山田宗樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレエモーション・コントローラー略してエモコン。鬱々とした気分のときでもこれを装着すれば、たちどころに明るい気持ちになれると言う。今のところ使ってみたいと思わないが、いつか使いたいと思う日が来るかもしれない。ただ、使用の代償として「世の中に必要のない存在」と認識した人を殺めてしまう危険性が伴うとなると、いかがなものだろうか。
本書では、エモコン使用者が自分に関係のない他者を「必要ない」という理由だけで殺してしまう。そのことにいち早く気づいた精神科医がエモコンの使用を止めるよう呼びかけるが、使用を止めない人も多かった。
いかに他人より自分の幸福が大事と思って生きている人間が多いことか。現実も似たようなものだと思う。通勤時のラッシュでは自分も混雑の原因を作っている一人だということを棚に上げ、他人に舌打ちをし、ぶつかっても謝罪もしないような人もいる。このエモコン使用者が引き起こした一連の事件と同様の事件が現実で起こってもおかしくはない。(殺すまではしないとは思うが。)
テーマはタイトルどおり「鑑定」で、作中でも精神科医とその妻がいろいろ仮説を立てて講釈しているのだが、そちらはあまり頭に入ってこず、エモコン事件の異常性の方にばかり目が行ってしまった。
無差別殺人というのはどうにもなくならないものなのだろうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ序盤。構成の妙。
よくあるパターンとはいえ、ワクドキ製造型の視点じゅんばんこスタイルは大好物です。
最大のナゾ「ルキ」の存在をうまく使った語りの視点変換。「ルキ」を一人称。それ以外を三人称一元視点にすることで不気味さや読めなさが香ばしく沸き立つ。ムフムフしてしまう。
「地上の世界は〈空〉の気まぐれに翻弄され続けた。」
確かに。〈空〉って怖いんだなと再認識。
海の怖さは地震大国の住人として意識せずにはいられないけれど、空、大気で起こる自然現象を論理的かつ平らに列挙されると、至極正当な恐怖だった。
「自然の脅威」なんて十把一絡げで便利な言葉を無感覚に使いすぎて鈍麻してるけど、間違いなく怖い。
ただ、やはり地上で生まれ死んでいく者としては、恩恵と畏れに抱かれるこの世界こそが人間の舞台だと思っちゃうんですよね。
まあ、年中全力で紫外線から逃げているわたしはヘルメスに潜るべきかもしれないですが。
しかしルキの早期退場で、推進力の屋台骨がボッキリ。
なんだろうなー。
設定最高山田宗樹。
安定の読みやすさ山田宗樹。
好きだからハードルが上がってるのも否めない。が。
今回、リアリティとファンタジーのバランスがギクシャクしてるというか。
いや、違うな。決して現実味があるわけじゃないけど、振り切れ感が足りないというか。そんだけ振りかぶったんだから、全力で振り下ろしてくれ。的な。
テーマとしては色々詰め込まれている気もするし、「もしもこんな未来がほんとに来たら」の妄想が捗るのはやっぱりさすがの山田宗樹。
しかし読後のこの余韻というか、あらゆるポイントに対する余地というかは、この話用のものじゃない。モンヤリとした、じゃない感。
なんか悔しい。
でも最後のオチは、映画のエンドロール後に出てくるエピソードの匂いがして嫌いじゃない。