高橋睦郎のレビュー一覧
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漢詩百首
日本語を豊かに
中公新書 1891
著:高橋 睦郎
出版社:中央公論新社
漢詩100首のうち、40首は、日本人の漢詩である
論語の子罕編 から始まる。詩経が漢詩の出発点で、詩経を編集したのが、孔子とある。だから、論語の一節が紹介されている。そして、最後は、毛沢東。漢詩と政治というのは、関係が深いようだ。
1詩人に1首という感じで、淡々と紹介が続いていく。自分としては、李白、杜甫の詩が複数あったらいいとは感じた。
日本人の漢詩の中で、とりわけ、目立つのは、乃木静堂(希典)、漢詩とはほとばしる感情を表現するにふさわしい
皇師百万 強虜を征す 野戦攻城 屍山を成す
愧ず我 -
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ネットでHeveneseのラストトークを見ていて、本書に言及があったので購入。令和の語源である万葉集をほとんど知らなかったので、とても興味深く読んだ。8人の著者の、改元をきっかけに書かれた万葉集に関するエッセイ集。
鈴木大拙は「日本人の霊性」の中で万葉集を「稚拙」だとか「幼稚だ」とか、あまり良い評価をしていなかった。しかしながら本書から万葉集の他の歌集との違いがわかり、納得した。
曰く、万葉集には中近東的な雰囲気がある、とか、万葉集は文字ではなく大和言葉の響きを口にうたうための歌集である、とかなどと言うように書かれていた。また万葉集には代作という表現があるとの事。これについては日本人が原作を -
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文学や編集に携わる8名の手による万葉集エッセイ集、といえばよいか。
出だしから中西進氏による『旧約聖書』と『万葉集』のリンクが展開され、度肝を抜かれる。良き文学とはほかの文学と共鳴するものとはいうが、まさかそんなところと響き合うとは。しかも万葉集の第一人者の一人中西進氏からそんな。おみそれしました。
川合康三氏の「山上憶良と中国の詩」、高橋睦郎氏の「いや重く謎」あたりは若干硬めの印象を受けるかもしれないが、基本的には一流の文化人たちによる平易な万葉集エッセイである。いや平易と言ったが完全に万葉集知りませーん何書いてあるんですかーな人には向かないかもしれない。ちょっとは齧った人向け。だが、ちょっ -
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ネタバレ見開き2ページに歌と作者、そして意訳とその歌の背景や作者の生涯についてが書かれている。
この本の特色は、なんといっても意訳の部分。
教科書で習ったものとは多分全然違う解釈の歌が多い。
歌に詠まれているものだけを見てもわからない。
そこには恋愛模様だけではなく、歴史との対話あり、今現在の政争の顛末ありと、実にドロドロと人間臭いのだ、という。
それは、歌は詠んだ人のものでありながら、あとからそれを読んだ人の解釈を付け足して、どんどん膨らませていくものであるという著者の主張である。
世のなかはつねにもがもな渚こぐあまの小舟の綱手かなしも
鎌倉右大臣=源実朝の歌
“男女の仲にはじまって世は無常とい -
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選者定家を第二の作者、自らを第三の作者とし、明治以降の海外の詩歌など多くの知見も援用して、
「後読み」によりこの詞花集を読み解いていこうというもの。
百首の現代語訳は、詞書や出典元の勅撰集の配列などを参照にした詳しく行き届いたもの。
個々の解釈では、詩人らしい深読みが多く、踏み外しであってもまた興味深い。
業平『ちはやぶる』では「血やは降る」と読み替え、祖父平城上皇の寵姫藤原薬子の血と
政変の記憶が「からくれない」に込められているとし、
良暹『さびしさに』は優れた抽象詩・思想詩であり、比べれば西行・寂蓮・定家の「三夕の歌」
は書割のようだと評し、
基俊『契りおきし』は受け取った相手がじつに -
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百人一首について、お勉強のために読む。
ひとつひとつの歌について、著者なりの丁寧な「読み」がされており、歌の解釈は本当に多種多様だな、と思った。
時には「うがちすぎでは?」と思うような読みもあったものの、表面的な読みだけではなく、当時の政治的背景を透かして見せたり、作者の生涯にしっくり照らしあわされていたりと、納得のいく読みも多かった。
私は小学生のとき、担任の先生によって百人一首を中途半端に覚えされられた生徒だったので、その時に暗記した歌ばかりが今でも印象深く残っており、それ以外の歌とどうしても愛着に深い差がある。
好きな歌はどれだろうと考えてみたところ思い浮かんだのは、
春すぎ -
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ネタバレ[ 内容 ]
『小倉百人一首』は、万葉時代から新古今時代まで五百年余に作られた和歌から精選された名歌集だが、そののち、古代から当代までを通覧してのアンソロジーは普及しなかった。
そのことはわが国の詩歌の中心が短歌から連歌、俳諧へと移っていったことと無縁ではない。
本書は『古事記』から現代俳句まで、旋頭歌の片歌や連歌・俳諧の発句を含めた五七五の名作を通時代的に選んで、日本人の美意識の本質と変遷を探ろうとするものである。
[ 目次 ]
新治筑波を過ぎて幾夜か寝つる・雑 倭建命
佐保川の水を塞き上げて植ゑし田を・夏 佐保禅尼
白露のおくにあまたの声すなり・秋 簾外少将
標の内に杵の音こそ聞こゆなれ