2017年、最後に読んだ漫画が、この『町田くんの世界』(6)です
マジです
思わず、縋りつきたくなるような、性質の悪い嘘が服を着て、二足歩行している、と言われてばかりな私ですけど、漫画に関しちゃ、嘘は吐きませんし、誤魔化しも誇張もしません
しかし、正直なとこ、失敗したな、と後悔しました
2017年最後、心のデトックスを目論んで、断腸の痛みを感じながら、封を破るのをギリギリまで耐えました。そして、寝る間際に、この(6)を読んだんです
私としては、心の澱が感動で一気に洗い流されて、最高の眠りにつき、良い気分で2018年最初の朝、目覚めを迎えられると期待したんです
けど、感動しすぎて、眠れないったら眠れない!!危うく、初日の出を見損なうトコでした
町田くんの魅力的な言動や、優しいながらも弱くない光を宿すストーリーの良さを何度も反芻したら、眠気なんぞ吹っ飛んでしまう、と予想できていなかった自分が情けないです
恐らく、他の巻であれば、こんな事にはならなかった、と思います
月曜日の朝に読めない、電車の中で読めない、だけでなく、まさか、大みそかの夜、寝る間際にも読んではいけない一冊だったな、『町田くんの世界』(6)
あくまで、私個人の印象ではありますが、この(6)は変化の巻、でしょう
その変化が小さいか、大きいか、そこは読んだ人間の受け取り方次第
私としては、小さいけど大きな変化、と言いたいですね
見た目は、本当に小さいんです。でも、そういう風に見えるのは、とんでもない力で内側の一点へ凝縮しているからだ、と感じました
少し分かり辛い表現かも知れませんが、アウトドア用のテント、あれはコンパクトになってますけど、放り投げると一気に広がって、ちゃんとしたテントの形になりますよね。あんな感じなんだと思います、町田くんの中で生じた、小さいけど大きな変化ってのは
人は変わっていく存在です
多くの人の生き方に変化を与え、誰からも愛される町田くんにも、そんな変化を迎える時が、不意に訪れても、なんら可笑しくありません
これまた、人によって印象は異なるでしょうけど、私としちゃ歓迎すべき変化です
町田くんだって、血の通い、心のある、いきている人間なんですから、誰か一人を特別に思ってもいいんです
ただ、問題は、彼がその変化、感情を波立たせる「ドキドキ」に、自分らしさを保っていられるか、でしょうね
鈍感なトコが、ある意味、彼の長所。けど、鈍感な人間ほど、その時が来ると、自分の変化と、生真面目に向き合い過ぎて、思考の迷宮から出られなくなっちゃうからな
ウロウロできる元気がある内は、まだ良いかもしれないけど、いよいよ、エネルギー切れを起こして、その場から動けなくなり、何も考えられなくなったら、大変です
これまで見てきた、町田くんの人柄、性格、気性からして、彼は自分一人で至高の迷宮から、すんなり出られるタイプじゃない気がします
だから、誰かが町田くんを思考の迷宮の中で見つけ、その手を握り、出口へ引いてあげることが必要だ、と思いました
町田くんには、もう、自分に伸ばされた、美しくて軟らかな手を握る勇気が芽生えているでしょう。だから、あとは、町田くんの心に一石を投じた、特別な誰かが、彼の心へズカズカと踏み込んでいけるか、そこだけでしょう
恋愛方面に話が動くかもしれない、って事に対し、思う所が何もない、と言ったら嘘になります
けど、歓迎はしたいです
元々、私は安藤先生の作る、恋愛色に惚れているので、『町田くんの世界』が、より鮮やかに彩られるのなら、それを楽しみに待つだけです
安藤先生には、描きたいものを描いていただければ、ファンとしちゃ、それで良いんです
極端な話、漫画ってのは描く側ではなく、読み側の受け取り方で、いくらでも違った感想が生じますから、安藤先生がそこを気にする必要は、全くありません
私も、他の漫画読みが書いた、『町田くんの世界』の感想を読んでも、頭ごなしに否定をしようって気はおきません。あんまりにも酷い評価をしていたら別にしろ、「あぁ、こういう読み方、受け取り方もあるんだな」、「そうか、この人はここを良い、と感じるんだな」と頷くくらいです
なので、安藤先生は全力で描いてください。私らファンは、それを打ち返す、もしくは、受け止める努力を全力でします。もし、あまりの威力に、私達が吹っ飛んでしまっても、先生が罪悪感を覚えなくていいんです
うーん、思ったより長くなってしまい、すいません
端的に感想を纏めて読みやすくしたかったんですけど、一度、『町田くんの世界』の良さを語り出すと、止まらなくなっちゃいますね
ただ、これだけは言わせてください
ジャンルこそ、少し違いますけど、総合的な質で言えば、羽海野チカ先生の『ハチミツとクローバー』に匹敵しています。もしかすると、今に『3月のライオン』にも手が届くかもしれません
共通点と言えるか、そこも微妙なんですけど、安藤先生の作品も、羽海野先生の作品も、漫画読みは惰性で読めないんですよね
こう、何と言うのか、本気で読んじゃう、と表現するのがいいんでしょうか
どちらの先生の作品も、読んだ後に爽快感のある疲労すら覚えているんです
それは、きっと、本気になれる漫画だからでしょう
安藤先生が、羽海野先生と、ガチンコする日が、漫画読みとしちゃ楽しみでしょうがないです
本来なら、ここでお勧めの回をバシーンと発表したいんですが、どんだけ悩んでも、唸っても、呻いても、一つに絞り切れませんでした
漫画読みとしても、安藤先生のファンとしても、恥ずかしいです
ただ、心の片隅で、どっか誇らしくなっちゃっている私もいたりします、何故か。どの回にも負けない良さを感じられるくらい、じっくり読み込んでるんだぞ、と言いたいんでしょうか?
この台詞を引用に選んだのは、うすっぺらくない、そこです。他の漫画で、他のキャラが言ったら嘘臭く感じるに違いないのに、町田くんが言うと、全然、厚味と圧力が倍くらい違うんですよ。ここまで、真剣に誰かの力になりたい、って姿勢を、こうも真っ直ぐに見せた事があるのか、私には・・・・・・