あらすじ
雪女、ザシキワラシ、天狗、河童、オクナイサマーー遠野の郷に伝わるさまざまな民間信仰や伝承を収めた『遠野物語』。遠野地方出身の佐々木喜善が語り、柳田国男が筆記し、現地での調査を経て編纂する形で出版された。
日本人の死生観や自然観が凝縮され、「日本民俗学の出発点になった」とも称される作品を大胆コミカライズ。「オシラサマ」「河童」「狐」「御犬」といった神や妖怪・動物たちの物語を四篇結び直し、現代に蘇らせる。
■「馬と花冠」ーーオシラサマ
その昔、ある娘が馬と恋に落ちた。その恋の行方は……?
東北地方に古くから伝わるオシラサマ信仰。オシラサマは養蚕の神、狩りの神、女性の病気の神、よいことやわるいことを知らせてくれる神などとして崇められている。その由来の物語。
■「河童の子」ーー河童
ある村の娘が河童の子を生んだ。河童の子の運命は?
今日でも誕生したばかりの赤ちゃんに関する悲しいニュースが後を絶たない。子どもの命をどう考えるかは、最も重要な課題である。現代にまで続く、『遠野物語』が描き出す人間社会の姿。
■「狐は夢」ーー狐
船越にとても仲の良い夫婦がいた。夫の漁師が吉里吉里へ出かけたが、その帰りが遅くて妻は心配になり……。
その昔、狐は人間に化けて人を騙すと信じられていた。また、思いが募るとすぐに浮遊してしまう魂の「軽やかさ」を描いた、二重に怪しい物語。
■「おおかみがいた」ーー御犬
『遠野物語』が発刊された明治末期には、ニホンオオカミはすでに絶滅していたが、遠野あたりでは御犬と呼んだ狼の話が伝わった。御犬の経立は年を取った狼のことで、特に恐れられた。
なぜ、御犬は滅びることになったのか。人間と自然の関係が失われ始めた頃の物語。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
遠野物語に触れたことがなかった自分にとって、めちゃくちゃ良かった。描かれているのはあくまで遠野物語の一部なので、全話知りたくなりました。
言葉もわかりやすくしてくれていて、絵もあるので想像もしやすい。特に自分はオシラサマの話に引き込まれました。
そもそも遠野物語は、実話を基に書かれたといいますが、読んでいると何が真実なのか、ふと考えしまいます。ただ、人間と自然(動物)の共生のなかで、人間が利益だけを求めてしまうと、遠野物語で書かれたような結果を生み出してしまうんだろうと思わされます。
Posted by ブクログ
遠野の出身ではありませんが、いち東北民として雰囲気や空気感といったものを懐かしく感じながら読んでおりました。
一番冒頭のお話である「馬と花冠」のお話が好きです。
Posted by ブクログ
柳田國男の名著「遠野物語」 今まで何度か挑戦してみたがその時は通読不可。遠野物語のエッセンスの一部に触れられた。角川さんのkadokawa masterpiece comicsに感謝。
さてこれらの話は「全て実際にあった出来事」である。怪異譚とも怪談ともとれる。自然への畏れ、妖怪との邂逅。現代では全て失われてしまったものかも知れない。然し確かにこれらのものは存在していたのだと我々は理屈抜きで感じてもいる。
Posted by ブクログ
鯨庭さんの作品が結構好きなので読みました!
この作品は遠野物語の行間を「補足」して創られた物語で、遠野物語原作をそのまま漫画化したものではありません。
鯨庭さんの「驚きながら、あなたも言い伝えの断片にある隙間について想像してみてほしい」という言葉の通り、遠野物語本編を読んだ上でこの作品を読み、実際に遠野を訪れてみて「言い伝えの断片にある隙間」を考えてみてほしい。人の営みを語り継ぐ意味や必要性、そもそもなぜ人は物を語るのか、原点に立ち戻るきっかけを与えてくれる経験になると思います。
昨年の夏に遠野に行った。花巻から電車で訪れたところ、確かに柳田國男が紹介しているように、周りを山に囲まれた真緑の盆地が広がっていて、風は木のよい匂いがして本当に驚いた。本当に風から木の匂いがした。
自分は遠野住民ではないために遠野の抱える問題等は何も知らないので一観光客という外野の立場から好き勝手言ってしまってると思います、と前置いて述べるが、遠野は人智を超えた脅威の自然と人間とが昔から共に生活を営んできた土地であると感じました。厳しい東北の自然環境に身を置く共同体のなかで人から人へ連綿と語り継がれる物語や時間を経て形を成した信仰が根差す土地のたいへんな歴史が強く迫ってきた覚えがあります。人じゃないものがたぶんここには見えないけど居ますね……という謎の確信を得て帰ってきました。また遠野に行きたいです。
Posted by ブクログ
現代の表現で遠野物語を示してくれたコミック。ソフトで透明感のある絵柄が、逆に内容を補完するような読後感。じわじわとくる恐怖というか畏れというか読み終わったあとも残滓が心のどこかにあって、再読。柳田國男も再読してみようと思う。
再読。間引きの暗喩、「この鹿は狼が獲った だから狼のもの 横取りしてはいけない」p175、価値観の変化があっても、ここに描かれている情景は今の自分たちに迫ってくる。しかし、生き物の描写には息を呑むほど生命力がこもっている。
Posted by ブクログ
遠野物語の世界へひきこまれていく。
漫画なので感情も入ってしまう。
「馬と花冠」が特に良かった。切なさと哀しさが胸を打つ。
言い伝えであっても実際にこれに近いことがあったのだろうと…。
原作と違いがあるかもしれないが、想像以上にじんわりと伝わってくるものがある。
馬と花冠(遠野物語69話)西洋とは違う異類婚姻譚〜オシラサマ
河童の子(遠野物語55話〜59話)古い伝統と新しい価値観の間でゆらぐ人々〜河童
狐は夢(遠野物語100話)遊離する魂と人を化かすものたち〜狐
おおかみがいた(遠野物語36話〜42話)人間と自然の関係〜御犬
Posted by ブクログ
どの話も思った以上に気味が悪かった。実話がベースとすると余計にゾワゾワする。
本当にすべて実話だとすれば、現代の科学的な視点で考えれば殺されずに死なずに済んだはずの、こども女性たちがいる。思い込みや習慣で殺されるって怖い時代だ。
でも今の時代が、この時代に比べて豊かだとか優れているとは簡単には言えない気がする。
ヒトと自然の境界ってあいまいだったり、あったとしても対等な関係だったこの時代。(特に「おおかみがいた」はもののけ姫の舞台だなと思った)
一度でいいからタイムスリップしてみたいな〜。
Posted by ブクログ
まさにもののけ姫の世界でした
山神様の元で暮らしていた多くの狼が人間が山に入り込んできた為に激減していく
鹿も動物たちが減っていく
人間の愚かさを物語っていた
Posted by ブクログ
『遠野物語』を読んだのは多分小学生か中学生くらいのときだったような気がする。改めて漫画として読むと不思議な世界観がある。また遠野に行きたくなってきたし、原典を読みたくなってきた。
Posted by ブクログ
遠野物語をベースにした短編集。
漫画の世界観の良さと、遠野物語の生々しさが両立されていて上手いなぁと思う。
各作品の後にその話の元となった話が紹介されていて、改めて遠野物語を読みたくなった。
Posted by ブクログ
言わずと知れた、柳田國男の名著、その漫画化。
「オシラサマ」「河童」「狐」「御犬」の四話が収められている。
オシラサマは養蚕の神、狩りの神、女性の病気の神、etc. ・・・ その由来の物語。いかにも昔物語っぽい構成。
遠野物語といえば、河童 やね。人間社会の闇を、架空の生き物に託して語る、これも神話的なテンプレート。
狐の不思議な話は、全国に残る。その昔、狐は人語を解し、人間に化けて人を騙すことが本当にあったのかもしれない。
御犬、ニホンオオカミのこと。なぜ、御犬は滅びることになったのか。人間世界の膨張による自然との力関係の変化。オオカミの存在とともに、我々が大切なものを失っていく物語。
昔話、神話、言い伝え、妖怪伝説、あらゆる物語に通底する、日本の文化、あるいは人間の本性に迫る物語。
こうした、フィクションを通じて、昔の人は、大切なことを子々孫々、印象的に心に残るように脚色して伝えてきたのだな、ということが良くわかる。