傳田光洋のレビュー一覧
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皮膚って凄い。肌断食を始めてから、皮膚科学の本が面白くてたまらない。皮膚は、最先端科学でもまだまだ解明出来ていないにもかかわらず、私たちが直に触れることのできる、もっとも巨大な「臓器」なのだ。筆者は資生堂の研究員。肌につけるものを研究している人が書く、皮膚の話。ちょっと専門的過ぎて付いて行けない話もあったけど、逆に、私のように文系の頭でも分かりやすく説明されているところもある。
皮膚の特性を西洋医学や科学者が解明するよりずっと前から、東洋医学や作家たちはとっくに真理を見抜いていた。『芸術は往々にして歩みののろい科学を先取りすることがある』(p77)という素敵なコメントも要所要所にあって、単なる皮膚のお話に留まらず、パイオニア精神に溢れる論調がとても心地よかった。
最近、自分の外側にあるものより、自分が既にもっている内側にあるものに面白みを感じる。自分の外側の世界についての知識も、自分の内側の世界を何も分かっていないようでは役には立たない。この本は、自分に備わった未知の力を教えてくれる。もう一度じっくり読み直してみたい新境地本。 -
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<皮膚。内と外の境界となるもの>
皮膚は、個体と外部環境との接点となる場所である。いわば、体の最前線だ。
物理化学を学び、後に資生堂の研究員として皮膚について研究してきた著者が、最新の細胞生物学的研究を中心に皮膚のあれこれを解説する。話題は多岐に渡り、化粧が精神に与える影響や、皮膚への数理学の適用まで。
目を見張るほどおもしろい、皮膚のあれこれ。
俗にスキンシップという。肌に触られたときに、それが心理的に影響を及ぼすのは珍しいことではない。
皮膚は外からの刺激をどのように感知しているのか。その機構が徐々に明らかになってきている。
皮膚は、一本の髪の細さも感知する。従来は、神経や指紋が触覚を担っていると考えられてきたが、このように細かいものが感知可能であることの説明は付かなかった。
近年、皮膚の細胞(ケラチノサイト)自体に、圧や温度、さらには光を感じる能力がある可能性が見出されてきた。具体的には、それぞれの刺激を感知して活性化されるタンパク質が特定されてきたのである。活性化されたタンパク質はスイッチとして機能し、何らかの方式でそれが神経に伝えられると考えられる。
皮膚はまた、バリアとしても機能する。
人間の皮膚にはサルのような体毛はない。さらに体毛のある動物との違いは、皮脂の成分である。ヒトではスクアレンであるのに対して、サルやイヌなど、大部分の哺乳類ではコレステロールである。スクアレンの方が水をはじく性質があり、おもしろいことに、水中で生活するビーバーや土中にいるモグラもスクアレンを使用しているという。
ヒトは進化の途上で、体毛をなくしたわけだが、これに関して、シラミに注目した研究がある。ヒトにはアタマジラミとコロモジラミがつくが、サルには1種類のシラミしかつかない。アタマジラミとコロモジラミが分かれた時点がわかれば、ヒトが衣服をまとうようになった時期が推測可能になるのではないかというものである。この研究によれば、シラミが分化したのは10万7000年前。仮説が正しければ、ヒトが衣服を着るようになったのはそれより以前ということになる。
数理的な検証としては、バリア機能の維持に大切なカルシウムイオンの分布が、コンピュータシミュレーションで予測可能であることがわかってきた。
初期条件が与えられると、どのような信号が伝わるかを解析し、痒みや老化の研究にもつなげていきたいとのことである。
文学作品も引用した著者の考察はなかなか味わい深い。
皮膚研究の今後の進展を楽しみにしたい。 -
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皮膚感覚が人間に及ぼす影響がある。著書によると、客にお釣りなどを渡す際に、手に触れると店員に対する好感度がアップし、客がたくさん買い物をするとある。ただし、「王子様」、「きれいなお姉さん」かどうかは関係ないとある。どうせ触れられるならイケメンや萌えーとなるような人の方がいいと思うのが人情だと思う。ひねくれ者のでもない限り。
人間だけでなく、ネズミでも子ネズミに毛づくろいをして大切にした場合とそうでない場合とでは、その後の人生ならぬチュー生が変わるとある。大切にされた子ネズミが大人になって子供を育てる際、自分がやってもらったように自分の子供を大切にするとある。
体の洗いすぎは、皮膚が乾燥して、ひどい場合アトピーになるので注意が必要とある。洗うと言って浮かんでくるのが、男性化粧品と女性化粧品の違いだ。前者の場合、「さっぱり」、「すっきり」、「洗い落とす」が商品のキーワードに登場する。その一方、女性化粧品の場合、「もちもち」、「保湿」、「潤い」といったようにただ洗うだけでなく、その後のケアのことまで考えている。男性化粧品は男性と同様、単細胞のようだ。
この本を読んでいくと皮膚を巡る様々なテーマが浮き彫りになってくる。いろいろな分野から皮膚を語ることができるのだなと思った。皮膚に対する注目度の高さがこの本につながったと言って過言ではない。 -
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タイトルから、もっと抽象的な内容を想像していたのだが、具体的な論文や実験データが多く引かれ、非常に科学的。かなり専門性の高い記述も多く正直手こずったのだが、興味深い内容で引き込まれた。
「皮膚の最も重要な役割は、生体を環境変化から護る、防御システムとしての機能」このあたりは、誰でも想像がつくだろう。
では、表皮は脳に似ている、と言われればどうか。一体何を言い出すのかと、面食らうに違いない。
第1章から6章までは、様々な論文や、具体的な働きを研究した結果を数多く引きながら、人間の生育過程や進化の面から見た表皮、また、触覚だけでなく聴覚や視覚といった感覚まで有する皮膚について解説、脳の働きによく似た皮膚の情報処理システムのしくみを説く。
それを踏まえて、7章では皮膚が生み出す「自己意識」について考察されているのだが、ここがとにかく面白い!
自己意識とは何かに始まって、単細胞生物の集合から出現した「自己意識」的なもの(イグノーベル賞を受賞した中垣教授の粘菌研究が例として挙がっている!)、また脳科学的に考察した自己について、さらには皮膚がなぜ自己意識を生んでいると言えるのか、実験を引きながら解説。
視覚、聴覚と比較した社会システムにおける皮膚感覚についても言及され、非常に興味深く読んだ。
ただ一つ、ここまで徹底的に科学的に論拠が進められ、神秘主義的な事柄には興味ないと明言したにもかかわらず、最終章で突然、宇宙の創造者としての神云々とか、創造主の神が与えたもうたナントカ、とか言い出したのには、ちょっと違和感を覚えた。
なぜいきなりここで「なんと神秘的だろうか」とくるかなぁ…。ちぐはぐな印象が否めず。
余談。
皮膚の話なので当然、しわがどうとか、老化現象でどうとか、バリア機能を回復させるタンパク質の働きについてもいろいろ解説がある。
そして著者は、分子生物学の学術的研究や解明よりむしろ、非線形科学の考え方で、表皮の問題に対処する方法を解決していきたいと言っているのだ!
しかも著者は資生堂の研究員じゃあないか。しめしめ…。
実は、読みながらずっと、これをすると機能が回復、とかいう記述を見るたびに、え、じゃあ今それをやるにはどうすればいいのかしらん?とそればかり気になっちゃって…。
ぜひとも少しでも早く、その皮膚の老化現象を解決する画期的な方法を見つけて、世に出してほしいなぁ~。
期待しちゃおう。 -
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鍼灸の作用機序は現代科学で明らかになっていない。
これを、非科学的だからと取るか、または一種の哲学や思想であり医学ではないと取るか、それともあくまで現代科学では明らかになっていないが経験科学によって支えられていると考えるか。様々な捉え方があり、特にわが国では前者二つの受け取り方が大勢を占め、その結果鍼灸の生涯受診率が6%という結果になっているわけである。
しかしながら意外や欧州、例えばドイツでは日本よりはるかに鍼灸治療を医療のチョイスにいれている人が日本の倍ほどもいたりする。
この本は皮膚についての本であるが、最後一章を割いて鍼灸治療について書かれている。
なぜ鍼灸治療では皮膚に鍼やお灸をすることで内臓疾患にアプローチできると考えているのか。ただの迷妄か、それとも皮膚刺激にそのような効果があるのか?
現代科学と伝統医療の間に横たわる深い溝に頭を悩ませたことがある人には一読を勧めたい、そんな本である。 -
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[ 内容 ]
今、皮膚科学が長足の進歩を遂げている。
医療や美容からのアプローチだけではうかがいしれない、皮膚メカニズムが次々に解明されつつあるのだ。
「年をとるとしわができるのはどうして」、「お肌によい物質は何か」といった身近なトピックから、「皮膚が脳と同じ機能を担っているとしたら」というにわかには信じられない働きにまで本書は迫っていく。
[ 目次 ]
第1章 皮膚の様々な様相
第2章 表皮と角層
第3章 皮膚は自律している
第4章 皮膚が感じる
第5章 身体と皮膚
第6章 情報処理システム
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
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☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
皮膚を科学している。健康な人間にとって皮膚とは空気のようなものだろう。しかし、その皮膚をひとつの臓器として考察し、皮膚のもつさまざまな機能を紹介している。
脳も感覚器も皮膚も外胚葉由来の臓器である。脳を持つ一部の高等生命体以外は、皮膚で考えているのではないだろうか?このクエスチョンは、斬新だ。我々を新しい思考の渦へと誘ってくれる。
某有名化粧品メーカーの研究者であり、アトピー患者でもある著者の語り口は、非常に軽快でユーモアに富んでいます。著者自身、鍼灸治療でアトピーの症状が改善された経験があり、東洋医学や鍼灸治療についての考察もあるので、おもしろいですよ。 -
Posted by ブクログ
発生の段階で、脳や脊髄、目、鼻、口、耳は外肺葉がくぼんで形成され、残った部分が皮膚の表皮になるため、神経系、感覚器、皮膚は出自が同じ。
表皮細胞のケラチノサイトは様々なホルモンを合成し、その受容体も存在する。神経細胞と同じ電位のオン・オフの状態もある。表皮が興奮状態だとバリア機能の回復が遅れ、抑制されると回復が促進され、肌荒れも治る。
アトピー性皮膚炎には海水浴療法があり、美容には、にがり療法がある(海水からナトリウムを除いたもので、主成分はマグネシウム塩とカルシウム塩)。
グルーミングによって、快楽ホルモンであるβエンドルフィンが放出される。