あらすじ
「原子力発電所の事故を未然に防ぎたい」と41年間、切に願ってきた信念の科学者の叫びは、届かぬまま。日本政府の誤った判断で、被害は必要以上に拡大してしまったが、原発の事故による電力の不足や電気料金の高騰はありえない。では、なぜ東電と政府は平気でウソをつくのか?次に危ないのはどこ?騙された人には、騙された責任がある。日本国民が今知るべき脱原発の真実が、この一冊に。
西日本も汚染されている。文科省はなぜデータを公表しない?/「SPEEDIは避難の役に立たない」班目発言をどう受け止めればいい?/原発は電力会社が儲かるだけ。やめれば電気代は下がる?/緩すぎるコメの規制基準値。子どもに食べさせて大丈夫?ほか
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Posted by ブクログ
著者は京都大学の原子炉実験所助教である。助教というのは序列でいえば講師より下だ。著者はずっと原発に反対していた為、原子力のアカデミズムの中では当然出世は不可能だ。しかし、今まさに著者が危惧していた事態となったわけであり、従って原子力御用学者やマスコミが垂れ流してきた、「原子力は安価(火力・水力より高い)でクリーンで安全(今でもそう主張する人が多い)なエネルギー」というデマに対して、ほぼそれを受け入れてきた国民にも責任がある訳だ。もはやこうなってしまった以上日本は放射能と共に暮らしていかなければならない国となったため、国内で採れる全ての食品に対して放射線検査を実施し、放射線量の低い食品のみ子供は食べるような体制を作る必要があると著者は言う。しかし現在のようないい加減な検査体制(魚は頭と内臓を取り除いたものを検査している)、諸外国に比べゆるすぎる基準、未だに放射線を封じ込められないばかりか、原子炉内の様子さえ正確に把握できない東京電力・・・すべてこれからの日本に深刻な影響を及ぼすであろう。福島の処理すら満足に進められていないのに、大飯原発を再稼動する決定は実に迅速であった。原発マネーが未だに日本人を奴隷にしている。
Posted by ブクログ
大人は汚染されたものを食べるべき、というのはチョット賛同はできないのですが。。
でも、その他のことは小出先生の言っていることはもっとも。
騙された人も責任割合に応じて責任を取るというのは納得です。しかし、一番大事なことは、「騙されたらもう二度と騙されてはいけない」ということです。
昨年発刊された原発関連の本(小出先生のものに限らず)は若干古いデータになってしまっていますので、2012年の春の今この時点で一番新しいデータをふまえての内容になっているので、おすすめです。
わたしはこれを実家の父親に送ろうと思います。
目を背けては生きていけない
原発事故に対する世間の関心が薄れていく今日、現実の問題として向かい合っていく必要があると思った。
本書が出版されてから二年が経ち政権も民主から自民に移り、さらに原発再稼働に拍車がかかっているように見える昨今、有権者の大部分も再稼働容認に傾斜してきているように見える。
子供達の世代にバトンを渡す前に我々の世代がなすべきことは何か真剣に考え行動に移すべきだと思った。
Posted by ブクログ
騙された人には、騙された責任がある。経済的なことをはじめとして、あらゆる不利益をこうむりつつも、脱原発を訴え続けた信念の学者である筆者が説く日本国民が今知るべき脱原発の真実がここには記されています。
これを書いている現在、民主党から自民党への大規模な政権交代が起こり、本書が記されている民主党政権は跡形もなく瓦解しておりますが、原発問題に関することは、ほぼ一切焦点にはされず、今現在も、そしてこれからも、大きな問題として横たわっていくことでしょう。本書は3.11以降、その発言が俄然注目される筆者が、経済的なことをはじめとするあらゆる不利益をこうむりつつも、「原子力発電所の事故を未然に防ぎたい」と41年間、切に願ってきた信念の科学者の叫びは、届かぬままレベル7というチェルノブイリ原発と同じランクに位置づけられる原発事故を迎えることになったのです。
他の文献を見ていても、日本政府の混乱振りはすさまじく、当時、彼らの判断ミスや、隠してきた情報のおかげで、余計な被害をこうむってしまったということは現在では常識なのかもしれませんが、まだまだ明らかになっていない『事実』は明るみになっていないかと思われます。ここでは政府、東電のみならず、『騙された』我々にも責任がある、とも説いております。この中に書かれていることは、今の日本人が原発事故に関して疑問に感じていることがほぼすべて明らかになっていて、その中には目を背けたくなるようなことが少なくありません。
ただ、今後も何十年と『事故処理』や『放射能』と付き合っていかざるを得なくなっているからこそ、読んでみる価値はあるかと思われます。
Posted by ブクログ
ご本人が書かれたと言うよりは、インタビューを文字にしたというのが実際のところだと思います。内容は少なめで不満を感じる方も居るかと思いますが、数時間で読めるので読書が苦手な方にもお薦めです。極めて分かり易い言葉を使われており、ご本人の率直な人柄が表れていて信頼感がありとても好感が持てます。唯々いまの原発を巡る実際の所は、まだまだ予断を許さない状況であることがひた隠しにされ続けており、これからの世代の為にも真剣に考え続ける必要がある事を実感したしだいです。
Posted by ブクログ
小出先生は福島第一原発のレベル7という究極の大事故以来様々なメディアを通じて、デタラメとも言えるような「安全情報」をタレ流し続けた政府や御用学者のふざけた解説をよそに。事故当時から誠実に正直にそして素人の私でも理解しやすく、複雑な原子力発電所の構造やそこで起きている事実(データ)を踏まえての今後の見通し、そして難解な核反応の理論や放射性物質の性質とその危険度を丁寧にネットの中で科学者(専門家)として冷静沈着な言葉で発信してくれた。そんな彼のシビアで合理的な解説は、時に私達の心を揺らし、そして彼の主張に深く共感させられ今日に至っている。今回、新たに出版したこの本は、はからずも騙されてしまった私達の責任の取り方を、この国の善良な国民ひとり一人がしっかりと考え行動し、放射性物質というやっかいなモノと共に生きて行く覚悟を私達に教えてくれている。
Posted by ブクログ
原子力の研究者でありながら反原発を唱える姿勢には共感するが、汚染された食物を責任に応じて食べると声高にいうのは、あまり科学的でないような・・・。