ニーアル・ファーガソンのレビュー一覧
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歴史的な大惨事(カタストロフィ)は予測不能である。これが本書の要点だろう。ほとんどの惨事は正規分布しておらず、ランダムもしくは冪乗分布している。
もちろん、ある程度予測できる出来事(灰色のサイ)もある。また、予想を超えた惨事(ブラックスワン)がある。そして、手のつけられない大惨事(ドラゴンキング)・・。これらを予測することは不可能だ。そしてこれらの災害は、「天災」とも「人災」とも区別がつかず、重層的に絡み合っていることが多い。所謂複雑系であり、完全に防ぐことはもとよりできない。
人類の歴史は、まさにカタストロフィの歴史であったわけだが、我々の未来はどのような展望を描くのか。当然の帰結として、予 -
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数ある経済史や経済人類学の本は多数あったが、これはとても読みやすい本である。最新の「リーマンショック」にも触れつつ、古代の貨幣社会までもを論じている。利子の起源や債券の起源など、保険の起源など具体例を挙げつつ解説する。
我々はマネーを憎みつつも、マネーから離れられない状況に来ていることを痛感した。マネーのない社会を最初に触れているが、即殺し合いの社会になり、男性の六割が戦闘で死に、女性の略奪が横行する社会になるという。そんな世に、もう戻れない。
後半では、著者の市場に対して非常に冷めた目で論じている。それを昨今の金融市場の混乱、ヘッジファンドの抬頭に翻弄される各国政府・・・それに対する処方箋 -
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キッシンジャーの傑作評伝の下巻。舞台となるのは、ハーバード大学の教鞭を取りながら、大富豪ロックフェラーの大統領選の参謀として徐々に政治の世界に足を踏み入れる1958年から。そして下巻の中心となるベトナム戦争の和平工作に足を踏み入れながらも、ジョンソン政権下で結果としてはうまくいかずその営みが徒労に終わるも、ジョンソンに次ぐ大統領に就任したニクソンの元で、 NSA/国家安全保障局の大統領補佐官に就任するところまでが描かれる。
キッシンジャーが問題視したのは、ジョンソン政権下での外交問題が、様々な部局の縦割りで統一的な戦略や意思決定プロセスを経ぬままに迷走していた点である。彼がニクソンの元で政権 -
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20世紀後半の現代史を語る上でのキーパーソンの一人といっても過言ではないヘンリー・キッシンジャー。ニクソン政権での国家安全保障問題担当大統領補佐官として、ベトナム戦争終結の功績でノーベル平和賞を受賞し、その後もアメリカ外交に大きな影響力を持ったキッシンジャーの評伝が本書である。
"The Idealis-理想主義者"と銘打たれた本書の上巻は、出生した1923年から1958年、ハーバード大学の博士課程を修了し、徐々に外交のスペシャリストとして頭角を表すまでの”青の時代”が中心である。
上巻の白眉は、第二次世界大戦における欧州の戦場に従軍した時代のエピソードである。ユダヤ系 -
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結構なボリュームですが、金融の世界の幅広さ、面白さを感じ取ることができます。
まぁ(解説で野口悠紀雄さんもおっしゃってましたが)正直ちょっと難しいので、ちゃんと理解するなら複数回読んだ方が良いのかなという感じ。
株式には第3章が割かれていますが、その黎明期(なぜ生まれたのか?)や初期のバブルについて詳しく書かれていて、人間ってヤツは昔も今もしょうもない「錬金術」を使ってきたんだなぁとあきれつつも、考えさせられます。
グローバリゼーションについて書かれた第6章は、少し荒唐無稽な話という体で「米中戦争」の可能性について触れつつ、歴史から得られる教訓として「①グローバリゼーションが進んで安定的に -
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500頁超の大部だが、マネーにまつわる4000年の歴史を紐解くには、それでもまったく紙幅が足りないだろう。その証拠に、本書には数式がひとつしかでてこない(ブラック・ショールズによるオプションの価格決定式 p.439)。
さすがにこれだけ分量があると、ざっと一回読んだだけではぼんやりとアウトラインが見えてくるだけ。が、これが大変おもしろい。
人類史の動かした大きな歴史上のイベントの陰には、いつもそれを駆動する巨大な資金を融通する仕組みや人間が存在してきた。
ともすれば「陰謀論」とくくられてしまいそうではあるが、戦争と帝国主義の裏で金融の仕組みは巧妙に進化してきたことが、歴史的事実として提示 -
3.0 (2)
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3.0 (2)
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ボリューミィな歴史学。
本書では為政者、特に近年の大国の為政者を痛烈に批判する。
それだけではなく、たとえばコロナパンデミックを少数の邪悪な大統領と首相の愚策によるもののような報道をした機関のことも。
まさにコロナパンデミックの渦中にいる私たちは、本書をよく読み込むことが必要だろう。
また、各地で起こるホットウォー(武力を用いて互いに血が流れる「戦争」のこと)についても関心を高める必要があるだろう。
本書中で心に残るのは、ユドコウスキーの言葉を引用したもの。
503頁に記載されるそれは、世界を破壊するのに必要な最低限のIQは、1年半ごとに1パーセントポイント下がる、というムーアの法則の修正版に -
Posted by ブクログ
・前半は少し冗長な印象だが、これは自分の歴史的な基礎知識が不足しているからかも知れない。その証拠に、1970年代以降に入って、自分にとって馴染みのある名前が出てくるようになると興味深く読み進められるようになった(苦笑)。
・人類史における惨事というのは戦争と疫病。それ自体は新しい知見ではないが、本書の特徴はどこにあるんだろうか?
・惨事の原因は、たとえそれが天災であってもこれだけネットワーク構造が発達した社会にあっては必ず人災の側面を持つと主張しつつ、だからと言って、トップ(大統領とか首相とか)にすべての責任を負わせるのは正しくないといい、安直な犯人探しに偏る報道の仕方に警鐘を鳴らす。「惨 -
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人類の進化の裏側にはマネーの進化があったのだ.
という本.
面白いけど,話の難しさと史実に忠実に沿うことで発生する話の展開や重要性の感じずらさが辛い...
似た本としてはこの本を解説してくれている野口悠紀雄の「マネーの魔術師」がおすすめ
金融は経済を円滑に回すための手段だったのに.いつのまにか金融が経済(ひいてはそれに参加する人々の生活)に影響しているんだなあとわかる.
ミシシッピバブルが象徴的.それが複雑にシステム化・グローバル化された現代だと尚更だと言える.
日本の金融緩和政策は政府の債務を中央銀行に資産に付け替えることで,それはミシシッピ会社(フランスの経済をぶっ壊してフランス革