高橋則明のレビュー一覧
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シンギュラリティ(特異点)とは何か。まずはこの理解が大事でしょう。本書でも強調されているように「人間の理解を超えて何が起こっているのかわからない状態」をカーツワイル氏はシンギュラリティと呼んでいます。その意味で私は著者に合意します。著者が例として「10次元についてAIが人間に説明するが、人間にはまったく意味が分からない」というような例をあげていますが、この話で、2次元人と3次元人というようなたとえを思い出しました。人間は6面体のサイコロの設計図を平面(2次元)に書くことができ、それが切り出されて立体化(3次元)するときに、どこの点とどこの点が一致するかを頭の中で理解できます。しかしもし2次元しか理解できない種族がいたとしたら、その人は、「どの点とどの点が実は同じである」と言っても全く理解できないはずです。
それと同じで仮にAIが4次元を理解できるとしたら、「2000年の東京都庁と、2024年のサンフランシスコ市のどこかが実は同じ点である」と人間に説明するかもしれません(そして人間は意味が全く分からない)。物理学では「量子もつれ」という現象がありますが、ノーベル物理学賞を受賞した先生でも、量子もつれは理解できない、と明言します。その意味で、カーツワイル氏がいうシンギュラリティの象徴的な事件として、「AIが量子もつれについてメカニズムを解読する」といったことが近い未来に起こるのではないか、と感じました。
本書は一貫してデータを示しながら主張をしていることから、非常に説得力がある(しかも思ったよりもロジカル)と感じましたが、カーツワイル氏が全く考えていないのは、生活者の受容度、価値観変化の遅さ(技術が加速度的に進化しようが遅さは変わらない)でしょう。このあたりは一貫して抜け落ちていると思いました。また3章以降の内容は、別の本(例:ファクトフルネス)で読んだような内容で、正直目新しさは感じませんでした。特にAIによる仕事へのインパクトについては、プラス/マイナス両面があるという歯切れの悪いトーンで、他の有識者と言っていることは同じであると思います。本書のクライマックスは1章、2章あたりでしょうか。それだけでも十分読む価値はあると思いました。
シンギュラリティとは、突き詰めれば(AIという外部の存在によって)宇宙や人間の理解が進むことではないでしょうか。まるで人間が「環世界」を持つ個々の動物を観察・研究するように、AIが(環世界を持つ主観的な存在である)人間を観察・分析することで人間の深い理解が進むといったイメージです。 -
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経験と知識が増えるにつれて、私たちのやるべき事が複雑化され、更に会社という枠組みに呑まれて私たちは自由な発想を活かすことが出来ない。そんな世の中に何故スティーブ・ジョブスはシンプルという私たちの本質に固執することができたのか。当たり前のようで当たり前ではなくなってしまった私たちのシンプルさを、荒々しいやり方とはいえ、1人の男が果敢に取り戻していく実話。まだまだ世の中はしがらみでいっぱいだが、20年前(現在2022年)と比べるとアップルのお陰で私たちの生活は一変したといって言い。iPhoneが登場した2006年以前の生活様態が全く思い出せないくらい、今はiPhoneにお世話になっている。この感想もiPhoneで書いているのだから。
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★避けられない売り方★2009年の出版から10年たっても無料を巡る根本的な状況は変わっていない気がする。デジタル化できる情報・サービスの限界費用はゼロに近づき、供給はどんどん潤沢になる。それだけ先を見通せていたのだろう。雑誌という衰退産業にいる人物だけに、それを回避するために個人としては講演で稼ぐという実践をしている点も含めて、説得力と実践の重みがある。
ウェブ関連のサービスやコンテンツは無料なのが当然だと思って育った世代にとって、有料は受け入れられないだろう。ライブなど希少(な体験)がカギとなるものにしかおカネを払わない。供給側としてはフリーを入り口としたビジネスを考えるしかないのだろうか。
著者が付録として挙げているフリーを取り込んだ形態は3つ。<1>直接的内部相互補助(ハードは無料、ソフトは有料・・)、<2>三者間市場あるいは市場の二面性(ある顧客グループが別の顧客の費用を払う。広告や、発行無料で店から決済手数料を取るクレジットカード・・・)、<3>フリーミアム(一部の有料顧客がほかの顧客の無料分を負担する。後から課金するゲーム・・・)。ただ入り口を無料にしたからといって、その後の有料顧客を必ず得られるとは限らない。その橋渡しのカギはなんだろう。サービスやコンテンツにどれだけ希少さを打ち出せるかなのか。 -
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情報処理能力、記憶容量、通信帯域幅の驚異的なペースでの低コスト化により、21世紀のビット経済(デジタル社会)ではコンテンツの流通にかかる限界費用が、ほとんど気にならないくらいに安くなっている。
それゆえに、20世紀のフリー・ビジネスとは大きく性質を異にする「無料」を生かしたマーケティング戦略により巨額の富を生み出すビジネスが登場している。
ここでは、無料経済を4つの類型に分けています。
1.直接的内部相互補助
無料または極端に安い値段の商品で客を呼び、利益を出せる魅力的な他のモノを売る。
例)携帯電話の端末を無料にして通話料で稼ぐ。
ドリンクは無料だがショーは有料。
駐車場無料でショッピングモールに客を呼ぶ。
2.三者間市場
二者が無料で交換をすることで市場を形成し、第三者がそこに参加するために費用負担する。
例)テレビ・ラジオの無料放送、広告主が媒体料を払う。
クレジットカードの発行は無料、加盟店が手数料を支払う。
子供は入場無料、大人は有料。
3.フリーミアム
一部の有料顧客が、他の多くの顧客の無料分を負担する。
例)無料のウェブサービスで付加サービスを利用するためには有料。
基本ソフトウェアは無料、機能拡張版は有料。
広告付きは無料、広告を取り払うには有料。
4.非貨幣市場
金銭以外の評判や関心が動機となり成立する贈与経済。
例)ウィキペディアの編集。
知らないうちに無償の労働力を提供している。
例)検索するたびにグーグルのアルゴリズム向上に貢献している。
限界費用ゼロの世界での不正コピーの受け容れ。
例)ミュージシャンが無料で楽曲配信し、ライブで収入を得る。
1.と2.は、20世紀のアトム(=実物)経済でも存在したのに対し、3.と4.は21世紀のビット経済であればこそ急激に拡大している。
特に、3.のフリーミアムという概念が新しい。
そこでは無料ユーザーが圧倒的多数であり、それを全体の1〜2割くらいしかいない有料ユーザーが支えている。
それが可能になるのは、デジタル化により莫大な数の母集団を低コストで集めることができる(そのための手段が「無料」)ようになったから。
母集団の数が膨大な一方、ユーザーを集めるコストは低いので、割合が低くても有料ユーザー分で全体の費用を賄い、かつ利益を出すことができる、というわけです。
このあたりは非常にわかりやすい。
頭の整理という点で、非常に有用でした。
一方で、ちょっとショッキングなくらいに刺激的な見方を教えられた点もあります。
著者によれば、フリーへの考え方は(現在の)30歳を境にした上の世代と下の世代で全く異なる。
20世紀型のアトム経済で育った30歳以上の世代は、モノやサービスにはコストがかかっているのでムダにすることは悪徳だという感覚がある。
それに対して、小さいころからビット経済に慣れ親しんだ30歳以下の世代は、デジタル世界では製造・物流コストが無視してよいほど小さいことが感覚的に分かっており、デジタルなモノやサービスをムダにしたりタダでコピーして楽しんだりすることに抵抗がない。
それから、海賊版について。
中国やブラジルでは音楽ソフトやブランド品の海賊版が横行している。
先進国に暮らしている人間の感覚からすると許し難いように思えるが、中国人やブラジル人もニセモノとホンモノの価値の違いはちゃんと分かっている。
それを利用して、あえて海賊版を許容してプロモーション手段としてファンを増やし、ホンモノで儲けるビジネスモデルが生まれている、といいます。
そんなこと自信をもって言っちゃっていいのかな、と何となくドキドキしちゃうあたり、自分も「旧世代」であることの証明かもしれません… -
Posted by ブクログ
断捨離、禅など、シンプルの精神に共通する概念が、最近やたらと支持されている。
アップルが支持されるのも、アップルが生み出す製品や、そこに息づく精神が時代の潮流とマッチしているからだそう。
その潮流とは?目の前にはものが溢れ、めまぐるしく入れ替わり、自分自身もその中で糧を得て暮らしているのに、
どこかでそんな暮らしに嫌気がさしている。
そこに現れたのがシンプルの権化アップル。普遍のでざいんと、堂々とした佇まい。好きにならないわけがない。
シンプルに生きれば物欲もなくなるのだろうか。
・社内でやりとりされる電子メールをあけて、厳しい目で読んでみるといい。あいまいな表現がはびこっていることに気づくはずだ。(容赦なく伝えよう)
・プロジェクトの成果の質は、最終的な意思決定者がかかわる程度に比例する
・広告代理店の案をスティーブ・ジョブズより先にアップルの社員が見ることを許さなかった。
・優れたアイデアにはある程度のリスクがつきもの。欠点がひとつやふたつあるのは当然で、すぐれたアイデアとはそれを補ってあまりあるもののはずだ。
・スティーブは創造性の天才というよりは、創造性を愛する天才だ。
・誰も不愉快にしない完璧な広告は、良い調査結果をもたらすが、消費者との感情的なつながりを作れない。
・偉大なことを成し遂げるためには、計画と、十分でない時間が必要
→余裕のあるスケジュールは疑わしい
・”マーケティングの歴史における最良の例にして、もっとも偉大な作品のひとつはナイキだ。ナイキはコモディティを売っている。靴だ。だが、人々が
ナイキについて考える時、ただの靴のメーカーと思っていないはずだ。彼らは宣伝で価格について語ったことがない。偉大なアスリートをたたえ、
偉大なスポーツをたたえているのだ。それがナイキであり、ナイキはそのためにあるのだ。”
・よいネーミングの原則は、ものを作るときだけでなく、人に何かを伝える時に役に立つ。
・新しいアイデアを付け加えるのであれば、古いものを再提案してもいい。
・シンプルさをもっとも凝縮して表してくれるのは新商品のネーミングだ。
→楽しく、願わくば利益になるようにネーミングする
・すばらしい名前は常に存在し、発見されるのを待っている。
・3つの文章で言えることを20枚のスライドを見せられると、スティーブはもうがまんできなかった
・シンプルさは好きな時だけに選ぶのではなく、心から傾倒することが必要なのだ。
・スティーブは集めたデータを熱心に見るが、最終的な決断では頭と心をよりどころにした。
・アップルのデザイナーは、ベンダーが「できません」と言ったとkには、それは特別な努力なしではできないという意味だと知っている。
・自分のアイデアを前進させる時に、チャンスはすべて使わなければならない。
→スティーブはクリントン大統領に電話までして、ネルソン・マンデラのCM出演をトライした。
・ブランド銀行の預金を増やす。
・「快適なスケジュール」は常に警戒したほうがいい。ある程度のプレッシャーが目標に向けて物事を前進させることはまぎれもない事実だ。
・アイデアの精神を象徴するイメージを使うことで、自分の考えを具体化することができる。
きれいに飾られたパワーポイントはすでに世の中にあふれていて、ほとんどの場合効果がない。あなたのアイデアの本質を表しているコンセプトのイメージを見つけよう。シンプルで力強いものがいい。
”シンプルであることは、複雑であることよりもむずかしい。物事をシンプルにするためには、懸命に努力して思考を明瞭にしなければならないからだ。
だが、それだけの価値はある。なぜなら、ひとたびにそこに到達できれば、山をも動かせるからだ。―スティーブ・ジョブズ
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Posted by ブクログ
書いてある事例は比較的平易でわかりやすいのだが、全体を通して読むと、何が書いてあったのか考え込んでしまった。この本を読むと、19世紀からフリーを導入することにより成功した事例が存在していることが分かる。そして、現在ネットの普及に伴って、より激しく変化・進化を遂げている最中であり、Googleなどの限られた例を除いて成功している企業も少なく、まだ評価や分析が十分になされていないことから、成功事例を羅列したという趣きがある。読みながら取ったメモに、「フリーの意義は、間口を広く低くすることにより、これまで知られていなかった潜在的ニーズ(ロングテールに属する顧客層等)を掘り起こすということか?」とあるが、常識の枠に縛られている気がする。
ところで、この本では、知的財産は'物事がフリーになろうとする動きを押しとどめる方向に作用する'と本質を喝破している。「ビジネスにおいては企業は知的財産権法を利用して、人為的にアイデア不足を生みだすことでお金を儲ける。それが特許や著作権や企業秘密だ。つまり、アイデアは多くの人に伝わるのが自然だが、その流れをしばらくせき止めて利益を上げようとしているのだ。(中略)だが、最後には特許が切れて、秘密は外に出る。アイデアを永久に止めておくことはできない。(111ページ)」となると、特許屋の仕事って・・。フリーになろうとするアイデアを堰き止めて、エネルギー差を人為的に作り出そうとするダムのような仕事だろうか、などと考え込んでしまった。ただ、このあたりは自然に逆らうことなので、うまくやらないと面倒なことになる。ブラジルで欧米の医薬品メーカーが持っているHIVウィルスの薬の特許に対して、国が強制実施権の発動をほのめかせて、薬価を大幅に値引きさせた事例も書かれていた。いずれにしてもパラダイムシフトを考える上で大変参考になる面白い本だと言える。 -
Posted by ブクログ
350ページのハードカバー単行本。
通勤電車で読むにはちょっと辛いので、海外出張の機内で一気読み。
明快な論理と説得力十分の書きっぷりに舌を巻いた。
本書を手に取るまでは、今の時流にのったあまり良くない意味での”ノリノリ”の一冊だろうという勝手な印象をもっていたが、実はフリーという形態を活かしたビジ
ネスの歴史は長いということを丁寧に書いているところから始まる。
ここでまず好感度アップ。
そこから、テクノロジー(情報処理能力、記憶容量、通信帯域幅)の限界費用がどんどん下がっているネットと、フリーの関係へと展開する。
説得力十分でお見事。
途中引用する様々な例え話や、フレーズも興味深いものばかり。
米や小麦と違って、育てやすくタンパク質が豊富なトウモロコシを主食とする文化は、近隣の部族を頻繁に攻撃していたという「トウモロコシ経済」を例にした説明は至極明快。
さらに、その明快な例え話の中に「無料の本当の魅力は恐れと結びついている」なんていうフレーズが出てくるなど、読者のハートをがっちりつかむ術にも長けて
いる。この著者は本当に筆が立つ。
このフリーを活かして成功している企業の一つにグーグルがあるが、ヘタなグーグル本を読むより本書を読む方がグーグルのすごさがよく分かる。特に「注目経済」と「評判経済」から成る「非貨幣経済」について触れた第12章が象徴的。
それにしても、こういう本はやっぱりアメリカ発なんだな。