佐々木徹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「大いなる遺産」が誰からの贈り物なのか、物語が展開していく。
友情、恋愛、ユーモア、ミステリなど、あらゆるテーマを内包していてかつ読みやすく、面白い。
テーマの豊富さに加えて、掌を返す人と変わらない人、都会と田舎、金持ちと貧乏、さまざまな対比が織り込まれていて、何を軸に読み進めるかによっても感じ方が変わるように思う。
あとはやっぱりキャラクターが立ってるなぁと思う。かなりの人数が登場するがみんなそれぞれに個性的で、好きな登場人物がわかれそうだなと思った。ウェミックが良い。
345
「今日は痛みはひどいですか?」
「文句は言わねぇよ、ピップ」
「ほんとに一度も言いませんね」
-
Posted by ブクログ
序盤の純粋無垢なピップと、エステラに馬鹿にされて自分の生活を恥じるようになるピップ、莫大な遺産を手にして以前の生活環境を見下すピップの様子が描かれる。
新しい世界を知って興味や憧れを持った時、自分の慣れ親しんできた世界を相対化して比較検討するための尺度を得る。これまでは測るという発想そのものがなかったが、突然自分の身の回りを測るようになる。(自分にとっては)新鮮な外部を基準にしているのでそれらはひどく下品で価値のないものに思える。憧れに向かっているというだけで自分がなんだか崇高に思えて、同時に周りの人がその尺度を持っていないことがもったいないと思うようになり、自分の尺度を押し付けようとしてし -
-
Posted by ブクログ
・初代ウルトラマンが好きで、三回変化したウルトラマンのマスクが判別できて、スーツアクターがセブンのアマギ隊員ってことぐらいを知ってる人なら楽しめる。さらにマニア度が高い人ほど、本書の面白みを味わえるだろう。
・ウルトラマンを、世界観やら社会風刺やらという側面から捉えた著作は数多いが、編著者が自負する通り、戦いそのものにフォーカスをあてたものは、これまでになかったように思う。幼少期に視聴していた頃は、そのシーンこそが楽しみであったはずなのに、虚をつかれた感じだ。
・タイトル通り、名勝負が10番、取り上げられているわけだが、戦いそのものに焦点をあてているので、その顔ぶれには「?」と感じるものも -
-
-
-
-
Posted by ブクログ
大長編四分冊中の三冊目。
二冊目で失明したかに見えた主人公エスターの視力は戻ったものの、感染症の後遺症で美貌は失われる。しかし、周りの人たちは一貫して優しい。特に、荒涼館の主人ジャーンダイスに至っては、プロポーズするくらいだ。
リチャード・カーストンは相変わらず最低の甘ちゃんで周りの人を悪い方へ引き摺り回す。リチャードとスキンポールの人格未熟者コンビには唖然とする場面が多いが、スキンポールに奥さんと三人の娘がいると知り、更に驚く。
レディ・デッドロックの醜聞を握った弁護士タルキングホーンは、準男爵夫人を脅すのかと思ったら、そうはならず、逆に殺される、という驚きの展開。最終巻はどんな展開に -
-
Posted by ブクログ
大長編四冊中の二冊目。物語はゆっくりと加速していく感じ。
古道具屋クルックの下宿人・代筆屋ネモの正体を複数筋のひとたち(“謎の女性”や弁護士事務所員ガッピー)が探る中、主人公エスターは浮浪少年ジョー・若年メイドチャーリー経由で感染症に罹って失明する(したのか?)。
準男爵夫人レディ・デッドロックと他の登場人物との間の意外な関係が明らかになって、、と少々推理小説的な展開も重なって、後半どういう展開が待っているのか楽しみだ。
エスターが一人称で語る章のエスターによる人間描写はくすりと笑える箇所が多く、レフ・トルストイの筆に似た味わいだった。
-
Posted by ブクログ
村上春樹の短篇集『東京奇譚集』の中の『偶然の旅人』の中に、この作品が印象的に登場する。ディケンズは『二都物語』しか読んだことがなく、何となく心に引っ掛かっていたので手に取った。
ザ・長編を読み続けられるか否かの基準で言うと、『カラマーゾフの兄弟』と『失われた時を求めて』の間。(大概の作品はこの間に入ると思うけど)
舞台は19世紀半ばのロンドン周辺。いろんな階級、いろんな人格の人物が登場するが、1番いけすかないのは、リチャード・カーストン。中二病が拗れたヤツのイギリス版。こういう人物を見ると、革命は正しかったのかなと思ってしまう。
19世紀の古典を読むと、人類は、テクノロジーを別にすれば、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ推理小説というジャンルの歴史を辿る。
まだ推理小説を誰も知らない頃に書かれた作品たちがだんだんと推理小説っぽくなっていく。謎があって、探偵がいて、推理する。ポーの書評にあるように、フェアだとか、伏線がちゃんとしているかとか、そういうのもまだ整っていない。ポーは結局謎を解き明かすより、謎を謎のままにしておく方をよしとしたと解説にはあるが、その他のおびただしい人たちが「犯罪(あるいは何らかの事件)が発生し、それを探偵役の人物(素人もしくは玄人)が論理的な推理を働かせて解決するプロセスを主眼とした物語」(p.3)である推理小説を作り上げてくれてよかったと思う。だって面白いもん。もちろん解かれない謎