大野晋のレビュー一覧
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国語学者で学習院大学名誉教授の著者が、文や名詞、ハ・ガ・ノなどを取りあげながら、日本語について考え、大切だと思うことや、研究してきたことについて記したものです。
著者は、「未知」と「既知」という観点を用いながら、日本語の日本語らしい仕組みとは何であるかを明らかにしようと試みています。
既知(あるいは既知扱い)の下にハ、未知(あるいは未知扱い)の下にガが用いられるというところから、ハは題目を立てるので客観的・説明的、ガはより人物の動作が意識的・能動的である、これが漱石と鴎外の文体の分析にまで敷衍されるのは非常に面白く感じました。
小説を読むときにこのハとガの使い分けを考察できるほど精読でき -
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この本は、国語学者で学習院大学名誉教授の著者が記した日本語トレーニングの書で、練習問題を交えながら日本語の細かなニュアンスの差異が解説されています。
「思う」と「考える」、「しっかり」と「大丈夫」、のように類似する単語の微妙な意味合いの違いから、「が」と「は」など一見すると違いがなさそうな助詞の使い分けまで詳しく解説されています。
『日本書紀』や『源氏物語』、夏目漱石や森鴎外など日本の古典を引用しながらの考証も豊富で、どんどん読み進めることができました。
以下は言語の能力があるということ、良い言語生活を営むということについて著者が述べた部分の引用です。
言葉を学ぶ意義とそのおもしろさは -
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この本は、国語学者で学習院大学名誉教授の著者が、『源氏物語』を中心とした古典に登場する接頭語の「モノ」という言葉の持つ意味を再検討したものです。
「もののあはれ」「ものうし」などのように接頭語として用いられ、教科書的・辞書的には「なんとなく…」と訳して用いられることが多い「モノ」にスポットを当て、その本来の核とする意味はなんなのか、『源氏物語』を中心とする数々の古典文学での用方を研究することで帰納的に解き明かそうとしています。
同著者・同レーベルの「古典文法質問箱」が面白かったためこちらも購入しましたのですが、助詞や助動詞といった古典文法に焦点を当てていた前作よりもさらにニッチな内容という印 -
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この本は、国語学者で学習院大学名誉教授の著者が、古文の文法における数々のトピックについて一問一答形式で答えたものです。
大学時代に受講した文学の講義にて紹介されたのがこの本との出会いです。
今改めて細かく読み返してみると、日本語=タミル語紀元説という現在支持されていない著者の主張が数箇所登場するためその点は割り引く必要がありますが、それでも発見があちこちにあって非常におもしろく、良書であることを再認識しました。
本書は「学校の古文の授業でもこういうことを教えてくれたらいいのに」という声を叶える一冊です。
現役の高校生にもおすすめですが、むしろ学校や塾の先生方にこそ読んでほしい一冊であると私 -
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ネタバレ"日本人は無宗教だ"
と、よく言われるけど、果たしてそうなのか?
と、兼ねてから疑問でした。じゃあ、数ある神社や寺の累々、初詣や七五三、「一粒の米に7人の神様」みたいな話は一体、何のことだ。。
そんなことを考えていた時にふと手に取った本。しっかりとした宗教の本なら読みにくいな。。と思ったらまさかの言語学からの考察で非常に面白かったです!
印象的だったのは、「砂漠で育った文明は能動的で戦闘的だという。「何もしないでいる」ということは即ち死を意味するからだ。宗教の始まりも、神が光を作り、闇を作り、草木を作り最後に人を、自ら作った。」とあり、
それに対して、神道は「最 -
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水泳ができるようになるためには、練習が必要であるように、文章についても、初心者である方にも日本語の練習が必要である。そのための『日本語の練習帳』を用意したとのことです。
気になったことは以下です。
単語に敏感になる
・考えるとは、理性的な働きで、思うとは感情的なものである
・思い込むとは、一つの考えを心にもったときに、それ1つを固く信じて他の考えをもてないこと
考えこむとは、問題に関わって、あれこれとしきりに考えをめぐらして止まらないこと
似たような言葉をならべると微妙にニュアンスが違う。それを知るには、辞書をたくさん引いてその単語を調べること。
助詞の使い方 「は」と「が」の使 -
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【あなたは、日本語の文法を意識したことがあるだろうか】
上記の一文における「は」と「が」の役割を説明できますか?
私はできなかったし、自分で考えてみてもしっくりした答えは思い浮かべられなかった。本書には書いてある。是非読んでみてほしい。
本書は実践的に日本語の文法を学んでいくスタイルである。
詳しい説明は省略する。
私の思いが言語化されたと思うほど府に落ちた記述が本書にあったので、ここで要約して共有したい。
自分の思いをaと表現したとき、相手がa`と受け取ったとしたら、それは相手がa`と取り得るように表現した自分が悪い。相手が分からないといったら、分からない表現をした自分が悪い。相手が -
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ネタバレタイトルからは、想像できない内容であった。
日本語の奥の深さを改めて感じることができ、とてもおもしろく読ませていただいた。
なかでも、執筆のアプローチについての内容が印象に残った。
要約すると、『① 頭の中にある事柄を、思いつくまま書き付け、② どれを最初に、次に何をと見定める。③ 途中で準備・知識・考察の不足が、ここかしこに見えてくる。不足な材料を集め、調べ、考える。④ 内容の要点を項目として順に書きあげると、順序が逆、あるいは錯綜に気づく。それを整える。』というものだが、これはアイデアの作り方や発想法のアプローチと同じだ。
また、『作品を書き上げて、半月くらい箱に入れておいたあとですると -
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皆さんは「思う」と「考える」の違いを説明できるだろうか。「通る」と「通じる」、「嬉しい」と「喜ばしい」の意味を正しく理解して使い分けているだろうか。「大丈夫」の使い方を間違えてはいないだろうか。
私達は日本語で本や雑誌を読み、文章を書いている。コミュニケーションをとるのもほとんどの場合は日本語だ。それでも日本語を完璧に使いこなしていると自信を持って言える人は恐らくいないと思う。日常生活に支障はなくても、例えば参考図書として色々な本を読むときは、込み入った文章をもっと容易に理解できるようになりたいと感じるだろうし、レポートを書くときは、適切な表現を使ってもっと良い文章を書けるようになりたいと思う -
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ネタバレ日本語文法の本、好きです。大野先生は言わずと知れた日本語研究の大家ですが、文調は硬すぎず、するするっと読める本をたくさん出されてます。
面白かったポイントを挙げるとキリがないですが、いくつか列挙してみます。
・「は」と「が」は、その前後の情報が未知のものなのか、既知のものなのかによって自然と使い分けることができる。よく「は」は主格(俗に言う主語)を示すといわれるが、実際には主格にも目的格にも使える。ここを誤解すると日本語の「主格」の捉え方で混乱する。
・日本人は親しいか、疎遠化によってコソアドや相手の呼び方を変える。一人称を相手を呼ぶことに使う(子ども相手の「ぼく」や、関西弁の「自分」など