小出裕章のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ3.11震災による福島原発の破局的状況を抱える現在において、本書がベストセラーとなるのは当然すぎることだろう。とにかく解りやすい、一気呵成に読める。原発破局の実態が、客観的事実に裏づけられつつ簡潔明瞭に解き明かされいくコンパクトな全7章182頁。
終盤の6章で取り上げられる、浜岡原発や上関原発、六カ所村の再処理施設、高速増殖炉もんじゅ等の問題点などにいたっては、その終末的実態にただもう暗澹とするほかない。
初版三刷、いま話題の本ではあるが、さらに広く読まれることを期す。
負の遺産//原発 -2011.07.20記
<放射能とはどういうものか>
◇放射能の怖さは、DNAを破壊し遺伝子異常を引き起こすこと。
JCO臨界事故では、被曝者の細胞が再生されず、全身が焼けただれるようにして亡くなった。
◇今回の事故で、すでに原爆80発分の放射性物質が飛び出している。
いま問題なのは内部被曝。ベ-タ線やアルファ線は、進む距離は短いがエネルギ-が大きい。
体内の細胞に付着すると、そのごく近傍の細胞に継続的に影響を与える。
<放射能汚染から身を守るには>
◇人体への影響はLNTモデル-=線量の増加に伴い危険性が増える-で説明される。
原発推進派はこれを認めず、一定量以下の被曝なら影響ゼロとの立場を取る。
だが、人体に影響のない被曝はない。最近では低線量被曝がむしろ危険度が高い、との研究も出ている。
◇事故での被曝を防ぐには、まず事故の場所から遠ざかること。
風向きと直角の方向に逃げる。雨を避ける装備やマスクなども必要。
国の発表は過小評価なので、ネットなどで情報ル-ト開拓をする必要。
◇文科省の「20ミリSvまで安全」は狂気。
表土除去など被曝を少しでも減らす方策が必要だ。
汚染されたゴミは原発周辺に送るしかない。また周辺の農地はすでに再生不能。気の毒だが、もう住民は元に戻れない。
◇放射線は若い人ほど影響を受け、50歳以上ではガン死の可能性が劇的に下がる。
汚染された食物は隠さず流通させた上で、大人が引き受けるべき。
◇原発を容認した大人にも責任があるのだから、被害を福島だけに押し付けてはならない。
周辺住民の重荷は社会全体が共有し、支える必要がある。
<原発の“常識”は非常識>
◇原発の運転により、日本国内にある死の灰は広島型原爆の80万倍に及ぶ。
国は原発の危険性を分かっていたので、原賠法で電力会社の賠償責任の上限を設定。電力会社に建設を促した。
◇電力会社の利潤は、市場原理ではなく資産で決まる。
原発は作れば作るほど資産になるから、電力会社は建設をやめない。一方で電力料金は高騰する。
◇「原発は低コスト」は嘘。
再処理や開発費用を加えると火力より高い。ウランの採掘や濃縮で多量のCO2も排出。
さらに、発生した熱の3分の2は水に伝わり、海に捨てている。こんな原発のどこがクリ-ンなのか。
<原子力は未来のエネルギ-か?>
◇化石燃料枯渇への恐怖が原発推進を容認してきた。
だが石油可採年数は増加。むしろウランの方が先に枯渇する。
<「石油がダメだから原発」は誤り>
◇資源不足を解決するべく始めた核燃料サイクル計画も失敗続き。
もんじゅは1兆円を注ぎ込んで1kwも発電していない。実用化は無理だろう。
◇プルトニウムを処理するために、MOX燃料対応の原発-大間原発-を建設中だ。
原発の問題をクリアするためにまた原発。悪循環から抜け出せない。
<地震列島日本に原発を建ててはいけない>
◇地震多発地域に原発を54基も作ったのは日本だけだ。
浜岡原発は、必ず起きる東海地震の想定のど真ん中。
今回の停止を、津波対策のみならず全原発の安全対策検証の契機にするべき。
◇六ヶ所村の核燃料再処理工場には大量の使用済み燃料が集まる。
本格稼働すれば日常的に放射性物質を廃棄することに。コスト減でフィルタも取り付けられない。
◇高速増殖炉もんじゅの冷却材はナトリウム。空気に触れると火災が発生する。
水に触れても爆発するから、消防車も使えない。地震で施設が破損したらすべてが終わる。
<原子力に未来はない>
◇原発は、先進国では縮小傾向にある産業。その上、日本は原発技術の後進国だ。原発は止めなければいけない。
実は全原発を止めても、火力の稼働を7割-通常5割-にするだけで必要量は賄える。
◇核のゴミは、六ヶ所村では300年監視が必要という。
もう、原発で得たエネルギ-より、処理のデメリットの方が大きいではないか。
◇代替エネルギ-の開発と普及を考えよう。
日本はかつて太陽光発電では世界トップの技術を誇った。
一方で、エネルギ-大量消費を前提とした生活を考え直す必要がある。 -
Posted by ブクログ
原発用燃料の再処理施設に関する著作です。福一事故により明らかにされた原発自体の危険性は周知されたように思いますが、再処理工場についても危険であることが示されています。放射性物質を取り扱うこと、その施設の地勢的な危険、国も含めた管理の脆弱性について指摘されています。電力会社という民間企業が設置してきているので、ある程度経済的に合理的な手法で判断され設置されてきたと思っていましたが、色々な利権の中で設置され技術的、学術的見解も捻じ曲げられてしまうことに驚いてしまいます。また事故を起こしてしまえばその結果を享受するのは、子供たちであることを思えば、今すぐやめていくことに躊躇いを感じませんでした。
-
Posted by ブクログ
京都大学原子炉実験所の助教である著者が、原子力の専門家の立場から原発の危険性を訴えた本。
東北大震災後、テレビのワイドショーなどで福島第一原発についてコメントを発信する姿をよく見ていた。。
偉い大学の先生が、こんなにあからさまに「反原発」を発言して良いのだろうか?と思っていたけれど、ワイドショーなどの細切れの発言よりも、しっかりと解説してくれていて、納得。
ロシアのチュルノブイリの原発事故や、東海村のJOC臨界事故の例を挙げて、それでもなお原発を推進してきた国や電力会社の、認識の甘さや癒着ぶり、無策を糾弾している。
そして、福島の原発事故以後も原発を動かし続けようとする国や電力会社に警笛を鳴らしている。
高速増殖炉「もんじゅ」や六ヶ所村の核燃料リサイクル施設など、福島第一原発よりももっと危険度の高い核施設がある。
人間の命よりも優先されるものはないのだから、福島原発事故を教訓に、脱原発にシフトしなければならないと実感した。 -
Posted by ブクログ
脱原発のカリスマ小出氏と、放射線治療の専門家である西尾氏の対談形式による本。西尾氏による、内部被ばくに関する説明は理を得ていると感じた。
西尾氏は、内部被ばくも含めた全ての被ばくを全身で均質的に被ばくする前提で議論する事に対して、実際の放射線治療で放射線源が局所的に露出される患部だけに作用されることを例に出して反論する。すなわち、原発事故由来の放射性物質が実際に体内に摂取される場合には、その物質が直接的に接する箇所が局所的に被ばくするのであって全身均一的にモデル化するのは間違いだ、としている。
放射性廃棄物の処理方法方法については、両著者は未解決との主張をとる。また、西尾氏は全国150ヶ所の医療機関に配備されている小型加速器「サイクロトロン」が、いずれ耐用年数を過ぎたら放射性廃棄物となることについても問題提起している。
本書が言及する内容の多くは国内イシューであり、新興国で多くの原発建設が予定されていることや、特に、中国の石炭火力発電を原子力発電に転換することで大気汚染が軽減されるメリットがある点などには言及されていないことは物足りない。 -
購入済み
目を背けては生きていけない
原発事故に対する世間の関心が薄れていく今日、現実の問題として向かい合っていく必要があると思った。
本書が出版されてから二年が経ち政権も民主から自民に移り、さらに原発再稼働に拍車がかかっているように見える昨今、有権者の大部分も再稼働容認に傾斜してきているように見える。
子供達の世代にバトンを渡す前に我々の世代がなすべきことは何か真剣に考え行動に移すべきだと思った。 -
Posted by ブクログ
やっぱり、即ゼロか? 「原発はいらない」小出裕章
フクシマ原発事故から3年。政府産業界は再稼働の流れである。
新聞、TV、ネットの情報から考えて原発即刻ゼロがベストであるが、即刻ゼロは日本の経済力国力を弱体化させ国の国防安全保障も脅かして国が滅ぶ可能性もあるので理想論である。それが私の考えであったが、マスコミ情報以外にも少しは勉強しようと本著と「原発ホワイトアウト・若杉冽」を読んで「即刻ゼロ」へと考えが変わりつつある。
著者は原子力原発に夢を抱いて研究者になったがその危険性に気づき40年も前から原発廃絶を訴えてきた。しかし、フクシマ原発事故が起こってしまい自責と慚愧の念でこの本を書いたという。
著者の主張は
「原発を即ゼロにしても火力発電をフル稼働すれば、原発分は十分にまかなえる」
つまり、経済力も国力も弱体化しない。
「原発は化石燃料(石炭、石油)と比べて二酸化炭素の放出が少ないので地球温暖化への悪影響(地球温暖化は二酸化炭素放出だけが原因ではないし、温暖化が本当に悪いのかという論議もある)が少ないというのは真っ赤な嘘で、ウラン採掘から製錬、濃縮、加工、運転の過程で膨大な二酸化炭素を放出する。二酸化炭素を放出しないのは発電時だけである。化石燃料に比べても原発はエコなエネルギーではない。エコどころか、放射性物質という究極の毒物製造装置である。」
「建設から濃縮、加工、地区交付金、使用済み燃料の再処理などを含めた原発の実際のコストは火力・水力にくらべて高い。」
「風力、太陽光などの自然再生エネルギーにこだわりすぎると、原発は生き延びてしまう。
新エネルギーは今すぐ大きな電源にはなりそうもない。研究開発に長期的な時間がかかる。急激にやると環境に大きな悪影響を及ぼす可能性もある。自然再生エネルギーが実用化できるまでの間は、化石燃料を使った火力発電でやるのが一番である。自然再生エネルギーでなければダメだとこだわりすぎると、それが実現するまでは原発を認めるということになりかねない。原発の即刻廃絶のためには、火力発電をフル稼働させることに尽きる。」
「原発がゼロになってとしても今まで数十年の原発稼働で蓄積した核廃棄物は膨大であり、長期間にわたる原発停止作業と廃棄物処理に対応できる原発技術者の教育養成は国策として必要である。」
原発即刻ゼロの場合は、輸入する石油料金の増大、電気料金の高騰(家庭用で現在の20数円/kwから30〜40円/kwになるいう試算もあるが本当か?)による企業の海外流出国内空洞化などによる国家的経済損失が年間数兆円という試算もあり、原発の停止廃棄物処理の膨大な費用をどこから捻出するのかという話もある。
出来る限り早い時期に脱原発から即刻原発ゼロ!と考えが変わりつつあるが、もう少し再稼働推進の意見情報もチェックして考えることにする。
家族、友人などの私生活の範囲では感性、感情で判断しても致命的な破局に繫がることは防ぎようがあるが、軍事エネルギー国際政治などの領域は感性感情で判断するのは危険すぎる!きれいごとは言わず善悪でもなく、現実を直視するのみ!