加藤洋子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
WW1、イヴはアリス・ネットワークのリリーの下で対ドイツのスパイ活動に身を投じる。一方WW2後に行方不明になったローズを探すシャーリーはイヴと出会い、二人の運命が交錯する。
「狙撃手ミラの告白」で重厚な筆致と史実をベースに組み立てたミステリを読ませてくれたケイト・クインの邦訳第一作です。第一次大戦にフランスを舞台にイギリスのスパイとして活躍したアリス・ネットワークは実在ですし、多くの登場人物も実在です。それら戦争期に実在した出来事をベースに創作を乗せて小説にするのはケイトの十八番ですが、今回はスパイが題材ということで、概ね怖いし痛いし辛いし、読んでいて大変しんどい作品になっていました。最後にややハッピーエンドなのが救いです。
しかし他作品でもそうなのですが、ケイトの戦争に対して真っ向から目を背けずに対峙して作品に描きこむ、その胆力というか、戦争そのものへの思いというか、今回もそこの部分に胸を打たれました。特に戦時下における女性(蔑ろにされるその価値)という部分は、本当にケイトの創作の芯になっているんだなあ、と思わされました。ケイトは多作ではありませんが、他にも戦時下の女性をテーマに作品を書いているので、色々読んでいきたいと思います。 -
Posted by ブクログ
第二次大戦中のイギリスでドイツ軍やイタリア軍の暗号解読をしていた施設ブレッチリーパークを舞台に、そこで働く3人の女性を描いた物語。物語といっても事実に基づいていて、実在の人物をモデルにした登場人物も多いとのことに驚いた。ロマンス比重高めなのは個人的にはあまり好みではなく、それよりもっとクリブやボンブ・マシーンなどの説明を詳しく書いてくれたらよかったのにとは思うが、なんとなく華々しいイメージのある暗号解読が実際には分業で地道な作業(なかには力仕事も)を行うものであり、口外できないことによる苦悩や、それでも愛国心から誓約を守り仕事を続ける様子、女性は男性と対等に働けることを喜んでいたということなどが興味深かった。
-
Posted by ブクログ
作品の舞台は1904年、サンフランシスコ…
この年ここで大きな出来事が起こる
(これは実際に起きたことなので、ピン!とくる人もいるかもしれない)
この年、画家の親友を頼ってそこにやってきたのは、オペラ歌手のジェマ…
ひどい偏頭痛持ちの彼女はそのせいで舞台に上がれないこともしばしば…
しかし実業家のソーントンにその美声を買われ、千載一遇のチャンスを得る
一方、サンフランシスコのチャイナタウンに住むお針子のスーリンは、身売り同然の結婚から逃れるためサンフランシスコから遁走しようと画策していた
二人はそれぞれに大切な親友、恋人を探していたが、やがてそれが繋がりある男の大きな陰謀を知ることになり…
そして…‼
読者は何が起こるか分かっているので、ハラハラ・ドキドキ…
まさに、この場所でこの年でないとできない作品!
ミステリーであり、成長物語であり、スターフッドものであり…
めちゃくちゃ良かった!
作品を読み終えてからのエピローグに書かれている人物像や時代背景が興味深く、おもしろかった -
Posted by ブクログ
伝説のスナイパー、リュドミラ・パブリチェンコの戦争と、大統領暗殺の陰謀。
リュドミラ・パヴリチェンコは独ソ戦を戦ったソ連の伝説的な女性スナイパーで、確認戦果309という脅威的な記録の持ち主です。そのリューダをモデルに、伝記的ながらサスペンスを織り交ぜた半フィクションに仕立ててあります。だいたい、前半2/3を戦記、後半1/3をサスペンスのフィクションという構成ですが、圧巻だったのは戦記の部分でした。リューダは回想録も出版しており、そこからの引用が多いので実際の出来事や登場人物を多用しつつ、戦争へと踏み込んでいく国と人々をとてもリアルに描いているのが印象的でした。特に開戦時、美しいオデッサの街がその後どうなっていくのか想像する場面や、最初のうちには狙撃対象を人として見ていて、スコアの数字にされるのを嫌悪していたリューダが戦場で失うものが増えていくにつれ、憎しみで人と認識されなくなっていく様子などはとても胸を打ちます。ウクライナは今でも戦火で、オデーサやセヴァストーポリが戦争で破壊されるのは何度目なのでしょう。読んでいてなんともやるせなくなります。
もうひとつ印象的に描かれているのは、女性の立場についてで、これはソ連では男女平等とされているといいながらもそれは建前で、強い男性優位の社会の下であえぐ女性像とアメリカの女性像を対比させたり、ジェンダー目線がもうひとつのテーマなのだな、と感じました。
リューダは晩年、アル中とPTSDに悩み、50代で亡くなりますが、その苦しみにも触れていて、彼女の人生を余すことなく容赦無く描いた感がありました。この作者は他にも戦争に生きる女性を題材に本を出しているので、色々読んでみたくなります。
ところで後半のサスペンス部分については、まあ無くてもいいんじゃないかと思うくらいの重量感ではありました。
逢坂さんの「同志少女よ敵を撃て」と一緒に楽しむと良いと思いました。テーマや舞台も重なります。 -
Posted by ブクログ
結末は、私としては意外だった。
あと、装丁、キツネ柄のデザインがかわいい!!
1950年代、アメリカも日本も良妻の基準は似たようなものだったんだろうなと感じる。
子育てと料理と庭いじりでしか輝けない時代、
埋もれてしまっていた、本当は才能ある女性がたくさんいたんだろうな…
キティも実はその類な気もする。
本題とは違うだろうが、隣人に恵まれると本当にそれだけで楽しそうで羨ましい!!とも思った。
そして結婚生活はサバイバル、その点に関しては現代もそうかなとも思う(笑)
家が生きているようなファンタジーな表現をされるのは最初気になったが、読み進めると個人的にはだんだんと気にならなくなっていった。