傳田光洋のレビュー一覧
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皮膚はセンサーであり、脳でもある。別の言い方をすると、皮膚は「外臓」であり、「第3の脳」(第2は消化器)である。この考えが書名に集約されている。
なぜ皮膚科学の道に進むようになったのか。自分語りの部分がある。その進路選択は必ずしもポジティブではなかった。迷いに迷いながら、行き着いた先が皮膚科学の研究、新たな鉱脈。
「むすび」では、2001年に参加した学会のことが書いてある。マイナーに見えるテーマだったからか、ポスター発表会場では、だれひとり自分のところには立ち寄ってはくれなかった。終了間際、ひとりの研究者が立ち寄り、熱心にメモをとって、話を聞いてくれた。ネームプレートは「松本元」。そのことが1 -
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傳田 光洋
京都大学工業化学科、工学研究科分子工学専攻を経て京都大学工学博士。カリフォルニア大学サンフランシスコ校皮膚科学教室博士研究員、国立研究開発法人科学技術振興機構CREST研究者、広島大学客員教授などを経て、明治大学先端数理科学インスティテュート客員研究員
皮膚は考える (岩波科学ライブラリー)
by 傳田 光洋
私がそんな友人たちに「皮膚ってのは実は大事な臓器なんだ」と酔った勢いで自分の研究を吹聴したときのことです。コピーライター氏が「心臓や胃や肝臓は「 内臓」 だよね。だったら皮膚は「 外臓」 か」とビールグラスの向こうから言いました。もちろん彼の造語ですが、うまい表 -
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ネタバレ皮膚は第三の脳!? -2008.02.08記
皮膚には第三の脳ともいうべき未知の思考回路があり、生物にとって最も重要な器官とさえ云いうると、資生堂ライフサイエンス研究センターの主任研究員を務める傳田光洋氏が自説を開陳する「第三の脳」-朝日出版社刊-は、たんに外界から分かつだけにすぎぬとみられる皮膚から捉えなおした人間観.生命観がずいぶんと刺戟的で興味深く読める。
著者の説くところを本書の終章にあたる「第6章-皮膚から見る世界」-p176~-から以下適宜引用すれば、
進化の過程において、ヒトの皮膚と同種の基本構造が現れるのは、両生類から爬虫類にかけてであること。ヒトの皮膚の原型はカエ -
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特に1番印象的だったことは、視覚障害者が舌になんらかの圧を加え、学習させると、ボールをバットで撃てるようになること。
舌はご飯を食べる時にも使うし、キスをする時にも使うけど、確かに感じると言うことに全てが集約されてるのかも。
視覚・聴覚は記号化できるけど、触覚と嗅覚だけは確かに人によって感じ方が違う。おもしろい。
以下記憶したい部分を抜粋。
顔面フィードバック・・・自分の顔の表情が、その感情を誘導する
口が笑っている形になるだけで、人間はより楽しい気分になる
拒食症患者は健常者に比べて、触覚による図形の把握が下手
不幸な幼少期を送って脳構造にその影響が残ったとしても、あるいはうつ病に -
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杉や松の表皮の模様が、なぜあのようになるのか。
なるほど、と面白かった。
子供の頃に清潔にし過ぎると、アトピーなどのアレルギーになりやすい、ということも、他でも聞いたことがあるし、確かにそうだろうと思う。
人類は菌やウイルスなどと共に生きてきたのに、清潔にし過ぎると免疫システムのバランスが崩れるのだ。
ホモ・サピエンスの話も面白かった。
ホモ・サピエンスは挑戦者であり、スペシャリストを志向する能力や性格を持っていた。
だから、生き残れた。
ネアンデルタール人やデニソワ人は、そうではなかった。
少数者を多数の力で排除せず、受け入れ、認めることで、ホモサピエンスは生き残り、発展してきた。
多様 -
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皮膚って凄い。肌断食を始めてから、皮膚科学の本が面白くてたまらない。皮膚は、最先端科学でもまだまだ解明出来ていないにもかかわらず、私たちが直に触れることのできる、もっとも巨大な「臓器」なのだ。筆者は資生堂の研究員。肌につけるものを研究している人が書く、皮膚の話。ちょっと専門的過ぎて付いて行けない話もあったけど、逆に、私のように文系の頭でも分かりやすく説明されているところもある。
皮膚の特性を西洋医学や科学者が解明するよりずっと前から、東洋医学や作家たちはとっくに真理を見抜いていた。『芸術は往々にして歩みののろい科学を先取りすることがある』(p77)という素敵なコメントも要所要所にあって、単 -
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<皮膚。内と外の境界となるもの>
皮膚は、個体と外部環境との接点となる場所である。いわば、体の最前線だ。
物理化学を学び、後に資生堂の研究員として皮膚について研究してきた著者が、最新の細胞生物学的研究を中心に皮膚のあれこれを解説する。話題は多岐に渡り、化粧が精神に与える影響や、皮膚への数理学の適用まで。
目を見張るほどおもしろい、皮膚のあれこれ。
俗にスキンシップという。肌に触られたときに、それが心理的に影響を及ぼすのは珍しいことではない。
皮膚は外からの刺激をどのように感知しているのか。その機構が徐々に明らかになってきている。
皮膚は、一本の髪の細さも感知する。従来は、神経や指紋が触覚