あらすじ
政府暗号学校に潜む裏切り者は誰なのか――。
第二次大戦下の英国で暗号解読に挑む女たちがいた。
本の雑誌が選ぶ2019年度文庫ベストテン第1位(本の雑誌増刊『おすすめ文庫王国2020』)
『戦場のアリス』著者が放つ最新作!
全米ベストセラー!
第二次世界大戦下、社交界の令嬢オスラは国に召喚され、ブレッチリー・パークに辿り着く。
そこには秘密裏にドイツの暗号解読に挑む政府暗号学校があった。
オスラは下町育ちのマブ、パズルの名手ベスと知り合い友情を育むが、ある事件から3人に悲劇が訪れ――
7年後、オスラは差出人不明の暗号文を受け取る。
それはかつて自分を裏切った友人が助けを求める手紙で……。
陰謀渦巻く歴史ミステリー!
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『亡国のハントレス』
『戦場のアリス』
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
“エニグマ”
第二次大戦以降の世界を左右する“情報戦”の象徴て、数々の映画やドラマで取り上げられたドイツの暗号。
その解読に成功したイギリスにある暗号解読施設(BP)は秘密厳守を絶対とした。
これはそこで働くひとたち(多くが実在の人物をモデルとしている)の物語
最も多感で華やぐべき時期を、戦争という環境下で過ごさなければならなかった三人の娘たち。
ケイト・クインの跳ねるような文章で描かれた三人の青春の行方は、逞しく、美しく、悲しい。
特に、フランシスからマブへの手紙の数々は圧巻
そんななか、戦時中と並行して時折描かれた1947年のベスは、なんだか怪しい状況にある。
いったい何があったのか……
最後のキーは“ローズ・コード”
前二作同様に歴史ミステリーではあるが、時代の中で精一杯生きる女性たちの姿がかっこいい。
Posted by ブクログ
この作品にはどこにもブレーキが付いていない。読み出したら止まることができない。約750ページに渡る長大な本なのに、どこにも。それだけでも凄いのだけど、この作家の歴史に材を取った取材能力も努力も凄い。あらゆる歴史的事実の上に重ねてゆく個の物語は、途轍もないエネルギーを持つ。それを抱えた主人公たちは、実在の人であれ、架空の人であれ存在感が半端じゃない。そこがケイト・クインという作家の最大の強みなんだ、と三作目でも改めて再認識。
そもそも複数主人公を並行させ、それぞれの物語を疾走感たっぷりに交錯させたスケールの大きい物語を作るのが上手い作家なのだが、本作では、大戦中の英国を舞台に、個性豊かな三人の女性、オスラ、マブ、ベスの物語を交錯させつつ、それぞれのラブストーリーと運命とを描き分けてゆく。
壮大なスケールの作品である。第二次大戦において英・独の戦略を分けた、知られざる暗号解読戦争。そこに携わった人々の運命。綴られるのはそうした確たる事実の上に載せられた物語と個の人間たちの魅力。
実際にあった暗号解読の秘密施設は<ブレッチリー・パーク>ことBP。この場所は、戦中はトップ・シークレット下に置かれた極秘の施設であり、暗号解読戦争の勝利を英国にもたらした基地なのだが、用済みとなった戦後は、多くの職員ともども用済みとされ、放置され、廃墟化したようである。現在は、マル秘事項が多分に解除され、丁寧な復元の上公開されている大変美しい場所となっているので、是非訪れて欲しいと作者があとがきで保証している。
物語はもちろん史実を題材にして個々のストーリー時は作者の創り出したフィクションである。しかし現実の記録や歴史に基づいたところが多く、実名で語られている関係者も多い。驚くのは現エリザベス女王が幼少の頃から登場すること。夫であるフィリップ殿下の、婚姻前に実際に交際していたのがヒロインの一人オスラであること。フィリップ殿下の若かりし頃がとても活き活きと描写されてとても庶民的で親しみやすい存在に描かれていること、なお戦地となった大西洋で従軍していること。オスラは実在の人物を作者が慮って、苗字こそ架空とされたが、実在の人物をモデルにしていること。
ケイト・クインという稀有な作家の、史実に材を取った小説の面目躍如たる豊穣な想像力が多分に活かされた作品なのである。
またトリッキーでミステリアスな作品構造も魅力である。1939年12月にメイン・ストーリーは始まるのだが、1947年11月「ロイヤルウェディングまで11日」というような謎めいた章が挿入される。そこでは短いページ数の間で、三人の女性のそれぞれの運命が暗示されているかに見える。中でも暗号解読の中核にいるベスは<時計の中>という別立ての章を用意され、彼女だけは奇怪な場所で拘束され、ロボトミー手術まで暗示されている、という異様で危機的な状況にあることが、初期時点で描かれてる。いつもながらの意味深な凝った構成である。1939年のメインストーリーが1947年の現在に追い着くまでの壮大な物語を読者は辿ってゆくことになるだろう。
暗号解読という困難な仕事を引き受ける特殊だが実在したという機関ブレッチリー・パークは、それにしても魅力だ。読んでいるうちに愛着さえ覚える。ここに集まる職員たちの強い個性とそれぞれの能力。それ以上に、きつい労働条件と秘密保持の制約の中で結束する仲間、師弟の絆の強さ。ラスト近くでこのことが確認される。涙腺を刺激される感動的なシーン。
職場では、章が変わる毎に登場する<ブレッチリー空談>という数行のユーモラスで謎めいたコラム。<いかれ帽子屋お茶の会>という名の仲良し職員たちによる青空読書会では世界の古典が取り上げられ、一部人気や書評が聴かれるので、この辺りも読書子にとっては電気的刺激もの。何と多面的に楽しむことのできる物語だろうか。
Posted by ブクログ
「戦場のアリス」の著者が描く、第二次世界大戦下のイギリスの暗号学校を舞台にした750ページ近い大作。平易で簡潔な文体と圧倒的にリアルな描写に最後までハラハラしながらも、あっという間に読み終えた。700ページ過ぎる辺りからは登場人物たちに会えなくなる寂しささえ感じた。ロマンスに裏切りに愛国心、友情とミステリ、どれをとってもどこを切り取っても素晴らしい作品だった。
Posted by ブクログ
ケイトクインにハズレなし!暗号解読に挑む3人の女性の物語。裏切り者は誰なのか、過去と現在を行き来して進むストーリー。750ページにも及ぶ大作で、さすがに前半はなかなか読み進められませんでしたが、仲の良かった3人に何が起こって、なぜバラバラになったのかに興味が惹かれて、ちまちまと、なんとか読み進めました。そして終盤の第4コーナーを回ったあたりからは、物語が一気に加速して、怒涛の展開!最後まで素敵な3人組を堪能しました!
Posted by ブクログ
第二次大戦中のイギリスでドイツ軍やイタリア軍の暗号解読をしていた施設ブレッチリーパークを舞台に、そこで働く3人の女性を描いた物語。物語といっても事実に基づいていて、実在の人物をモデルにした登場人物も多いとのことに驚いた。ロマンス比重高めなのは個人的にはあまり好みではなく、それよりもっとクリブやボンブ・マシーンなどの説明を詳しく書いてくれたらよかったのにとは思うが、なんとなく華々しいイメージのある暗号解読が実際には分業で地道な作業(なかには力仕事も)を行うものであり、口外できないことによる苦悩や、それでも愛国心から誓約を守り仕事を続ける様子、女性は男性と対等に働けることを喜んでいたということなどが興味深かった。
Posted by ブクログ
第二次大戦下のイギリス。暗号解読機関に在籍する3人の女性の物語。以前の作品でも人物描写が素晴らしかったが、本作でも主役の3人だけでなく登場する人物がみな特徴をもって描かれて素晴らしい。かなりの長編だが息をつかずに読み切った。
Posted by ブクログ
第二次大戦中、イギリスにおいてナチス・ドイツの暗号解読の研究を行っていたブレッチリーパーク。
ここを舞台に、その才能や、戦争の早期終結のために国に奉仕するという意思を買われて暗号解読に加わった三人の女性、オスラ・ケンドル、マブ・チャート、ベス・フィンチの活躍を描く小説。
物語の進行は、二つの異なる時点が、交互に語られる。
一つは大戦初期、三人が出会い、ブレッチリー・パークで働き始め、戦況と暗号解読の進行が語られる。
もう一つは、戦後数年が経っていて、オスラとマブの三人は別の人生を歩んでおり、ベス・フィンチはどうやら心を病んで、病院で拘束されているが、そのベスが送ったメッセージがオスラに届くところから始まる。
最近の小説は異なる複数の時代が交互に語られて、それぞれに話が進みながら、やがて一つにつながるという形式が多い気がするが、これもその形式。
特に大戦初期から始まる流れの方は、それぞれの登場人物の人となりが描かれるので、情報量も多いし、さまざまなエピソードが語られる。とても「濃い」小説で、確かに面白いのだが、ちょっと情報が多くて読み疲れる気もする。