、意思決定のポイントを組織階層の下位にシフトするとよい。(ただし、決断はシフトさせてはいけない。)
Posted by ブクログ
著者が「自分で経営した場合、どういった点に気を付けるか」という点にこだわり書き上げたという、組織マネジメントの本。2003年発行だが現在読んでも全く違和感がない。
TOC、マズロー、事業部制といった組織論を交えながらも、著者が自分の言葉で咀嚼しており、内容は非常に分かりやすい。
例えば組織設計でのトップダウンで作り上げた理論に対して現実が追いつかない点に対して「スパッと割り切った組織に不純物を後から混ぜる。最初から混ぜて作るのでは、しがらみだらけの組織になる」といったように。また、組織へのフリーライド(ただ乗り)、キツネ(宦官的振る舞い)の悪癖だけでなく、それらを生み出す「大人しい優等生」の無責任さを問う等、切れ味も鋭い。
●メモ
・日本の高度成長、世界最高の水準になったのは日本が優れてただけでなくアメリカに大いに問題があったのではないか
・日本は長期雇用が前提である。アメリカ、その他の国のような雇用へ簡単になるわけではない。その問題を捉えながら現実的な施策が必要
・組織は毎回発生する問題を都度考えては組織の意味がない。手順、ルール遂行により実現してこそである
・人は目の前に大量のルーチンワークが積まれると、それを優先し、創造的な仕事を後回しにする
・経営のボトルネックは短期と長期で異なる
・マトリクス組織にてパワーバランスを取るのは難しい。解決策は「腹を割って話す」「トップ判断」「ミドル層がバランスを取る」。だが3つ目は本来両組織のトップが決断することを放棄しただけ
・マズローの法則では自己実現の前に「承認欲求」がある。これを如何に実現するか。これを軽視している傾向がある
・フリーライダーを防ぐことは難しい。責任感の強い人を採用し、会社と自分の運命がリンクすることを示していくしかないのではないか。エリートと呼ばれる人の賃金を大幅にあげるなどの考えもある。その場合、階層が生まれるため、その中間層が重要になってくる
・決断とは「何かを取り、何かを捨てる」ため、一部の人には苦痛を強いるものだ
・何本ものプロジェクトが乱立する状態は危険、「決断したつもり」に経営者がなっている可能性が高い
・エースの無駄遣いには注意。エースには仕事が集まる。無能な人間は暇である。
・意思決定で「自分の考えとは違うが、●●さんの意向を踏まえて…」という理由での決定は健全な議論を黙殺してしまう。議論の相手が存在しなくなる
・成熟した組織から人を抜くのは難しい。
彼らは生産性も高く優秀だが、その場から抜け出さないし、権力もある。だが、彼らの忙しさは「内向き」である。なぜなら生産性が高いため、新規事業より忙しいはずがない。これは組織腐敗の始まり
・組織腐敗が最悪まで進んだ場合、「複雑怪奇なルールの廃止」「成熟事業部から優秀な若手を乱暴に引き抜く」「優秀な人材が暇になるような組織にする」ことである
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Posted by ブクログ
バブル期には絶賛された日本的経営も、いまや全否定の対象とすらなる。
だが大切なのは、日本型組織の本質を維持しつつ、腐った組織に堕さないよう、自ら主体的に思考し実践していくことだ。
本書は、流行りのカタカナ組織論とは一線を画し、至極常識的な論理をひとつずつ積み上げて、
組織設計をめぐる多くの誤解を解き明かす。
また、決断できるトップの不在・「キツネ」の跋扈・ルールの複雑怪奇化等の問題を切り口に、
組織の腐り方を分析し対処する指針を示す。自ら考え、自ら担うための組織戦略入門。
目次
第1部 組織の基本
組織設計の基本は官僚制、ボトルネックへの注目、
組織デザインは万能薬ではない、欲求階層説の誤用(承認・尊厳欲求が大事)
第2部 組織の疲労
組織の中のフリーライダー、決断不足、トラの権力、
キツネの権力、奇妙な権力の生まれる瞬間(バランス感覚のある宦官)
第3部 組織の腐り方
組織腐敗のメカニズム、組織腐敗の診断と処方
★ポイントは、企業理念に基づいて、利益を産み出す行為か否か、ということ。
Posted by ブクログ
自分が所属する組織のことを考えながら読むと非常に参考になる。経営者がどの視点で物事を見ているのかも理解しやすくなる。
内向きの話ではなく、外向きの意識を常にすること。
3割以上内向きの調整が出てくるようになるのであれば危険信号。
組織の基本は官僚制
ボトルネックに注目すること
組織デザインは万能ではない。常にその中のヒトを中心に考えること
金銭やポジションでなく、自己実現に目をいかせすぎると会社の理念と異なる安易なものが出やすくなる。自己実現と厳しい評価はワンセットであるべき。
組織の中にいるフリーライダーをゼロにすることはできない。すべての不満に対応することも困難。
フリーライダーとなりうる人は自分が忙しそうに振る舞う。
本当に仕事がくるエースが重要な仕事の決断できるように、エースに振り分ける仕事に気をつけること