柳沢由実子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
社会情勢を軸に描くシリーズだが、本作品はその特徴が色濃くなっている。スウェーデンが舞台なのだが、南アフリカの人種差別が物語の根底にあるので、序盤は相当な違和感があった。視点もスウェーデン側と南アフリカ側に分かれており、両者はなかなか交わろうとしない。しかしストーリーの拡がりと比例するように南アフリカの人種問題がじわじわと効いてきて、国際謀略という派手なテーマに取って代わろうとする確かな感覚があった。
今回のヴァランダーは気の毒としか言いようがない。事件への巻き込まれ方が半端ではないので、それが逆に不自然にも見えたが、彼の思考が徐々に病んでいくさまは説得力があったと思う。インパクトの強いキャラが