上原裕美子のレビュー一覧
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ゲーム、薬物、SNSなど様々な依存症について人に依存させる仕組みや人間の心理の観点から、多くの実験結果を含め多面的に解説されている。
中でも、今まであまり注目されてこなかった行動に対する依存 "行動嗜癖" が本作のテーマである。私たちにとってもっとも身近な行動嗜癖はスマホの長時間利用だろう。
本書を読んでいて、今後の未来が少し恐ろしく感じられる点も多かった。
行動嗜癖を見直し、今後も発展を続けるであろうデジタルへの付き合い方を見直すべきだ。
私自身、スマホのスクリーンタイムが6時間を越える日も多い。平均スマホ利用時間は3時間であり、明らかに使いすぎだ。
今後は週平 -
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新型コロナによるパンデミックが世界にもたらす影響とその意味合いを、社会的・経済的・政治的・歴史的な見地から紐解くとともに、パンデミック後を展望して世界が今後向かうべき方向性を示した一冊。
今日の世界各国はトリレンマ(どんなシステムであっても開放性・可変性・安定性のうち2つしか備えることができない)を抱えており、パンデミックは世界同時多発テロやリーマンショック同様、市場中心主義の限界と、それに過度に依存してきた米国の脆弱性や影響力の低下をより明白にする一方、マスク外交等で存在感を増す中国への警戒心から各国でポピュリズムや内向きの政策が優先され、近年縮小傾向にあった経済格差が再び拡大しつつある状 -
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マーケティングや行動経済学に精通した大学准教授である著者がスマホやSNSがもたらす行動嗜癖という依存症について書いた一冊。
SNSなどが普及する中で深刻化している依存症についてそのメカニズムや依存症になった者の症状、そして解決法に至るまでを様々な研究結果などから書かれていて勉強になりました。
物質だけでなく行動にも依存症が起きることや苦痛から逃れるために依存症を発症することなど依存症についてのメカニズムを知ることができました。
そして、目標、報酬、クリフハンガーによるビンジウォッチング、他人のと比較などを駆使してネット上の様々なサービスが展開されていることも勉強することができました。
また、 -
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人が物事に依存する原因を、過去の実験や有識者によるインタビューをもとに解説し、どう対応すべきか提示している。
以前は【薬物・酒・たばこ】といった物質的依存が主であったが、現代においては【SNS・ソシャゲ・VOD】といった行動的依存に警鐘を鳴らしている(本書では行動嗜癖と言っている)。
テクノロジーが身近になった故に、僕らはそれに(安易に)抵抗できないのだ。例えば、Netflixが仕掛ける「ビンジウォッチング」について言及している(海外ドラマなど、次のエピソードを自動再生して、2~6話一気見させる仕組み)。この章だけでも、本書を読んだかいがあったと思える。これらの依存ビジネスが、生活のあらゆ -
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サブタイトルは「ベーシックインカムは世界でどう議論されているか?」
ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)こそが今後の世界を救う。AIによる仕事の変化あるいは消滅、経済的不平等や貧困、人種差別や性差別、これらを解消し我々をユートピアへ誘う政策、UBI。
ケニアやインド、そしてカナダなどの先進国での実践でエビデンスは揃いつつある。もっとも、人間は複雑で、社会も複雑で、UBIだけで全てが解決するとは著者は言わない。まだ、議論と実践、実験は必要なんだろう。
最終章、「UBIの財源」がちょっと残念。もっと具体的な試算、提言が欲しかった。これまでと違った行政の仕組み、税制が求められるわけで -
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個人的には面白く、ヒヤッとさせられる言葉が多かったので星4。
しかしコラム集的な感じなので、質の良い粒を集めた知識集と言うところ。統一感という観点では微妙。
○そのログインに「意図」はあるか?
→なさすぎてビビる。無意識的にSNSに癒着してる自分の生活を客観視してしまう。
○時間がないのは、「本当はやりたくないからだ」
恋愛論でも似たような話があるが、本当にやりたい仕事なら時間捻出する。瓶の例えが良かった。瓶には大きいものから入れていかなければ小さなものははいらない。現実でも同じで、やりたいことをずしっかりやらないと後でやろうと思ったことをする時間がなくなる。最初に詰めるのは大きな石から -
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1.ゲーム理論を現実に活かすためにはどうするべきなのか?
2.本書の目的は、適切に駆使することでゲームチェンジャー、つまり変革者になれるということです。そのためには「ゲーム認識力」、すなわち、問題発見力を鍛え上げ、ゲーム理論の根幹となっている「囚人のジレンマ」を使いこなしてく必要があるということです。
本書では、囚人のジレンマを前提に、コミット、規制、共謀、報復、信頼構築、関係性の活用の6つの要素を用いて事例分析をしています。
ゲーム理論を一通り学んだ方向けの一冊となってます。
3.ゲーム理論を語る上で欠かせないのは「囚人のジレンマ」だと思いました。お互いの一手で最適解がどう変化していくの -
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日本の政治経済や経済政策の専門家としてUCバークレー教授を務める著者が、マーケットデザインに関する種々の誤解を解きながら、日本経済が復調するために取り入れるべき政策的含意をまとめた論考集。
マーケットデザインとは近年になり着目を集めている経済学の一種である。従来の経済学が市場というものを比較的スタティックなものとして捉えるのに対して、マーケットデザインでは、市場そのものを種々の政策によって操作することで、経済的ベネフィットを獲得することを目指す。周波数オークションのような政策はその一種であるし、様々な分野でマーケットデザインの注目は集まっている。
さて、マーケットデザインが対象とする市場を -
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ネタバレ残念ながら(?)やらなければいけないことを先延ばしにすることを正当化してくれるような本ではなかった。
原題は”The art and science of delay" とあるように、直感的な判断に従うことの危険性を論じたもの。プロの手にスプレイヤーでは数ミリ秒の余裕を持てるだけでパフォーマンスが劇的に改善するし、マシュマロ・テストのように先延ばしの能力の重要性を物語っているものもある。
私達の判断の多くはプライミングのように瞬間的な思考(カーネマンのファスト&スロウでいうType1)によって決められており、それはだいたい正しいのだが、少し取り掛かるのを待って熟考したほうがよいこ -
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「対話」関係の本。
最近、本当に沢山ある「対話」の本で、何か新しいことが書いてあるわけではない。
手法的な新しさはほとんどない。
どちらかと言えば、思想的というか、集合知と衆愚がどのようにして生じるかといういうことが中心かな?
という話しは、実は「U理論」で、思想的に、これでもか、というまで深められているので、そういう意味でも新しくはないかな?
「U理論」が難しすぎるので、その「対話」に関する部分を実例を踏まえながら、比較的分かりやすく説明してある、ということかな。
とかなり客観的なコメントではあるが、これだけ同じような本があるなかで、直球勝負で、かなり読ませてしまうと -
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集合知は魔法の薬だと考えてみよう。
一口、口に含むと、私たちは意識と認知の変化を体験する。
問題にとらわれたり、小さく分割して考えたりするのではなく、その結びつきと複雑さに気づく。見えているものが全体像とは限らないと理解する。多くの情報に目を向けるようになり、同時に、他者の視点に好奇心を持てるようになる。
集合知の薬を二口飲めば、これまでとは異なる形で身体を意識するようになる。頭だけを働かせて問題を解決したり、交渉したりするのではなく、心と直感に耳を澄ませ、身体のさまざまな部分からわきあがる感覚のシンフォニーに気づく。恥ずかしさ、プライド、愛情、怒りといった感情の繊細さ、複雑さが見えてくる。 -
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ネタバレ集合知の力と衆愚の罠というソーシャル時代にふさわしいタイトルととてもよさげな装丁に惹かれて購入。
みんなの意見は案外正しいなど、Web2.0以降のインタラクティブなインターネット空間には様々な情報が転がっている。
大枠で見れば正しいのかもしれないが、なかなかそうではないケースや、そもそもカオス状態になり集約できない場合もあるだろう。
そういう見解を得たくて読んでみた。
本書を読んで思ったのが、「衆愚」について。
このワードの具体例は「空気」で語られるように、過去の日本の戦争の事例などがあげられる。山本七平の空気の研究よろしくだ。
つまり、民衆の総意は得られたが、そもそものベクトルに問題 -
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未曾有の危機である。このような有事の際には、強いリーダーシップの必要性を感じる一方で、強すぎるリーダーシップには警戒心を払わなければならないのではないかとも思う。「悪魔は救世主の顔をしてやってくる」とは、よく言ったものだ。むしろ今、必要とされるのは、有能なファシリテーターの方であろう。例えそれが小さな集団の中での出来事であろうとも、ファシリテーターの間接的な関与によって形成された連帯感や共有感覚こそが、集合知を開花させ、通常では為しえないパワーを生み出す。本書はその「集合知」をテーマに描かれた一冊であり、今まさに読むべき一冊でもある。
集団から生まれる大きな力も、一歩間違えると衆愚の罠へと陥