加藤洋子のレビュー一覧

  • クリエイティブという神話 私たちはなぜそれを崇拝するのか

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    「クリエイティブ」という言葉が日本人が使いまくるようになったのはいつぐらいからだったろう?と思ったことがあります。同じような「デザイン」という言葉が1960年の東京オリンピックのちょっと前から社会に登場し、それ以前は「図案」とか「意匠」とか言われていたことを知った時、では「クリエイティブ」はどうだろう?と調べてみたくなったのです。でも「デザイン」より漠然としていて意味が広くて緩く融通無碍に使われている、この言葉のことを歴史的にも社会的にも探索するのはなかなかの困難さを感じていました。「クリエイティブ」というヨコ文字と「創造性」という日本語の関係性にも難しさの原因はあるのではないか?とかとも思っ

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    2025年10月05日
  • クリエイティブという神話 私たちはなぜそれを崇拝するのか

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     私は、創造性とは何か?をテーマとして追いかけている。AI時代における創造性とは?そして、農業においての創造性とは?といっても、なかなか創造性のあるアイデアは浮かばない。ちょうど、おもしろい本があったので読んだ。

     本を読みながら感じたのは、著者はとても忙しい人だ。じっくり論考するより、人の意見を散りばめながら、「八艘跳び」のように展開していく。そのため、注意散漫な印象になり、本質が見えてこない。著者は何が言いたいのかが隠されてしまう。

     著者は、「創造性の崇拝(The Cult of Creativity)」という大胆な原書のタイトルにもなっている。この表現は、クリエイティビティが単なる

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    2025年09月28日
  • 亡国のハントレス

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    ナチス親衛隊将校の愛人であり「ザ・ハントレス」と呼ばれる殺人犯を追う歴史ミステリ。
    ザ・ハントレスを追うイギリス人の元従軍記者と、ザ・ハントレスに殺されず逃げ延びた元ソ連空軍の女性操縦士と、カメラマン志望のアメリカ娘という3人の視点で物語は進む。
    ザ・ハントレスがどのように身分を隠して潜伏しているかは序盤で見当が付くので、追跡の様子をハラハラしながら読む形になるが、元ソ連空軍の女性操縦士ニーナのキャラが強すぎて、他の2人の章と比較してニーナの章の面白さが飛び抜けている印象。

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    2025年03月21日
  • 戦場のアリス

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    第一次世界大戦中に対ドイツのスパイ網「アリスネットワーク」を築き上げた女性スパイがいた…という史実を下敷きにした話。
    第二次世界大戦後、行方不明の従姉妹を探すアメリカ人女性のシャーリーが、元アリスネットワーク所属の老女イヴとともにフランス中を探し回るという探索行。
    イヴが現役のスパイだった過去のパートと、シャーリーが従姉妹を探している現在のパートとが、交互に語られる。
    本は厚いが、過去パートはハラハラしっぱなしで、現在パートも尻上がり的にドキドキハラハラ感が上がってくる(おまけにロマンス成分もあり)という良質エンタメ作品でした。
    ハッピーエンドなのも良い。

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    2025年02月07日
  • 不死鳥は夜に羽ばたく

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     毎年一冊邦訳されるペースで、しかも間違いなく傑作で力作と言われて恥じない作品を供給し続けている女流作家ケイト・クイン第五作の本書は、何と台湾生まれの歴史小説家ジェイニー・チャンとの共作である。毎作、歴史に材を取りながら、驚くべき着眼点に驚愕させられっ放しのケイト・クインだが、本書では1906年サンフランシスコで実際に起こった壊滅的大地震を背景に、許しがたき権力の刃を振るう実業家の許し難き犯罪と、震災後パリに舞台を移した四人の女性たちによる復讐劇を描き切った、いつもながら骨太の歴史冒険大作である。

     着目すべきは、本書がケイト・クインとしては初の二人の女性作家による共作であること。オペラ歌手

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    2025年01月15日
  • 戦場のアリス

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    最高でした!国のためになんとか役に立とうとする女スパイたちの熱い物語です。イブが、スパイに勧誘される場面の冒頭からものすごくのめり込みました!進むにつれて、特にイブの過去の1915年パートの緊迫感がすごくて、先がどうなるのか気になって仕方ありません。一方のシャーリーの1947年パートは、イブと共に、戦争の爪痕が残るフランスを幼馴染を探して回るパート。そして最後の怒涛の復讐へと息つく間もなかったです。イブもシャーリーもカッコいい!この人の作品をこれからも追いかけたいと思います

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    2024年09月29日
  • 戦場のアリス

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    ネタバレ

    ケイト・クインの本邦初訳、歴史ミステリ。現在まで本作を含め4作品出版されている(全てハーパーBOOKS)。

    二人の女性が主人公。
    第二次世界大戦後、ある目的のために母親とスイスに向かう途中、密かに行方不明のいとこを探す決意をするシャーリー。
    第一次世界大戦中、アリスネットワークと呼ばれるスパイ組織に配属となったイヴ。
    戦後と戦中の二人の人生が交わった時、意外な敵が見えてきて。。。

    名作。600ページ以上で非常に分厚いが、苦にならないほど引き込まれる作品だった。
    イブ視点の戦中の場面は重苦しくハラハラさせられる一方、中盤以降のシャーリーとイブ、イブに雇われているフィンのロードノベル感も良く。

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    2024年08月22日
  • 戦場のアリス

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    大学生のシャーリーは母親に連れられて墮胎手術を受ける旅行を抜け出し、戦時中に行方不明となったいとこのローズを探すたびに出た。彼女の働き口の報告書にあったイヴリンという名前を手がかりに彼女の家へと訪ねる。彼女は最初はシャーリーを追い払おうとしたがローズの働き口のレストランの名前を聞くと一緒に旅に出ることにした。
    終盤の抜粋を読むまで実際の人物をもとにしているとは知らずに読んでいた。物語はシャーリーと戦時中の若かりし頃のイヴリンを回顧を交互に進める。2時代をつなげるのがローズが働いていたレストランのオーナー、ルネだ。悪役だが魅力的な小物で最後のカタルシスをより強くしてくれる。そして何よりもアリスの

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    2024年04月15日
  • 狙撃手ミラの告白

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     現在、現時点で、数少ない正統派冒険小説の担い手のトップ・ランナーは、間違いなくケイト・クインという女性作家である。印象的なヒロインと、緻密な考証に基づいて描かれるスケールの大きな戦争時代の冒険とロマン。かつての冒険小説のほとんどが男性作家であったことを思うと、今、この時代だからこそ、戦争の物語の渦中を駆け抜ける女性たちの存在が際立って見えてくる。

     現在の女性であったかもしれない過酷な戦争の時代を生きた女性たちの日々を、この作家はいつも活き活きと力強く描き切ってくれる。そして、ぼくのような男性読者であれ、戦争という最も過酷な状況を背景に、この作家が作品毎にこれでもか、これでもかと言わんばか

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    2023年11月06日
  • ナイチンゲール 下

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    ネタバレ

    ナチスドイツ軍からアメリカの墜落した航空兵たちを何度も助けたイザベル。妹
    ユダヤ人の孤児を助けたヴィアンヌ。姉

    この本を読むきっかけは、海外ドラマ『ファイアフライ通り』の原作者がクリスティン・ハナだったので、何か翻訳本がないか検索したところ、この本が見つかった。
    内容は全く違うけれど、女性が主人公というのは共通している。

    良い本だとは思うけど、なんとなく、2人が魅力的に思えないんだなぁ。あと、大変さが端折られてる感もある。
    良い役者で、イザベルが航空兵を何度も山越えして助けたところとか、ヴィアンヌの危ない孤児たちの助け、ドイツからのひどい扱いなど、しっかり描きながら、ドラマ化したらいいかも

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    2023年01月12日
  • 良妻の掟

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    装丁の良さに一目惚れして購入。
    タイトルと綺麗な(よく見ると印刷されたシミや破れが)装丁とは真逆の内容。
    年代の異なる2人の主人公によるシスターフッドであり、昨年の直木賞候補であるスタッフロール(深緑野分著)と重なる部分もあるが、読後感は全く違う。
    読み比べてみるのも面白いかもしれない。

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    2023年01月04日
  • ローズ・コード

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     この作品にはどこにもブレーキが付いていない。読み出したら止まることができない。約750ページに渡る長大な本なのに、どこにも。それだけでも凄いのだけど、この作家の歴史に材を取った取材能力も努力も凄い。あらゆる歴史的事実の上に重ねてゆく個の物語は、途轍もないエネルギーを持つ。それを抱えた主人公たちは、実在の人であれ、架空の人であれ存在感が半端じゃない。そこがケイト・クインという作家の最大の強みなんだ、と三作目でも改めて再認識。

     そもそも複数主人公を並行させ、それぞれの物語を疾走感たっぷりに交錯させたスケールの大きい物語を作るのが上手い作家なのだが、本作では、大戦中の英国を舞台に、個性豊かな三

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    2022年11月29日
  • 亡国のハントレス

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    ネタバレ

    めちゃくちゃ良かった。

    ところで第二次大戦を舞台にした女性同性愛者の物語を2冊続けて読むことになったんだけど、偶然?今の流行?2冊とも想定していなかったからびっくりした。いい意味で。同性愛者の方は嬉しかったと思う。恋愛の一つとして、普通に描かれるのは素晴らしい。これまではなかったことにされてきたわけだから。

    視点がコロコロ変わる。そこがいい。

    ハントレスが誰かはすぐにわかる。隠しきれないものがある、という描写なのだろう。

    イアンたちがナチ戦犯を見つけると、みんな怯え、命令されただけ、知らなかった…と言う。本気なのだろう。そう自分で信じ込んでいるのだろう。
    イアンが言っている通り、戦争で

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    2022年11月16日
  • ローズ・コード

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    「戦場のアリス」の著者が描く、第二次世界大戦下のイギリスの暗号学校を舞台にした750ページ近い大作。平易で簡潔な文体と圧倒的にリアルな描写に最後までハラハラしながらも、あっという間に読み終えた。700ページ過ぎる辺りからは登場人物たちに会えなくなる寂しささえ感じた。ロマンスに裏切りに愛国心、友情とミステリ、どれをとってもどこを切り取っても素晴らしい作品だった。

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    2022年09月12日
  • 亡国のハントレス

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    第二次世界大戦中に存在した「ザ・ハントレス」を追う英国人イアン。父の再婚相手に不信感を持つ米国人ジョーダン。シベリアバイカル湖で育ったロシア人ニーナ。それぞれの視点で描かれる物語は絡み合い1人の女へと辿り着く。……最高に面白い→

    歴史ミステリー、というにはミステリー弱めやけど、私は読んで良かった!!もう、すごい。ニーナ最強。ジョーダンかっこいいし、イアンとトニーは言わずもがな。各章の引きが凄くて後半一気読み!!分厚さに尻込みせずに是非読んでほしい(750ページ以上あるので、腕は疲れる笑)

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    2022年05月30日
  • 亡国のハントレス

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    実に750頁超え、本に手にした時は厚さにビビるが、読み始めたら止まらない。ジョーダン、ニーナ、イアンこの三人の名前の章が順繰りに進んでいくが、キャラクターが立っており、どの章の話も実に面白い。其々の支線が途中から交わって一つになるのもまた、ワクワクさせる。

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    2022年05月30日
  • 戦場のアリス

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    熱く、強く、たくましく、ひたむきに生きた女性たち。平和な時代に生まれつき、自分のことさえ考えていれば生きていられることが、惨めにすら思える。生きる勇気が、強くなる勇気がわいてくる。素晴らしい作品。

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    2022年05月06日
  • 亡国のハントレス

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     今年の後半は、第一次・第二次世界大戦の時代に展開した作品を、いつになく多く読んだ気がしている。しかも現在を描くものより、むしろ戦争を描く作品に良作が多いようにも思う。P・ルメートル、S・ハンターと続き、このケイト・クインがダメ押しであった。

     ケイト・クインは、前作も『戦場のアリス』で印象的な世界大戦の裏話を繰り広げてくれたが、本書はそれを上回るスケールで描かれている。簡単に言うといわゆるナチ・ハンターものである。実在のナチ・ハンターに材を取り、そこから派生した作者造形による三人の主人公の三種の異なる時代の物語が、章毎に綴られる。一瞬、躊躇われるほど分厚い、重量級の国際ミステリー。大丈夫。

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    2021年12月31日
  • 亡国のハントレス

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    第二次世界大戦でハントレスと呼ばれた殺人者を追う。戦闘機に乗る女性飛行士のニーナ、ハントレスに弟を殺害されたイアン、戦争から五年後にいるジョーダン。戦時から戦後へと時間を行き来しながらハントレスを追う物語。ニーナの戦闘機に乗る描写の迫力は読み応えがあるし、イアンのゲット立てる計画やジョーダンの恋や義母たちとの生活とどの人物を読んでも面白いしそのひとつひとつの根底にハントレスの不気味さが感じられる。700ページを超える物語だけれどどんどん引き込まれていって長さを感じさせない。とても好みで今年のベストになりそう。

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    2021年10月06日
  • 夜ふけに読みたい神秘なアイルランドのおとぎ話

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    「夜ふけに読みたい数奇なアイルランドのおとぎ話」の続編。
    フィンの物語とおとぎ話でアイルランドの伝説と昔話を楽しもう。
    巻頭詩 猫のパングル・バーン
    第1部 クウァルの子フィンの物語 第二夜、全3話。
    第2部 パングルのおはなしぶくろ、全3話。
    第3部 クウァルの子フィンの物語 第三夜、全3話。
    モノクロのアーサー・ラッカムな挿絵が良い。
    物語のふるさとの地図、底本、参考文献有り。
    「夜ふけに読みたい数奇なアイルランドのおとぎ話」の続編で、
    今回も、猫のパングル・バーンと写字生アイドが、収集した昔話と
    伝説を紹介するという内容になっています。
    読み聞かせのランクも付加・・・実際は難しいんだけど

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    2021年06月10日