あらすじ
「荒涼館からどんどんひとがいなくなるね」──エイダとリチャードが去った屋敷を守るエスター.彼女を殺人事件捜査のため深夜連れ出すバケット警部.ジャーンダイス裁判も終末が近づき,二つの視点で交互に語られた物語はついに大団円となる.レトリックを駆使し,ユーモアと批判を込め,英国社会全体を描くディケンズ芸術の頂点.(全四冊完結)
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Posted by ブクログ
村上春樹の短篇集『東京奇譚集』の中の『偶然の旅人』の中に、この作品が印象的に登場する。ディケンズは『二都物語』しか読んだことがなく、何となく心に引っ掛かっていたので手に取った。(第一巻感想冒頭再録)
文庫本分厚目で四冊。途中違う本も読んだので、2ヶ月掛けて読んだ。
いろんな人が出てきて、行動の真意が後で分かったりするので、評価も途中で変わったが、読み終わってからいいひと順に並べるとこんな感じか
男性: アラン・ウッドコート、ジョン・ジャーンダイス、ジョージ・ラウンスウェル、マシュー・バグネット、ロレンス・ボイソーン、プリンス・ダーヴィドロップ、コウヴィンシズ、だいぶ空いて タルキングホーン、ハロルド・スキンポール、スモールウィード、ウィリアム・ガッピー、リチャード・カーストン(どんなに男前でも、誰にも幸せを与えられない拗れたやつ)
女性: エスター・サマソン、チャーリー(コウヴィンシズの娘)、オノリア・デッドロック、エイダ・クレア、キャディー、ジェニー(煉瓦職人の妻)、ジェリビー夫人(アフリカ慈善家)、レイチェル夫人(チャドバンド夫人)、バーバリー、スナグズビー夫人、オルタンス
物語の最初から最後まで登場する「ジャーンダイス対ジャーンダイス訴訟」は、結局訴訟対象の資産全額が訴訟費用として食い潰されて、訴えの利益が消滅したが故に結審する。ゲームの設計が悪いと(弁護士以外)誰も得をしない、という意味で大変興味深かった。行動経済学の「20ドル札オークション実験」を思い出した。紛争解決手段としては、和解が一番高等だ、ということだろう。
ジョン・ジャーンダイスが最後にエスターとの婚約を破棄する場面での、「荒涼館の女主人になって欲しい」という自分のプロポーズの際の約束を守る形で、ウッドコートに花嫁と新居(第二の荒涼館)をプレゼントし自分は身を引く、という振る舞いはとてもスマートだった。