【感想・ネタバレ】古典文法質問箱のレビュー

あらすじ

高校の教育現場から寄せられた古典文法のさまざまな八四の疑問に、例文に即して平易に答えた本。はじめて短歌や俳句を作ろうという人、もう一度古典を読んでみようという人に役立つ、古典文法の道案内!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

この本は、国語学者で学習院大学名誉教授の著者が、古文の文法における数々のトピックについて一問一答形式で答えたものです。

大学時代に受講した文学の講義にて紹介されたのがこの本との出会いです。
今改めて細かく読み返してみると、日本語=タミル語紀元説という現在支持されていない著者の主張が数箇所登場するためその点は割り引く必要がありますが、それでも発見があちこちにあって非常におもしろく、良書であることを再認識しました。

本書は「学校の古文の授業でもこういうことを教えてくれたらいいのに」という声を叶える一冊です。
現役の高校生にもおすすめですが、むしろ学校や塾の先生方にこそ読んでほしい一冊であると私は感じます。
また、古文を学び直している人や言語学に興味がある人にもおすすめです。

収録される84のQ&Aの中には、自発の「る」と動詞語尾の識別や、断定の「に」と同形語との識別、といった高校生にとって品詞分解の問題では頻出のトピックもありますが、本書の肝はそこではありません。

そういった教科書的な話題にとどまらず、単語のもともとの意味や用法を紐解き、その変遷を示すことで答えを導いています。

例えば助動詞の「る」「らる」について。受身・尊敬・自発・可能の4つの意味を丸暗記させてしまえばそれまでですが、この助動詞の語源は「生る(アル)」という動詞ではないかと推し量ることができ、根本の意味は「自然の成り行き」を表す「自発」であることを示します。
また、「出来る」は努力の末に獲得するものというよりはむしろ、もともと「出で来る」という自然の成り行きとして現れ出てくることと捉えており、「可能」の意味を表すようになりました。
更に、「母に死なれた」のように自分が関与しないのに自然の成り行きとしてある事態が成立することが日本語の「受身」の基礎となっていますし、ウチの馴れ合いの関係ではないような者の動作に対しては自分が力を加えていない、干渉せず、関与していない疎い関係であることから「尊敬」を表すようになりました。

本書は知識の詰め込みのみでは味わうことができない学ぶことのおもしろさを知らしめてくれる一冊です。

0
2025年09月16日

Posted by ブクログ

古典文法質問箱
著:大野 晋
角川ソフィア文庫 241

薄いですが、難読書でした。

もともと 「日本語の文法<古典編>」から、Q&A部分を抜き出したものとあります。ということは、古代日本語の、本質の概要を知っていないと質問ができないということです。つまり、本書を読むことは、文法<古典編>の基本的知識をもっていることが前提になっています。

なぜ、古典を学ぶのか、

詩であるとか、和歌や、源氏物語、のように、精密な日本語で書かれたものは、現代語に訳してしまうと、作者が表した非常に微妙な意味合いをうまく表せない。
そういうものがすくなくありません。言葉は、それを使った人が使った意味・心情をそのまま理解することがいちばん大事なことです。

また、日本語は、語尾まで、聞かないとわからない。その意味では、本書後段に、助動詞、助詞の複雑で繊細で、微妙で、膨大な解説を伴います。

■文法の基礎

・日本語は時代に応じて変化している

・ワ行 ヰ(ウィ)、ヱ(ウェ)、ヲ(ウォ) ⇒ ア行 イ エ オ の区別がなくなってきた
・サ行 サ・シ・ス・シェ・ソ ⇒ サ・シ・ス・セ・ソ
・ハ行 ファ・フィ・フ・フェ・フォ ⇒ ハ・ヒ・フ・ヘ・ホ

・歴史的仮名遣いの4つの発音 アウ⇒オー オウ⇒オー エウ⇒ヨー イウ⇒ユー

・撥音、促音 は 平安時代から

・日本語の特徴 語幹の下にあるものをたして品詞がかわる
 ひかる ⇒ ひかり 語幹 ひか
 はぢ(恥) ⇒ はづ(恥づ)、恥ぢる、恥づれ 語幹 は

・御 の読み方
 ①み 御子、御言、御名 御輿、御霊、御岳、:天・天皇・神・仏に関する
 ②み+大 大御歌、大御神、:天皇や、神に関する語を強調
 ③おん、お 御曹司、御身 御前、御方:女性語
 ④ご 御殿、御廟、御免 :漢語
 ⑤ぎょ 御意、御製、御物:天皇に関する

・品詞の分類
 
 他の語と組み合わない ①感動詞(ああ、いざ、いな、おう)
 他の語と組み合う 
  自立語
   活用しない
    主題となる   ②名詞(花、兼好、二本、こと)
            ③代名詞(われ、なんじ、こ、いづこ)
    主題とならない
     他の語を修飾
            ④副詞(いと、ひとへに、さだめて)
            ⑤連体詞(ある、いはゆる、あらゆる)
     文と文の関係を示す
            ⑥接続詞
   活用する
            ⑦動詞(咲く、あり、信ず)
            ⑧形容詞(清し、美し、悪し)
            ⑨形容動詞(はるかなり、堂々たり)
  付属語
   活用する     ⑩助動詞(けり、ず、たり)
   活用しない    ⑪助詞(が、ば、ばかり、かな)

 ※活用があるのは、動詞、形容詞、形容動詞、助動詞 の4つ

■用言

 用言;それだけで、述語になりえる 動詞・形容詞・形容動詞
 体言:自立語で、活用がなく、主語となる語 名詞・代名詞

・活用とは何か 用言と助動詞が起こす語形変化のことを指す
 基本語=語幹+語尾 語尾が変化する

 未然形 実際にはおきていない事実を述べるための用法
 連用形 用言に連なるための用法 
 終止形 文の終止に使われる用法
 連体形 体言を修飾するための用法
 已然形 すでにそうなっていることを表すための用法
 命令形 単独で言い切り、聞き手への命令を表す用法、命令の他、許容、放任を表す場合もある

・形容詞

 ク活用 高し(高し;〇、く、し、き、けれ、〇 もしくは、から、かり、〇、かる、〇、かれ)
 シク活用 楽し、いみじ(いみじ:〇、じく、じ、じき、じけれ、〇 もしくは、じから、じかり、〇、じかる、〇、じかれ、)
 見分け方 なるをつけると 上が、く となるのが、ク活用、しく となるのが、シク活用

・形容動詞

 名詞+助動詞(なり、たり)

 ナリ活用 明らかなり、愉快なり (なら、なり、なり、なる、なれ、なれ)
 タリ活用 平然たり、悠々たり (たら、たり、たり、たる、たれ、たれ)

・動詞

 正格活用
 ①四段活用 語尾がアイウエの4段に活用する形式 (咲く;か、き、く、く、け、け)
 ②上一段 語尾が、エ段1段に活用する形式 (着る:き、き、きる、きる、きれ、きよ)
 ③上二段 語尾が、ウ段、エ段、2段に活用する形式(起く:き、き、く、くる、くれ、きよ)
 ④下一段 語尾が、イ段+る、れが添加する形で活用する形式(蹴る:け、け、ける、ける、けれ、けよ)「蹴る」1語のみ
 ⑤下二段 語尾が、イ段、ウ段+る、れが添加する形で活用する形式(受く:け、け、く、くる、くれ、けよ)

 変格活用
 ⑥カ行 イ、ウ、オの三段の音からなり、ウ段音に、る、れ、オ段音によのついたもの(来(く):こ、き、く、くる、くれ、こ)「来」1語のみ
 ⑦サ行 せ、し、す、する、すれ、せよ と活用するもの 2語のみ (奏す:せ、し、す、する、すれ、せ)
 ⑧ナ行 ナ行における母音の添加(ナ・ニ・ヌ・ネ)と連体形にる、已然形にれの添加を合わせた活用(死ぬ:な、に、ぬ、ぬる、ぬれ、ね)「死ぬ、往(い)ぬ」2語のみ
 ⑨ラ行 四段活用ににているが、終止形がイ段(り)におわること(有り:ら、り、り、る、れ、れ)いわゆる、「有り、をり、はべり、いまそかり」の4語

■助動詞

・日本語は、肯定・否定・推量・断定はどの判断を文末で表現します。
・用言の活用形も使いますが、それだけは不十分であるため、助動詞をつかって、種々の細かい判断が必要となります

・動作が自然的か、作為的か
 る、らる 自然
 す、さす 人為、作為

・敬意の表明
 きこゆ、奉る 謙譲
 給ふ 尊敬
 侍(はべ)り 丁寧

・動作の進行、完了

 り 進行
 つ、ぬ 完了

・話し手の判断 
 ら、らむ、けむ 推量
 き、けり 過去
 ず、じ、まじ 否定
 ずき、ずけり 否定+記憶

・話し相手への働きかけ

 な、よ、や、か、かは、かし、ぞ、ぞよ、ぞかし、を 等の助詞



 意思の助動詞 む、まし、べし、じ、まじ
 受身の助動詞 る、らる、ゆ
 打消の助動詞 う、じ、まじ
 過去の助動詞 き、けり
 可能の助動詞 る、らる
 完了の助動詞 つ、ぬ、たり、り
 希望の助動詞 まほし、たし、
 使役の助動詞 す、さす、しむ
 自発の助動詞 る、らる
 推定の助動詞 らし
 推量の助動詞 む、むず、らむ、けむ、べし、めり、まし、らし、じ、まじ
 尊敬の助動詞 る、らる、す、さす、しむ
 断定の助動詞 なり、たり
 伝聞推定の自動詞 なり
 比況の助動詞 ごとし
 様態の助動詞 めり

・助詞

 助詞とは、関係づけをする語

 格助詞 体言を承けて体言にかかる の、が、つ
     体言を承けて用言にかかる を、に、へ、お、より、から、にて、して
 副助詞 用言の述事にかかり、その程度、状態を限定する だに、さへ、すら、のみ、ばかり、まで、など、し
 係(けい)助詞 用言の述意にかかり、文の成立の仕方に関わる は、も、ぞ、なむ、や、か、こそ
 接続助詞 句を承けて下文にかかる ば、で て、して、つつ、ながら と、とも が、に、を、も、ばど、ども
 終助詞 そこできれる、文を終了させる か、かな、が、がな、かし、なむ、ばや、かも、がも、な、ね、に、こそ
 完投助詞 かかる所なく投入される や、よ、を、ろ、ゑ、

■諸品詞・敬語・修辞

・形式名詞 本来の意味から転じて、形式的、抽象的に用いられるようになったもの
 とき、時間⇒場合
 ところ 場所⇒こと
 ため 利益⇒目的

・コソアド ⇒ コ・ソ・カ・イツ・ド
 ココ、これ、こなた、コチ、、ソコ、これ、ソナタ、ソチ、カシコ、カレ、カナタ、アナタ、アチ、イヅコ、コズレ、イズカタ、イヅチ、ドコ、ドレ、コナタ、ドッチ

目次
文法の基礎知識
用言(形容詞・形容動詞)
用言(動詞)
助動詞
助詞
諸品詞・敬語・修辞

ISBN:9784043260027
出版社:KADOKAWA
判型:文庫
ページ数:304ページ
定価:960円(本体)
発売日:1998年12月25日初版
発売日:2014年07月25日14版

0
2024年01月27日

Posted by ブクログ

私が持ってるのは古い表紙の。
どこまでも苦手な助詞以外の範囲は分かりやすく、たぶんしっかりと理解できたと思う。同じことを何度でも繰り返し説明してくれるので、「また?」となる反面、理解に至れる。
文体も読みやすく、整然としていて、文法嫌いの私にはありがたいばかり。
形容動詞の論争がどういうことなのかやっとわかった。

0
2013年01月05日

「学術・語学」ランキング