加藤洋子のレビュー一覧
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第一次世界大戦1914〜1918、
死者1000万人以上
第二次世界大戦1939〜1945、
死者6000万人以上
この二つの戦争が二十世紀前半に、
嵐のように吹き荒れた。
自暴自棄となりながらも、戦時中に行方不明になった従姉妹のローズを探すシャーリー。
戦時中スパイだった、アル中の中年女性イヴ。
復員後犯罪者になり、その後定職につかずイヴの世話をするフィン。
三人は、ローズを探すと同時に、それぞれの心の底にある過去に向き合っていく。
ボソボソと車の後部座席から繰り出される、第一次大戦でのイヴのスパイ活動の様子は、息をするのも忘れるほどの緊迫感を持つ。
派手な戦闘シーンは無い。
アジトや -
Posted by ブクログ
こちら「おすすめ文庫王国2020」の第1位。
それを見た時からずっと読もうと思っていたのだけれど、650余頁の厚さに躊躇したまま1年以上経ってしまった。
買った後も暫く積読していたが、この前に読んだ「革命前夜」に触発されて、引続きヨーロッパの話にしてみる。
1915年に始まるイブの話と1947年のシャーリーにイブとフィンが絡む話が交互に語られるが、かつてのイブと現在のシャーリーに共通した意志の強い女性像を見る一方、かつてのイブと現在のイブの繋がりと落差が鮮やかで、過去と現在が絡まり合うように進む物語は分厚い頁を飽きさせない。
前半は、スパイになってドイツ占領下のフランスに入るイブと、いとこ -
Posted by ブクログ
好きなセリフ「飢えは思考を研ぎ澄ます」
スパイの心意気がカッコいい。
心を隠し演じて騙し、相手の表情の揺らぎを読む。スリル感はスパイ小説ならでは醍醐味。
第一次世界大戦下フランスへ、ドイツ軍の情報を得るためにスパイとして派遣されたイヴ。イヴは、ドイツに協力する暴利商人ルネ・ボルデロンの元でウェイトレス兼愛人として振る舞い、最高級の情報を引き出す優秀なスパイだった。戦後のイヴと出会った現役大学生シャーリーのいとこ探しは、イヴの過去が明らかになるにつれ真実に近づいていく。
イヴに降りかかる危機は、身の毛もよだつほど凄まじい気迫がありハラハラドキドキする。
謎解きミステリーのようなすべての駒がつ -
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女同士の真の友情は無いとも言われるが、この小説の中では第一次世界大戦でフランス軍のスパイとして活躍したリリー、イブの真の友情と第一次世界大戦で全てを失ったイブと第二次世界大戦で大切な人二人を失ったシャーリーの間の真の友情、硬い絆が確かめられる。
リリーとイブは、女性に能力などないと信じられている社会という戦場の中で、そして本当の戦場の中で敵の目を何度もすり抜け味方のために命がけで情報を送っていた。失敗すれば射殺されるか牢獄で見殺しにされるか…戦後に勲章など送られても意味がない。
なぜ真の友情が芽生えたのか。それはリリーやイブが、味方のために命をかけて戦い、仕事をやり通し、それ以外の幸せは -
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1947年、戦争中に行方不明になったいとこを探すシャーリー。手がかりは一人の女性・イヴ。尋ねてみると、イブは酔いどれ、しかも指は潰れたいた。イヴは元スパイだった。第一次大戦中、ドイツ占領下のフランス北部へ潜入。凄腕のスパイ“アリス”が無数の情報源を統括していた。イヴの過去、いとこの運命は? 傑作長編!
アリスは実在したスパイらしいです。そのアリスやオラドゥール=シュル=グラヌの悲劇とか初めて知ることが多く、歴史的なものでも私は圧倒されました、知識を得ながら興味深く読めました。タイトルはアリスなんだけれど、シャーリーとイブ(イブの活躍した過去のこと)の二人のお話で進んでいきます。絡み合って、それ -
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偶然にも似たような小説に連続して出会うことが時々あるのだが、今回もそう。
こないだ「コードネーム・ヴァリティ」を読み終わった後すぐに本作である。
女性主人公2人目線、主人公は女スパイ、舞台はヨーロッパ戦線。WW1とWW2の違いがあるとはいえ、敵役はドイツ(とそれに加担する組織や個人)
読んでいけば、味わいの違いはすぐに分かるのだが、なんという偶然か?それとも翻訳小説界ではこの辺のテーマがブームなんだろうか?どちらも傑作だというのがまた偶然。
読み始めは、なんだか貴族系上流階級女子のとっつきにくい話だなぁ、今更亜流の「風と共に去りぬ」でもあるまいし…と正直ちょっとペースも遅れ気味だったんだ -
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2度だけデートした警官に執拗なストーキングを受けたカーリン。逃げた先で、自分のコートを着た友人を誤って殺され再び逃亡、山奥の牧場に流れ着く。理想の家政婦を雇えず汚れた洗濯物の山と飢え死に寸前だった牧場主ジークは渋々彼女を引き受ける。2人の舌戦と、料理が苦手なカーリンが、ジークや牧童達9人の胃袋を満たすために奮闘する様子がとても楽しい。ストーカーの追跡に怯えるカーリンをそっと見守り、自分を守れる術を授けるジーク。ついに居所を知られ、親友と恋人と自分を守るため立ち上がるカーリン。彼女を救うジーク始め牧童達。ちょっと呆気ないラストだけど、とても面白かった!
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「リリー」イヴは衝動的に尋ねていた。「怖いと思ったことはないんですか?」
リリーが振り返る。傘の縁から滴る雨粒が、彼女とイヴのあいだに銀色の幕を張る。
「あるわよ。誰だってそうでしょ。でも怖いと思うのは、危険が去ったあとーーー危険が迫っているときに怖いと思うのは、自分を甘やかすこと」彼女がイヴの肘に手を絡ませた。
「アリス・ネットワークにようこそ」(P.117)
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第一次世界大戦の最中。ドイツ占領下のフランスで、連合軍のためにスパイ活動をする女性たちの組織、「アリス・ネットワーク」。超敏腕スパイ、コードネーム=アリス・デュボア(本名=ルイーズ・ド・ベティニ)が作り上げた組織だ。 -
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1947年、アメリカからシャーリーは戦時中に行方不明になったいとこのローズを探しにフランスにやって来た。手がかりを辿り、出会ったのは英国の元スパイのイヴだった。第一次世界大戦のとき、ドイツ占領下のフランスでスパイとして過ごしたイヴの壮絶な過去と、第二次世界大戦中の話が交互に描かれる。
これは凄まじく面白かった。
イヴはフランスにおけるスパイのリーダーアリスのもとで働くのだが、このアリスネットワークは実在したものなのだそうだ!(わお) また、第二次大戦中のドイツによる信じられないような虐殺事件も実際にあったそうだ。他にも何人もの登場人物が実在したと著者あとがきに書いてある。
イヴがスパイと -
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興奮さめません。ドキドキの連鎖反応。
第二次世界大戦が終わって数年後が現時点でアメリカ人のシャーリー・セントクレアが主人公、第一次世界大戦のときはイギリス人のイヴ・ガードナーが主人公。二人の追いかける悪魔のような男がひとつに重なって行くところはほんまにドキドキする。第一次世界大戦のことはあまり知らなかったから、読んでよかった。北フランスがドイツに侵攻されて酷い目にあっていたこととかは、第二次世界大戦のときのことしか考えたことなかった。ナチスが台頭するまでそんなに酷いことがあるなんて考えたこともなかった。実在したアリス・ネットワークの女スパイたち。戦争は本当にろくなことがない。大切な誰かの大切な -
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最初に手ごわそうな予感。一見して、気難しい貴婦人のように見えるこの物語は、大抵の魅力的な女性がそうであるように、時間とともにようやく心からの笑顔を浮かべ始める。最初の100ページは、とりすましたよそ行きの表情を浮かべるばかりか、興が乗らないでいると、今にも、構えたルガーの引き金を引きそうな、緊張感に満ちた険悪な悪女との出会いといったところだ。しかし、とっつきくい女ほど、後になって味が出てくる。そして情が濃い。本書はそんな、ファム・ファタルみたいな、いい女を思わせる、とても魅力的で奥深い作品なのだった。
第一次大戦時、ドイツ占領下のフランスで、深く静かに潜航しつつ情報を収拾する、女スパイの -
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