石井正己のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
旅行家で本草学者でもある菅江真澄の、30歳での旅立ちから
約47年の漂泊の中での旅日記の記録に貴重な図絵112点を添え、
紹介し、解説。
・はじめに
・菅江真澄――森羅万象を描く旅
I 信濃・南部・蝦夷地の旅 II 下北・津軽の旅
III 秋田の旅(1) IV 秋田の旅(2) V 地誌の旅
VI 図絵の旅(1) VII 図絵の旅(2)
・ナチュラルヒストリーとして見る菅江真澄の図絵
参考文献一覧有り。
・おわりに ・菅江真澄 年譜
名前だけは知っていたが「偉人たちの温泉通信簿」で
興味惹かれての読書。こんなにすごい人だったとは。
北東北や南北海道を歩き、様々な記録を図絵と共に
書き留める。江戸時代の当時の地域の、人々の生活や衣食住、
行事や風習などの文化。各地の自然と四季の風景。
訪ねた町や村の姿。そして出会う人々との交流。
興味赴くままに歩き、泊まり、長逗留して、その地に暮らす。
特にアイヌの人々の生活や言語、地名、衣食住と習俗や文化の
記録は重要。蝦夷地の円空仏の存在も載っていた。
日記は地誌の編纂に、図絵集や随筆へと変化してゆくが、
山に登り、舟で渡り、採薬し、寺社を訪ね、大木を愛で、
地域の生活を調べ、和歌を詠む行動は変わらず綴られる。
そして素朴な風合いの図絵が過去の情景を見事に再現してくれる。
八郎潟の網引き漁、大地震で失われた象潟の風景、
実際に人が生活を営んでいた、アイヌの家など。
また、様々な当時の臼の考察も面白かった。
菅江真澄への興味が高まってきたので、
関連本も探してみようかな。 -
Posted by ブクログ
鯨庭さんの作品が結構好きなので読みました!
この作品は遠野物語の行間を「補足」して創られた物語で、遠野物語原作をそのまま漫画化したものではありません。
鯨庭さんの「驚きながら、あなたも言い伝えの断片にある隙間について想像してみてほしい」という言葉の通り、遠野物語本編を読んだ上でこの作品を読み、実際に遠野を訪れてみて「言い伝えの断片にある隙間」を考えてみてほしい。人の営みを語り継ぐ意味や必要性、そもそもなぜ人は物を語るのか、原点に立ち戻るきっかけを与えてくれる経験になると思います。
昨年の夏に遠野に行った。花巻から電車で訪れたところ、確かに柳田國男が紹介しているように、周りを山に囲まれた真緑の盆地が広がっていて、風は木のよい匂いがして本当に驚いた。本当に風から木の匂いがした。
自分は遠野住民ではないために遠野の抱える問題等は何も知らないので一観光客という外野の立場から好き勝手言ってしまってると思います、と前置いて述べるが、遠野は人智を超えた脅威の自然と人間とが昔から共に生活を営んできた土地であると感じました。厳しい東北の自然環境に身を置く共同体のなかで人から人へ連綿と語り継がれる物語や時間を経て形を成した信仰が根差す土地のたいへんな歴史が強く迫ってきた覚えがあります。人じゃないものがたぶんここには見えないけど居ますね……という謎の確信を得て帰ってきました。また遠野に行きたいです。 -
Posted by ブクログ
個人的な話。
初めて青森県の山内丸山遺跡に行った時。史料展示室の壁にはかなり長大な等尺年表があった。山内丸山は縄文期から平安期頃まで人の住む地だったので、そこまでの時代については記載が多い。等尺年表なので、その後は昭和の発掘調査まで、ほぼ真っ白。空白。ところが、
……江戸期に記載がある!
それが菅江真澄の記録。土偶や土器片をスケッチし、土地の人からの聞き書きを残している。しかも克明に。
菅江真澄がすごいのは、江戸後期に北海道へ渡って越冬もしている。そしてアイヌの人々の文物•文化•言語なども記録に残したこと。アイヌ語には"文字"がないので、聞き書きのアイヌの言葉の記録は貴重だ。現在、アイヌ語がわかる人が読むと、当時のアイヌの人々の風習がわかるそうだ。
平凡社東洋文庫で出ていた『菅江真澄遊覧記』は白黒だった。しかし菅江真澄の記録は、本人の描くカラフルな記録画があって初めて真価を発揮する。この「図絵の旅」はカラー図版が豊富に載っている。偉いぞ角川ソフィア文庫!ちょっとお高いけど、許す。
そして本書では触れていないが、菅江真澄の記録には謎の空白期間がある。津軽藩滞在時の日記だけがごっそりと欠けているのだ。およそ40年にわたって記録されたものに欠落があるのは何故か。
歴史の教科書には出てこない、地方に住む民衆の、しかも忘れられてしまった記録をこうして目にする機会がある私達は幸せだ。 -
Posted by ブクログ
【沖縄文化論の草分け論集】
明治政府による廃藩置県で琉球王国が滅亡し沖縄県とされたのは、1879年である。日本で沖縄文化研究の本格的な気運をつくったのは民俗学の創始者の柳田国男だった。柳田は南島こそ日本文化の源流と見ていたのだ。柳田の『海南小記』に刺激されて、折口信夫も沖縄を訪ね、『琉球の宗教』を書く。他方、民芸運動の主唱者柳宗悦は、沖縄における「民衆芸術」の営みを愛でた。
本書は、柳田、折口、柳をはじめとする沖縄文化論の草分けの論考が詳細な注記とともに読みやすい形で提供されている。返還50周年を機に、沖縄の文化を見つめ直すのに格好な本である。
柳田「日を経て南の風の吹く頃には、遙かなる常夏の国から、椰子の実が流れてくる」。折口「内地の古神道と近い琉球神道は、組織だった巫女教の姿を現に保っている」。柳「伝統的な純正な和語を最も多量に含有するのは東北の土語と沖縄語である」。「詩歌と音楽と舞踊とが、まだこの島では一体になっている」。
(本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会/門倉) -
購入済み
想像を膨らます
日本民俗学の古典的名著「遠野物語」のコミカライズである。原作の素朴でファンタジックな内容を、やはり素朴でやや稚拙な絵柄でよく表現している。原作の文章表現もいいが、この作品のように絵になったものも想像を膨らますのにとても良い。