大野晋のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
古典文法質問箱
著:大野 晋
角川ソフィア文庫 241
薄いですが、難読書でした。
もともと 「日本語の文法<古典編>」から、Q&A部分を抜き出したものとあります。ということは、古代日本語の、本質の概要を知っていないと質問ができないということです。つまり、本書を読むことは、文法<古典編>の基本的知識をもっていることが前提になっています。
なぜ、古典を学ぶのか、
詩であるとか、和歌や、源氏物語、のように、精密な日本語で書かれたものは、現代語に訳してしまうと、作者が表した非常に微妙な意味合いをうまく表せない。
そういうものがすくなくありません。言葉は、それを使った人が使った意味・心情をそのまま理解することがいちばん大事なことです。
また、日本語は、語尾まで、聞かないとわからない。その意味では、本書後段に、助動詞、助詞の複雑で繊細で、微妙で、膨大な解説を伴います。
■文法の基礎
・日本語は時代に応じて変化している
・ワ行 ヰ(ウィ)、ヱ(ウェ)、ヲ(ウォ) ⇒ ア行 イ エ オ の区別がなくなってきた
・サ行 サ・シ・ス・シェ・ソ ⇒ サ・シ・ス・セ・ソ
・ハ行 ファ・フィ・フ・フェ・フォ ⇒ ハ・ヒ・フ・ヘ・ホ
・歴史的仮名遣いの4つの発音 アウ⇒オー オウ⇒オー エウ⇒ヨー イウ⇒ユー
・撥音、促音 は 平安時代から
・日本語の特徴 語幹の下にあるものをたして品詞がかわる
ひかる ⇒ ひかり 語幹 ひか
はぢ(恥) ⇒ はづ(恥づ)、恥ぢる、恥づれ 語幹 は
・御 の読み方
①み 御子、御言、御名 御輿、御霊、御岳、:天・天皇・神・仏に関する
②み+大 大御歌、大御神、:天皇や、神に関する語を強調
③おん、お 御曹司、御身 御前、御方:女性語
④ご 御殿、御廟、御免 :漢語
⑤ぎょ 御意、御製、御物:天皇に関する
・品詞の分類
他の語と組み合わない ①感動詞(ああ、いざ、いな、おう)
他の語と組み合う
自立語
活用しない
主題となる ②名詞(花、兼好、二本、こと)
③代名詞(われ、なんじ、こ、いづこ)
主題とならない
他の語を修飾
④副詞(いと、ひとへに、さだめて)
⑤連体詞(ある、いはゆる、あらゆる)
文と文の関係を示す
⑥接続詞
活用する
⑦動詞(咲く、あり、信ず)
⑧形容詞(清し、美し、悪し)
⑨形容動詞(はるかなり、堂々たり)
付属語
活用する ⑩助動詞(けり、ず、たり)
活用しない ⑪助詞(が、ば、ばかり、かな)
※活用があるのは、動詞、形容詞、形容動詞、助動詞 の4つ
■用言
用言;それだけで、述語になりえる 動詞・形容詞・形容動詞
体言:自立語で、活用がなく、主語となる語 名詞・代名詞
・活用とは何か 用言と助動詞が起こす語形変化のことを指す
基本語=語幹+語尾 語尾が変化する
未然形 実際にはおきていない事実を述べるための用法
連用形 用言に連なるための用法
終止形 文の終止に使われる用法
連体形 体言を修飾するための用法
已然形 すでにそうなっていることを表すための用法
命令形 単独で言い切り、聞き手への命令を表す用法、命令の他、許容、放任を表す場合もある
・形容詞
ク活用 高し(高し;〇、く、し、き、けれ、〇 もしくは、から、かり、〇、かる、〇、かれ)
シク活用 楽し、いみじ(いみじ:〇、じく、じ、じき、じけれ、〇 もしくは、じから、じかり、〇、じかる、〇、じかれ、)
見分け方 なるをつけると 上が、く となるのが、ク活用、しく となるのが、シク活用
・形容動詞
名詞+助動詞(なり、たり)
ナリ活用 明らかなり、愉快なり (なら、なり、なり、なる、なれ、なれ)
タリ活用 平然たり、悠々たり (たら、たり、たり、たる、たれ、たれ)
・動詞
正格活用
①四段活用 語尾がアイウエの4段に活用する形式 (咲く;か、き、く、く、け、け)
②上一段 語尾が、エ段1段に活用する形式 (着る:き、き、きる、きる、きれ、きよ)
③上二段 語尾が、ウ段、エ段、2段に活用する形式(起く:き、き、く、くる、くれ、きよ)
④下一段 語尾が、イ段+る、れが添加する形で活用する形式(蹴る:け、け、ける、ける、けれ、けよ)「蹴る」1語のみ
⑤下二段 語尾が、イ段、ウ段+る、れが添加する形で活用する形式(受く:け、け、く、くる、くれ、けよ)
変格活用
⑥カ行 イ、ウ、オの三段の音からなり、ウ段音に、る、れ、オ段音によのついたもの(来(く):こ、き、く、くる、くれ、こ)「来」1語のみ
⑦サ行 せ、し、す、する、すれ、せよ と活用するもの 2語のみ (奏す:せ、し、す、する、すれ、せ)
⑧ナ行 ナ行における母音の添加(ナ・ニ・ヌ・ネ)と連体形にる、已然形にれの添加を合わせた活用(死ぬ:な、に、ぬ、ぬる、ぬれ、ね)「死ぬ、往(い)ぬ」2語のみ
⑨ラ行 四段活用ににているが、終止形がイ段(り)におわること(有り:ら、り、り、る、れ、れ)いわゆる、「有り、をり、はべり、いまそかり」の4語
■助動詞
・日本語は、肯定・否定・推量・断定はどの判断を文末で表現します。
・用言の活用形も使いますが、それだけは不十分であるため、助動詞をつかって、種々の細かい判断が必要となります
・動作が自然的か、作為的か
る、らる 自然
す、さす 人為、作為
・敬意の表明
きこゆ、奉る 謙譲
給ふ 尊敬
侍(はべ)り 丁寧
・動作の進行、完了
り 進行
つ、ぬ 完了
・話し手の判断
ら、らむ、けむ 推量
き、けり 過去
ず、じ、まじ 否定
ずき、ずけり 否定+記憶
・話し相手への働きかけ
な、よ、や、か、かは、かし、ぞ、ぞよ、ぞかし、を 等の助詞
⇒
意思の助動詞 む、まし、べし、じ、まじ
受身の助動詞 る、らる、ゆ
打消の助動詞 う、じ、まじ
過去の助動詞 き、けり
可能の助動詞 る、らる
完了の助動詞 つ、ぬ、たり、り
希望の助動詞 まほし、たし、
使役の助動詞 す、さす、しむ
自発の助動詞 る、らる
推定の助動詞 らし
推量の助動詞 む、むず、らむ、けむ、べし、めり、まし、らし、じ、まじ
尊敬の助動詞 る、らる、す、さす、しむ
断定の助動詞 なり、たり
伝聞推定の自動詞 なり
比況の助動詞 ごとし
様態の助動詞 めり
・助詞
助詞とは、関係づけをする語
格助詞 体言を承けて体言にかかる の、が、つ
体言を承けて用言にかかる を、に、へ、お、より、から、にて、して
副助詞 用言の述事にかかり、その程度、状態を限定する だに、さへ、すら、のみ、ばかり、まで、など、し
係(けい)助詞 用言の述意にかかり、文の成立の仕方に関わる は、も、ぞ、なむ、や、か、こそ
接続助詞 句を承けて下文にかかる ば、で て、して、つつ、ながら と、とも が、に、を、も、ばど、ども
終助詞 そこできれる、文を終了させる か、かな、が、がな、かし、なむ、ばや、かも、がも、な、ね、に、こそ
完投助詞 かかる所なく投入される や、よ、を、ろ、ゑ、
■諸品詞・敬語・修辞
・形式名詞 本来の意味から転じて、形式的、抽象的に用いられるようになったもの
とき、時間⇒場合
ところ 場所⇒こと
ため 利益⇒目的
・コソアド ⇒ コ・ソ・カ・イツ・ド
ココ、これ、こなた、コチ、、ソコ、これ、ソナタ、ソチ、カシコ、カレ、カナタ、アナタ、アチ、イヅコ、コズレ、イズカタ、イヅチ、ドコ、ドレ、コナタ、ドッチ
目次
文法の基礎知識
用言(形容詞・形容動詞)
用言(動詞)
助動詞
助詞
諸品詞・敬語・修辞
ISBN:9784043260027
出版社:KADOKAWA
判型:文庫
ページ数:304ページ
定価:960円(本体)
発売日:1998年12月25日初版
発売日:2014年07月25日14版 -
Posted by ブクログ
良い読み手・書き手になるには
→良質な文をまずは読むこと.
引き出しを増やさないと.
不適切な言葉に対する違和感をそもそも持てない.
骨董品屋になるには,一流品をたくさん見ないとなりようがない.
適切とは言えない表現は何からくるか
→適切な語彙を知らない
→事実を観る眼が曇っている
新聞で1年間のうちに使われる単語の数は30,000。だけどそのほとんどが登場回数一回。
生活に必要不可欠な言葉だけであれば三千程度。
言語生活を営む者であればこの年に一度目にするかどうかわからない単語を収めていざという時に引き出せるかどうかが問われる
「は」の働き→「一つのことを取り上げて、他の同類と比較する」が本質
①問題を設定しその下に答えが来ることを予約する
山田くん"は"ビデオ視聴が大好き。
→"は"の文を理解するには文末に注目。
山田くんは→大好き
②対比
一方佐藤くん"は"野球が好き。
③限度
ケーキを6時に"は"持ってきてください。
④再問題化
美しく"は"見えた
訪ねて"は"来た
→再審をにおわせる
文章の難解さはセンテンスの長さに比例する。
「が」の働き
①名詞と名詞をくっつける
「は」→文末と呼応
「が」→直後の名詞句と呼応
私"が"田中くんに約束の時間"は"3時と伝えたの"は"、佐藤くんからその時間を聞いていたからだ
→が:直後の名詞句との接続
→一つ目のは:限定
→二つ目のは:話題(伝えたのは)にたいする答え(聞いていたからだ)
②現象文を作る
花が咲いていた
鍵が見つかった
→現象の描写
→①と違い、"が"の直後が動詞
花は... →すでに話題になっていた"花"に対する答え
花が... → 新発見、新情報、新知識
A...が、B
逆説→ 晴れているが、寒い
留保 → 彼は試験勉強に励んだが、試験予定日までまだ日があったので...
→いずれにせよ「が」の後ろに文章の本体たる内容がくる。→読み手をもったいぶらせる書き方→わかりづらい→「A...が、B」は避けるべし。
のだ、のである
→お前の知らないことを教えてやる。ここはことさら大事な内容であるというニュアンスを含む(一般的には断定)
縮約・要約
新聞記事の縮約は良い作文練習になる
丁寧語、尊敬語、謙譲語、美化語
-
Posted by ブクログ
この本は、語の意味の中心を的確に把握し、それを表現するための方法論である。
著者は『岩波古語辞典』の制作に長く携わってきた。これは言葉(や概念)の中心的な意味をひらすら掘り下げ、掴み取った単語の特徴を文章で説明する仕事に従事していたと言う意味である。
そんな経験から打ち出された文章によって次々と、今まで感じていたモヤモヤを言語化し思考をクリアにしてくれた。
言葉に対して敏感になるために日本語と向き合ってきたからこそ、本質を掴み平明に表現できるのだろう。
必要な状況に応じて、ぴったりな言葉を選び取り表現する。本書はその訓練の方向性を確かなものにした。 -
Posted by ブクログ
日本語の文法にかんする著者の考えが比較的わかりやすく説明されている本です。
著者はまず、助詞の「は」と「が」のちがいという問題に取り組み、「既知」と「未知」という枠組みによって両者を区別するという意見を提出します。従来の研究では、「は」と「が」のそれぞれが一つの文のなかでどのような機能をもっているのかということに焦点があてられてきました。これに対して著者は、その文が置かれている文脈のみならず、話し手と聞き手のあいだに成立している了解といった状況をも含めて、それぞれのことばの機能が解明される必要があると主張します。
こうした著者の発想は、一般的に語用論においてあつかわれている内容を「文法」の研究に取り入れるものであり、ここだけ読むと議論がかぎりなく拡散していってしまうのではないかと心配してしまいますが、他方で著者は言語の歴史的形成過程についての議論によって上述のような主張を側面からサポートしており、恣意的な議論という印象はあまり受けず、おもしろく読みました。
「ウチ」と「ソト」の区別といった文化的な要素にかんする社会言語学的な議論から、日本語の文法を説明するというアプローチは、ややアクロバティックな議論のようにも思えますが、刺激的な内容の本であることはまちがいないと思います。 -
Posted by ブクログ
大野晋氏の著書を何冊かまとめ買い。
中学時代に習う「係り結びの法則」。
それをルールとして意識したことはあっても、なぜそのルールが出来たのかを考えることなく現在に至る。
例えば、結びが連体形と已然形の違いって何なのかとか。
「や・か」は「疑問・反語」だけど、両者の語としての違いはどこにあるのかとか。
もっともっと素朴に、なぜ「係り結び」はなくなったのかとか。
こうした疑問を持つ人は少なからずいるわけだけど、こうした疑問に答えてくれる人は少ないように思う。
とても親切で、面白い一冊だった。
見落としがちな点だけれど、言葉は変化しながら現在まで繋がっているものであるということ。
古語が現代語とかけ離れているように感じがちだが、辿ってゆくと、そうか!と変化に突き当たった。
なくなっていった言葉もある。
元の形から変化した言葉もある。
元の形に戻っていった言葉もある。
時間の流れに触れることが出来て、満足。