佐藤洋一郎のレビュー一覧
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既存概念からの脱出
ラオスの焼畑農業の場面がとても印象に残った。よく「日本古来の伝統 風習 慣習」と言われるが、家族制度などでもたかだか200年程度明治の頃の仕組みを「日本古来の」と言っているケースが多い。米づくりについても水田栽培が一般化するのはコメの生産高が「富」の基準となった江戸時代以降であり、それ以前はずいぶんと粗放なものであっただろう、という主張が説得力を持って展開されている。
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水路跡など栽培の痕跡が発見できない=稲の栽培していなかったではない、という考え方は目から鱗でした。
移植栽培ではなく、乾田直播などは現在の稲作で見られますが、陸稲……しかも焼き畑で、ということは考えたこともありませんでした。
確かに、現代のように重機どころか、鉄の鍬すらない時代に稲作を行う場合、そのような方法で稲をつくった可能性がありますよね。
そうすると、稲作の跡は発見されない。
弥生時代になって一気に水稲が普及したイメージがありましたが、縄文時代から焼き畑の陸稲稲作があり、そして弥生時代も水稲が広まったわけではなく、縄文時代の延長の時代が長かった。
と、骨の炭素分析等からの解説はたいへん興 -
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日本人にとって特別な食・コメ。稲はどこから日本列島に伝来し、どのように日本に普及したのかなど、稲作の起源を解説します。各時代の中でどのように米が作られ、そして水路建設するほど水利に力を入れ、お酒や和菓子づくりなど米食文化が花開いた近世時代を紹介します。さらに、戦国時代、明治の富国強兵、そして、先のアジア・太平洋戦争を支えた米と兵站・ロジスティックの相関も考察します。農学や文化の視点を交えながら「米食悲願民族」日本人の歴史を解き明かします。最後に、日本の少子高齢化と低成長、あるいは社会の縮小を前提としたときに、「地球環境」の視点で、持続可能な社会のために「米と魚(淡水魚)」のシステムこそが日本の
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農学者による米の歴史の本です。
本書では日本史を大まかに6つの時代に分け、それらの時代の、米に関係する農業、土木、食文化などを取り上げています。
「歴史をひもとき、物語を構築するのは歴史学者の仕事で、わたしの仕事ではないからだ。わたしがやりたかったことは、その歴史を通史として描き出すことではなく、むしろ時代を重ねそれを重層的にながめることによっていまの米食や稲作が何であったかを描き出すことである」(p.282)
この引用のとおり、歴史を軸にしてはいるものの、歴史そのものを語ろうという本ではありません。
農学者だけあって、理科の話が豊富なのが良いところです。例えば次の箇所。
「イネの品種は栽培 -
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ひとくちに“和食”と言えども、その世界は多彩で多様。
日本各地や歴史の中での食を解説し、その継承をも考察する。
・はしがき
第1章 人類の食、日本人の食 第2章 こんなにもある和食材
第3章 東と西の和食文化 第4章 都会と田舎の食
第5章 江戸と上方―都市部の食
第6章 二つの海―日本海と太平洋
第7章 海と里と山―里海・里地・里山
第8章 武家・貴族・商人の食 第9章 はしっこの和食
終章 いくつのも「和食」を未来へ
・あとがき
参考文献有り。
日本って狭いようで広いなぁと実感する“和食”の数々。
その地に合った食材で生み出された“和食”の数々。
南北に亘る島国に内在する山や川、盆地 -
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米の歴史は非常にスリリングでミステリアス。
一読して、そんな感想を持ちました。
本書はタイトル通り、米の歴史をひも解いています。
まず、その歴史区分がユニーク。
章立てが、そのまま歴史区分となっているのでご紹介します(カッコ内は分かりやすいよう評者が加筆)。
①稲作がやってきた―気配と情念の時代(おおむね弥生時代の前半まで)
②水田、国家経営される―自然改造はじまりの時代(弥生時代後半から古墳時代、飛鳥時代まで)
③米づくり民間経営される―停滞と技術開発が併存した時代(奈良時代から室町時代ころまで)
④米、貨幣になる―米食文化開花の時代(戦国時代の後半からほぼ江戸時代いっぱい)
⑤米、みたび軍 -
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タイトルは『米の日本史』ですが、著者は農学者で、米と日本人の出会いと歩みを農業、植物、遺伝、歴史、民俗、地理、食文化など、さまざまな学問分野から重層的に描き出そうと試みています。それゆえ、歴史学的な記述は非常に大雑把なものですが、米(稲作)を通して自分の視野が日本史以外の他分野へと大きく広がった思いがします。ジャポニカ米とインディカ米の名称の由来とか、二毛作を支えた肥料とか、興味深く読みました。
ただ、時代区分とその呼称が非常に独特で、「気配と情念の時代」(弥生時代前半まで)や「停滞と技術開発が併存した時代」(奈良時代から室町時代まで)など、ぱっと見ていつのことかわからないことが多くありました -
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農学博士による、東アジアにおける稲と米の研究結果をまとめたもの。純粋な研究結果というよりも、研究旅行記といった方が的確かもしれない。書かれているのは、インド、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、中国の6カ国。研究結果も興味深いが、旅行記部分も楽しく読めた。
「世界には、世界三大穀類と呼ばれる種類がある。米、小麦、トウモロコシの三種で、額面上の生産高はトウモロコシが一位である。しかし、トウモロコシは家畜の餌として消費されたり、アルコールに加工されたりする分が多く、直接人の口に入る分でいうと、じつは米が世界一多く食べられている穀物なのである」p12
「(米栽培には大量の水が必要)1キロの米を作る -
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パスタに蕎麦、うどんにそうめん、ラーメン、冷麦。麺類も大好き
だけれど、1日1回は口にしないと落ち着かないのがご飯である。
炊きたてご飯の香りは幸せである。最後の晩餐なら、最高の
日本米で作ったおにぎりを食べたいっ!あ…涎が。
でも、日本で食べられているお米だけが米ではない。世界には
いろんなお米があって、いろんな食べ方をされている。それを
ジュニア向けに書いたのが本書。
ジャポニカ米とインディカ米の名付け親って日本人だったのね。
そんなことも知らずに毎日、モリモリとご飯を食べてました。
すいません。
冷夏でお米が不作だった時、外国産の米がまずいやらなんやら
と話題になったが、そもそも -
Posted by ブクログ
稲の起源を追い求め、30年にわたって海外調査を続ける筆者が書いた紀行文。
地理学や遺伝子学などを通して様々な考察が上がるが未だ結論は出ていないらしい。
結論は出てないにしろ好きなことを追い求める姿勢が羨ましく感じました。
日本の稲はなるべく低く、多収量な品種が好まれ、それが当たり前です。
しかし世界の棚田では敢えて稲の脱粒性が高い品種でそれが持続している場所もあり、肥料や機械、場所の問題と戦っていることを知りました。
いろんな品種を蒔き、成長がまばらで収穫時期が違うことが1日の労働を抑えたりなど、モノは考えようでいかにその環境で暮らすかという思想は今の消費社会より健全だと感じます。
稲も人もモ