ニーアル・ファーガソンのレビュー一覧
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膨大な資料(キッシンジャーから提供された)を基に、英国の歴史家ニーアルファーガソンが描く、キッシンジャーの評伝であります。1960年に発足したケネディ政権が直面したベルリン、キューバ、そしてベトナム等への危機対応が、いかに危ういものだったか、良く判ります。ハルバースタムが名付けた、ベスト&ブライテスト達の失敗も多々垣間見えます(マクナマラ国防長官、マクジョージバンデイ補佐官等)。様々な失敗の積み上げがベトナム戦争の泥沼を惹起する辺り、昨今のトランプ政権によるイラン攻撃の危うさと重なります。当時の危機には、キッシンジャーがいたのですが、今は、誰が居るのか、と、あれこれ想像をめぐらしながら、読み進めております。☆五つであります。
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歴史的な大惨事(カタストロフィ)は予測不能である。これが本書の要点だろう。ほとんどの惨事は正規分布しておらず、ランダムもしくは冪乗分布している。
もちろん、ある程度予測できる出来事(灰色のサイ)もある。また、予想を超えた惨事(ブラックスワン)がある。そして、手のつけられない大惨事(ドラゴンキング)・・。これらを予測することは不可能だ。そしてこれらの災害は、「天災」とも「人災」とも区別がつかず、重層的に絡み合っていることが多い。所謂複雑系であり、完全に防ぐことはもとよりできない。
人類の歴史は、まさにカタストロフィの歴史であったわけだが、我々の未来はどのような展望を描くのか。当然の帰結として、予測不能だということだろう。著者は、せいぜい社会や政治制度がレジリエンスのあるものにすることくらいだ、と述べている。
平和な世の中で過ごしていると、人類の歴史は良い方向に進歩しているような感触を知らず知らずのうちに持ってしまいがちだ。そう思うのは私だけだろうか。本書はそのような考えに一石を投じているように思う。振り返るに、我々の世代もブラックスワン級の災害を経験している。その時の社会を支えている私たちの在り方が、突如現れるカタストロフィに対してもある程度のレジリエンスを持って社会を維持していく鍵になるのだろう。 -
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数ある経済史や経済人類学の本は多数あったが、これはとても読みやすい本である。最新の「リーマンショック」にも触れつつ、古代の貨幣社会までもを論じている。利子の起源や債券の起源など、保険の起源など具体例を挙げつつ解説する。
我々はマネーを憎みつつも、マネーから離れられない状況に来ていることを痛感した。マネーのない社会を最初に触れているが、即殺し合いの社会になり、男性の六割が戦闘で死に、女性の略奪が横行する社会になるという。そんな世に、もう戻れない。
後半では、著者の市場に対して非常に冷めた目で論じている。それを昨今の金融市場の混乱、ヘッジファンドの抬頭に翻弄される各国政府・・・それに対する処方箋は、すぐに出るものではないようだ。情報に対して人間は必ずしも合理的判断を下すことが出来ず、主観やマジックに踊らされやすい、ということを彼は看破して、本を終えている。 -
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キッシンジャーの傑作評伝の下巻。舞台となるのは、ハーバード大学の教鞭を取りながら、大富豪ロックフェラーの大統領選の参謀として徐々に政治の世界に足を踏み入れる1958年から。そして下巻の中心となるベトナム戦争の和平工作に足を踏み入れながらも、ジョンソン政権下で結果としてはうまくいかずその営みが徒労に終わるも、ジョンソンに次ぐ大統領に就任したニクソンの元で、 NSA/国家安全保障局の大統領補佐官に就任するところまでが描かれる。
キッシンジャーが問題視したのは、ジョンソン政権下での外交問題が、様々な部局の縦割りで統一的な戦略や意思決定プロセスを経ぬままに迷走していた点である。彼がニクソンの元で政権入りして取り組んだのは、膨大な外交に関するデータの分析手法、大統領への判断の仰ぎ方等の統一的なプロセスに関するシステムを構築することであった。その背景として、実際にどのような迷走がジョンソン政権下で行われていたのかが、この下巻では克明に描かれ、アメリカのベトナム戦争でのゲリラとの戦いが文字通り、底なし沼にはまり込んでしまっているという点を、痛切に理解することができる。
キッシンジャーという稀代の人物を通じて、20世紀の歴史を振り返ることができる一冊。 -
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20世紀後半の現代史を語る上でのキーパーソンの一人といっても過言ではないヘンリー・キッシンジャー。ニクソン政権での国家安全保障問題担当大統領補佐官として、ベトナム戦争終結の功績でノーベル平和賞を受賞し、その後もアメリカ外交に大きな影響力を持ったキッシンジャーの評伝が本書である。
"The Idealis-理想主義者"と銘打たれた本書の上巻は、出生した1923年から1958年、ハーバード大学の博士課程を修了し、徐々に外交のスペシャリストとして頭角を表すまでの”青の時代”が中心である。
上巻の白眉は、第二次世界大戦における欧州の戦場に従軍した時代のエピソードである。ユダヤ系ドイツ人としてホロコーストの危険性をいち早く察知し、アメリカに亡命することに成功した彼が、二等兵として目にした強制収容所における同胞の悲劇をどう受け止めたのかというシーンは、極めて印象的。そうした個人的体験と、自身の政治思想との安易な関連性を繰り返しキッシンジャー自身は否定するが、それでもこの経験が彼の政治思想に与えた影響は見過ごすことができないだろう。
結局のところ、人間は善か悪かという二項対立の中で生きているのではなく、仮に悪だとしてもその中で無数のバリエーションがある。人が死ぬことが悪だとしても、1,000人が死ぬ可能性のある案よりも100人で済む案があるなら、迷うことなくそちらを選ぶというキッシンジャーの思想はここから生まれたのかもしれない。下巻では、政治の表舞台に立った彼の活躍について。 -
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結構なボリュームですが、金融の世界の幅広さ、面白さを感じ取ることができます。
まぁ(解説で野口悠紀雄さんもおっしゃってましたが)正直ちょっと難しいので、ちゃんと理解するなら複数回読んだ方が良いのかなという感じ。
株式には第3章が割かれていますが、その黎明期(なぜ生まれたのか?)や初期のバブルについて詳しく書かれていて、人間ってヤツは昔も今もしょうもない「錬金術」を使ってきたんだなぁとあきれつつも、考えさせられます。
グローバリゼーションについて書かれた第6章は、少し荒唐無稽な話という体で「米中戦争」の可能性について触れつつ、歴史から得られる教訓として「①グローバリゼーションが進んで安定的に見える状況でも戦争は起こりうる」「②平和が続くと衝突のシナリオは想像しにくくなる」「③現状に満足した投資家が危機に襲われると、市場は激しく崩壊する」という3点を挙げて警鐘を鳴らしています。
昨今のアメリカの状況を見ると、なんだか笑えません。。リーマンショックの最中くらいの本なので、最新の状況を踏まえるとどんな書きぶりになるのやら。
他にも債券、保険、不動産等、まぁ金融の世界って広いなぁと感じる本でした。決して読みやすくはないけど、類書の中ではまだ読みやすい方かも。 -
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500頁超の大部だが、マネーにまつわる4000年の歴史を紐解くには、それでもまったく紙幅が足りないだろう。その証拠に、本書には数式がひとつしかでてこない(ブラック・ショールズによるオプションの価格決定式 p.439)。
さすがにこれだけ分量があると、ざっと一回読んだだけではぼんやりとアウトラインが見えてくるだけ。が、これが大変おもしろい。
人類史の動かした大きな歴史上のイベントの陰には、いつもそれを駆動する巨大な資金を融通する仕組みや人間が存在してきた。
ともすれば「陰謀論」とくくられてしまいそうではあるが、戦争と帝国主義の裏で金融の仕組みは巧妙に進化してきたことが、歴史的事実として提示されていく。
いまでは当たり前になった金融の仕組み(国債、社債、保険、不動産売買)のすべては、一握りの強欲な天才の頭の中で生まれた野望の落とし子だといえるだろう。
暴落や恐慌を生まれるのは、それらを国際的に売買する仕組みが確立されて、市場が大衆に解放されたのちの話。時折飛来するブラック・スワンによって、世界は混乱の渦の中へ何度も突き落とされることになる。
群集心理、また自然界の営みはいとも簡単に、そして不合理な理由で“専門家”の思いもしない振る舞い(のちに計り知れない衝撃)を市場にもたらす。投資が、投機のリターンをインセンティブとするかぎり、市場の熱狂はいつか終わるのだ。
金融のシステムは生き物のように進歩と交代を繰り返しながら少しずつ前には進んでいる、と著者はいう。ただ、現代を生きる人間は、いまださまざまな認知バイアス(p.472)から、過去の金融史から判断の種を探すことができないでいる。
まだ大丈夫、たぶん自分だけは大丈夫。あのような参事は二度と起きない。根拠なき、または見せかけの根拠に基づいた人々の投機熱は、市場と実体経済の乖離を限界まで広げていく。
大衆を熱狂に連れ出すのは、不確実性を確からしく見せる「よそおい」だ。不確実性は成功の物語によって希釈され、上等な生地のスーツに身を包んだバブルの使者があなたのもとに訪れる。
あとは誰が一番最初に降りるのか?
チキンレースは続いていく。
何度でも同じ過ちを繰り返す人類は、特に金融市場においては欲にほだされた集団的健忘症患者に見える。
あとがきで野口悠紀雄氏は、
「マネーがあるから人間が貪欲になるのではない。人間が貪欲だから、それがマネーの挙動に現れるのだ。「マネーがなくなればユートピアが実現する」などという考えは、単に幼稚であるばかりでなく、危険なものである」(p.502)
と書く。
マネーを一般に「交換を媒介する信用価値」とするならば、これは人類史上有数の大発明だ。同じく、規模の大きな生産活動を実現するための投資市場も、人類に豊かさをもたらす福音だった。
問題なのは、技巧をこらして「金で金を生んでやろう」と人々を駆り立てる投機マインドだ。結局のところ、市場を破壊しするのは人間の強欲だ(まぁ、つまるところ当たり前の話)。
倫理観を失った投機家と、良心を忘れた利子生活者(ランティエ)は、賢いようでいて醜く哀れに見える。
最後に1節引いておきたい。
「金融市場は人類を映す鏡であり、私たちが自分自身や自分たちを取り巻く資源をどのように評価しているかをつねに示している。
人類の欠点が、美徳と同じようにあからさまに映ったとしても、それは鏡のせいではない」(p.494)
よく考えよう、お金は大事だよ。でもお金の歴史について学べば、もっと大事なものが見えてくるかもよ。 -
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ボリューミィな歴史学。
本書では為政者、特に近年の大国の為政者を痛烈に批判する。
それだけではなく、たとえばコロナパンデミックを少数の邪悪な大統領と首相の愚策によるもののような報道をした機関のことも。
まさにコロナパンデミックの渦中にいる私たちは、本書をよく読み込むことが必要だろう。
また、各地で起こるホットウォー(武力を用いて互いに血が流れる「戦争」のこと)についても関心を高める必要があるだろう。
本書中で心に残るのは、ユドコウスキーの言葉を引用したもの。
503頁に記載されるそれは、世界を破壊するのに必要な最低限のIQは、1年半ごとに1パーセントポイント下がる、というムーアの法則の修正版について示す。
かつてリスクは一部の人を規制すれば良かったが今では多くの人の手、つまり、私にも、あなたにも握られている、というのは恐怖でしかない。
第8章の「惨事に共通する構造」は本書の中では最も面白く、また興味深いテーマだった。
失敗が起こる箇所は中間層にあることが多い、とか、管轄権の重複や責任の所在の不明瞭さ、過度に複雑な規則が失敗を招くという事実は、心得ておくべき事項だ。
ヒンデンブルク号、タイタニック号、チャレンジャー号など、既に知られている大きな事故が題材となっており、身近に感じられる。
私自身も安全を第一にする場所に勤めているので、その悲劇は人ごとではない。
自分にひきつけて考える、それができれば大惨事は軽減されるのかもしれない。
であれば、私たちはまず何から始めれば良いのか。
破滅させようとする知性に対抗するためには、知っておかねばならない。
本書が語る、大惨事とは何かを。
そして何をなすべきかを自ら考えるべきなのだ。 -
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・前半は少し冗長な印象だが、これは自分の歴史的な基礎知識が不足しているからかも知れない。その証拠に、1970年代以降に入って、自分にとって馴染みのある名前が出てくるようになると興味深く読み進められるようになった(苦笑)。
・人類史における惨事というのは戦争と疫病。それ自体は新しい知見ではないが、本書の特徴はどこにあるんだろうか?
・惨事の原因は、たとえそれが天災であってもこれだけネットワーク構造が発達した社会にあっては必ず人災の側面を持つと主張しつつ、だからと言って、トップ(大統領とか首相とか)にすべての責任を負わせるのは正しくないといい、安直な犯人探しに偏る報道の仕方に警鐘を鳴らす。「惨事で失敗が起こる箇所は上層部(「後方」でも「前線」でもなく)、中間管理層の中にあることが多い(第8章)」、つまり文字通り、事件は現場で起きるわけだ。そして、ネットワーク構造と官僚制の機能不全についての理解を、今以上に深める必要がある、とするのが本書の特徴ということになるだろう。特に「官僚制の機能不全」と言うのは、安直な魔女狩りに陥ることなく、正しく、そしてより善く解き明かしたいところだ。
・また、今のコロナ禍で、効率的な対応には全体主義が有効というような説も出てきているが、過去の大惨事には、全体主義によって引き起こされたものもあることを忘れてはいけないと指摘する。ましてや、今のテクノロジーは、既に強烈な監視システムを構築できるわけで、その危険性と、来たるべき惨事に対して備えるために、SF的想像力が大切だと力説を始める。本書の最終章辺りは、SFのオンパレード(HGウェルズからディック、「ニューロマンサー」から、何と「三体」まで!)。「SF作品は私たちが未来について明確に考えるのを助けるうえで、重要な役割を果たすことができる。(P516)」とかなりの推し具合だ。
・「今日のアメリカや世界を中国がどう見ているかについて最も深く知る手掛かりとなる本」として「三体 黒暗森林」を挙げているのには驚かされた。確かに、そこで描かれていた宇宙の公理は印象深かったが、それを「今の中国の世界観」にまで敷衍するとは、慧眼なのか、こじつけなのか。いずれにせよ、結果としてファーガソンの歴史本が好きな層に、最新のSF状況をアピールして寄与するところ大だ。素晴らしい!
・オーウェルの「1984」なりハクスリーの「すばらしい新世界」が出てくるのは定番として、ザミャーチンの「われら」に特にスポットをあてているのにも少し驚かされた。この本については、ちょっと描写的によく理解できない箇所がありつつ、自分は不思議な印象を持っているのだが、なぜ、わざわざザミャーチンを推すのかと思わんでもない。「習近平が支配する中国からは、エヴゲーニイ・ザミャーチンの非凡な小説『われら』が、ますます頭に浮かぶようになる。(P511)」とのことだが、これは中国に対するファーガソンの視点が少し偏っていることを示唆しているかもと感じた。 -
Posted by ブクログ
人類の進化の裏側にはマネーの進化があったのだ.
という本.
面白いけど,話の難しさと史実に忠実に沿うことで発生する話の展開や重要性の感じずらさが辛い...
似た本としてはこの本を解説してくれている野口悠紀雄の「マネーの魔術師」がおすすめ
金融は経済を円滑に回すための手段だったのに.いつのまにか金融が経済(ひいてはそれに参加する人々の生活)に影響しているんだなあとわかる.
ミシシッピバブルが象徴的.それが複雑にシステム化・グローバル化された現代だと尚更だと言える.
日本の金融緩和政策は政府の債務を中央銀行に資産に付け替えることで,それはミシシッピ会社(フランスの経済をぶっ壊してフランス革命の遠因になった,金融緩和の父,ローが建てた会社)と同じことだと野口さんは述べている.
資産を守らねば.
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スイスの数学者 ダニエルベルヌーイ
あるものの価値(value)は価格(price)ではなく効用(utility)によって決まる.
ICO,ミシシッピ会社やエンロンとやってること変わらんな.
・無に金箔を貼り付けて夢を見させる
・夢(無)に魅了された人々がそれに投資する
・無を仕掛けた人サイド売り抜け,資金の使い込みをして鴨から金を搾り取る.
・夢が無であったことが露呈してバブル崩壊
ー>どうすれば防げる?
・相手の発言ではなくポジションを見る.
サブプライムローン問題
不動産と株で価格の下落開始に9ヶ月の差
貧しさは金融業者の搾取ではなく、金融の仕組みがないことで生まれると言う主張→途上国の高利貸しが途方もない金利で金を貸す→金融包摂の価値はそう言うところにあるな
インカ帝国 16世かに滅亡
"ピサロの一行にとって、銀が単に光って装飾用に使える以上の価値を持っていることが、インカの人々には不可解だった。"(当時ヨーロッパでは金銀は貨幣だった)
"スペインの過ちは、貴金属の価値が絶対的なものだと思い込んでいたところにあった。カネの価値は、それを何と交換してもらえるかによって決まる。
供給が増えただけで、社会が豊かになるわけではない。"
トークン=代用貨幣
昔は粘土の塊、今は銀行が発行する紙切れ
カネとは信仰に近い信頼
金属がカネなのではない。信用を刻印されたものがカネなのだ
カネが世界を回しているわけではない。実際に回っているのは、おびただしい数の人間であり、物資であり、サービスだが、それを可能にしているのはマネーだ。
サブプライム問題=債券の証券化
近代戦争の背後に金融あり.兵站戦
通貨のインフレ= 通貨の供給量が生産力を上回っている状態 通貨のパワー=生産力/通過供給量