坪内祐三のレビュー一覧
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先に進むほど面白くなっていくので一気読みした。
リアルな言葉としての文学を探して。江藤淳の庭師、書評をめぐる大江健三郎と平野謙のやりとりが印象的。前者は文字/本の外部にも存在する文学を、後者はかつて書評がどれほど真剣に書かれていたかを示す。たった一箇所の誤読でも責任をとって書評委員を辞める、それほどの緊張感で書評が書かれていた時代があった。
終盤、怒りが増していく。閉じた業界内でのポトラッチ的書評や、「正しい」が「正確」ではないジャーナリズムの言葉に対して。そこからヤスケン、暴力被害、実家の競売と展開が加速していく様子はまるで破滅型の私小説のよう。 -
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坪内氏と私は同い歳、一浪して早大に入学したのも同じ(氏は文学部、私は商学部)。地方から出てきた私は4年間東京で生活したが、東京の雰囲気に馴染めずそそくさと故郷に舞い戻ってきてしまった。早大商学部から文学部へ行くには道路を渡って行った記憶があるのだが、ひょっとすると学生時代に氏とすれ違っていたかも知れない。私の入学と前後して山倉和博氏(1955年生)は巨人に入団し、後に阪神優勝の立役者の一人岡田彰布(1957年生)はキャンパスで本人を見かけた。中井貴恵(1957年生)嬢は第二文学部、石井めぐみ(1958年生)嬢は教育学部。入学当時この四人の早大生のことは知っていた。調べてみると、同時期に早大に在
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1999年刊行のちくま文庫が復刊。上林本人はもちろん、編集した坪内祐三(またの名をスタンレー鈴木)も既に亡い。新版解説として青柳いづみこが文章をよせているが(pp328-333)、いつものとおり、おじいさんの青柳瑞穂とその周辺の文士の酒飲み話がダラダラ書かれているだけ。「そんな背景もあってか、上林の『禁酒宣言』は、酒よりもむしろ酒場の女性たちに焦点を当てて読んでみたくなる」(p330)というところまでは同感だけど、いづみこさんは、上林側に立って、酒場の女たちに向ける上林の視線と感情に共感している。青柳瑞穂も上林暁も、坪内祐三も、彼らに共感するいづみこさんも、ほんとうにお酒が好きなのかなあ?
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上林暁、坪内祐三・編『新版 禁酒宣言 上林暁・酒場小説集』ちくま文庫。
現代に於いては、デカダンスで力のある小説家は最早絶滅危惧種であるに違いない。巷にはラノベ小説やBL小説、エンタメ小説、警察小説が溢れるばかりで、何かを考えさせるような純文学小説などは余り読む機会が無い。これは作家や出版社だけの問題では無く、自分も含めて、読む側に大いに問題がありそうだ。
本作は、そんな希少な作家であり、1980年に逝去した上林暁の酒場にまつわる短編13編を集めた私小説の短編集である。大方の短編の主人公が武智という小説家であり、恐らく自身のことなのだろう。
『女の懸命』。昭和の戦後間も無い頃、女性を囲 -
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2020年ショックだったことのひとつに本書の著者坪内祐三氏とCMプランナー岡康道氏のふたりの死がある。61歳と63の早逝。あまりにも若い。若すぎる。その坪内祐三氏が亡くなってはや1年。なんと言っても死のショックを受けているのは、ご本人のはず。
本書のあとがきで、 中野翠さんが明かされているのがそれを物語る。告別式当日は著者自らチケットを手配、中野翠さんと泉麻人さんらと連れ立って両国に大相撲初場所の観戦日だったと。
著者は大相撲の開催を告げる触れ太鼓を聞きたさに、初日前日にはわざわざ湯島の馴染みの居酒屋へ足を運ぶほどの好角家だっただけに、気の置けない仲間との相撲見物で、酒を飲りつつウンチクを -
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2009年から2015年までに連載されたコラム。
このくらいの古さだと、大きな出来事は忘れていないし、実はそういうことだったのかという新たな発見もあって、面白かった。
3.11の時、私も小沢一郎は何をしているんだろうと確かに思ったんだよね。
今こそ政治家として地元のために汗を流すときじゃないの?って。
そうか。
人より早く情報を手に入れられるからこそ、身を隠していたというわけか。
それに引き換え、小沢一郎の(当時の)奥さんの男気のあること。
こういう時に人間性が出るのだねえ。
昨年突然ノーベル文学賞などを受賞して時の人になったボブ・ディラン。
結構頻繁に日本でもライブをやっていたことも -
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ネタバレ月刊誌に連載されたコラム。
2003年から2008年まで。
ああ、そんなことあったなあと思い出せるくらいの過去。
例えばプロ野球のオリックスと近鉄が合併して、パリーグが5球団で行われようとしたこと。
朝青龍が巡業を休んでおきながらモンゴルでサッカーに興じたこと。
スーパーの店頭から納豆が消えたこと。
などなど。
そして、70%以上の支持率で総理についた一年後、あらゆるメディアで批判されている安倍晋三。(そこまででしたっけ?)
ついこの間、日垣隆で過去を振り返ったけれど、別な人の目で見る過去はまた違った様相を見せる。
あらゆる方向にケンカを売る日垣隆に比べて、坪内祐三の態度は大人だ。
し -
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新規。一つ前の旋毛曲がりの本の続き出てないのかなと坪内祐三の名前で検索したら編者の方で引っ掛かったので買ってみた。やっぱりゲームにつられて。作者の名前だけは聞いたことがあるけれど文章読んだの初めてだ。
安吾の『堕落論』批評がずばずばしていて面白かった。いかにも彼と同じ時代を生きた人だから出てくる言葉、という感じがする。そして「文壇の崩壊」なんて言いつつ文学好きで好きでしょうがないのが伝わってくる。後半はなるほど軽批評家って文章。
リアルタイムの評価って面白いなあ。数十年後に今のどの小説が残って読まれてるんだろう。。私は今の文芸批評に触れることがほぼないけれどそういうのも残ってこんな形で読まれた -
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『週刊文春』で長期連載中の『文庫本を狙え!』の1996年の第1回から2000年の第171回までを収録。毎月刊行される文庫本の中から毎週1冊のお勧め文庫を紹介するという企画である。本の内容の紹介だけに留まらず、その背景や著者に纏わる蘊蓄も紹介されているので、興味深く読むことが出来た。
本書では、どちらかというとベストセラーには成り得ないが、読んでおきたい古典的な名作やサブカルもの、はたまた漫画までが紹介されている。従い、おのずと普段は余り手を出さない出版社が多い。また、現在は絶版となり入手困難な文庫本が目につく。悲しいことに、年々、文庫本の刊行から絶版までのサイクルは短くなっているようで、まっ -
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本・古本・神保町好きで有名な評論家・エッセイストの坪内祐三が、自らの半生とそのときどきに読んできた新書百冊を重ねて振り返った“読書半生記”である。
本書では、吉川幸次郎/三好達治『新唐詩選』、渡部昇一『知的生活の方法』、丸山真男『日本の思想』、E.H.カー『歴史とは何か』、加藤周一『羊の歌』のようなロングセラーも紹介されてはいるが、絶版となっているもの、当時でこそ読む価値の大きかった(であろう)ものも少なくなく、間違っても新書本のブックガイドとしてではなく、坪内氏がこれらの新書にどのように出会い、どのように読んだのかを、当時の世相とともに振り返るものとして読まれ得るものである。
私は坪内氏より -
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