あらすじ
人生においても、その作品においても、多彩で多面的な作家、ジャック・ロンドン。200以上もある短編のなかから「世界が若かったころ」「命の掟」ほか、生きるために生きのびるために知恵の火をおこす人々の物語を贈ります。
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Posted by ブクログ
世界の名作家たちの短篇を青少年にも読みやすいように編纂された世界ショートコレクションシリーズ。表紙と各短編の扉絵はヨシタケシンスケです。
ジャック・ロンドンはやっぱり切れ味鋭く、しかしすっとぼけたような皮肉的なユーモラスがあり、自然描写が抜群です。雪の描写は自分の息が白くなりそう。
この本では、ヨシタケシンスケの影響か、一般書で読むよりもすっとぼけた感じや、広い世界からはちまちましているようだけれども一生懸命生きる人間の様子が感じられた。
『荒野の人々』
荒野にぽつんと建つ炭鉱夫たちの小屋に、ジャック・ウェストンデールという若者が訪ねてきた。自分の犬ぞりが盗まれたから追いかけている、少し休ませてほしい、というのだ。炭鉱夫たちは承知する。なかでもマラミュート・キッドは彼に親近感を持って接する。ジャックが出立する時にマラミュートは「本当は逃げているんだろう?あの道を行くんだ。気を付けてな」と送り出す。そのすぐ後に警官がやって来て「賭博場の金を奪って逃げた男を探している」という。マラミュートは目線で他の炭鉱夫たちを黙らせる。警官がジャックの橇のあとを追って出ていったあとに、マラミュートは皆に伝える。「ジャックは妻と生まれたばかりの子供を残して真面目に働いていた。だが二度も騙された。彼が盗んだのは、騙し取られた金と同じ金額だよ。」荒野に生きる者たちは、自分たちと同じように厳しい環境で働く男同士の心の絆があったのだ。
『世界が若かったころ』
「世界が若かったころ」って想像力が膨らむ題名だなあ、と思ったんだけど、物語最初は「ある夜、ある男が通りかかった森で巨大な類人猿のような野蛮人に遭遇した!なんだあいつ、コヨーテを追いかけてるぜ!見つかったらあっぶねー!逃げろーー」という描写。
実はこの巨大野蛮類人猿は、昼間は企業社長のウォード氏だった。彼は幼少期から抑えきれない野蛮な衝動があった。野山が、高原が、俺を呼んでいる!成長してから彼は、昼間はやりてアメリカ人として起業を成功させ、夜は叫び声を上げて森を放浪し獣と戦うという二重生活を充実させていた。この夜の巨大野蛮類人猿の口から出る歌は古代のドイツ語で初期のチュートン語なんだそうだ。彼は「世界が若かったころ」の住人なのだ。
だが人間のウォード氏はそろそろ結婚したい。婚約者リリアンに知られないようにするにはどうすればいいだろう?
ある時彼は屋敷にリリアン、その母、友人たちを招いた。なんとかこらえた彼の古代巨大野蛮類人猿の衝動を必死に抑えながら。そこにちょうど「サーカスから巨大凶暴クマが逃げ出したぞ―」という知らせが入る。庭先にその巨大凶暴クマの影。もうウォード氏の衝動は抑えきれない!彼は服を引きちぎりクマに向かっていった!!!
…なんか妙な勢いのあるお話だったな・笑
『キーシュの物語』
名誉ある狩人だった父が死んでから、息子のキーシュとその母は困窮した。村の掟で「余った獲物は分け合うこと」と決まっているのに、キーシュと母は滑られて食べ物を分けてくれないんだ。キーシュは村の会合で言う。「ぼくの父は、多くの獲物を獲り、足りない人々に分け与えました。今は僕たちが困っています。食べ物を分けてください。」しかし村の男達は「このガキを追い出せ!」と相手にしない。そこでキーシュは「ではぼくは自分の力で獲物を獲ってきます。ぼくと母には少しでいいので余った分は足りない人に分けます。」と宣言する。
そしてキーシュは多くの獲物を一人で獲り、あまりは村の人々に分け与えた。さすがに恥ずかしく、不思議に思った村の人々はキーシュの後を着ける。そして彼の知恵による狩りを知る。
その後キーシュは偉大な村の長となり、長い間尊敬された。
『たき火』
大人向けでは『火を熾す』という題名の、自然のシビアさ、それを甘く見た人間の手痛い最期が書かれて文章も内容も静かで鋭い物語でした。しかしこちらで読んだらやっぱりヨシタケシンスケの影響かなあ、シビアさより、眼の前の自分だけの利益に目がくらんで死を招いた男の、笑い事じゃないんだけど皮肉な突き放したような笑いが感じられました。
冬の炭鉱地(違うかも)で、木材独り占めを目論んだ男が、仲間と離れて犬だけを連れて駐屯地まで移動している。マイナス45度を舐めるな!と言われていたけれど、自分はできるさ、と思っている。
しかしあまりの寒さ、一人での行動、犬に冷たい仕打ちをしていたことの全てが彼を死へと向かわせる。
…読んでいて自分の息も凍りそうブルブル
『王に捧げる鼻』
王朝時代の朝鮮が舞台。
横領で死刑判決を受けたやりて官僚が、鼻の絵を描いて「この鼻で、自分の命と、王国の命運を救います!」と言って数日の自由をもらう。
頭のいいヤツがうまく立ち回ったお話。
『マーカス・オブライエンの行方』
炭鉱夫たちの町では自分たちの法律を決める。裁判官役に選ばれたマーカス・オブライエンは、炭鉱の権利を得て成功者になりそうだった。
でも急に消えた。
生きているんだけど、どこに行ったかを説明しに戻るつもりはない。
その時目が覚めたらボートに乗って漂流していたんだ。それは自分が判決を下した通りのやり方だった。俺、何かしでかしたのか!?運良く町に流れ着いて、全く別のことで一定の成功治めたから、これでいいや。
『命の掟』
これは最初に読んだ時には切れ味の鋭い物語だなあと思ったんだけど、やっぱりヨシタケシンスケの影響か、自然の中でどうしようもない小ささが目についたかなあ。
雪原地を移動して暮らす部族がいる。生きるのに足手まといになった老人は置いていかれる。彼の番になった。焚き火一つ、手に届く範囲の薪が少し。
多くの老人たちが、自分が、そしていつかは彼の息子や孫たちに巡る運命だ。
やがて飢えた狼に囲まれる。
彼は命にしがみつき、だが手放す。
Posted by ブクログ
世界ショートセレクション。ジャック・ロンドン。恥ずかしながら、この作家のことは知りませんでした。。「野生の呼び声」という代表作の名前は聞いたことはありましたが。
最高に面白いショートを味わわせてもらいました。極北の暮らし、冒険など、作家の実体験を反映させた物語は、リアルさを感じさせながら、ストーリーとしても面白く、引き込まれました。ウィットも効いた「世界が若かったころ」、自然の中での人間の命のありようを考えさせる、「命の掟」「たき火」が特によかったです。
Posted by ブクログ
ジャックロンドン、おそらく始めて読んだが、ゾクゾクする感じの面白さ。
「たき火」は恐ろしくなって、途中で読めなくなった。
「命の掟」は息子の視点と親父の視点、両方が頭の中でグルグルしながら読んだ。悲しいような、清々しいような。
Posted by ブクログ
海外文学ブックガイドを見てこの本を読みました!読みやすくておもしろかったです!寒い地域を書いた作品が得意なのか…私まで凍傷になるんじゃないかと思う描写で読みいってしまいました。
この本!シリーズが沢山あることにびっくり!
次はディケンズショートセレクション読んでみたいです。
Posted by ブクログ
ジャック・ロンドンはじめて読んだが、
その多岐にわたるジャンルにびっくり。
アラスカ原住民や北朝鮮、カリフォルニアの広大な森なんかも登場する。
特に「たき火」の雪の寒さに凍てつく様子がとにかくリアルで、自分の指先や足先の感覚もなくなってるんじゃないか?なんて思うほどだった。
恐ろしいほどの寒さ、死が近づいている瞬間。
とにかく怖かったけど、命を感じた。
「命の掟」も短いながら読み応え十分。
他の作品も読んでみよう。
Posted by ブクログ
恥ずかしながら「野生の呼び声」も読んだことのない私が初めて読んだジャック・ロンドン。その短編集はさながら「荒野のO.ヘンリー」。若い頃から職を転々として流転の人生を送った人らしく、アラスカの先住民、金鉱掘りの男たち、変わったところでは朝鮮の役人など、これまであまり読んだことのないような人たちが登場する。いずれも「生きるための知恵、生き延びるための知恵」に満ちた珠玉の作品集。
Posted by ブクログ
短編集。
初めて読む著者で、作風も全く分からなかったが、意外と楽しめた。
表題作が○○○○ものとして良い出来。
「キーシュの物語」「マーカス・オブライエンの行方」も好き。
Posted by ブクログ
理論社の世界ショートセレクションの3~極寒の地で人を追っていると言う男をもてなし、実は追われている、その追っ手の行動を妨害する。夜は原始のチュートン人、午後は現代のアメリカ人という二重生活をする富豪は、結婚式の夜、敷地に迷い込んできた巨大な熊と闘う。名狩人の父を失った少年がホッキョクグマを倒す方法は、クジラのヒゲを油で固めて小さなボールにして喰わせる方法だった。マイナス60度の気温の中、川の薄氷を踏み抜いてしまった男は焚き火に失敗し、付いてきた犬は見捨てて駆け出す。公金を横領した朝鮮の官僚は、王に献上する鼻を持つ地方の富豪を脅し、十万湣の金を手に入れる。金鉱を掘り当てた男はウィスキーを飲まされて危うく騙されるところだったが、酔っ払ってボートに乗せられユーコン川を2週間掛けて下り、ベーリング海で救助されて、サンフランシスコで禁酒主義者として有名になる。アラスカの現地民は死期の迫った人を残して次のキャンプ地に進むのが掟だ~生没年が1876-1916。アメリカ人のジャック・ロンドンはゴールドラッシュのクロンダイクへの金鉱探しで極寒の地での越冬を経験
Posted by ブクログ
まあ、子ども向けだから、いいのか。ジャック・ロンドンの短編ならもっといいものもあると思うが。
子どもには「キーシュの物語」なんかは、面白いだろうけど、「命の掟」より「生への執着」が名作だし、「水の子」も中学生でも楽しめると思う。
ヨシタケシンスケ、今大人気だし、絵から入る子どもも多いからいいのかもしれないが、ジャック・ロンドンはハードボイルドなのに、ヨシタケシンスケじゃあゆるすぎ。ヨシタケシンスケの世界を期待して読んだらがっかりしてしまう。まったく違うから。訳も悪くはないけど、柴田元幸で読んだ人には優しすぎる。「たき火」って、垣根の曲がり角のほのぼの系みたいじゃないか。やっぱり「火を熾す」じゃなきゃ。
これは7篇入っていて、『火を熾す』とダブるのは3篇だけど、中学生以上でそこそこ読める子どもなら柴田元幸訳の方がずっといい。『火を熾す』は9篇入って2100円だけど、装丁の美しさ含め、絶対おすすめします。