ジャック・ロンドンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ冒頭の雪山シーン(2名が犬ぞりで棺桶?を運ぶ)ですぐに引き込まれた。勿論、目の前数十センチしか見えない雪道を、いつ目的地に辿り着くか分からない苛立ちの中で歩いた経験はないが、自然に状況を想像することができた。
物語の大部分は元オオカミのホワイト・ファング視点で展開していき、その成長/適応を追体験することができる。オオカミとしての本能に根付く行動を行い、自然や人間からのFBを受けることで、犬?として適応していく過程は、大きな驚きはないものの、普遍性を持つテーマ/物語展開であると思う。テーマの普遍性故に何を学び取るか?は難しいが、1つ選ぶのであれば、それは「自身の本能/核はやはり変わらない」という -
Posted by ブクログ
(01)
野生と人間との間にはいつも葛藤があって,それがこじれたり決裂したりすれば,殺し合いにもなる.人間が狼を見続けてきたように,狼もまた人間を見続けてきた.人が狼に畏敬の念を抱く可能性があるとすれば,狼もまた,人を神のように感じとる可能性も同時にありうる.
しかし,本書は人間が書いたものであって,狼や犬が書いたものではない.よって,狼の眼を通して,異種の人間と神と同族の狼や犬を見て,その体験を綴った小説といえる.そこに描かれているのは,狼でありつつ,狼的な人間や,人間のうちにある野生であり,神は,人間でありつつ,人間のうちにある神とその世界(*02)でもある.
白い牙,ことホワイト・ファン -
Posted by ブクログ
主人公はホワイト・ファング(白い牙)と呼ばれる狼。舞台は、ゴールドラッシュに沸く北米の原野です。
厳しい自然界の掟を学んだホワイト・ファングは、人間と共に暮らすことになっても、生き延びるために野性の本性を研ぎ澄まし、本能の命ずるまま行動し、自分以外のすべてのものに激しく牙をむきます。彼は強く、狡賢く、凶暴で、情け容赦のない・・・・そして孤独な灰色狼です。けれど、ホワイト・ファングの血の四分の一は、犬のものでした。すぐれた順応性も併せ持っています。
この小説は凡そ100年前に書かれたものだそうですが、動物行動学者も顔負けの洞察力にはびっくりです。作者ジャック・ロンドンの生涯も、ホワイト・ファング -
Posted by ブクログ
『野性の呼び声』が面白かったので、下高井戸の駅の本屋で平積みされていた本書も読むことにした。
『野性の呼び声』は飼犬が野性に呼ばれる話だが、『白い牙』はその逆で狼が人間のもとに下る物語である。
主人公が狼なので、三人称とはいえ一貫して狼の視点で書かれた小説である。狼がうろうろするだけの話をよくもこんなに面白く熱く語れるものだとジャック・ロンドンの筆力に大変感心した。
『野性の呼び声』に比べるとやや劣ると感じたのは、私が既に文明のなかにあって、呼ばれるとしたら野性からであり、呼び起こされるとしたら本能であるからだと思う。忠誠を尽くしたい人間や自分の力を捧げたい仕事を心のどこかで求めている -
Posted by ブクログ
・ジャック・ロンドン「ザ・ロード アメリカ放浪記」(ちくま文庫)を読んだ。私はジャック・ロンドンを「野性の呼び声」と「白い牙」 でしか知らない。日本で有名な作品である。動物文学作家だと思つてゐた。しかしさうではないらしい。海外文学に対する無知である。作家といふもの、そんな単純なものではない。 ジャック・ロンドンは40年の生涯の「20年間に53冊の著書と200以上の短編小説を発表した。」(Wiki)さうである。結構な量である。この「ザ・ロード」もその1つ、かなり読まれたらしい。「ホーボーとしての経験が書かれたこの本は、その冒険物語があまりに魅力にあふれていたので、当時、彼の真似をしてホーボーにな
-
Posted by ブクログ
「白い牙」ほか2冊を読んでいる筆者。自伝ともいわれる当作品、彼の人格と対峙するのが息苦しくなるほどの内容がある。
訳が素晴らしく、読み易いが、内容が刻苦凄烈な為、読み続けるのはせいぜい30ページというとっかかり。500ページ余の本だから、これじゃ、余りにも遅読。
返却の日に頑張って読み切った。
最後は「人は死すれば自然に還る」ごとくあっけなかったが、そこまでに至る80ページは文字通り、血反吐を履いて呻吟が聞こえてくるような歩みの生き方に感じられた。
本人自身、尿毒症とモルヒネ多量の長期間過剰摂取による死去とあるように この子の作品が等身大であることが認識できる。
最後に心を通わせあったプリ